ワイルドハント異伝   作:椿リンカ

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ロッドバルト「アカメが斬る!公式で人気投票が開催決定したそうですよ。コミックス派の方もぜひともどうぞ・・・そうそう、今回からしばらくはタツミさん視点です。それではどうぞ」


「それじゃあなんでエリオットさんのことを」

 

帝国の辺境にある村で俺は生まれた。多少の四季は感じたけれども、かなり寒い地方だったせいか、作物も限られたものしか作れなかった。

物々交換や旅商人との交流もあったけれど、年々税金が重くなっていく・・・だから、俺は幼馴染であるイエヤスやサヨと一緒に、この帝都に出稼ぎにやってきた。

 

旅の途中で盗賊に遭遇してあいつらと逸れるし

帝都に到着したのは良かったけれど、兵士に志願しても無下にされるし

人の好さそうなおっぱいのある金髪女に食い逃げされて、お金もほとんどなくなるし

おまけにガラの悪そうなチンピラに絡まれて・・・

 

正直、野宿しようとした矢先に眼鏡の女性たちに絡まれた。

 

話に聞くと、どうやら秘密警察ワイルドハントという組織の人らしい。

 

ちょうど、イェーガーズ?とかワイルドハントっていう組織は金髪女とかから聞いていた俺は、自分から志願してみた。

 

「お願いします!」

「んー・・・おいエンシン、ちょっとこいつと模擬戦してみろよ。使えるなら補欠にしてやろうぜ」

「シュラお前・・・いいのかよ」

「ちょうど兄貴の事務手伝いとか雑用がいたらいいとか思っててよ。でも、使えるやつじゃねぇと兄貴も納得しないからな」

 

 

 

 

・・・そういう経緯があって、俺は見事に補欠になったわけだ。

と、いっても・・・リーダーであるリンネさんから「試用期間を設ける」って言われたけど。

 

確かに帝国所属で民間でもそれなりに信用されてるみたいだけど・・・悪人相手とはいえ、相当に酷い拷問をしているらしいからな

俺もあんまりそういうのは好きじゃないし、出来れば避けたいけど・・・

 

でも、そんなことは言ってられない。

元々兵士として就職しようと決めて帝都に来たんだ。人を斬る覚悟だってしたはずだ。ここで諦めるわけにはいかない!

 

 

「おーい、タツミ君。聞いてる?」

「えっ、あ、すんません!考え事してました!」

「まったくなぁ・・・お前には期待してるんだぜ?」

 

ついつい考え事をしていた俺に、エリオットさんが俺の方に手を置いた。

期待してるだなんて光栄だよな・・・

 

「あははは、ありがとうございます」

「おいおい、顔が真っ赤だぜ新人。ま、お前は正義感の強そうな奴だから、俺はすごく期待してるんだよ」

「そ、そんなことは・・・」

「頼りにしてるぜ。んじゃ、俺はこれからまた巡回しなくちゃいけないからお前は晩飯よろしくな」

「はい!」

 

エリオットさんを見送って、一息ついた。

まずは詰所の掃除して、んでもって晩飯の下拵えしてから剣の鍛錬かな?

どうせなら残ってるメンバーの人に俺の実力を見てもらって、ちゃんとリンネさんへの説得材料に・・・

 

 

「・・・おい、なんだよ」

 

 

・・・チャンプさんかぁ・・・

 

・・・エリオットさんが教えてくれたけど、あんまり良い人ではないんだよなぁ・・・

・・・実弟がわざわざ「子供好きの変質者」「殺人鬼」っていうのは引っかかるけど・・・

 

「あ、いえ、なんでも」

「・・・エリオットのことだが、あいつのことはその、大目に見てやってくれよ」

「え?」

「そのうち、俺のことを殺してくれとか頼むだろうしな。殺しに来たら返り討ちにすりゃあいいが、一応お前もワイルドハントの補欠だからな」

 

お、おおう・・・?待って、なんかものすごいこと言われてる!?

 

「あっ、あの、エリオットさんがその、殺しを頼むってどういう・・・」

「そのままだよ、そのまま。あいつは俺のことが嫌いだしな、何度かそんなことがあった」

 

もっとすごいこと言われた!え、弟なのに兄貴殺そうとしてるのか!?あんなに親切な人なのにそんな・・・

しかもエリオットさんは、実家で虐待されてたって聞いて・・・二人で逃げたはずだろ?なのに兄貴を殺すってのか?

 

「なんで・・・あ、あの、お二人って・・・虐待されてて、それで逃げ出してってあの、エリオットさんから聞いて・・・」

「はぁ・・・ったく、あいつはよく喋れるよな。普通、喋らないだろそういうの」

 

「仲が、悪いんですか?」

「・・・少なくとも、エリオットは昔から俺のことを見下してるだろうし、俺のことは嫌いだな」

 

面倒そうにチャンプさんがため息を吐いて読んでいた雑誌を机の上に置いた。

 

「それならなんでエリオットさんを・・・助けたんだ?」

「・・・お前よ、自分と同じ、いやそれ以上に酷い目にあってる実の弟を見捨てられるか?」

 

「・・・でも、その」

「・・・そりゃまぁ、あのまま見捨てても問題無かったぜ?あいつはあいつで俺のことを見下してたしな。でもそれは、あのクソ共と同じことしてるだろうなと思っただけだ」

 

「・・・」

「ま、大人は全員クソだし、子供は天使だから仕方ないかもな」

 

そう答えて、しばらく俺もチャンプさんも黙ったままになってしまった。

うう、沈黙がつらい・・・でも、俺は何をどう言えばいいのかよく分からなかった。

 

「あと、気を付けろよ」

「え、あの・・・何がです?」

 

「エリオットの奴はな、自分が一番大事なタイプだ。自分が生き残るためなら、俺より強そうな奴にはすり寄るしなんでもする。切り捨てる時は平気で殺すからな」

「なっ・・・」

 

「・・・ま、お前はなんか信用されてるから大丈夫だと思うけどな」

「・・・はぁ・・・そうかな」

 

「・・・ま、俺の弟は困り者だが、仲良くしてやってくれよ。あんだけ懐いてるのは珍しいからな」

「・・・」

 

・・・兄弟姉妹のいない俺には分からないけれど、殺そうとしてくる弟にそれをわかっている兄ってどういう関係なんだろう。

 

うーん・・・俺、ここで無事にやっていけるのだろうか・・・?

 




ロッドバルト「自分がいじめにあっていて、そのいじめの対象が自分から他人に移った場合・・・それをどう感じるのでしょうか?例えば安心するとか、愉悦に浸るとか、止める方もいるかもしれませんね。どう感じるかは、人それぞれですし、そこにきっと善悪なんて無いんでしょうね。そもそも、当人たちの心の機微の話です。第三者がどうこういったところで変わるわけじゃないでしょう。それではまた次回」
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