ワイルドハント異伝   作:椿リンカ

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ロッドバルト「今回の出番はドロテアさん・・・ではなく、リンネさんとシュラさんの話です。彼はいったい何を考えているのでしょうね・・・え?私が知っているかって?そりゃあもちろん、狂言廻し的な立ち位置なんですからね。あと少しは日常編が続きます。」


「本当に正義を為すなら」

今日はリンネさんの書類整理を手伝うことになった。

シュラさんが俺の試験雇用が決まってからずっと頼んでいたらしいが、リンネさんは断っていたらしい。元々、シュラさんはリンネさんの雑務負担を軽減するために俺に声をかけてくれたし、当然のことではある。

俺も雇ってくれるところがあるなら一生懸命頑張りたかったからな。

 

リンネさんの執務室には大量の書類に事件資料が積み重ねられていて、部屋の壁を覆うほどの本棚に本やら巻物が収納されている。

圧巻、としか言いようがない。これは全部ワイルドハント設立と運営のための資料やらなんやららしい。

 

「・・・やるなら雑務だけだ。重要書類は俺が処理する」

「わかりました!」

「兄貴、俺も手伝うぜ!」

 

「てめぇはさっさと詰所で見回りしてこい。悪事を働いたと連絡があれば即座に俺が首を落としてやる」

 

リンネさんはどうしてこうもシュラさんに厳しいんだ・・・!

 

「で、でも、ワイルドハント設立してから一日も休んでないだろ、兄貴・・・」

「俺が休めば他の隊員がいつ帝都で悪事を働くか分からない以上は休めるわけだないだろう」

 

休んで!!設立してからってことは2か月間もこの人休みなしかよ!休もう?!

あっ、よく見れば目の下にくまがあるし、栄養剤が机の上にいくつもある。携帯食料がそこらに・・・ってことはこの人、ろくな食事もしてないのかよ!!!

 

「あ、あのリンネさん。食事とかキチンととったほうがいいですよ・・・それに、睡眠とか、そういうのも大事ですよ」

「3時間は寝てる。充分だ。寝ている間にうちのバカ共が不祥事を起こすかもしれないし、起こした連絡があれば即座に殺さないといけないからな」

 

充分じゃねぇから!危ないからそれ!

っていうか、どんだけ自分の隊員に信用おいてないんだよ!!

 

 

 

・・・と、ひと悶着あったが、なんとか俺とシュラさんが書類整理を手伝うことになった。

事件の一つ一つをリンネさんが依頼している情報屋や子飼いの部下が調べているらしく、証言から証拠から何まで、時間を掛けているらしい。

相手が貴族とか役人とか、逮捕するのが難しい相手ばかり・・・っぽい

 

俺はこういう書類とかやったことがないから、四苦八苦しながらゆっくりとやっている。

さて、俺はともかくシュラさんとリンネさんは・・・

 

「兄貴、それでこの間エンシンと遊郭街に・・・」

「黙れ」

「そういえばドロテアが親父と蟹食べてたから俺も一緒に」

「黙れ」

「・・・あっ、そうそうこの間イェーガーズの、ヘカトンケイル連れた女がいちゃもんつけてきて」

「黙って仕事しろ、口を縫合してやろうか」

 

対応きっついな~・・・!!

もうなんか、聞いてみているこっちが辛くなるほどにリンネさんのシュラさんへのあたりがきつい。

なまじシュラさんが世間話しようと話しかけているのが本当に辛い。リンネさんになんかしたことでもあるのか・・・

 

「リンネさん、シュラさんの話ぐらい付き合いましょうよ。仕事も大事ですけど、息抜きも必要ですし」

「そうだぜ兄貴・・・・・・・・・その、病気でぶっ倒れて死にかけたことあるだろ?」

 

病気で死にかけたことあるのかよ!?

 

「・・・・・・あの時のことは覚えてない。流行り病で、死亡率の高い病気だったからな」

「それで俺が・・・て、帝具使ったら治ったんだぜ。治ったっつーか、時間を巻き戻したというか。それがきっかけで、兄貴がその【時間逆行メフィストフェレス】の持ち主になってよ」

 

そんなことがあったのか・・・でも、帝具ってあれだよな。エンシンさんたちが持ってる奴みたいな・・・

 

「時間を巻き戻す帝具、ですか・・・なんかすごいですね」

「・・・」

「・・・あ、あぁ!そうだろ!」

 

リンネさんは何故か苦々しい顔つきになったが、シュラさんはシュラさんで・・・なぜかいつもと違うような気がする。

何が違うのかと言われたらわからないけど・・・うーん。まぁ、昔の話だからかな?

 

リンネさんもシュラさんも、何かよそよそしいというか、なんか二人ともあまり良い表情はしてない気がするし、これって俺が話題変えたほうがいいかな?

 

「それにしても普通は摘発できない悪人を摘発するって、かっこいいですよね!リンネさんは正義の味方みたいな人だと思うんです」

「兄貴が・・・?」

 

「なんだかんだでワイルドハントの皆さんにも潔癖なところありますし、悪い奴は許せないって感じで・・・」

「それはそうだな。兄貴、昔から潔癖っつーか、くそ真面目というか」

 

昔からこの性格なのかリンネさん・・・いや、悪いことではないけど。なんというかすごい人だなぁ・・・

俺がそう思っていると、リンネさんが俺のほうへと視線を向けた。

 

「タツミ、質問がある」

「は、はいっ!なんですか?」

 

「誰からも頼まれてもいない、誰にも感謝されない、誰にも認知されない。けれど確実にその悪人を殺せば正義が為せる・・・お前はどう思う?」

 

・・・難しい質問だ。

頼まれても感謝されなくても、悪いやつは倒したほうがいいけど・・・なんか、引っかかる言い方なんだよな。そうだな、俺がどう思うか、か・・・

・・・前の俺なら、殺してもいいって選ぶかもしれないけど・・・

 

「それは・・・正しいことかもしれませんが、良いことではないと思います。」

「・・・・・・」

 

「あ、あの」

「いいから、続けろ」

 

「はい!・・・えっと、そりゃあ悪いやつって許せませんし、本当に倒して平和になるならいいけど・・・でもなんというか、殺しで正義を為すっていうのは、今の俺にはしっくりこなくて」

「・・・」

 

「ほんとに正義っていうなら、その悪人を説得したり、和解しようと努力するのが先じゃないかなぁって・・・」

「・・・・・・そうか」

 

こ、これってなんの質問だったんだ?もしかして採用の是非に関わるやつとかだったんじゃ・・・

 

「・・・・・・そろそろ休憩にしようぜ!な?」

 

シュラさんがすぐに立ち上がって、お茶の準備のために席を外した。

・・・・・・うーん、ワイルドハントにも慣れてきたけど、リンネさんとシュラさんのこの距離感というか、何かあった感じがすごい気になるなぁ・・・

 




ロッドバルト「もう何と言いますか、ドロテアさん編がこないのがすでにネタになってきそうですね。いや、確定ではあるのでドロテアさんファンの皆さんは気長にお待ちください。それでは」
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