ワイルドハント異伝   作:椿リンカ

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ロッドバルト「さて、今回も引き続き書類整理のお仕事だそうです。タツミさんは書類整理なんて苦手でしょうけど、仕事とはそういうものです。え?得意なことだけを仕事にしたい?いやー、そんな方は大変ですよねぇ。・・・得意なことを仕事にして挫折したら、もっと辛いだけでしょうに。それではどうぞ」


「仲が良いのか悪いのか、俺にはわからない」

 

昼飯は俺が簡単に作って、その場で食べられるものにした。シュラさんからは好評だったし、リンネさんも「・・・うまい」と一言だけ褒めてくれた。

よっしゃ!とりあえずこれでアピールはできたよな?!

 

午前中はなんだか変な空気になったが、午後からもリンネさんとシュラさんと一緒に書類整理だ。1日じゃ整理できそうにないし、数日間ぐらいは俺も頑張りたいな・・・

本当に採用されたら、こういう仕事も増えるだろうし。何事も経験だ。

 

「それにしても綿密に調べるんですね。こういうのってトップの人がやる仕事じゃない気がするんですけれど・・・」

「そうだぜ、兄貴も俺とかドロテアに任せてくれたらいいだろ?」

「大事な書類を愚弟どもに任せられるか。いつ改竄して誤魔化すか分からないからな」

 

「え・・・」

「そっ、そんなことするわけないだろ!」

「あの父親に命令されたらいくらでも折れるだろうが。100回ぐらい溺死して出直してこい」

 

「そ、そんなことないですよね?」

「・・・・・・そっ、それは無いな。親父に言われてもやらない」

「返事が遅い。どもるな。自分でもやりかねないと思っているんだろう?悪いことは言わないから、今すぐに窓から飛び降りろ。」

 

信用無いってレベルじゃないな。リンネさん、真面目というか疑心暗鬼がすごい激しい人なんじゃないかこれ・・・

・・・まぁ、シュラさんも歯切れが悪かったしな。

・・・・・・・・・二人の父親って大臣らしいけど、そんなに悪人なんだろうか・・・

 

・・・いやいや!!国の重要な立ち位置にいる人だぞ?偉い人だし、きっと悪い人じゃない・・・・・・そうじゃないと信じたい。

 

そもそも、リンネさんからシュラさんへの信用が無い。あんまりにも酷い・・・何か失敗でもやらかしたことでもあるんだろうか。

 

「あ、あのー・・・シュラさんって、なんか悪いことしたことあるんですか?」

「な、なんだよいきなり!そんな質問しやがって!」

「・・・・・・“今のところはまったくない”」

 

えっ?無いのか?

・・・無いのに、リンネさんはこんなにシュラさんが悪いことをするって思ってるのか・・・?

 

「・・・今のところは、ですか・・・」

「うっ・・・あ、兄貴がいるのにできるわけねぇだろ」

「・・・・・・ほぉ?俺がいないとやるということか」

 

リンネさんにそう言われて、シュラさんも何か言い返したり弁明するのかと思ったら、なぜか押し黙ってしまった。なんというか表情もバツが悪いっていうよりは、何か隠している感じっていうか・・・

変な沈黙が部屋の空気を支配して、俺も迂闊に発言できない。

 

・・・い、いや、ここは俺が何か言わないといけない。

ここ数時間だけでもわかるが、この二人の会話にはクッション材が無いといけない。俺だけで対処したくないのが本音だ・・・コハルさんとかドロテアさんとか!誰かほんと来てほしい!

そのぐらいにはこの二人の仲は相当に複雑だ。

 

「あのっ、なんというか二人とも双子、なんですよね?兄弟姉妹とか、双子ってそういう人がワイルドハントに多くて・・・意外というかなんというか」

「・・・おう。そうだな。ワケありな奴らが多いしよ」

「・・・それがどうかしたのか?」

 

「セシルさんとか・・・なんか、羨ましいかなって。俺、兄弟とか姉妹とかいなくて・・・コスミナさんとセシルさんとか、とっても仲が良いですし」

「んだよ、俺と兄貴だって仲が良いだろ?」

「お前の目は節穴か?いや、ただの馬鹿だったな。あまりの馬鹿さ加減に頭痛がしてきた。首くくって俺に詫びろ」

 

リンネさんが相変わらず手厳しいし、シュラさんもシュラさんで兄弟仲についての認識がガバガバなんじゃないかこれ。

でもなんというか、これはこれで仲が良い・・・のかもしれない。

 

エンシンさんとコハルさんのところも言い合いしてるけど、エンシンさんはコハルさんを心配してるところもあるのだ。

お互いに対して素直になれない、ということなんだろう。

 

リンネさんとシュラさんもきっと・・・あ、違うな。

リンネさんがシュラさんに対して、素直じゃないというか・・・何かを抱えているのかもしれない。

シュラさんは基本的に兄に対してはものすごく寛容的だけど、なんだろうか・・・

 

 

・・・リンネさんに対して、引け目がある・・・感じがする

 

 

あくまでも俺が見て、なんとなく感じただけだ

 

もしかしたら違うかもしれない。けど・・・

 

「なんだよ、兄貴だって俺と組手するし、時々は飯も一緒に食うだろ?」

「組手は必要だからだ。食事は必要な場合だけにしてる」

 

「ガキの頃はちょっとぐらいは遊んでくれたじゃねーか。それにほら、俺だって兄貴と一緒に本とか読んだんだぜ」

「・・・顔に大怪我した相手を無下にすればブドー大将軍がうるさかったからだ。あと、読書はお前が勝手に俺の隣で読んでただけだ」

 

「す、少しぐらいは仲が良いとか思ってないのか?生まれてから一緒にいる双子なんだぜ?」

「・・・・・・思ってない」

 

・・・・・・何かを確かめてるような感じがする。

 

この二人の謎は深まるばかりだが、もう少しリンネさんがシュラさんに仲良くしてくれたらいいなぁ

 

 




ロッドバルト「今回で書類整理のシーンは終わりますね。次回こそはドロテアさんが出てくる・・・・・・・・・はずですよ?えぇ、そのはずです。むしろもう出ないほうがいっそネタとして美味しいかもしれませんがね!それでは次回まで、どうぞお待ちくださいませ」

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