ワイルドハント異伝   作:椿リンカ

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ロッドバルト「今回はタツミ君視点ではありません。そろそろ試験雇用期間も終わりますねぇ・・・いやはや、何が起こるのか楽しみです」


第11回目転生者会議と狩人の叛逆

週に一度の転生者会議も、もう11回目である。

秘密警察ワイルドハントが結成されて2か月半と少しだが、取り締まりも上々だ。

 

今回はイヲカルの屋敷へのガサ入れも終わり、ひと段落ついたことからリンネも参加している。他のワイルドハントのメンバーは久々に全員揃ったことから宴会のために準備をしているらしい。

 

「ねぇ、リンネ。原作の流れを結構変えちゃってるって自覚あるの?」

 

会議の冒頭からコハルがリンネに掴みかかる勢いでリンネに噛みつくように話し始めた。

 

「・・・自覚はある。説明をするからとりあえず着席してくれ」

 

リンネに言われ、渋々ながらコハルは席に座った。他の転生者たちもリンネへと視線を向ける。ある者は疑念の目を向け、ある者は心配そうに、ある者は何かを慮っているように

 

「・・・・・・まず、俺は悪人が許せない。それが原作の流れを変えることだとしても、ナイトレイドが討つとしても。その結果として、原作の“出来事(イベント)”が変更されてもかまわない」

 

リンネが静かに転生者たちへと語りかける。

 

「だから、ワイルドハントのメンバーもそれは変わりない。お前たちがいるおかげか、命令が通りやすいが・・・信用は、信頼は、一切していない。悪性は変わらず抱えた奴らが、いつ悪事を働くかわからないからな」

 

その言葉の後、会議室は沈黙に包まれた。アオイに関しては殺すような視線でリンネを睨みつけていた。「イゾウのことも殺すつもりなのか」と、視線には込められているのだろう。

 

コハルやオリヴァーも何か言いたそうな視線を向けるが、何も言わずに気まずそうにしている。その反対にエリオットは満足そうにしていた。

そんな中で、セシルが誰に向けたのか分からない、独り言のような言葉を吐いた。

 

「姉さんみたいに、周りに壊されて悪人になった人も・・・生きていちゃだめなのかな・・・」

 

その言葉に、誰も答えない。

 

 

代わりにコハルが「あのっ」と会議室の面子が注目するほどの音量で、リンネへと話しかける。

 

「あのさリンネ、その・・・漫画の中の世界なら、悪人は悪人で、善人は善人だと思ってたの。でもっ、その、そうじゃなくてさ・・・」

「何が言いたい」

 

「・・・あいつらにだって、いいところあるじゃん。だから、私は、ちょっとは信じてあげたいのよ」

「・・・」

 

その言葉にリンネは返答することなく、コハルを見つめた。

 

「・・・・・・というかさ、私の兄貴たちは悪人だし、悪いことしてるのは知ってるけど。シュラについては悪事を働いたって聞いたことないんだけど」

「・・・」

 

「確かに街で娼婦を買ったりはしてるけど、町の人を殺したとか聞かないし」

「・・・確かに、あいつは一度も“何もしていない”」

 

その言葉に今度は全員がリンネへと視線を向けた。セシルやオリヴァーも「何もしてないんですか!?」と詰問されたリンネは眉を顰めた。

これにはエリオットも驚いたようで、呆気にとられているようだ。

 

「あぁ、何もしていない。奴の旅には密偵を何人も付けていたが何もしていなかった」

「お前は・・・何もしていないシュラに対してあんな態度をとっているのか」

 

アオイが怒気を孕みながらリンネに尋ねるが、リンネは「当たり前だ」と答える。

 

「あいつらは悪役だろう?どうあがいても、どう言い繕っても悪事を働く存在だ。今は何もしていなくとも、知らないところでやっているかもしれないし、今後やるかもしれない。その可能性があるからこそ・・・俺は信頼していないだけだ」

 

 

 

_________ところ代わって、帝都のとある貸本屋近くにて

 

イェーガーズ所属のランとセリューが、人目を避けるように会話をしていた。

 

「・・・ラン、本当にやるんですか?」

「えぇ、そのために私は準備をしてきました」

 

「・・・なぜ、私にそんな話をしたんですか?私が隊長に報告すると思わなかったのですか?」

「いえ、今の貴方は隊長もクロメさんも信用していないでしょう」

 

そう、セリューはエスデス軍や暗殺部隊の実情を本人たちから聞いてしまったのだ。そして彼らは、“それが当然である行為”として受け入れていることも、知ってしまった。

 

ランはそんな彼女にエリオットとの計画と・・・“ラン自身が立てた計画”を教えたのだ。

 

「貴方はどうしたいんですか?」

「・・・・・・私は・・・もう、何を信じて、どうしたらいいのか分からないんです。そんなことを言われても、私は、私はパパの意思を継ぐって・・・でも・・・」

 

セリューにとって、ラン自身が計画した内容は許されないであると同時に、“悪を裁ける最高の計画”とも思えてしまっていた。

 

「・・・・・・セリューさん、もしも貴方がこの計画に参加してもしなくても、私は・・・いえ、“私たち”は実行します。その時は私も彼らと共に死ぬつもりです」

「!」

 

「もしも貴方が計画に賛同するなら・・・」

 

一呼吸置いて、ランはセリューへと伝えた。

 

 

 

「私と共に、ナイトレイドへ・・・いえ、革命軍へ寝返りましょう」

 

 

 


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