【セシル視点】
エリオットさんが私刑(リンチ)されて、チャンプさんに殺され、そのチャンプさんが首を吊った。
その事実がどうしようもなく自分にのしかかって潰してこようとしている。
・・・どうしようもなく悲しいし、それ以上に、コスミナ姉さんも同じ目に遭うかもしれない恐怖感が、自分の心に侵食してくる。
正直に言ってしまえば、コスミナ姉さんがエリオットさんのようなことになってしまうのが一番怖くて、恐くて、仕方がない。
コスミナ姉さん・・・・・・いや、コスミナに対して、愛着を持ちすぎてしまったのかもしれない。
一緒に死ぬ覚悟はしていた
・・・でも、コスミナだけが傷つくことは、忘れていた。あぁそうだ、コスミナだけが狙われることだってあるんだ。
・・・・・・もしも、もしもコスミナだけが、エリオットと同じ目にあってしまったなら
自分はその時、きっと相手を許せない。どんな理由があっても相手に復讐するだろう。
「・・・セシルちゃん」
「姉さん、今はゆっくりしててよ。ね?」
「でも、チャンプちゃんもエリオットちゃんも」
「・・・・・・もう誰も、死なせないから。ね?」
殺されるぐらいなら、正当防衛で相手を殺してしまえばいい。
コスミナ姉さんは・・・ただの被害者なんだから
【アオイ視点】
チャンプとエリオットが死んでも、何も思わなかった。だって子供に手を出していたのは本当のことだし、そういう復讐者もいるだろう。
エリオットが油断して、チャンプがそれを考えてなかった。それだけの話だ。
私はイゾウの前に復讐者が現れたら殺すまでだ。
もちろん、イゾウが返り討ちにするだろうけれども
あぁ、それにしてもこれでエリオットがいなくなって清々した。前々から殺すだのなんだの煩くて仕方なかった。
大事なイゾウを殺させるわけがないだろう。
イゾウはとてもいい奴なんだから、少しぐらい”どうでもいいモブキャラクター”を殺してもいいだろうに。
転生前と同じく、頭の固い奴は嫌になるな
「アオイ殿」
「どうした、イゾウ」
「・・・墓参りに行くんだが、行くか?」
「二人っきりでか?行く!そのあと一緒に何か食べに行かないか?」
「・・・そうだな」
ふふふ、イゾウと二人でデートか・・・楽しみだな!
【コハル視点】
「おい、大丈夫か」
「・・・」
エンシンが声をかけてくる。大丈夫なわけがない。
あんな風に復讐されて、あんな風に死ぬなんて
私は、私はただ、生きるためにエンシンと生きて、海賊になるしかなかった!!私だって綺麗に生きたかった!
でも、でも、あんな風に、誰かに復讐されて、怖い思いをして、痛いことをされて死ぬのは嫌だ!
「・・・やだ。死にたくない」
「・・・そうかよ」
「やだ、あんな風に、死にたくない」
「・・・だったら、殺すしかないだろ」
「・・・」
「一度しか生きれないなら、全力で戦うまでだろ。死にたくねぇならなおさらな」
エンシンの言葉が、心に刺さる。
殺さないといけない、殺さないと、殺される。いやだ、怖い、ちゃんと真面目に生きたい、普通に生きたかっただけなのに。
これしか生き方が無かったんだから、仕方ないのに
「さっさと立ち直れよ。いつもみたいにやかましくねぇと、こっちも調子出ねぇんだよ」
「・・・バーカ・・・」
【オリヴァー視点】
「ふむ、葬式も終わったが、まだまだ全員本調子じゃないのぅ」
「そうですね。皆さん、やはりお仲間が亡くなって悲しんでいる人もいますから」
ドロテアに対して、レモンティーとスコーンを出しつつ用意しておいた返答を答えた。
本当のところ、悲しんでいるのは一人か二人ぐらいだろう。悲しいよりも、自分や自分の大事な相手が死ぬ事に対しての恐怖感のほうが強いと思っている。
別にエリオットとチャンプが嫌いかどうかというわけではない。
・・・ワイルドハントのメンバーは、リンネの言葉を信じるなら・・・シュラ以外は、原作通りか、原作よりも軽いながら罪を犯しているはずだ。
「しかしあのランが、チャンプが殺した子供の遺族関係者だったとはなぁ」
「・・・驚きましたよね」
「オリヴァー、あまり驚いてないように思えるが?」
「驚いてますって。もう何日も経過してますし。それよりもセリューさんも離脱したほうが驚きですよ」
「・・・まぁ、それはそうじゃな。ともあれ、あれだけ正義感が強いなら、遺族たちの意見を真に受けたのだろう」
「・・・そうですね」
チャンプがしてきた犯罪行為は、元をたどれば親による虐待が原因だ。一概にチャンプが悪いとは・・・言いにくい。
だがそれでも彼は子供たちを「痛めつけて殺した」のだ。
自分が忌避する、嫌いである大人と同じことをした・・・・・・彼もそれに、気が付いたのだ。気が付いてしまった。
本当に子供が好きなら、自分のような経験をさせないように慈しむべきだった。
そういう意味では、狂い切れていなかったのかもしれない。
・・・・・・原作よりも、幾分も、話ができるはずだった。
・・・エリオットはそのチャンスを全て捨ててきたのだ。
彼らがこういった終わり方をしたのは・・・こうなるべきであったのだ。
「オリヴァー、難しい顔をしておるのぅ」
「・・・いえ、世の中ってやるせないですよね」
「そういうもんじゃろ」
「・・・そうですね、どうにもならないこともありますよね」
【リンネ視点】
「お前は、本当に何も隠してないのか?」
「なんですか、いきなり」
帝具に化けているメフィストフェレスに俺は問いかける。しかし相手はいつものように余裕の笑みを崩さない。
「・・・他の奴の帝具は原典に無いものだ。それは分かる。しかしなんで俺には、お前がついているんだ?」
「さぁ?私はロッドバルトに頼まれただけですし?」
「・・・本当に何も隠してないのか?俺が病気になっていた間に、シュラがお前を持ってきたらしいが」
「え~~、本当のことですよ?彼が私を貴方のところに持ってきたから、貴方は時間を巻き戻して病気になる前になったんです」
「・・・・・・本当に、何か、隠していないか?」
「いいえ、別に」
あぁ、胡散臭い奴だ。
・・・まったく、食えない悪魔だ
次回はタツミ視点に戻るか、また幕間になります