ワイルドハント異伝   作:椿リンカ

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ロッドバルト「このところハーメルンでも中の人がシュラ好きとして認識されてきたようですね。中の人がゲンドウポーズしてましたよ。私?私は特に・・・あぁ、そうそう。今回はドロテアさんターンです」


「100%の悪人なんて」

自分の意識がはっきりしたのが何歳かよく覚えてない。

というよりも、しばらくの間は自分の前世の記憶が本当のものだと思えなかった。

そう、自分の夢だと思っていたのだ。現実から逃げたいためのただの空想や妄想の類だと、そう思っていた。

今でも少し、あれが夢だったんじゃないだろうかと思ってしまうほどだ。

 

生まれ変わる前、俺はそこそこ良い家庭で育ってきた

マンガ好きなところについては家族は否定気味ではあったけど、社会人になってからは一人暮らしを始めたから自由にやれていたし、小さな会社の正規社員で働いてきた。

そこそこ充実していたけど、やっぱり何かが足りなく感じていて・・・そんな時に、あの悪魔と出会った。

 

ワイルドハントについてはやっぱり嫌いだし、アニメに登場しなくて良かったなって、知り合ったばかりの奴らとも意気投合できた。

あんなに酷い奴らはいないほうが、みんなから感謝されるだろうし、なんだか・・・そう、チェルシーが感じていた満足感と似たものなんだと思う。

生きている実感とか、世直しをした実感というか・・・とにかく、そういうやりがいが欲しかったんだと思う。

結果的には殺すことは無かったし、全然違う方向に行ってしまったけれど

 

それじゃあ、俺の半生を語ろうか

 

・・・俺は、奴隷として生まれ育った。

俺の母親を飼っていた男が暇つぶしがてらに「奴隷の子をイチから調教すればコストは低い」とかなんとか言って、俺を生ませたらしい。父親がその母を飼っていた男なのか、それとも別の誰かなのかよく知らない。

そこから奴隷として多くの人々に虐げられた

 

ただただ、俺は周囲から虐げられて調教されるだけの存在として無駄に生かされた

この国の技術なのか、違法な実験の道具としても使われた。

体も丈夫にされて、実験されて、中も見た目もぐちゃぐちゃになった。それでもまだ俺は「生かされている」。生きているわけじゃない、何度も何度も痛みで死にそうになって、それでも死ねなくて

 

「大体遊び終わったなぁ」

「こいつもそろそろ替えるか」

「死にかけだからなぁ、新しい奴隷でも買うか作ろうぜ」

「そうだな。こんな奴、売る価値も無いし」

「それじゃあ適当にゴミ捨て場に捨てておくか」

「そのうち野良犬が処理でもするだろ」

「もしくは死体愛好好きの奴らが拾うかもな」

「あっはっは、確かにそりゃありそうだ」

 

そんな複数人の言葉がうっすらと聞こえる。もう目が見えないままなので、姿までは分からない

誰かに適当に持ち上げられ、そのまま何かの上に投げ捨てられた。鼻孔を刺激する臭いからして、ゴミ捨て場・・・まぁ、もう息をするのも辛いぐらいだからすぐに死ぬだろう。

 

なんでこうなったのだろうか?何を間違えたのだろうか?

この世界に生まれてきたのが間違いだったのだろうか?

 

「ほぉ、奴隷か。まだ生きてるようじゃな」

 

可愛らしい少女の声が聞こえた

あぁ、きっと夢なのだろう

死ぬ間際に聞こえている幻聴とか、そういう類のものに違いない。

 

「ふむ、内臓やら手足もぐちゃぐちゃなのにまだ生きておるとはしぶといのぉ・・・よし、拾うか」

 

ぼんやりとした意識で相手の言葉を聞くが、考えることすらできないというか、ほとんど声というよりも音として感じていた気がする。

痛みも辛さも慣れきってしまった自分にとって、これからまた痛いことをされるのかもしれない恐怖心は無かった。

出来ればそのまま、死んでしまったほうがいいと願っていた。

 

 

ふつり、と意識が戻った。

なんだか長い間眠っていたような気がする。体を動かそうと思ってもだるくて動くことができない・・・いや、その前に感覚がちゃんと伝わっていることや、視覚や聴覚が戻っていることに驚いた。

少し簡素な部屋なんだろうか。首を動かすことができたから動かしてみるが、特に気になるものはない。

 

がちゃっ、と扉が開いて誰かが入ってきた。

ぴょこん、と兎の耳のようにリボンを結んでいる金髪の少女だ

どこかで見たことのある様な・・・・・・・そう、夢(前世)で見たことのある、ワイルドハントの一人だ。

当時の俺はまだ前世の記憶を夢だと思っていたから、とても驚いた。

 

「起きたか?」

「・・・!」

 

声を出そうとしたが、喉から声が出ない

 

「無理をするな。改造したばかりじゃから、体がまだ機能しておらん」

「・・・」

「怪訝そうな顔をするな。妾はドロテア、錬金術師じゃ」

「・・・!」

 

夢で見た、あのドロテアと同じ・・・じゃああれは夢じゃなかったのだろうか。そんなことを俺は考えていた。

そこまで考えられるほど、少し心に余裕ができたらしい

ドロテアはゆっくりと俺の上半身を起こしてくれて自信ありげに微笑んでいた。

 

「お主があのような酷い状態で生きていたからな。ちょっと素体として治してみたが・・・中々に生命力がある奴だったな。なぁに、変な改造はしておらん。むしろ人間よりは丈夫になっておるぞ」

「・・・」

「奴隷か何かだったのだろう。安心しろ、もうその奴隷の印も消しておいた」

「・・・」

「そんな顔で見るでない。実は妾は助手を探しておってな。おぬしのような生命力が強い者を探しておったんじゃ。男手は必要じゃったしな。安心しろ。人並み程度には扱うからな」

「・・・」

「そうそう、おかゆを作ったからこれでも食べると良い」

 

今もまだ夢を見ているようだったけれど、差し出されたおかゆを一口食べる

生まれてきてから、初めて温かいものを食べた。生ごみや虫じゃなくて、ちゃんとした食べ物だ。

 

「・・・泣くほど美味かったか?」

「・・・」

「そうかそうか、妾もそこそこ料理はできるからのぉ。まだあるから食べると良い」

「・・・」

 

それから後のこと

ゆっくりとリハビリをしていく過程で、前世の記憶を全部思い出すことができた。

もちろん、ワイルドハントを殺すこともだ。

 

けれど俺はその約束を破ることにした

・・・実際に触れ合って、話し合って、悪い部分以外もたくさんいろんなところを見てきたからだ。

 

100%の悪人なんていない

 

ドロテアと一緒に過ごしてきて、俺が学んだことだ

 

少なくとも俺は、自分の命を助けてくれた相手に恩を仇で返すような外道にはなりたくなかった

 




ロッドバルト「はいはーい♪次回はコスミナさんかイゾウさんですね。シュラさんですか?まだですよ!!!下手したら前篇後篇になりかねないので調整するそうです。というかいい加減本編に進みたいですねwwww」
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