ワイルドハント異伝   作:椿リンカ

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※第三者視点


「私はあいつを信用しない」

 

タツミはエンシンとコハルと共に帝都のとある場所にやってきていた。とある場所・・・というよりは、リンネが贔屓にしている療養所である。

どうやら以前にエンシンたちが助けた少女たちが療養しているらしいと聞いて、タツミが進言して行くことになったのだ。

 

「いらっしゃい。あの、ファルちゃんたちはリハビリ中で・・・」

「ほら、果物持ってきたから、三人で食べなさい」

 

コハルがエアに果物籠を渡して、タツミの手を引いた。

 

「えっと、俺・・・ワイルドハントに新しく入ったタツミって言います!よろしくお願いします!」

「はいっ、えっと、エアって言います。よろしくお願いしますね、タツミさん」

 

「んで、お前はなんで来たかったんだよ」

「えっと、エンシンさんたちが助けた人って、どういう人たちがいるかなって知りたくて・・・」

 

エンシンの言葉にタツミは素直に答えて「今は色んな人に会いたいんです」と付け加えた。コハルは笑顔でそれにこたえるが、エンシンはバツが悪そうに顔を逸らすのであった・・・

 

 

 

 

ところ変わって、帝都のメインストリート。

イゾウとアオイ、コスミナとセシルの4人が見回りをしていた。ドロテアとオリヴァーはオネスト大臣に何かしら頼まれたらしく、二人は見回りに参加していないようだ。

 

イゾウとコスミナがあたりを散策する間、アオイとセシルの二人が・・・会話に興じていた。

 

「・・・平和だね」

「今のところはな」

 

短い会話の中に、色々な意味が込められている。

そこには今後の展開・・・この世界で言うと未来に何が起こるか、ということだ。

 

「リンネさん、何か隠しているのかな。僕らと協力してないもんね」

「・・・対応があまりに厳しいが、エリオットのことを考えると私たちも危ないかもしれない」

 

「えっ?」

「リンネは私たちも悪事を働いていると思ったら、見殺しにするか、殺すつもりなんじゃないかと」

 

アオイの言葉にセシルの表情が強張った。

 

「・・・私は、あいつのことは信用できない」

「・・・アオイさん」

 

「あいつの暗殺も私は視野に入れてる」

「!」

 

”暗殺”

その言葉にセシルは言葉を失った。

 

同じ転生者相手に、アオイは「殺す」と言ったのだ。

 

「・・・セシル、お前も自分の大事な相手を助けたいなら・・・それなりに覚悟をしたほうがいい」

「・・・」

 

セシルの視線は自然に、コスミナへと向けられる。彼女は今、イゾウと何か話しているようだが、とても楽しそうに見える。

 

「・・・・・・お前だってコスミナが大事だろう?」

「・・・うん、大事だよ」

 

 

 

 

____________ナイトレイド本部にて

 

 

「・・・私もランも、遺族の皆さんに国を変えて欲しいと頼まれたから、ここにいるだけです」

 

セリューは短くそう答えて、ナイトレイドのメンバーたちにお辞儀をする。そしてコロを引き連れて、宛がわれた自室へと戻っていった。

彼女の対応に怒る者、心配する者もいたが、ナジェンダは「入ったばかりだから、あまりかまってやるな」と告げる。

 

「入ってくれて助かった。こちらは1人でも多くの人間が欲しいところだ」

「いえ、我々もあのままいることはできませんでしたから」

 

ランの言葉にナジェンダは「それもそうだ」と納得した。

あのまま復讐したところで、ワイルドハントとイェーガーズの軋轢もあっただろう、何よりも遺族たちの気持ちを踏みにじることになる。

 

「さて、今回は解散だ。タツミのことは・・・イエヤスとサヨに任せる」

「あぁ、今度こそ、タツミにOKって言わせてやるぜ!」

「うん!タツミもきっと分かってくれるもんね!」

 

彼らの様子を眺めながら、アカメは1人、フードを深く被ってそこから離れた。

 

 

 

 

アカメがやってきたのは帝都のとあるお店。

裏路地にある小さな店だが、雰囲気はとても良い場所である。アカメは帝国時代から、この店を使っている。

 

使っているというよりは・・・とある人物と会うために使っている。

 

「・・・」

 

アカメは店に入るなり、店内を見回した。カウンターの席に馴染みの姿を見つけて、隣に座る。

 

「・・・リンネ、久々だな」

「・・・また来たのか。指名手配犯が暢気なものだな」

 

そう言いながらも軽口をたたく彼らに、マスターが静かにドリンクとつまみのおかずを出した。

 

「・・・・・・革命軍への資金提供、感謝する」

「毎回言っているが、厭きないか?俺はそんなことはしてない」

 

「素直じゃないな、お前は」

「違う」

 

そうして二人で静かに話し続ける。

 

「・・・お前は自分の父親にも、あのエスデスにも対抗している。本格的に革命軍に来ないか?」

「何度も言っているが、今は行けるわけがない。この立場じゃないと悪人を殺せないだろう」

 

「・・・リンネ、シュラたちが心配なのか?」

「・・・あいつらは悪人だ。メンバーの半分は確実にな。俺が目を離せば何かするかもしれない。だから無理だ」

 

そう応えるリンネにアカメは言葉に詰まってしまう。

 

・・・・・・そんな彼らを、離れた席からこっそりと見ている者がいた。

 

 

 

「・・・」

 

 

 

シュラが、こっそりとそこで二人の様子を見ていた。

 

 

 

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