ワイルドハント異伝   作:椿リンカ

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ロッドバルト「良い嫉妬は向上心の栄養になりますが、悪い嫉妬は他人を扱き下ろす悪意になります。貴方の嫉妬は、どんなものでしょうね?」



「尊敬する人のかっこ悪い姿なんて、みたくない」

 

【タツミ視点】

 

今日はイゾウさんとエンシンさんと剣術の鍛錬をしている。エンシンさんは暇つぶしだと言っていたものの、ちゃんと付き合ってくれているのでこちらも助かった。

俺は帝国軍式の剣術だけなので、イゾウさんやエンシンさんのような剣術を学ぶのはすごく勉強になる。

 

「お前、真っ直ぐすぎるんだよ。もうちょっと変化球覚えろっての」

「吸収力が早いでござるから、どうせなら格闘技もシュラ殿やリンネ殿から教わると良いだろう」

「はいっ!」

 

「イゾウ!差し入れをもってきたぞ!」

「セシルちゃんが作ってくれたんですよ~!」

「皆さん、休憩しましょう」

 

アオイさんとコスミナさん、セシルさんがやってきた。

セシルさんは俺とあまり変わらない年齢の同性だが、わりと料理はできるらしい。

俺もできるけど、あくまで軍で役立つためのものだから、趣旨が違うしな・・・

 

「おー、レモンの蜂蜜漬けか。それにそっちはおはぎ・・・」

「これはイゾウに準備したものだ。食べるな」

 

エンシンさんがおはぎに手を伸ばしかけたのだが、すぐにアオイさんが皿を動かして、イゾウさんへと手渡した。

 

「量が多いから、皆で食べると良いと思うが・・・」

「イゾウ、いいんだ。私が心を込めて作ったものを万年発情期のエンシンなんぞに食べさせたくはない」

 

本当にアオイさんは手厳しいなぁ・・・

 

「アオイ殿、どうせなら皆で食べたほうがいい。せっかくアオイ殿料理は美味いのだから」

「!・・・うまい、美味い、のか・・・それなら仕方ない、分けても大丈夫だな」

 

ちょろすぎやしないか・・・?

 

「タツミちゃん、ほら、あーん」

「えっ、こ、コスミナさん、自分で食べれますよ」

「コスミナちゃんが食べさせてあげます!」

 

コスミナさんが腕に絡みつくように抱き着いてきて檸檬の蜂蜜漬けを口元に持ってきた。それよりも腕に胸が、柔らかい・・・

 

「姉さん、タツミ君が困ってるから」

「え~」

「ね?困ってるよ。タツミ君は慣れてないんだよ」

「むー・・・セシルちゃんが言うならいいですけど、食べさせるのはいいですよね?」

 

セシルさんのおかげで腕は解放されたが、「あーん」はまだやりたいらしい。

ちょっと恥ずかしいが、おそるおそる食べると喜んでくれた。

 

 

「お前たち、ワイルドハントの人間だな」

 

 

声が聞こえてきたので、声の主を探すと、3人ほどの黒い軍服らしきものを纏った男たちを引き連れて女性がやってきた。

長い髪とスタイルの良さを引き立てる白い軍服の女性で、好戦的な雰囲気を漂わせている。

 

「これはこれは・・・エスデス将軍か。イゾウに用事があるなら私が代わりに応えるが」

「別に誰かひとりに、というわけじゃないが・・・強いて言えば、その新入りの隊員に興味がある」

 

アオイさんの威嚇を無視しながら、エスデス将軍と呼ばれた女性が俺を見てきた。

 

「先ほどの鍛錬を眺めていたが、中々の逸材だな。どうだ、うちの三獣士と相手にしてみないか?」

「え?あの・・・」

 

「リヴァ、お前は元将軍だろう。相手してやれ」

「・・・はい」

 

リヴァと呼ばれた中年の男性が前に出てきた。

っていうか将軍!?こんな若い女性が将軍というのも驚きだが、まさか元将軍の人と今から鍛錬すんのか!?

 

「エスデス様は特殊警察イェーガーズのトップの人で、ウェイブさんたちの上司なんですよ」

「ええ!?じゃあめちゃくちゃ偉い人じゃん!?」

 

分かりやすい説明をセシルさんがしてくれたが・・・それならなおさら、俺が断るわけにもいかないだろう。

 

「よ、よろしくお願いします!」

「タツミちゃん、いいんです?」

 

コスミナさんに心配されたが、将軍クラスの人間と鍛錬することなんて中々無いだろう。それに鍛錬だから死ぬ心配も無いし、怪我もまぁ・・・そんなには無いはずだ。多分。

 

「タツミです、お願いしますリヴァさん!・・・やれるところまで相手してください。」

「その意気や良し。私も是非とも相手にしてみたいと感じていたところだ」

 

そのままリヴァさんと剣術で戦うことになった。軍式の剣術だろうと思って立ち回るが、全て受け流される。

これが将軍クラスの力なのだろう、実際に異民族と戦うような人間なのだから当然だ。

 

真っ直ぐなままだと読まれる・・・!

 

エンシンさんのようなフェイントをかけるか、イゾウさんのように精神を集中させて攻撃を読み切るか・・・

いや、俺はまだ二人の域に達してないだろう。

 

それなら・・・

 

距離を離して、まっすぐに相手を見る。

 

剣を構えて踏み出した。

 

「ふっ、甘い!」

 

リヴァさんが剣をいなそうとしたところで、俺は剣から手を離した。

そのまま相手の懐に潜り込んで掌底を喰らわせる。

 

「っ・・・!」

 

「・・・いよっしゃあ!!」

 

元将軍相手に、やっと一撃入れられた。

 

リンネさんがシュラさんにやっていた技を使ってみたが、上手くいくとは思ってなかった。

嬉しくて笑っている俺に、リヴァさんが手を差し出してきた。

 

「若いのに中々からめ手を使ってくるのだな。だが、先ほどのはさすがだ。油断していた私の隙を上手くついたな」

「い、いえ!俺もリンネさんがやっていたのを思い出して・・・」

 

そんな会話をしていると、エスデス将軍が「よくやった」と俺のほうへとやってきた。

 

 

途端、俺の首に何かをつけた

 

 

「へっ?」

 

 

「褒美に、私の恋人にしてやろう」

 

 

頬を染めてにこやかに告白してきた。

 

 

「えっ」

 

 

「ほら、行くぞ」

 

 

容赦なく首輪につけられた鎖を引っ張って俺を連れて行こうとする。

 

「ま、ま、待ってください!?恋人!?恋人って!?」

「恋人だ。お前に拒否権は無い」

 

無いんかーーーーい!!

 

エンシンさんたちに助けを求めようと視線を向けるが、この異常事態にエスデスさんの部下もエンシンさんたちも動けないようだ。

そりゃそうだよ!俺も良く分かってないよ!

 

「エスデス様、そいつはワイルドハントですよ」

 

ふと、エスデスさんの部下の…俺ぐらいの身長の男の人が声を掛けた。

 

「ニャウ、文句があるのか?」

「引き抜くなら、大臣にどうこうってあると思うんです」

 

「言うことなら聞かせる。とにかく私はタツミを連れ帰る」

「・・・」

 

少し不服そうにしてから、俺のことを睨みつけてきた。

え、な、なんだいきなり・・・

 

とにかく、この状態をどうにかしたいと思っていたところにリンネさんが来て、なんとか制止してくれた・・・

 

助かった・・・

 

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