ワイルドハント異伝   作:椿リンカ

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ロッドバルト「結局、人間なんて他者のことなんか考えてないんですよ。自分のことが一番大事で、自分が一番正しくて一番間違えてない・・・なんて思ってるんです」


リンネによる面談記録、事後処理

【セシルへの尋問】

 

護衛任務達成したのに、なぜ僕だけ面談なんですか。

・・・タツミ君と姉さんが心配してたんですね。あとはチョウリ様とスピア様からのクレームですか。

 

・・・確かに眠らされた護衛を奥の手で使いました。

 

それが、なにか?

 

だってあの時はあぁするしかありませんでしたよ。

三獣士といえばエスデス将軍の懐刀ともいうべき帝具使い。それが二人ですよ?原作よりも油断も隙もあったとはいえ強敵でしたから。

 

だから、「使ってあげた」んですよ。

 

・・・えぇ、そうです。三獣士に一瞬で殺されるようなモブキャラの彼らを使ってあげたんです。彼らだって元々死ぬ予定だったからいいじゃないですか。

どうせ死ぬなら、「最期ぐらいまともなものに」しただけです。

 

なんですかその顔。

 

・・・そうそう、リンネさん。話は変わるんですが、もう少し原作通りにしましょうよ。

そうじゃないと、「最期まで姉さんと一緒に生きる」ことができませんから。

 

確かに僕はワイルドハントの方々と仲良くできるならしたほうがいいとは思いますよ?

和睦もしたいですし、コスミナ姉さんには幸せになってほしい。

 

 

でもそれは、「彼らが死ぬまで」という話です。

 

 

・・・だってそうじゃないですか。優しいところもまともなところもあるんですから、せめて原作通り死ぬところまでは優しくしてあげないと酷いです。

 

僕だって、覚悟してるんですよ。リンネさん。

 

だからコスミナ姉さんの最期を看取ってから一緒に死にます。

一緒に生きると決めましたから。

 

コスミナ姉さんがナイトレイドに殺されるまで、一緒に生きると。

 

***

 

【エスデスへの報告】

 

リンネか。話は分かっている。ニャウとダイダラのことだろう?

別に私は逃げも隠れもしないぞ。お前もある程度は分かっていて差し向けたんだろうが。

ふふっ、お前もよほど悪辣な趣味を持っているな。

 

・・・奴らが負けたのは、弱かったからだ。

それだけのこと。

 

それにこれぐらいの情報で大臣の権力は揺らがんぞ?どうせ情報も揉み消されるだろう。

・・・詫び?

 

・・・あぁ、ダイダラはあの刀使いにやられたが、ニャウの遺体は原型を留めてなかったからか。確かにほとんどが肉の塊になっていたせいか、判別するのも大変だったらしいな。

 

 

そんなことを気にしているのか?

 

 

・・・珍しく殊勝な顔をしていると思ったが。

いつものふてぶてしい態度じゃないから、病気か何かかと思ったぞ

 

貴様はそういったことは気にしないと思ったんだがな。私や奴等も嫌っていただろう?それこそ殺すような勢いでな。

 

・・・・・・貴様、中途半端だな。

 

正義感か何か知らないが、悪事を働く人間を徹底的に潰そうとするくせに倫理だの常識だのくだらんことを抜かして。

 

 

狂う素振りをするだけの凡人のくせに生意気だ。

 

 

・・・・・・ふふ、いつもの表情に戻ったようだな。

 

それじゃあ話はそれまでだ。次にお前の部下と私の部下が戦えば、どちらが勝つかな?

 

***

 

【タツミとの雑談】

 

リンネさん!お疲れ様です!

あのっ、その・・・セシルさんはどんな様子でしたか?

 

俺たちが話したときはいつも通りで・・・いつも通り過ぎてて、怖かったんです。

コスミナさんも戸惑っていて。

 

普通だったんですか?!

あんな、護衛の人たちを巻き込んだのに・・・ですか。

 

・・・俺、セシルさんがあんなことを普通の気持ちでやるなんて思えなくて。

コスミナさんが殺されそうになったから、パニックになったんじゃないかって・・・そう思ったんです。

 

・・・あの、リンネさん?どうしたんですか?

 

・・・コスミナさんの様子?

今は落ち着いて、ウマトラ劇場のほうに遊びに行ってますね。最近は友達が増えたらしくて、結構明るく・・・

 

え、リンネさん知らないんですか?

確かシュラさんが教えて、コスミナさんが時々歌を歌ったり遊びに行ってるんですよ。

 

あっ、これまだセシルさんには秘密にしておいてください!

コスミナさんがサプライズで喜ばせる予定だって言ってて・・・友達がいっぱいできたら、セシルさんも安心するだろうからって。

 

シュラさんもそういうことをやってるんですよ。

ちょっと悪ぶってるところありますけど、優しいと思いませんか?

 

・・・・・・リンネさん?なんでそんな顔するんですか。

騙してるとかそういうのじゃないですよ。劇場の人たちも脅されてる感じもなかったし、むしろコスミナさんを劇場に引き入れたいぐらいに気に入ってるんですよ。

 

あの、リンネさん

もうちょっとシュラさんのことを信じたほうがいいんじゃないですか?

 

だって悪いことなんてしてないんでしょう?

 

・・・あだだだ、なんで頬を引っ張るんですか!?

 

”そうやって油断させているかもしれない”って・・・

・・・確かにその、オネスト大臣がそういうことをしているのかもしれないですけど、だからといってシュラさんもそうするとは限らないじゃないですか。

 

一生懸命頑張ってますよ。

 

・・・って、もうこんな時間!?

 

俺、これからイゾウさんとまた剣術の練習があるんですよ。またリンネさんも暇があれば、俺と組手や剣術の練習をしてくださいね。

 

それじゃあ、俺はこれで失礼します!

 




ロッドバルト「・・・そういう人間が、一番陥れ安くて、食べやすいんですがね。さて、次回はセシルさんの視点になりますね。そろそろ本格始動編も終わりが見えてきました。それではまた次回」

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