ワイルドハント異伝   作:椿リンカ

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※コスミナ視点


「私には、選べません」

どうして、こうなったんだろう。

私はただ、家族を大事にしたかっただけなのに。

 

 

・・・思い出せば、小さな頃からセシルちゃんは変わっていました。

変わっていたというより、年齢のわりに大人びて・・・自分よりもずっと年上のような気がしていたんです。

 

そんなの、弟に感じるなんておかしな話ですよね。

だから誰にも言ったことはありません。

 

「セシルちゃん、どうしたんです?」

「・・・考え事をしてたんだ。ぼーっとしててごめんなさい。」

 

いつもどこか上の空で、ふとした時に寂しそうな・・・ううん、辛そうな表情を微笑みに滲ませていました。

だから自分は、得意な歌でセシルちゃんに元気になって欲しかったんです。

 

楽しそうに歌えば、少しは笑ってくれたから。

 

魔女だと人々から言われたときも、家を放火されたときも、セシルちゃん以外の家族がみんな焼け死んだときも。

自分の傍には、大事な弟(セシルちゃん)がいたから、こうしてここまでこれた。

 

なにもなくなったわけじゃない。

弟が傍にいてくれている。

 

その気になれば、いつだって離れることはできたはずだ。

セシルちゃんはしっかりしていて、独り立ちできるはずなのに・・・

 

それでも、「姉さんといたいから」って微笑んで、傍にいることを選んでくれました。

そのときから、セシルちゃんに少しだけ負い目ができたのかもしれません。

 

 

その少しあとに、シュラっちと出会いました。

シュラっちはワイルドハントに誘ってくれたとき、セシルちゃんはとても悔しそうな顔をしてました。

 

・・・でも、故郷ではもう普通に生活できなかったから。

私だけじゃなくて、セシルちゃんまで魔女の手先だと差別されるのは避けたかった。

 

私はシュラっちの誘いを受けて、ワイルドハントに入隊しました。

そのうち、シュラっちは劇場を紹介してくれたんです。

 

「帝具は回収すっけど、帝都で暮らしていけるならいらねーだろ?」

「でも、いいんですか?コスミナちゃんもセシルちゃんも帝具の適応者なのに・・・」

 

「エスデスのねーちゃんのデモンズエキスでもあるまいし、後任なんざいくらでも見つけられるだろ」

「・・・いいんですか、ワイルドハントをやめて・・・この国の住民になっても」

 

「いいだろ別に。お前の歌声ならすぐにスターになれるし、【大臣の息子のお墨付き】ってんなら箔はつくしな」

「シュラっち、親の七光りを存分に利用してますね!」

 

「そりゃあ、利用できるもんは利用しない手はないだろ。」

「そういうところ、冷めてますよね~」

 

「うっせ。ま、辞めるタイミングは考えておけよ。セシルの奴なら反対しそうにないが、あいつ遠慮しそうだしなぁ」

「ふふっ、セシルちゃんの心配までしてくれて、ありがとうございます」

 

「・・・おう」

 

・・・あのとき、ほんの少しだけシュラっちの表情が曇ったような気がしました。

もしかしたら、シュラっちはセシルちゃんの抱えていたことに気が付いていたのかもしれません。

 

・・・それでも、シュラっちのおかげで新しく平穏に暮らせるはずでした。

 

 

例え、この先にセシルちゃんが離れる未来になったとしても良かった。

それでセシルちゃんが自分自身の幸せを掴めるならそれで良かった。

 

この帝都で、普通に暮らしていけば・・・

 

 

 

「姉さん、食事も準備したんだよ。簡単なものでごめんね?」

にこやかに笑いながら、簡素なテーブルにパンや飲み物が置かれていた。

だが、少しだけ離れた場所にはあの肉の塊がある。

「その、セシルちゃん・・・」

「あ、ごめんね。食欲がなかった?下水道とはいえ、臭いがない浄水場の近くにしたんだけど・・・」

「違いますっ、あの、いまならみんな許してくれますからっ・・・こんなこと、やめてください」

「なんで?」

とても不思議そうに、セシルちゃんは返答してきた。

「だって、姉さんはもっと悲惨で救われなかったはずだったのに。なんで普通の人間みたいなことをしようとするの?」

「え・・・」

「姉さんは今のまま、ううん、原作みたいにもっと理解できないものにならなくちゃ困るよ」

セシルちゃんの言葉はよくわからない。

まるで魔女だと迫害されることを知っていたような・・・

ううん、それ以上にこれからどうなるか、わかったような口振りだ。

「姉さんは優しいけど、優しくしてくれるのは僕だけでいいのにさ。・・・やっぱり、シュラがきたときにあいつを殺しとけば良かったな」

「っ、なんてこと言うんですか!シュラっちのおかげで・・・」

「だって、姉さんがまともになると思ってなかった!!」

突然、机を叩いてセシルちゃんが叫んだ。

「いつかは殺さないといけなかった、でも好きだから一緒な死のうと覚悟してたのに!なんでそんな、普通のこと言うんだよ!」

「な、なにを・・・」

 

 

「あら、お邪魔だったかしら?」

「わかんないけど、いいんじゃないの」

 

 

聞いたことのある声に、声が聞こえた方向をみた。

 

イェーガーズのスタイリッシュとクロメの二人だ。あと、何人か引き連れている。

 

「ふふ、アタシたちが一番乗りね」

「新しく仕入れた子も使えるし・・・」

 

「・・・姉さん、待っててね。今すぐあいつらを殺すから」

 

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