アブソリュート・デュオ【月光夜桜】   作:(よくエタる)月見乃夜桜

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入学式だし仕方ないよね!(白目)アンドm(_ _)m


プロローグ(仮)

 

 

 銀色の少女が姿を見せた瞬間、講堂からまるで波が引くかの様に音が消えていく。

 一目見れば記憶から決して失われる事は無い――そう言わしめるだろう容姿の少女が、昊陵学園(こうりょうがくえん)入学式場、その入り口で佇んでいたのだから。

 

 腰まで届く銀色の髪(シルバーブロンド)、透き通るような雪色の肌(スノーホワイト)、故に際立つ深紅の瞳(ルビーアイ)は、一目で異国の少女だとわかる。

 多くの視線を向けられていながらも、まだ幼さの残るその顔には表情というものが一切見て取れないが故に、否が応にも周りに《西洋人形(ビスク・ドール)》という印象を植え付ける。

 やがて銀色の少女は、一挙手一投足が注視される中――チリン、という鈴音と共に歩き出す。

 コツ、コツ・・・・・・と革靴の音が響くほどの静けさの中、周囲の視線を一身に集めたまま、けれどそれら一切を意に介す様も無く歩く姿はまるで映画のワンシーンのようだ。そして銀色の少女が席に腰を下ろす。そこでようやく講堂内にかけられた沈黙という魔法は解かれ、多くの溜息と共に音が返って来た。

 その後は特に何も起こらず入学式は始まった。

 

『只今より、昊陵学園(こうりょうがくえん)高等学校入学式を始めます。まず最初に、当学園理事長より新入生の皆さんへ式辞をお贈りします』

 

 三國と名乗った進行役が告げると、ゴシックドレスを纏った少女が壇上に姿を現した。

 

『昊陵学園へようこそ、理事長の九十九(つくも)朔夜(さくや)ですわ』

 

 理事長。その役職から受けるイメージとは違い、十に達したかどうかという年端のいかない少女が堂々とした様で式辞を始める。

 

『貴方達はこの昊陵学園にて様々な技術や知識を得る事でしょう。しかしそれらはすべて、より高みを目指すためのものであると常に念頭へ置いてくださいませ。それこそが当学園の校訓、十全一統となりますの。・・・・・・それでは最後に、この言葉を贈らせて頂く事で式辞を終わりとさせて頂きますわ』

 

 理事長はそこで一旦言葉を止め、新入生全体を見回し――その言葉を口にした。

 

『願わくば、(なんじ)がいつか《絶対双刃(アブソリュート・デュオ)》へ至らん事を』

 

 

 

×××

 

 

 

 理事長の式辞が無事に終わろうかという時になって問題が起こった。

 

 式辞を終えたなら壇上から降りるだろうに、理事長九十九(つくも)朔夜(さくや)はその場に留まっていた。

 不思議に思っているだろう周囲に回答を与えるかの様に、理事長は再び口を開く。

 

『これより、新入生皆さんには当学園の伝統(・・)行事(・・)資格(・・)の儀(・・)》を行って頂きますわ』

 

 この言葉に周囲の生徒がざわつき出す。しかしそれも理事長が喋り出せば静まる。

 

『それでは《資格の儀》を始める前に、貴方達にはして頂く事がありますわ。隣に座っている方を確認してくださいませ。その方が(これ)よりの儀を行うに当たってのパートナーとなる相手ですの』

 

 ここでまた理事長は言葉を切る。そして新入生全員がパートナーを確認し終ったのを感じるとまた話し出した。

 

『では此れより、貴方達にはパー(・・)トナ(・・)ーと(・・)決闘(・・)をし(・・)て頂(・・)きま(・・)すわ(・・)

 

 理事長が行事の概要を伝えた瞬間、またしても新入生、ガキ共が騒ぎ出す。しかし今度は理事長が行事の詳細を語り出しても収まらない。

 

(これ)より開始する伝統行事《資格の儀》は、昊陵学園への入学試験という事になりますの。勝者のみ入学を認め、敗者は《黎明の星紋(ルキフル)》を除去した後、速やかに当学園を去って頂きますわ』

 

 ガキ共の驚きとは正反対に、涼しげな顔で理事長は言い切った。その言葉に、しん、と講堂内が静まりかえり――やがて言葉の意味を理解したガキ共が先程以上にざわめきだした。

 しかし俺、修羅道龍夜は周りとは別にワクテカしていた。

 

「いいねぇ。痺れるね~」

 

 俺の呟き等、この喧騒の中では隣にすら聞こえ無かった様で、隣の女子は周りに混ざって理事長へ非難の言葉を飛ばしている。

 周りの野次はやれ「そんな話は聞いて無い!」だ、「《適性(アプト)》があれば入れるんじゃないのか!?」等で、中でも酷いのは「私には決闘なんて無理よ」なんてのもあった。そのセリフを聞いた瞬間、“お前は戦闘技術訓練校(ここ)に何しに来たんだ?”とツッコミそうになった。

 

 そしてどうやら理事長はこの野次に付き合ってやるつもりらしい。優しいねぇ。

 

『まず《入学試験》が無いなどとお伝えした憶えはありませんわ。《適性(アプト)》があれば当学園への《入学資格》があるとお伝えした事は確かですけれどね。また、当学園の内情に関しては、様々な形で情報規制を行わせて頂いていますわ』

 

 薄い笑みを浮かべる理事長の表情に、いままでに聞かされた事が真実だとやっと気付いた様だ。おっそーい!

 そんなガキ共の反応で、何やら脳裏に島風が過ぎっている俺を置いて、講堂内は困惑と動揺で更にざわめく。

 

『ご理解頂けたのでしたら、試験のルールについて説明させて頂きますわ』

 

 理事長は、特にガキ共の事など気にした様子も無く、淀みない口調でルールについて話し始めた。

 

『この決闘は基本的に何をしようとも自由――つまり武器の使用制限はありませんの。もちろん《焔牙(ブレイズ)》の使用も許可します。決着はどちらかの敗北宣言、もしくは戦闘不能とこちらが判断した場合となりますわ。また、制限時間は十分。十分以内に決着が付かない場合は、双方不合格とさせて―――』

 

「ま、待ってください!」

 

『なんですの?』

 

 言葉を遮られたにも拘らず、理事長は嫌な顔一つせず声を上げた茶髪ポニテの女子へと返す。

 

「負けたら入学できないなんて、いくら何でもそれはあんまりじゃないですか!!」

 

「そ、そうだそうだ!!」

 

 女子の発言をきっかけに、我も我もと様々な場所から怒声が飛び出す。

 

「負けた奴の将来はどうなるんだよ!!」

「ふざけるな!!」

「責任取ってくれるわけ!?」

 

 そんな怒声の中、俺は呆れて笑っていた。

 

「くだらねぇ」

 

 くだらない。そう本当にくだらない。こいつら全員の厚顔無恥さに殺意が湧くほどにくだらない。

 

『・・・・・・先程も申しました通り、これはいわば昊陵学園の入学試験ですの。ええ、何度でも言いますわ。これは、入学(・・)試験(・・)どこ(・・)にでも(・・・)ある(・・)入学(・・)試験(・・)ですわ。他者を蹴落とし自分が生き残るという、単純なルールに基づいて行われる生存競争、ごく一般的な受験戦争ですのよ。時期と内容は違えど、ね』

 

 だが理事長はそれらの怒声すらもまったく意に介した様も見せず、冷たい視線、冷たい声、冷たい言葉のトリプルコンボを放ち、その雰囲気でガキ共を黙らせる。

 

 そう、この入試も理事長が言った通り時期と内容が違うだけの普通の受験だ。

 

 例えばこいつらが普通の受験で落ちたとしよう。どうなるだろうか?どうせ「仕方ない」と割り切るのだろう。

 また、誰かが特殊な受験に落ちて愚痴をこぼしたとしよう。その際こいつらは何と言うだろうか?どうせ「力及ばないお前が悪い」や「その受験の方針なんだから仕方ない」などというのだろう。決して受験内容が悪いとは言わないだろう。

 そして体育系の学校を受けて「実技?ふざけんな!筆記にしろ!」や「実技だけだから落ちた。どうしてくれる責任取れ!」等と言っている者が居たらどうするだろうか?どうせ口をそろえて「どう考えてもお前が悪い。常識無いの?」というだろう。

 

 つまり何が言いたいかと言うと、《時期》と《内容》、そこが違いそして気に入らないし、周囲も追い風というだけで、常日頃から口にする《常識》を「何それおいしいの?」ばりに忘却してここまで騒ぐ、その厚顔無恥さに殺意が湧く。

 

 

「だ、だからってどうして決闘なんですか・・・・・・!普通の試験じゃダメなんですか・・・・・・?」

 

 納得しきれないのか、尚も茶髪ポニテ女子は食い下がる。

 

 他のガキ共からすれば、この女子は《優しさ》や《強さ》にあふれて見えるのだろう。

 だが俺からすれば蹴落とす相手を見たくない、意識したくないがゆえの《弱さ》と《甘さ》にしか感じられない。

 

 

『貴方達は遠からず、戦いの中に身を投じる事になるでしょう。それは入学の意思を示した時点で、理解している筈ですわ。・・・・・・そしてその時は貴方達の都合で待ってはくれませんの』

 

 いい加減茶髪ポニテ女子も理解したのか席に着く。それを見た理事長はいまだざわつく講堂を見渡し、喋り始める。

 

『もし当学園のやり方に納得が出来ないのでしたら、講堂を出て頂いて構いませんのよ。ただしその場合、当然の事ながら昊陵学園への入学は諦めたと判断させて頂きますわ』

 

 しん、と講堂内の空気が凍るのを感じた。

 沈黙が講堂を支配する。

 理由は分かる。どうせ相手を殺したら等と理由をでっち上げてみても、本当の所では自身の《偽善心》や《体裁》が邪魔をしているのだろう。

 

 だが、そんな青二才(ガキ)共の心理など、とっくに解っているだろう理事長は《欲》への一歩を踏み出させる言葉を囁く。

 

『それでは開始前に一つ、貴方達が心置きなく闘える様に、《焔牙(ブレイズ)》について補足説明をさせて頂きますわ。《焔牙(ブレイズ)》とは超化された精神力によって《魂》を具現化させて創り出した武器――故に傷つける事が出来るのも《魂》のみという特性を持っていますの。つまり攻撃(・・)した(・・)相手の(・・・)精神を(・・・)疲弊(・・)させる(・・・)だけで(・・・)あり(・・)肉体を(・・・)傷つけ(・・・)命を(・・)奪う(・・)事の(・・)無い(・・)制圧用の特殊な武器なのですわ』

 

 この言葉により、ざわり、と動揺が広がっていく様が目に見えてわかる。

 “他者の命を奪う”という懸念が消えた事により《偽善心》が薄れ、一人、また一人と意志を固めていく様もまた。

 

(くくっ。さっそくバカ共が乗せられてやがる。くくくっ)

 

 俺は笑いを堪えながら内心で呟く。

 

 そう理事長は確かに言った《命を奪う事は無い》と。しかし実演して見せたわけでは無い。“偉い人にそう言われたから”と簡単にやる気になるとは、ずいぶん薄っぺらい倫理観()だ事。

 

 そんな事を考えていると焦茶短髪の少年が手を上げ、理事長へと質問していた。

 

「・・・・・・すみません、一ついいですか?」

 

『なんですの?』

 

「パートナーの――闘う相手の変更はできませんか?」

 

 そんなバカげた、甘っちょろい質問にも理事長は律儀に返す。

 

『・・・・・・貴方は受験で、数学が苦手だから得意の英語で評価してくれと言えますの?その希望が通るとでも思いますの?』

 

「それは・・・・・・」

 

『理解なさい。いま隣に居るのは最初の敵ですわ。そして今後、その者より自身に親しい者が敵になるかも知れませんわ。その時、貴方は闘いたくないから別の奴に代わってくれと言って、聞き届けて貰えると思ってらっしゃいますの?』

 

 メッタ刺しにされたそいつは何も言い返せずに席に着いた。

 

 

 そして他に異論が無いと見た理事長は、ガキ共に最後の一押しをする。

 それによりガキ共の心に残る《体裁》を薄れさせる。

 

『闘いなさい、天に選ばれし子《エル・シード》らよ!!その為の力は既に与えています。そして己の未来を自らの手で掴み取るのですわ!!』

 

 

 

 




補足などは後日気づいたり、聞いてもらった時に上げます。
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