転生先が平賀さんな件   作:スティレット

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サイトの飲むアルビオンのコーヒーは苦い


ガンダールヴは白い死神を超えられるか

 甲板でラピュ○を見ていたら海賊ならぬ空賊に襲われた。

 

 その空賊さんたちは賊にしてはやたら統率の取れた行動でこちらを制圧し、俺は特に抵抗する理由が無いしいつでも抜け出せるのでルイズとワルドと一緒に空賊の船の一室に閉じ込められていた。

 

 その際デルフリンガーと刀は取り上げられてしまったが、他の武器は無事だ。甘く見すぎだろう。

 

 まあ、空賊の船に侵入して賊の手下以外の目はルイズとワルドのみの状態になったので、行動を起こそうと思う。

 

「なあ、空賊さん。殿下と話があるから呼んで来てくれ。こっちから訪ねても良いけど」

 

「は? 大人しく捕まったのはその為?」

 

 ルイズが困惑する中、飯を持ってきた手下(笑)に直球を投げる。相手は訓練されているのか表情筋こそ動かさないが、わずかな沈黙があった。

 

「頭なら居るが殿下なんぞこの船に居ねえなあ。それともトリステイン人は空賊でも敬意とか払うのかい?」

 

「何、怪しいと思う気持ちは分かるが、そっちこそ軍の癖が抜けていないぞ。それにその頭がアンリエッタ王女殿下とよく似た指輪を着けていたのも確認している。その上で言うが、俺達は王女殿下から任務を受けてきた。内容はそっちの殿下と話をする時に分かるさ」

 

「・・・・・・待ってろ」

 

 そう言って空賊に変装したアルビオン軍人は、扉から離れていった。ちなみに本当の空賊だったら船を奪って献上品のひとつにする予定だった。

 

 

 

「お前が俺に話があるってかい?」

 

 目の前の空賊に扮した殿下は俺を試すように空賊のまま対応した。

 

「ええ、王女殿下に仰せつかった任務の証拠はここに。主、指輪を殿下の前に」

 

「分かったわ、サイト。こちらを」

 

 ルイズは疲れたような顔をしているが、諦めたように指輪を着けている手を差し出した。

 

「風と水は虹をかける。本物か。やれやれ、これではお手上げだな」

 

 ウェールズはかつらとヒゲを取り、お手上げと言う割には楽しそうな顔で自己紹介を始めた。

 

「ばれてしまったが、アルビオン王国皇太子、ウェールズ・テューダーだ」

 

 

 

「そうか、アンリエッタが結婚を・・・・・・」

 

 ウェールズは手紙を読み、何かを考えるように目を閉じている。

 

「ウェールズ皇太子殿下・・・・・・」

 

 ルイズはその殿下の表情に何か言いたげだ。ワルドは今後のことを考えるので忙しいのか? 黙ったままだ。

 

「はい、ですが、結婚はここアルビオンがレコン・キスタの手に落ちたときのためのものです。「全滅」ではなく、「復興可能」な範囲で抑えられるのであれば、ゲルマニアに王女殿下が嫁ぐ必要性はなくなります」

 

「・・・・・・つまり、どういうことかな?」

 

 ウェールズに情で訴えても無駄だからな。リスクコントロールで攻める。

 

「今回鹵獲してきた船で、さらに人員を避難させることが出来ます。そして、その人員にしばし苦い思いをしてもらいますが、その人員次第では再びアルビオンを取り戻すことも可能ということです」

 

「君は冗談が下手だな。我々とてここまでの劣勢に陥る間、手をこまねいていた訳ではない。それをゲルマニアとも組まず、実質亡命と変わらない多くの人間を養いながら単独で戦って勝つというのか?」

 

「少なくとも、今回はその時間稼ぎのための布石を用意してきました」

 

「ほう」

 

「私達が乗っていた船に土産を載せています。こちらではなじみの無いものかもしれませんが、これと私の力である程度の遅延が可能です」

 

「ふむ」

 

「ただし、流石の私も大砲の弾は受け止め切れませんので、土産の設置と土メイジによる即席の防壁を用意してもらいたいのです。数発耐えられれば十分なので」

 

「面白そうだね。では、その土産を見てから決めようじゃないか」

 

 よし、乗ってきた。作りに作った埋火、耐水性に問題ないように密封出来るよう実験しながら作ったからな。時限性でもあるし、屍の山でわざわざ掘り起こす奴も居ないだろう。今回自重はなしだ。

 

 

 

「こんなものが・・・・・・」

 

 ルイズは学院で俺が何を作っていたのか知っていたのと今回が今回なので平気だが、ワルドとウェールズが埋火の用途を聞いて顔を青くしている。正しく貧者の核の先祖だからな。火薬は使うがあくまで主力が魔法のこの世界。鉄砲や爆弾は有っても地雷は無いということか。

 

「他にももう一つ勝利への朗報が」

 

「何かな?」

 

「レコン・キスタの虚無、あれは実は水の魔法ということが濃厚なのです」

 

「何?」

 

「思い出して下さい。こちらでも確認しましたが、裏切るはずのなかった方が裏切ったのでは?」

 

「確かに・・・・・・」

 

「それと、これはまだ確証の無い情報なのですが、レコン・キスタでは死んだはずの人物が変わらず指揮を執っているとか」

 

「馬鹿な!?」

 

「両方とも、当てはまりませんか? 洗脳、そして・・・・・・体内の水の操作による回復」

 

「つまり、虚無と言うのは出鱈目で、敵はなにかしら未確認の水魔法を使っていると言うことかい?」

 

「その可能性が高いかと。そして、その虚無が出鱈目ならば、ロマリアが動きます」

 

「・・・・・・! そういうことか」

 

「はい、なので今回は時間稼ぎで十分なのです」

 

 ヴィットーリオも聖戦のためだけではなく、普段は他にも色々な仕事があるだろう。それが一つ増えるだけだ。

 

「では、埋火の詳しい使い方を説明しますので、口の堅い方を呼んで下さい。もし、これが世界に広まったらとても大変なことになるので」

 

 この後王様にも説明しなきゃいけないんだよな。まあ、ウェールズがなんとかしてくれるのを期待するか。

 

 

 

 それから城の工作兵や土メイジなどに説明し、最後の晩餐の前に王様にこのことを伝えに行き、かと言って地雷・・・・・・もとい埋火を秘密にしつつ撤退戦をしなければならないと言うことで王様が複雑な顔をしていた。先にウェールズを説得していたのでなんとかなったが、ま、息子を生かせる道が出来たが王族として玉砕も考えていたのだろう。

 

 俺は晩餐に参加せず、ひたすら兵士と共に埋火を設置していた。ルイズには無いとは思うが万が一ワルドの様子がおかしくなったら周囲に助けを求められるように一人では居ないように言っておいた。

 

「しかしサイト殿、ここまで秘密にしなければならない武器とは一体どれほどのものなのでしょう?」

 

 兵士の一人が聞いてきたのでちょっとした地雷講座をすることにする。

 

「いいですか? これはまだ木や金属といったものを使った単純なものですし、時限性ですので時間が来れば自動的に爆発します。ですが、これが発展すれば一度埋めた地域に不発弾としてずっと残るのです。そうなれば土地の価値は暴落し、人は寄り付かず、かと言って強引に突破しようとして罪も無い第三者が爆発に巻き込まれてしまうのです。なので、ウェールズ様にお願いして口の堅い皆さんを選んでもらいました」

 

「そうだったのですか・・・・・・恐ろしいですね」

 

「ええ、ウェールズ様もこの説明でお顔を青くしておられました。誇りある皆さんなら決して悪用しないと思うので、今回は目を瞑って下さい」

 

「分かりました!」

 

 そんなやりとりをしながら全ての埋火の設置も終わり、土メイジに防壁や塹壕も作ってもらったので城へ戻った。

 

 

 

 準備も終わったので一度仮眠を取り、殿を務めるため荷物の中からこちらへ持ってきたものを取り出した。

 

「なんでえ、俺様の活躍があるかと期待していたのに、そいつを頼るのかよ」

 

「白兵戦は最後の手段だからな。距離があるうちは遠距離攻撃に頼るのは当たり前だろ」

 

 そう言って背負いなおしたのはスナイパーライフル。欲を言えばアンチマテリアルライフルが欲しかったが、重いのと弾数が少なくなるためM40A5と言う銃のカスタム品を持ってきた。

 

 マガジンに装填した弾はポーチに入れ、取り出す時に後腰から手を回す。ただ、薬莢袋は一つしか持ってきていないため、それとは別の袋をベルトから提げている。

 

 ウェールズは最後まで殿を勤めようとしていたが、王命でもう一隻の船を護衛するためとルイズを守ってもらうためにイーグル号の指揮を執ってもらっている。

 

 ドン! ドン! と何発か城壁に船が発砲してきたが、嫌がらせ程度でしかない。戦闘開始だ。

 

 スコープを覗くとほぼ点にしか見えない中、一際目立つ奴を探す。見つけた。まずは一射。

 

 タァーン! と言うリボルバーとは違った長い銃声それから3秒ちょい経つと、指揮官が見えなくなる。

 

「一撃か。やっぱお前さんは使い手だな」

 

「見えるのか」

 

「感触が届くんだよ」

 

 デルフは魔法が届きそうな時に切り払うために俺の横に突き刺してある。そうでなくともこういう会話に大分助けられる。

 

「久しぶりだが問題ないな。斥候なんぞ魔法避けの傭兵だろうから、指揮官を討ち取ると突撃か逃亡の二択しか選べない。そして後ろに貴族が居る場合、逃亡すれば殺されるため散り散りに逃げるか最後まで突撃してくる。と」

 

 あえて声に出して確認する。状況を確認して平静を保つ。

 

「じゃ、次いくか」

 

 何発か撃つと、あちらからも盲撃ちしてきたりするが、そもそも射程が違う。除々に後退しながら撃ち続ける。

 

 そして50発を撃ち切った。何名かは復活して再び指揮を執っていたが、役割は果たした。撤退する。

 

 俺はワルドから借りたグリフォンに乗るために待たせている場所に向かった。入れ違いに死兵となって時間を稼ぐ貴族達とすれ違う。

 

「大分減らしました。では、ご武運を」

 

「ああ、貴公に感謝する」

 

 短いやりとりの最中、断続的に爆発音が聞こえてくる。埋火だ。狙撃で足の遅くなった敵兵が第2防衛ラインまで来たようだ。

 

「逸らず突撃しないで下さいね。あの音が聞こえている間は勝手に死んでくれますから」

 

「あ、ああ」

 

 中には一緒に作業した兵やメイジも居たが、機密保持と最後の一花の為に自決用の爆薬を渡してある。即死できなかった場合や、もうだめだと思った場合に使うように。

 

 俺に出来るのはここまでだ。保険もかけたが無駄になったな。まあ、ギーシュのモグラはルイズの指輪の匂いを追うので問題ないだろう。トリステインに帰ろう。




言うなれば運命共同体
互いに頼り、互いに庇い合い、互いに助け合う
一人が五人の為に、五人が一人の為に
だからこそ戦場で生きられる。貴族は兄弟、貴族は家族


嘘を言うなっ!

猜疑に歪んだ暗い瞳がせせら嗤う
無能、怯懦、虚偽、杜撰
どれ一つ取っても戦場では命取りとなる
それらを纏めて無謀で括る
誰が仕組んだ地獄やら
兄弟家族が嗤わせる

お前もっ!
お前もっ!
お前もっ!
だからこそ
俺の為に死ねっ!
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