無事ルビーとオルゴールを渡されたルイズには、「指輪を身に付けてスペルを唱える時のように集中すれば音の出ないオルゴールから何か聞こえてくるかもしれない」と言っておいた。ちなみに俺にもアンリエッタから報酬は出ているが、マザリーニ枢機卿も居たので今回はルイズ経由で大粒の宝石がごろごろ入った袋を下賜と言う形で渡された。ロングビルには帰ってきた時に一度顔を合わせたが、情報交換と「スキルニル」と言うマジックアイテムで居ない間の影武者を作って学院に置いておけと言って更にスキルニルの購入費とロングビルへの追加の依頼費でお金が飛んでいったので、あればあるほど良い。影武者を用意してもらったらロングビルの技量で危なくない程度にレコン・キスタへの破壊工作をしてもらいつつ、ティファニアとゆっくりしていてもらおうと思っている。
スキルニルと言えば、タバサが「地下水」を持ってきたので戦争が始まる前に一度タバサことシャルロットの母親を診断することになった。ついでに地下水と面接した。その時の会話がこれだ。
「よう地下水」
「あんたか。俺を運ばせた物好きは」
「あんだよ相棒、カタナとか銃だけじゃなくて今度はそいつにも浮気すんのかよ。これ以上増えると俺様の出番が減るから勘弁して欲しいぜ」
「なんだ、お仲間か。お前の使い手はよほどの変人か?」
「ああ、変人だな。だがな、くっついてたら割と退屈しないぜ」
「退屈しないのか。そりゃあいい。で、俺の特性知ってる変人さんは俺をどうしようってんだ? 操られるのを覚悟してでも魔法が使いたいとかか?」
「お前ら人に対して変人とか失礼だな。まあいい、それじゃあ賭けをしようか。お前を握って俺を操れなかったら俺を使い手と認めろ。ダメだったら俺を使っていい」
「おい、お仲間。こいつ気狂いか? 本気で正気を疑うぞ」
「ま、相棒なら使い手だし案外なんとかなるか」
「は? ちょ、おま」
「じゃあ始めるぞ」
「握ったぞ、マジで握ったぞこいつ。お仲間には悪いがとっととずらか・・・・・・れねえ!?」
「万が一のレジストも発動しなかったな。流石神の左手、武器枠だったら使えないものは無いか。でもマジックアイテムでもあるから頭脳でもいけるのか?」
「何ごちゃごちゃわけわかんねえ事言っていやがる! どうなってんだこれ!」
「いいじゃねえか。どうせ暇なんだろ? それで俺様もよく寝てたぜ。よくよく考えてみりゃ相棒が俺様出してくれるのはでかい獲物とか狩る時とか遠征くらいだからな。話し相手は居るに越したこたあねえや」
「ああ、お前ら呼吸しないから音が漏れない箱に入れてる間は好きにだべってていいぞ。それとこれから戦があるからな。下手すりゃ砕け散るけど、そんときゃ俺も死ぬかもしれないから退屈しないぞ」
「まあいいか、退屈しないんならあんたが生きてる間は付き合ってやるさ。よろしく、マスター」
ってデルフと一緒に面接したわけだ。だがあいつ等割とうるさいから一度ルイズに怒られた。それ以来口数を減らすように言ってある。その代わりご機嫌取りに戦闘訓練でオーク鬼やオグル鬼狩りに出るようになった。その地域の領主に討伐した耳を持っていくと金になるため実益も兼ねている。ついでに1匹ギーシュに任せてみたけど、気が逸ったのかワルキューレを全部突撃させて一蹴された。あいつにはもう少し経験が必要みたいだ。
そうやってのんきにしているが、原作と違ってウェールズが生存している上にトリステインに身を寄せているのでゲルマニアから結婚の話が破談になったと言う。代わりにロマリアに打診してあるのでレコン・キスタもうかつに動けなくなっている。
ただ、ウェールズをはじめとしたアルビオン空軍の王統側が味方に付いている為、動けるアルビオン軍人にはトリステイン王家が用意した船で数合わせをしているようだ。ソースはアンアンとウェールズのバカップルコンビ。妙に気に入られていてルイズ共々呼び出されては惚気話半分に聞かされるんだよね。ヤンナルヨ。マザリーニ枢機卿には胃薬と食欲増進の薬を送っておいた。あの人あれ以上痩せるとミイラ化がマッハなので同情心が沸いた。
で、今何をやっているかって? うん、どうしてこうなった。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
何故かルイズがアンロックを成功させて、俺がシエスタと部屋で飯食ってるところを強襲されて修羅場なんだよ。そうだね。分かっているよ。始祖のオルゴールで目覚めちゃった所為だよ。つまりは俺の所為なんDA☆
「・・・・・・サイト、あんたご主人様が伝説になっちゃうかもしれないって時にメイドと何ヤッテルノ? 何デソノメイドハ姫殿下ミタイナ空気出シテタノ?」
「サイトさん、怖い」
猛るような赤い怒りではなく、静かな青い怒りに燃えるルイズ。俺の後ろで震えながら縮こまるシエスタ。大丈夫。原作と違ってルイズの部屋で半裸のシエスタを押し倒したとかじゃないから。まだ最悪じゃないから。
「はぁー、落ち着いて下さい、いえ、落ち着いてますね。主。私は仲の良い友達と楽しくおしゃべりしながら食事していただけですよ。何故主が嫉妬みたいな空気を出しているんですか?」
事実を指摘されて少し冷静になったのか、若干怯んだルイズ。
「し、嫉妬じゃないわよ! ただ、ご主人様がこれから大事な話をするって時にそんな事をしているから・・・・・・」
「ええ、アンロックが成功しているようですね。規則違反ですが、この際成功している方が大事なので目を瞑りましょう。では、その大事な話を伺いますので、シエスタ、大丈夫。主はそこら辺の馬鹿貴族とは違うからね。また一緒に食事しよう」
「は、はい、サイトさん」
そう言ってシエスタを退避させる。食事自体は終わっていたので皿を重ね、新しくカップを出し、紅茶を注ぐ。
「どうぞ、主。立ったまま話と言うのもなんでしょう。お話を聞かせて頂けますか?」
「そ、そうなのよ! 実はね、オルゴールから声が聞こえたの」
要約すると話はこうだ。
今朝からオルゴールの前で指輪を嵌めて集中していたらエクスプロージョンと言う虚無の魔法を覚えたのはいいが、ちょっとルーンを唱えただけでも相当精神力を吸われる様な感覚に陥り危険と判断、中断して窓から魔法を放ち、しばらく放心していたそうな。
その後、これならコモンマジックもいけるんじゃね? って思ったらしく、ロックなどを試したところすんなり行き、信じられなかったので他のコモンマジックも含めひたすら試していたらしい。
それに集中しすぎていて気がついたら昼。俺をびっくりさせようと思ったらしくアンロックで突入してきて今に至る・・・・・・と。
いじらしくて可愛い話じゃない。ただし、恋人でも無いのに嫉妬するのは正直ないわー。原作よりつり橋効果とか少なかったから好感度は低いと思っていたけど、ちょっと試してみるか。
「主よ」
「な、何よ。なんで顔近づけてくるのよ」
じっと見つめる。うろたえるルイズをひたすら見つめる。
「主よ、私も人間なのですよ。友と友好を確かめるし、可愛い女の子と話もしたい。人形ではないのです。それとも、主よ、私の目の前に可愛い女の子が居るのですが、他の女の子と話をして怒るその女の子に私が触れてもいいと思いますか?」
「すすすす凄んだってね! 怖くないんだからね! あんたに触られるのなんて今更なんだし、なんともないんだからね!」
「そうですか、では」
ガチガチなルイズの利き手を取ってさりげなく杖を抜けなくし、軽く頬を撫でる。
「な、ななな、なんとも、なんともないんだから、離しなさい!」
「そうですね。なんともありませんよね。ところで、コントラクト・サーヴァントをもう一度したら魔法が使えるようになってパワーアップした主の力を授かれると思いませんか?」
「そそそ、そんな」
「ほら、主、唱えて下さい。いいじゃないですか。それとも主は私を使い魔ではなく異性として見てくれるんですか?」
「そ、そりゃあんたはそこそこ頭も回るし、変な知恵はあるけど気遣い出来るし、ワルドの裏切りも看破してたし、ウェールズ様たちを助けたし・・・・・・」
ごにょごにょ言いながら茹蛸のようになっているルイズ。
「そうですか、よかった」
ゆっくり離れる。
「ギーシュではありませんが、可愛い女の子が嫌いでは無い様子を見せてくれるのはうれしいですね。ただ、まだ覚悟が無いようです。主よ。貴方が覚悟出来たのなら主従ではなく異性として見ましょう。主ではなく名前で呼びましょう。ただ、なんの覚悟もなく、ただ縛りつけようとするのであれば引きちぎります。それが嫌だったら、完全に主従としての関係を取るか・・・・・・さもなくば、ここから先は言う必要もありませんね?」
感情が整理出来ていないのか、ルイズは立ち尽くしたままだ。ああ、これは言っておかなければ。
「主、魔法が使えるようになりましたね。おめでとうございます。改めて祝いの品を用意しますので、何かご希望があれば後日リクエストを受け付けますよ。なければこちらで作らせて頂きます。そして、差し支えなければコモンマジックの部分だけでも実家へ報告するといいでしょう。虚無の事は帰った時に驚かせるために取っておいてもいいかと」
先にアンリエッタに報告しておけば喜んでアルビオンに嫁ぎに行くだろうしな。
「では、まだ食堂が開いていますし、送らせて頂きます。私はいいのですが、お腹空きませんか?」
その言葉に初めて気がついたようだ。
「そうね、そうするわ。ただし、追加で一つ命じるわ。送った後私の隣の席で食べなさい」
「・・・・・・了解、主よ」
この後メチャクチャ昼食食った。
タバサの冒険を読んでて地下水の時点でギーシュを倒した男の子って言ってたのでここで回収。サイト強化フラグゲット。ついでにギーシュも原作より早く対亜人戦してるので宝探しで無様を晒さないかも。