「なあ、ギーシュ。お前のワルキューレなんだが、7体それぞれに名前を付けてはどうだ?」
「なんだい藪から棒に。でも良い案だね。愛着が沸けば力も増すかもしれないし」
「ちなみに今度7体分を全て合体させて作るゴーレムの名前は「テイロス」な。青銅の巨人って聞くとそんなのが居たんだよ。ラインになった時の奥の手にでもするといい」
「そうだね。守りはそのテイロスに任せて、攻めにはこの間借りた本に載っていたガーゴイルみたいにワルキューレの指揮官に知能を持たせれば戦略の幅も広がるか」
「ただ、ガーゴイルは精神力食うからな。そうなると少なく見積もっても3体分は確保しておかないとダメだろ。そうしたら残り4体だな。これに前に教えた「ドール」改め「ケンプファープッペ」だっけ? それにあらかじめ役割振っておけばいい」
「ゴーレムに役割を振るのかい?」
「ああ、まず、ガーゴイル級の知能を与えた指揮官であるワルキューレ。ワルキューレだから「ヘルヴォル・アルヴィトル」でいいだろ。それに、お前を守れるよう大盾と槍を持たせておけ。ついでにいざと言う時の剣も腰に下げておくといいな。こいつはお前の動きがそのまま技量に繋がるから剣は抜き方から教えてやる。盾はともかく槍は最悪ゴーレムの腕力でぶん回せばいいから先の方は平たくしなくてもいいぞ。むしろランス型もアリかもしれん」
「ヘルヴォル・アルヴィトルかあ、僕を守るからヘルヴォルで軍勢の守り手。アルヴィトルはガーゴイルだから全知ってことかい? 可憐さより凛々しさが引き立つ名前だね」
「ああ、まあ昔読んだ本にワルキューレの中にそういうのが居たってだけだから深く考えるな。それで、まず、ケンプファープッペの内一体が盾役だ。こいつも武装は盾と槍。こまめに敵を攻撃して相手の攻撃は盾で受け流すんだ。注意を引く役な」
「盾はヘルヴォル・アルヴィトルと同じなのか?」
「いや、中型のカイトシールドだったら剣を装備させてもいいし、小型のバックラーだったらレイピアでもいい。逆にあまり大きな盾を持つと敵を追いきれなくなる可能性もあるからここら辺は作ってみてから考えようか」
「そうだね」
「次に、攻撃役だ」
「他の全ゴーレムが攻撃するんじゃないのかい?」
「いや、さっき言った攻撃を受け流し、耐える役と、軽装にし、防御を捨てて攻撃する役、それと避けながら撹乱し、場合によっては多数相手でも回避を主にして時間を稼ぐ役、最後に指揮官を補佐しつつ遠距離攻撃が出来る役が欲しい」
「ずいぶんと細かくなったね。しかし遠距離攻撃か・・・・・・錬金だけだと弓は作れないんだが」
「そういう時は発想を逆にするんだ。弦だけポケットに入れておくとかシャツの内側に入れておいたり杖のグリップとして使ったりしてあちこちに仕込んでおけば壊れても平気だしな」
「なるほど、そういう発想もあるのか」
「ギーシュのゴーレム運用は平民の兵士の運用に通じるものがある。つまり、兵站の確保だ。飯は自分だけ食えればいいから一人分でいいが、兵の数と武器はお前の精神力依存だからそこら辺よく考えておけ」
「そうだね。しかし矢を作るにも精神力を使うわけだし、長弓がいいか」
「ああ、そうしておけ。ただし、ゴーレムもお前が弓を引ける技術を覚えていないと使えないからな。ついでにこいつにもヘルヴォル・アルヴィトルほどでは無いにしろ弓を引けるだけの頭が必要だ。無理そうなら大人しくクロスボウ分解して作れるようになっておけ」
「そんな問題があったか。今の僕にはガーゴイル2体作れるほどの精神力も技術も無いから、クロスボウにしておくよ。ゴーレムなら多少の重量も関係ないしね」
「それじゃあ後で分解整備する予定だったからクロスボウの部品も見せるぞ。ただし、全部同じ素材で作ると歯車同士が磨り減りやすくなるからな。片方はあえて柔らかい部品を使うとかして工夫しておくと後々役に立つかも知れん」
「そういえば君のクロスボウにはクランクが付いていたね。買った後改造したのかい?」
「そうだ。威力が足りなかったし、強弓より強いのが欲しかったからな。直射の狙撃用に」
「バリスタでも無いのにとにかく威力の高い弓の部分と、それを飛ばす矢が全部銅や鉄とか今まで見たことがなかったよ」
「ボルトが軽いと横風に流されるからな。それに近々他のものも飛ばすから大幅に改造した」
「君が作るものはコルベール先生とは別の方向で突拍子も無いからね。驚かないのは諦めることにするよ」
「ああ、そうしておけ」
「意見もまとまったし、クロスボウを見せてもらう前に今の僕の技術でガーゴイルが作れるか試してみようじゃないか。これがいけたらラインになれる気もするし」
「それなら先にヘルヴォル・アルヴィトルとケンプファープッペを作って模擬戦だ。遠距離攻撃は今回石でも投げさせておけ。投擲も立派な攻撃だからな。さっき言った役回りに合わせた武装ならなんでもいい」
「初めての試みだからね。お手柔らかに頼むよ」
クランク付きのはアーバレストなどがありますが、サイト君のは左右どちらかにクランクを取り付けて回す、ストック付きのものです。トリガーとかも改造済み。