転生先が平賀さんな件   作:スティレット

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 初心に帰るために自身の文章を読み直していました。毎日更新しなきゃという使命感に囚われていたのか、最近の文章は起伏が少なく思いました。最初のは最初ので粗が多いのですけれども。


たまには俺だってハメを外したい

 トリスタニアに滞在してから早幾日か、学院では訓練や研究、製造を主にしていたが、こちらでは主に情報収集、各所への指示、相談の受付など、学院に篭っていては出来ないことをしていた。

 

 例えば、ロングビルのスキルニルの配置が完了したので彼女は晴れてマチルダとして過ごしてもらい、レコン・キスタへの破壊活動や情報収集、ついでに追加のスキルニルを頼んだ。ワルドは火竜山脈をはじめとした風石の分布、そして「サハラ」まで赴き、その埋蔵量の差を調べていたようだ。予定より時間がかかったので長女のエレオノールには今から接触するという。暇な時は腹話術による別個の詠唱、地下水によるサポートをヒントにドットをそれぞれ独立して同時に発動させようと試みた。結果、一つづつ別々の属性なら同時行使が可能と言ったところか。

 

 ルイズはさらに接客に磨きをかけ、その多面性を大いに発揮し、客から色々なものを搾取する。金が無い客はどうにか関心を引こうとあちらこちらから話題を仕入れて来ているらしい。おかげで情報収集がはかどるはかどる。

 

 そうしてお互い慣れて来た頃に、キュルケ、タバサ、ギーシュ、モンモランシーの四人が魅惑の妖精亭に来た。

 

「すいません、ミ・マドモアゼル、あの方達は俺の知り合いなんで任せてもらっても良いですか?」

 

「それならお願いするわ。ルイズちゃんと一緒にお願いね」

 

「はい」

 

 流石にこれはルイズも想定の範囲外だったのだろう。お盆で顔を隠していた。

 

「やあ、奇遇だね。今日はどうしたんだ?」

 

 自然な風を装い話しかける。ルイズにはいつもの調子で視線で「後は任せろ」の意味を送り、会話を引き継いだ。

 

「あ、ダーリンも居たのね。ギーシュが面白いところを見つけたって言うから皆で来たの」

 

「そうだったんだ。ああ、そうそう、急に居なくなってごめん。ちょっと上からお使い頼まれてさ。それで今ここに居るって訳なんだよ」

 

「そういうことだったのね。あたしも寂しかったけど、ダーリンの贈り物を見て我慢してたわ。自慢したかったけど、「二人だけの秘密」だものね。それにタバサも時々おしゃれなソードブレイカーを見てたわ。タバサ?」

 

 タバサは俺の横に移動し、杖を握ってない手で俺の手をぎゅっと握った。

 

「兄さん、急に居なくなったから心配した」

 

「ごめんな」

 

 お詫びに心を込めて撫でる。

 

「お兄様、二人だけの秘密ってどういうこと?」

 

 ルイズが嫉妬しているな。フォロー入れなきゃ。

 

「あれが世に広まると埋火のように死者がたくさん出るんだ。だからキュルケには秘密にしてもらった」

 

「そ、そうだったの。それじゃ仕方が無いわね」

 

 ここでは義理の兄妹って言う設定だからね。いつものように呼び捨てだとダメだってことで一応の偽装である。

 

「キュルケたちは俺でもいいって言うならお相手するよ。ギーシュ、マリコルヌの調子はどうだ?変わらず続けているか?」

 

 奴には運動、その後の疲労状態での魔法行使、食事制限を課してある。最後のは腹いっぱい食べても良いけど、パン、イモなど炭水化物は朝食のみにし、その分豆や鶏肉、サラダを多めに食べるよう言ってある。まずは痩せないとね。

 

「ああ、相変わらずの笑顔で続けているよ。おかげで近寄りがたいけどね。それとなんか少し顔が引き締まってきたかな。朝しかパンに手を付けてなかったけど、それと関係があるのかい?」

 

「まあ、そんなところだ。その調子だと1ヶ月あれば体型変わるかな。分かった、ありがとう。余計なお世話だと思うが、ここで女の子を目で追うのは程々にしとけよ?隣のミス・モンモランシに焼餅焼いてもらうために来たわけでは無いだろ?」

 

「そ、そうだね。肝に銘じておくよ」

 

 トライアングルに上がってからギーシュも人気が出てきた。元々ルックスも良いほうだし、トライアングルはクラスだけで言えばコルベール先生やフーケと同格だ。経験がまだ足りないけど、20メイルクラスの「青銅」ベースのゴーレムを作ってもまだ余裕がある。ガン○ムクラスの大きさだ。簡易ゴーレムやあのフラジールのおかげでゴーレムにあるまじき敏捷性もあるし。

 

「なら注文を取るよ。お勧めはタルブで新しく出来たワインかな。俺も作るのに協力したんだ。それをゆっくり楽しみながら話そう。そこそこ稼いでるから今日は俺のおごりだ」

 

「きゃあ!ダーリンったら太っ腹!」

 

 こうして主導権を握りながら会話を進めないと、メニューの端から端までって言う暴挙に出るからな。

 

 

 

 そんなこんなで友達相手に接待プレイをしながらおしゃべるしてると、ほろ酔いのキュルケがしなだれかかってキスしようとしてきたり、その度に意外なことにタバサが料理を平らげ次を催促した。ルイズは任務中なので接客モードだ。タバサは妹として見てるけど、いや、まさかね。

 

 疑惑と戦いながら主に二人の相手をし、時には頭や頬を撫でてなだめていると、マントを羽織り、羽根付き帽を被り、軍杖を腰に下げた一団が店に入ってきた。

 

 軍属か。しかしお店の子が気に入らないらしい。これだから気位ばかり高くて実力の伴わない貴族は。

 

 内心辟易してると、キュルケを見てこちらをロックオンしたらしい。声をかけてきた。

 

「我々はナヴァール連隊所属の仕官です。見目麗しき貴女を我々の食卓へ案内したいのですが」

 

「失礼、わたくしは友人達と楽しい時を過ごしているので」

 

 そちらを見ずにキュルケはバッサリだ。

 

「そこをなんとか、いずれは死地へと赴く我等、一時の幸福を分けては下さるまいか?」

 

 それでもめげない。

 

 キュルケは手を振って拒否した。にべも無い。

 

 振られた相手は仲間に「お前はもてない」などと囃し立てられ、憤慨している。

 

「あの訛り、きっとゲルマニアの女だ。あれでは本当に貴族かどうかもあやしいものだ」

 

「身持ちの固いゲルマニアの女なんて珍しい!」

 

「おそらく新教徒なのだろうよ!」

 

 便乗して俺の友達に好き勝手言ってくれる。下っ端風情が、ナメた態度取りやがって。

 

「ちょっと黙らせてくる」

 

 相手は数だけは多い。むしろ一対多数は同士討ち狙いが得意なので俺の分野だ。

 

「ダーリン・・・・・・!うれしいけど、ダーリンだけに任せておくのもゲルマニアの女の品を問われるわ」

 

 キュルケは俺の肩を引き、下っ端たちへと近寄った。

 

「おや、我々のお相手をしてくれる気になったのかね?」

 

「ええ、ですが、こちらでね」

 

 杖を示し挑発するキュルケ。

 

 ドッと爆笑する下っ端共。

 

「およしなさいお嬢さん、我々は貴族だ。女子供に抜く杖は持たぬ」

 

 散々悪口言うのはいいのか。

 

「ゲルマニアの女が怖いの?」

 

「まさか!」

 

「なら、抜けるようにして差し上げますわ」

 

 キュルケは人数分のファイヤーボールを詠唱し、帽子の羽根飾りを吹き飛ばした。女の子にも悪口を言っていたのが気に入らなかったのか、店内から歓声があがる。

 

「お嬢さん、冗談にしては過ぎますぞ」

 

 下っ端が一斉に立ち上がる。どうも笑われたのが気に喰わなかったようだ。

 

「あら?わたくしいつでも本気でしてよ?それとも、最初に誘ったのはそちらではなかったのかしら?」

 

「我々は酒に誘ったのだ。杖ではありません」

 

「侮辱されて酒も何もありませんわ。侮辱を焼き払うための杖なら付き合えますけど」

 

 店内の温度が下がる。

 

「お嬢さん、決闘禁止令をご存知か。我々は私闘を禁じられておる。しかし、外国人のお嬢さんには適用されない。合意の上でなら問題は無い。承知の上での言葉か?」

 

「トリステインの貴族って前口上が長いのね。わたくしの国だったらとっくの昔の勝負が付いてましてよ?」

 

「よかろう、では、この中から一人、選ぶがいい」

 

「ゲルマニアの女は好色ですの。だから、全員をお相手致しますわ」

 

 これにはあちらも笑えなかったらしい。一方ギーシュは面白い顔色をしている。お前トライアングルなんだからもう少し場慣れしろよ。

 

「我等は貴族であると同時に、軍人。かかる侮辱、挑戦は見過ごして置けません。女とて容赦はしませんぞ。参られい」

 

「お待ちを」

 

 半端に首を突っ込もうとして引っ込めるのもかっこ悪い。

 

「そう女女と言うのならば、平民が一人混じっても問題ありますまい?それにこちらのお嬢さんは私の友人でしてね。友人が侮辱されたとなっては黙ってはいられません」

 

「ふんっ、平民ごときが首を突っ込むとは命知らずめ。好きにしろ」

 

 いいだろう、今回地下水も無しでやってろう。

 

 タバサもキュルケに加担するらしい。立ち上がった。

 

「あなたはいいのよ。座ってて。それとも心配?」

 

「借りを返す」

 

「ラグドリアン湖の件?あたしが好きにやったことよ」

 

「違う、一個借り」

 

「ずいぶん昔の事を覚えているのね」

 

 タバサをキュルケが慈しむように撫でる。

 

 それに痺れを切らせたようにあちらから罵声が飛んでくる。

 

「どうした、怖気づいたか。今から酌でもするか?」

 

「酌で済めばよいのだがな!」

 

 ガハハと笑い合っている。下品な連中だ。

 

「ごめんあそばせ。この子がお相手致しますわ」

 

「まだ子供ではないか!」

 

「誤解なさらないで下さる?この子は「シュヴァリエ」の称号を持っていますのよ」

 

 その言葉にざわざわと「そんな馬鹿な」とか言っている。

 

「あなた方にシュヴァリエの称号を持っている方はいらっしゃる?居ないのならば相手に不足は無いはず」

 

「怖気づいたのは貴公らの方ではないのですか?」

 

 始まらなくて面倒なので便乗して挑発する。

 

「良くぞ吼えた、平民!後悔するなよ!表に出ろ!」

 

 ようやく始まるよ。終わらせたらキュルケたちと愚痴吐いてから寝たい。

 

 表に出た俺達へ、悠長にスペルを唱える下っ端共。ワルドの方がよっぽど早かったぞ。

 

 石畳を砕かんばかりに踏み出し、ガンダールヴ、身体強化術、風の魔術の加速など、とにかく速度を出す代物を併用し、一気に距離を詰める。

 

 驚愕して慌てる奴らにそのままとび蹴りを食らわす。

 

「南斗獄屠拳!」

 

 喰らった相手は吹き飛びつつも、四肢を切り裂かれている。これは拳の字が入っているように、手刀で切り裂く技でもあるのだ。

 

 とび蹴りを喰らったのに何故か切り裂かれている同僚を見て俺を平民メイジだと勘違いする下っ端共。

 

「フハハハ!」

 

 さらに追撃の手刀で疾走しながら杖を持つ手を撫で斬り、無力化していく。

 

 一方タバサは数人まとめてエアハンマーでふっ飛ばしていた。その威力に散り散りになって逃げていく。士気はガタガタに落ち、気絶する同僚を抱え逃げていく下っ端共。勝敗は決した。

 

「ありがとう、タバサ、ダーリン」

 

 キュルケはタバサと俺を普段のノリではなく、聖母のような微笑みを浮かべながら抱きしめた。

 

 

 

 余談だが、しばらくして下っ端共が一個中隊揃えて報復に来たので、俺と、ついでに修行も兼ねてギーシュで相手をした。俺は「キング」モードではなく「空飛ぶ不思議な病人」モードで、ギーシュはトライアングルなのだが、抽出ばかりしていて目覚めたのが「土」「土」「水」と言うのもあり、街中で大きなゴーレムを作ると迷惑なため、訓練中教えた対Gジェルを身にまとい、自身が5メイル程のゴーレムの内部で杖を握りブーストチャージのようなとび蹴りをしていた。




 ガンダールヴを得て、身体能力にさらに磨きがかかったので格ゲー再現に嵌っている才人君。特定の技を当て続けると、あらかじめ路地裏に配備してあるゴーレムの軍団での拘束や、おもむろに胡坐をかいて両手から主観では気持ちよくなる呪いを放ちます。

ギーシュからのコメント
「話が・・・・・・違うっすよ・・・・・・僕は、人形遣いだって・・・・・・」

 メイジでも精神力が切れたら肉弾戦できなきゃダメです。

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