転生先が平賀さんな件   作:スティレット

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 小説を書くときはね。こう、静かで、豊かで・・・・・・なんていうか、救われてなきゃいけないんだ。


さて、第一段階目前だけどどうしよう?

「ルイズ、シエスタ。戦時で危ないのに、何故ここに?」

 

 予定より早い。

 

「あの腐乱した丘を見て、潜むなら近くの森かなって思って来たのよ。万の軍が密集して死んでいるんだもの。ハエとカラスが酷くてうかつに近寄れなかったわ。臭いも酷いから街の人も埋葬出来ないみたいだし。それより、あのガーゴイル何よ!なんか別の虚無の使い魔を名乗る女の声と一緒に古代のガーゴイルが出てきたけど、乱戦になって叩き潰しちゃったわ」

 

「そりゃ敵が使ってたのはおそらくスキルニルって奴だよ。古代のガーゴイルって言ったらそれだろう。俺のガーゴイルは竜牙兵って言ってね。俺の国で学んだ使い魔みたいなものだ。ロサイスからサウスゴータで偵察させてたのもあいつ等で、とにかく頑丈なのが売りだ」

 

 いくら古代の達人のコピーとはいえ、完全に受け止めてからのカウンターまでは対処しきれなかったんだろう。もはや旧型の鎧は重層で人が着用出来る重さじゃないし。追加命令で隙間を狙われたら鎧に噛ませて動きを止めるようにも命令してある。斬鉄どころかダイヤモンドを「割る」のではなく「斬る」レベルじゃないと止められんよ。

 

「なんかあの竜牙兵?ってのが出てきてから女の声はすぐに聞こえなくなったんだけど」

 

「ああ、多分以前竜牙兵に腕を切り落とされた奴じゃないかな?アンドバリの指輪を使って反乱を引き起こさせた張本人だよ。推測と仕入れた情報でそいつも虚無の使い魔かクロムウェルに指輪の使い方を知らされている一人だと目星をつけていたからね。奇襲して指輪を取ったら竜牙兵を撤退させたのさ。ジュリオって神官が右手だっただろう?あいつが動物使い。そして頭脳、ミョズニトニルンはありていに言うとマジックアイテム使いだ。ルイズは俺と一緒に修羅場潜ってきてるからその辺信頼してるけど、シエスタは大丈夫だった?どこか怪我とかない?」

 

「ええ、大丈夫です。アルヴィーに刺されそうになったけど、お守りが守ってくれて。おまけに呪いが効いちゃったのか、うんともすんとも言わなくなっちゃって・・・・・・何故か持ち主の方が苦しんでたけど大丈夫なのかな?」

 

「ああ、大丈夫だよ。怪我が無くてよかった」

 

 あの呪いはそいつの記憶に干渉し、その罪の意識に比例した幻惑を見せる。一番酷いのは三角頭の鉄で出来たピラミッドを被った人の皮で出来た腰巻と一本の大鉈を持った人物に追い回される幻覚だ。攻撃が当たるし血も出るが怯まない。周りが鉄錆びた格子と金網の建物に閉じ込められた上で追われる。これは最初に攻撃を反射して発動した呪いで失神した他に眠るたびに酷くなっていく。ゴールドエクスペリエンス・レクイエムみたいな。起きてればそんなこと無いけど。

 

 

「シエスタは聞いた通りよ。それより才人が帰るまで姫殿下に王冠預けてるんだから。殿下はウェールズさまとアルビオン復興の際に私に戴冠式をするって。ま、まあ私はあんたが死ぬわけ無いって知ってたけどね!」

 

 あ、俺には分かる。これ二人きりになるとベクトルが180度変わる奴だ。人前だから強がる辺りまだまだ余裕ありそうだな。

 

「ああ、分かった。責任者と交渉してくるから、今日はここに泊めてもらえるよう取り計らうよ」

 

 もしかしたらギーシュによる俺の像が出来てるかもしれないけど恥ずかしいからやめて欲しい。

 

 

 

「才人のお友達?」

 

「ああ、ヴァリエールのお嬢ちゃんと給仕の娘か。ま、私は帰省中ってことにしておくからいいさ」

 

 小首をかしげて可愛らしく質問するテファとあっさりした答えのマチルダ。

 

「ああ、友達と言うか恋人だね。どういうわけか二人とも俺に惚れてるらしいんだけど。マチルダは平民になったときの決別としてロングビルと名乗ってたって事でいいか?」

 

「恋人・・・・・・」

 

「構わないよ。それとテファ。あんたにはまだ姉ちゃんは早いと思うんだ」

 

 分かります。「妹が欲しくば私を倒していけ」フラグですね。

 

 

 

「こっちがご存知の通りミス・ロングビル。今は帰省中なんだ。平民になった際、昔との決別としてその名前を使っているけど、ここに戻ったときだけはマチルダって名前に戻るらしいからそう呼んであげてくれ。それと、この娘がティファニア。マチルダさんが居ない間のまとめ役だ。ここは孤児院になっていてね。俺も出来る限りでは手伝っているんだけど、子供に振り回されっぱなしだよ。よかったら遊んでやってくれ」

 

 紹介も無難でいいだろ。

 

「ええ、分かったわ。私の名前はルイズよ。よろしく」

 

「シエスタと言います。メイドをしてましたので、お仕事の手伝いなら気軽に声をかけてくださいね」

 

「それと、重大な発表がある」

 

 声を低くしていかにも真剣な俺に対し、警戒感を露にするルイズとシエスタ。

 

「テファ、この娘達は大丈夫だから、帽子を取ってくれないか?」

 

「え、でも・・・・・・」

 

「大丈夫。きちんと説明する」

 

 テファはおずおずと帽子を取った。

 

『エルフ!?』

 

「正確にはハーフ、それも王弟の血を引いているからアルビオン王族の忘れ形見だ」

 

 衝撃の告白に目を白黒させる二人。

 

「おまけにこの娘は虚無の魔法が使える。忘却ってあっただろ?あれだよ」

 

『ええっ!?』

 

「そんなわけだけど、そういう色眼鏡を取ると子供の面倒を見てるとても心優しい娘なんだ。どうか怖がらないでやって欲しい」

 

 ルイズとシエスタは少しの間を置き――。

 

「分かったわ」

 

「分かりました」

 

 ほぼ同時に頷いた。

 

「ウェールズ殿下が居なくなったとき、場合によってはエルフの血が入っていようが神輿に担がれる危険があるし、この村でそっとしておいてやって欲しい。でも、同世代の友達が居ないからたまには遊びに来よう。今フェイスチェンジみたいな魔法がかかるイヤリングを作っているから、もし良かったらテファの方からも子供達を連れてトリステインに遊びに来るといい。街の歩き方は姉さんが知っていると思うよ」

 

「うん、ありがとう。サイト。外に出てみたいと思ったこともあったけど、私はそれだけだった。行動に移さなかった。サイトは私の手を引いてくれるのね。嬉しい・・・・・・」

 

「テファの為にそこまでしてくれるとはね。義理だけでここまでしてくれる奴は居ないよ。今まで散々なこと言って悪かった。(正直盗賊生活に疲れてたんだ。テファの親を殺した王様も死んだし、安定した金を貰いながら盗賊より安全な仕事してるほうが最近マシだって思えてね)」

 

 マチルダは後半俺だけに聞こえるよう小声で耳打ちしてきた。

 

「なら、アンリエッタ王女殿下に文を出しておく。何、私はシティオブサウスゴータに行っても問題ないからな。返事が戻り次第出発だ」

 

 今まで口を出さなかったアニエスがそう締めた。

 

 

 

 その夜、ルイズはシエスタに末っ子特有のわがままで一日独占権を獲得したらしい俺とベッドを共にしていた。シエスタはあれはあれでしょうがないわねって顔で可愛がっているから別にいいんだけど。

 

「あんたに眠らされたとき、一人で死にに行くんじゃないかってほんとは心配でしょうがなかったんだからね!無事なら知らせくらい出しなさいよ!」

 

「いや、俺は敵からしたら7万の軍勢を敗走させた死神だから。街に顔を出すわけには行かなかったし、この黒髪だと目立つだろう。一応飛ぶ使い魔も作れるんだけど、紙製だったりするから天候に弱いんだよ。ルイズの髪の毛でも貰っておけば持ち主の下へ届けれるもっと頑丈なのが作れたんだけど。とっさだったから」

 

「そういう事にしておいてあげるわ。でも、あの娘、何?アリエナイジャナイアノ胸!ヤッパリ胸ノ大キナ娘ノ方ガイイノ?」

 

 久々のヤンデレモードだ。

 

「あえて言おう。周りには恥ずかしいから秘密にしてたけど、俺の持論だ。胸に貴賎は無い!俺はルイズのそのさくらんぼみたいな胸も、シエスタのちょっと大きな胸も等しく好きだ。強いてあげるなら、歳が上がるに連れて垂れてくるらしいから、そこら辺は筋肉をつけるなり維持の努力を見せる女性が好きだ!」

 

「じゃあ、あのティファニアって娘とは何もないのね?」

 

「ああ、あっちは色々あって同世代、しかも男の友達を今まで作ったことが無いからちょっと誤解するような挙動を取るけどな。俺は友達だと思っている。ま、ツンツンして無い分モンモランシーとは違った対応になっているけど」

 

「ならいいけど・・・・・・でも不安なの。この一月胸が張り裂けそうだったんだから。サイトが補修して?」

 

「ああ、まかせろ」

 

 俺はルイズの口をふさぎ(どこでとは言わんが)もうダメと言うまで補修してやった。

 

 

 

「よう、相棒、太陽が黄色く見えねえか?」

 

「ずいぶんと遅い起床だな」

 

 デルフとアニエスがニヤニヤしながら声をかけてくる。

 

「ああ、恋人ならこれくらい当たり前だろ」

 

 精神年齢はいい歳した大人なんだ。これくらいの下ネタ平然と返せずどうする。

 

「もっと初心な反応を期待してたんだがな・・・・・・」

 

「今更だぜ姉ちゃん。相棒見た目の割りに達観してるからよ」

 

 こいつらいつの間に仲良くなったんだ。地下水は俺とルイズのやり取りを戸棚の上で聞いてたからもはや何も言わない。口があったら砂糖でも吐いてるだろう。

 

「俺に味覚はないはずなんだけどな・・・・・・」

 

 おや、まだ余裕があるじゃないか。

 

 一方テファは赤い顔をしている。扉の外でこそこそする気配があったが、さては覗いてたな?

 

「お、おはようサイト。恋人はみんなあんなに激しいことするの?」

 

「あれは上級者向けだ。恋人になりたてはもっと、こう、ふんわりしている」

 

「じょ、上級者向け・・・・・・」

 

 顔が真っ赤だな。あんまりからかうとマチルダにどやされるからそっとしておこう。

 

 シエスタはルイズとなにかごにょごにょしている。その度に対抗心を燃やした目をしつつも、ルイズの方は最後の方「一人じゃ無理」とか言ってたのを覚えてたのか燃え尽きた目をしながらシエスタと相談している。2人同時に可愛がるとか比較されるみたいで嫌じゃないかと配慮してたんだけど。

 

「手紙が戻ってくるまでまだ数日かかるだろう。それまでデルフとルイズでテファに虚無がどれだけ重要か教えてやってくれ。他は村の手伝いをしつつ自由行動かな」

 

 そうまとめ、今後どうするかと思いをはせた。




 呪いの内容の他には眠った後定時になるとサイレンと赤い雨が降る村になぜか居たり、現代風の町並みの中ゾンビやコートのスティンガーを持った縫い痕だらけの大男に追い回されます。

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