転生先が平賀さんな件   作:スティレット

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 朝早く執筆してたのですが、仕事の時間が迫っているのと、8千字超えそうだったので前後編に分けます。


電撃戦(前)

 結局子爵の拝命は断ったんだけど、それクラスの権限を押し付けられた。水精霊騎士隊(オンディーヌ)の復活も既に決定事項らしいので、7万の軍を壊滅させた功績を称え、顧問になって欲しいとのこと。なら副隊長はマリコルヌでもいいか。そろそろ引き締まっているだろう。それとルイズの戴冠式はアルビオン王政府を復興させると同時に発表するらしい。

 

「学院へ着いたぞ!」

 

「あんた唐突に何よ」

 

「相棒の言動を気にするだけ無駄だぜ」

 

「そうそう」

 

 失礼な。最近霧が薄いから言っただけなのに。

 

 楽しくおしゃべりしながら学院へ入ると、俺とルイズを見つけた顔見知りが俺の方を指差して他の連中を呼び寄せてる。シエスタは・・・・・・メイドだからね。おまけ扱いなのも仕方ないよ。

 

「サイト!生きていたんだね!」

 

 ギーシュを筆頭にもみくちゃにされる。そういうのは魅惑の妖精亭の女の子だけで十分だから。

 

「ほら、ここに集まっているのは君があの大軍を返り討ちにしたから生き延びれたんだ!感謝の為にみんな集まってきたんだよ!」

 

「サイト、今まで悪く言ってすまなかった!君のおかげでまたトリステインの土が踏めたんだ!」

 

「もうだめかと諦めてたけど君のおかげで船に無事乗り込めたよ。本当に助かった」

 

 まあ、感謝されて悪い気はしない。

 

「ちょうどいい。ここで発表することがあるんだ。なんでも水精霊騎士隊ってのをアンリエッタ王女殿下が復活させたいらしいんだけど、俺まだやることがあって叙勲を断ったんだよ」

 

『ええっ!?』

 

「まあ、それはそれとして、もう話は進んじゃってるらしいからギーシュ、お前隊長な」

 

「そんな、まだ心の準備が!」

 

「あとマリコルヌ。お、見違えたな。彫像のような筋肉をしていそうだよ。後はその坊ちゃんカールした前髪をオールバックにしてみるか。お勧めの整髪油やるよ。お前が副隊長。頑張れ」

 

「そんな無責任な!あ、でも副隊長になったらまだ見ぬ彼女に一歩近づく・・・・・・グフフ」

 

「後の隊員は追って連絡する。なんでも俺は英雄らしいから顧問頼まれてるからさ。そういうわけで解散」

 

 強引にまとめた。

 

 

 

 それからと言うもの、俺主導、ギーシュ曹長、マリコルヌ軍曹の下徹底的な基礎訓練が行われた。近衛と同等の隊と言うことで舞い上がっていた一堂もギーシュとマリコルヌ以外テンション駄々下がりで、不平を言う奴が出たが俺が魔法相手に素手で鎮圧したら文句を言う奴は居なくなった。

 

「ふふふーんふーんふふふーんふーんふーん」

 

『ふふふーんふーんふふふーんふーんふーん』

 

 ちょっとジャス○ックが怖いので歌詞をごまかしているが、実際はこのリズムで海兵隊のランニングソングを歌っている。ちなみに全員背負い袋に砂を入れての走りこみだ。

 

「よし、走りこみやめ!1分休憩の後白兵用の武器を持って格闘戦だ!」

 

 このメニューは毎回同じわけではなく、あえてパターンをずらす事によって予測させないようにしている。身体を温める意味でもストレッチからのランニングから入るのだが。俺は180度開脚が出来るよ。幼少期から欠かしてないからな。ただ、開きすぎると今度はコッカケが出来ないので戦闘時は蹴りだとローがメインだ。

 

 格闘戦は総出で作った金属製の得物に皮やそれを錬金したウレタンっぽい触感のものを巻いて行われる。人気なのは以前タバサにあげた十手だ。どうやら予想以上に注目を集めていたらしい。鋼鉄にクラッド加工クラスの厚みを持たせたチタンを被せて錬金し、酸化皮膜のあの綺麗な色を付けて飾り紐を結んでやればギーシュのようなタイプはとても喜んだ。一方コンバットナイフベースのソードブレイカーを好んだのは意外なことにマリコルヌなどだ。まあガチムチになってるから順当といえば順当か。こっちはステンレスでの無垢造り。焼きいれが剥げても錬金し直せば土のドットか火と水のドットが協力すれば出来ないことも無いと言ったところか。別にドット未満でも錬金自体は出来る奴も居るし。どっちにせよ共通するのはあくまで防御が主体で、近接戦はブレイドで事足りるといったところか。そういう意味ではギーシュに隊長として特別に野薔薇の杖をやった。これはグリップに滑り止めが付いているが、そこより先は棘が出ていて握るととても痛い。これにブレイドをかけるとかなりえぐいことになる。妖狐盗賊の薔薇鞭を参考に作ったので花弁は無い。

 

 格闘戦が終わったらいよいよ魔法戦だ。相手をするのは俺と7体のスティールゴーレム。極論を言うと俺は水銀から金が錬金出来る。鋼鉄の触媒があればこのゴーレムも問題なく作れるので手札の一枚として鋼鉄の棒手裏剣からクリエイト・ゴーレムで作り出す。対する相手も殺さない程度には本気だ。常に骨の何本かは折れるので、救護員のモンモランシーが最近ラインに上がった。

 

 考えないようにしていたのだが、コルベール先生は今居ない。キュルケがゲルマニアに死体を持って行ったそうだ。ならば、タバサに尋ねてみよう。

 

 ブートキャンプの日程が終了し、タバサを探しに行く。もちろんあいつらには授業を受けさせてからの放課後を利用してやっているので、こちらでは習慣が無いようだが、俗に言う部活動だ。良い成績を出すと俺が何かプレゼントするので士気も高い。

 

「タバサ」

 

 ちょっと前に帰ってきたと言う噂を聞いていたので、探したらあっさり見つかった。相変わらず本を読んでいる。

 

「・・・・・・兄さん」

 

「何か辛いことでもあったか?」

 

「うん、幼馴染が」

 

「そうか、おいで」

 

 タバサを膝の上に座らせおなかに手を回してもう一方の手で頭を撫でてやる。しばらくしてタバサが「はふぅ」とリラックスしたところで話を切り出した。

 

「コルベール先生が居ないってことは、キュルケとゲルマニアに?」

 

「そう」

 

「生きてる?」

 

「ええ、銃士隊の隊長に殺されかけたけど、兄さんのくれた水の秘薬で一命を取り留めた。後、あの爆弾のおかげで予想より死傷者が少なく済んだ。コルベール先生の元部下が熱で辺りを感知してたようだけど、音が聞こえなくなったせいであっけなく倒せた」

 

「それから?」

 

「その後、コルベール先生の勇気でこれまで見損なっていた雰囲気が払拭され、キュルケも少し悩んだようだったけど、結局兄さんを取るみたい。コルベール先生は恩師として、発明家としてツェルプストーの家がパトロンになるって連れて行った」

 

「そうか・・・・・・よかった」

 

 それからまたしばらくタバサを撫で続けた。

 

「それなら、お母さんの件はそのドサクサに紛れてキュルケの実家へ?」

 

「そう」

 

「了解した。でも、あのスキルニルはジョゼフのミョズニトニルンが直接見たらすぐにマジックアイテムだと看破されてしまうだろう。運がよかったら全てガーゴイル任せにするかもしれないが。そういうわけで電撃戦と行く」

 

「具体的にはどうするの?」

 

「ダイナミックエントリーってね」

 

 そこから具体案を出した。

 

「まず、俺を従者として正式な謁見を求める。タバサは騎士(シュバリエ)だろ?従者一人くらい居てもおかしくないだろう。そこで、タバサにはうれしくないお知らせだが、あいつは虚無の使い手だ。よって、そこを逆手に取る」

 

「どうやって?」

 

記録(リコード)と言う虚無の魔法があるのだが、それを王家ゆかりの品にかけてもらうんだ。ジョゼフ自身の手で。多分ミョズニトニルンが牽制して詠唱している間はこちらも手が出せないだろうし、いっそ傍観する。それでオルレアン公の当時の本音と向き合ってもらう算段だよ。そこから先はジョゼフとタバサの問題かな。まあ、上手く行くと思う」

 

「分かった。なら、こちらから城に入れるよう手配する。兄さんは平民の従者。職業柄武装させていると言う事で通す。決行はスレイプニィルの舞踏会の前。大抵ジョゼフとシェフィールドはこういった行事のどさくさに紛れて事を起こすのが理由」

 

「了解。俺は水精霊騎士隊の顧問と言う事で姫殿下の護衛に一度回らなくちゃいけないから、その間がいいかな」

 

「うん、お願い、兄さん。それと・・・・・・これが終わったら、妹じゃなくて、一人の女の子として見て欲しい」

 

 まさかのカミングアウト。

 

「なら、まず誠実を通すためにルイズとシエスタに相談するから、返事はその後でいいか?何、悪いようにはしないよ」

 

「うん・・・・・・でも、せめて今はこのままで」

 

 タバサは俺の背中に腕を回し、俺の胸にマーキングするように頬をこすりつけた。

 

 

 

 ルイズからの給料、タルブからの不労所得、そしてアンリエッタからの私財。これで俺の懐は大分潤っていた。今度竜牙兵を改造するための骨とかも買おう。

 

 そう思いながらアンリエッタの護衛を勤めている。本来俺の役柄ではないのだが、「7万殺しの英雄を一度でも拝見したい民の為に」とマザリーニ枢機卿に頭を下げられたのでここに居るのだ。よって、唯一俺だけ隊の中でマントを着けていない。コート姿である。

 

 当然護衛の中に平民が混じっているのでどよめきがあるが、そこに上手くフォローが入った。

 

「あの子サイト君じゃない!あの子が7万の軍を返り討ちにしたから私達は無事アルビオンから逃げ切れたのよ!」

 

 野太いオネエの声がする。おそらくスカロン氏だろう。

 

 俺はそれに呼応するかのようにデルフリンガーを抜いた。

 

「デルフ、何か気の効いた言葉を頼む」

 

「ったくしょうがねえなあ」

 

 とは言ってるものの、言葉の端が弾んでいる。

 

「この俺魔剣デルフリンガー様の使い手が7万殺しの英雄サイト・ヒラガだ!そして、その腰に下げられているのが俺と同じインテリジェンスソードの地下水!俺様達であの軍勢を壊滅させたのよ!」

 

 その言葉にどよめきが声援に変わる。珍しいインテリジェンスソードを二振りも持っている平民なんてそうは居ないだろうと言う説得力もあるのかな?

 

「サイト、姫様が呼んでいる」

 

 ギーシュに促され、アンリエッタの馬車に近づく。途中止まったので俺も馬を止め、降りる。扉が開かれマザリーニ枢機卿がアンリエッタの手を引き馬車を降りてきたので、一応アンリエッタの前にひざまずく。すると、手の甲を差し出してきた。キスしろってことか。

 

 その要求に答え手の甲に唇を落とすと、さらに歓声が大きくなった。すると、辺りからタルブの竜殺し万歳!7万殺しの英雄万歳!と聞こえてくる。いかん、いままで考えないようにしてたんだが、防壁を増やさなければ。せめて先生に会うまでは、もしくは一人になれる時間を作れるまでは涙を流すわけにも吐くわけにもいかない。殺しすぎたんだ。正直疲れていた。

 

 暗示をかけなおし、平静を保ち護衛の続きをする。この後無事任務を終えた。




 とうとうタバサの妹から恋人フラグた立ちました。彼女のほっぺはお餅のようにぷにぷにしているという。

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