転生先が平賀さんな件   作:スティレット

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 初の他者視点。気分転換にいいかな?と書いてみました。


番外編 8話

 私は竜である。名前はミカン。覚えていないが、卵の頃から私がとーちゃんと呼ぶマスターと一緒に居たらしい。

 

 私の朝は日によってマチマチである。疲れている日はよく眠り、元気な日は早く起きる。その点シルフィード姉様も悠々とした生活をしているとか。呼ばれたときだけ仕事をすれば良いと聞いた。

 

 そんな私がどうやって一日生活しているか、綴ってみよう。

 

「ミカンー、ご飯に行くわよー」

 

 二度寝しようとウトウトしてたところをルイズと言うマスターの次に偉い人に起こされる。マスターは服を着ている最中だ。なんでニンゲンは寝る前は服を脱ぐのに起きたら着るのだろう?

 

「きゅいー」

 

 一声返事をし、喉が渇いたので皿を叩く。

 

「あら、お水が欲しいのね。ちょっと待ってて」

 

 そう言って指の先から水を出すルイズ。私も真似しようとしているのだが、なかなか上手くいかない。

 

「はい、お水よ」

 

「きゅー」

 

 一度頭を下げてルイズを見上げた後、待つ。頭を下げて上げるのは「オレイ」と言われるものらしいが、まだよく分からない。

 

「よし」

 

 許可が下りたので水を飲む。本当はもっと冷たい水が飲みたいけど、あんまり冷たい水を飲むとおなかが痛くなるので我慢だ。

 

「きゅー」

 

 飲みきったのでルイズを見上げて合図をする。

 

「よしよし、喉が渇いてたようね。今日は私達と一緒に食べましょうね」

 

 そう言われ、抱き上げられる。私は腕を伝い、ルイズの肩に留まる。

 

「才人ー、準備出来た?」

 

「ああ、ミカンも起きたか。なら行こう」

 

「きゅ」

 

「よーしよし」

 

 頭を撫でられる。ごつごつしているが、ほのかに温かいマスターの手が好きだ。

 

「ミカンと食べるとなると、外のテラスでいいか?」

 

「ええ、そうしましょ」

 

 よく分からないが、あのたくさんニンゲンが押し込められている建物より外の方が私は好きだ。

 

「なら決まりだな。そろそろシエスタも来るだろう。となるといつもの面子だな」

 

 とにかくおなかが空いた。ご飯が食べたい。

 

 

 

「ミカンちゃーん、今日も元気ですかー?」

 

 シエスタというニンゲンが私の喉を撫でる。くすぐったい。

 

「きゅー」

 

「そうですかー。今日も可愛いですねー」

 

 シエスタはルイズの次に偉いみたいだけど、マスターの次に偉いのがいっぱい居るからとにかく私はその下になるらしい。私はまだ数が数えられないからいっぱいはいっぱいだ。

 

「それではお食事をお持ちしますね」

 

「シエスタ、俺も手伝うよ」

 

「ありがとうございます、才人さん」

 

 シエスタはいつも頑張り屋なのでマスターもよく手伝う。ルイズも一度手伝おうとしたけど、キゾクガウンヌンとか言う問題で出来なかったらしい。ニンゲンは大変だ。

 

「才人たちがご飯の用意してる間こっちで遊びましょうね」

 

 ルイズが魔性の道具を取り出す。

 

「ほれほれ」

 

「きゅ、きゅ」

 

 一度しっかり捕まえてもするりと抜ける。それをまた目の前でフリフリとされるとどうしても捕まえたくなる。シルフィード姉様は「そ、そんなものに釣られないのね!」とか言ってたけど私には抗えない。悔しいが捕まえないと気がすまない。

 

「ルイズ、替わってよ」

 

「もう、しょうがないわね」

 

 あの道具が今度はキュルケと言うニンゲンに渡される。このニンゲンはルイズより激しいから捕まえるのも難しい。

 

「捕まえて御覧なさい。出来たら甘いのあげるわよ」

 

 甘いの!

 

 私は翼も使って全力であの道具を捕まえに行った。

 

「ほらほら、もうちょっとよ」

 

 上へ、下へ、縦横無尽に動き回る道具を追って翼をはためかせる。

 

「あら、捕まっちゃったわね」

 

 頑張って捕まえたが、疲れた。でも甘いのがもらえる。

 

「ご飯の前だから1つだけよ」

 

 これはビスケットとか言う甘いのだ。クッキーも好きだけどこれも好きだ。

 

 私が座り込んで前足でビスケットを掴み、カリカリと齧っているとゆらゆらしている尻尾をいじられる。

 

「きゅっ」

 

 その手をべしんとはたき、再び食べる。私は食事を邪魔されるのが嫌いなんだ。

 

「あんっ」

 

「ほらキュルケ、ちい姉さまも言ってたわ。動物はご飯を食べてるとき邪魔されると不機嫌になるって」

 

「可愛かったからつい」

 

 私は生まれた頃より身体も大きくなった。流石にシルフィード姉様くらいとは行かないけど、それでも大きくなっている、はず。まだ竜としての威厳が足りないのだろうか。

 

 おなかが空いたときにちょっとだけ甘いのを食べたせいか、もっとおなかが空いてきた。

 

「みなさん、お待たせしました」

 

「ちゃんとミカンの分もあるからな」

 

 ごはん!

 

「きゅー、きゅいー!」

 

「ちょっと待て、待てだ。ミカン」

 

「ひょっとして何かあげました?」

 

「ビスケットを一枚」

 

「もう、お菓子をあげるのはご飯の後にしてくださいって言ったでしょう」

 

 この後マスターに「待て」をされるのはかなり辛かった。

 

 

 

 ご飯を食べ終え、私はシルフィード姉様を探してふらふら飛んでいた。

 

「ミカン、ダメなのね!お前はまだ小さいから食べられちゃうのね!」

 

 探していたらシルフィード姉様が見つかった。さすが私だ。

 

「おねーさま。まほーのつかいかたをおしえて」

 

「またなのね?お前は韻竜じゃないから無理だって言ってるのね」

 

「ますたーのまじゅつとあわせるとつかえそう」

 

「しょうがないのね・・・・・・」

 

 マスターは私にルーンが浮き上がってから色々な事を教えてくれた。マスターの魔術もその一つだ。

 

 それから私はシルフィード姉様に色々な精霊魔法と言うものを教えてもらっている。なんとなく出来そうで出来ないのがもどかしい。

 

「おねーさま、なんかやりかたかえればできそう」

 

「ならやってみろなのね」

 

 マスターはシルフィード姉様みたいに何か唱えてたりしなかった。でも周りに「これから使う」と宣言したほうが良いかもしれない。

 

「クルルルゥァァァ」

 

 私の中の何かを咆哮に乗せて、一気に解き放つ。すると口の前になんか出た。

 

「人間が使う魔法陣なのね!?でもなんか違うのね!」

 

「クァアアア!」

 

 そのまま空に向けその何かを放った。あ、雲に穴が空いた気がする。

 

「凄まじいのね・・・・・・」

 

「ふしゅー」

 

 よくわからないけどなんかできた。

 

「おねーさま、なんかできたー」

 

「おー、凄いのね。でもシルフィードは今ので疲れたのね・・・・・・」

 

「おねーさま、いまのでつかれた。つれてってー」

 

「はいはいなのね」

 

 その後送ってもらう途中、「あれは危ないから無闇に使わないことなのね」って言われた。せっかくマスターに褒めてもらおうと思ったのに。

 

 

 

 その後シルフィード姉様と湖で魚を食べて、学院に帰ったらシエスタが居たので甘いものを分けてもらった。疲れたせいか食べたら眠くなったけど、気がついたらマスターの部屋に居た。シエスタが運んでくれたのかな?

 

「あ、ミカンちゃん起きたんですか?」

 

「きゅー」

 

「えいっ」

 

 こてんと倒されておなかを撫でられる。

 

「おなかはぷにぷにしてて柔らかいですねー。ミカンちゃん」

 

「きゅぅ」

 

 くすぐったいからやめて欲しい。

 

「もう、可愛いなあ。たーべちゃうぞー」

 

「きゅー!?」

 

 食べないでー。

 

「あはは、嘘です。でも、それくらい可愛いです」

 

「きゅ」

 

「そろそろ食事の時間ですよ。才人さん達と合流しましょう」

 

「きゅいー」

 

 起きたらまたおなかが空いてきた。どうしてこんなにおなかが空くんだろう。

 

「はい、だっこしますよ。おいで、ミカンちゃん」

 

「きゅい」

 

 私はシエスタに連れられてマスターの元に向かった。

 

 

 

『とーちゃ、きょう、シルねえさまとあそんだ』

 

「そかー。迷惑かけなかったか?」

 

『あたらしいまほうおしえてもらった。でもあぶないからつかうなっていわれた』

 

「なら、危なく無さそうなところで見せてもらうか」

 

 マスターは今夜は一人らしく、遠慮なく話をしている。

 

『わかった。さいしょはそらにむける』

 

「そんなに危ないのか?」

 

『くもにあながあいたきがする』

 

「そこまでか・・・・・・ま、気にしてもしょうがない。今度見せてもらうよ」

 

『うん!』

 

 でも、これはルーンの効果で頭が良くなっているから分かるらしい。なら、ルーンが消えたらどうなるんだろう。

 

 マスターは強いからそんなことにはならないか。そう思い、今日も一日疲れたと眠った。




 最近この才人君を別の作品に送ってみたいと思ってます。そうなるとこっちは一度終わらせるか休止なのですが、どう思いますか?

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