にしても……これでいいのか、色んな意味で。
……私は呪われているのだろうか?
私の家族は怪物の類いなのだろうか?
私も両親も…人は好きだった。
父はそうだが、母は普通の人だった…父は母を愛し、母は父を愛し、両親は私を愛してくれた。
しかし……あの日、近所の住人と政治員が両親を………。
その日の夜……占守島分駐所 叢雲の部屋
「…………眠れない…」
昼間に爆睡した事か、或いは夕飯が美味しかった事か、はたまた提督とお喋りした事か……何が理由かは解らないが、叢雲は眠れなかった。
ベッドに入り、枕に頭を置いても目が覚めていて、眠れそうになかった。
「はぁ……2日目に寝坊なんて出来ないのに」
そう呟き、叢雲はベッドから出て部屋の外に出る。
とりあえず、眠気を出そうと分駐所内をブラブラと歩く事にした。
その時……
「うぁ…嫌ァァァァァァ!!」
「えっ…提督!?」
つい数十分前まで話していた提督の叫び声が聞こえた。
叢雲は慌てて声のした方向…提督寝室に向かって走る。
(深海棲艦が来たとは考えられない…なら、何処かの国の特殊部隊が提督か私を狙ってきた?)
そんな事を考えながら、寝室前に到着するとドアを蹴り開けた。
「ちょっと、提督! 大丈夫!?」
そう叫んだ次の瞬間、目の前へ何かが飛んで来た…と認識した瞬間、廊下の床に背中を打ち付けられた。
「ガハッ! ちょ、なに…って、提督!?」
衝撃で咳き込み、直ぐに状況を把握しようと顔を上げると、目の前にマリアが自分の上にいた。
ただ……マリアの目が普段の青から赤に変わっていた。
しかも、艦娘である叢雲が振り払え無い程の力で押さえ付けている。
「(どうなってるのよ!? さっきまでの提督とまるで別人みたいに違うじゃない!?)て、提督! 私よ! 叢雲よ!!」
首に手を掛けようとしたマリアの手が止まる。
そして、目の色が赤から元の青に変わった。
「……叢雲…? あれ…私って……」
そう言ってマリアは糸が切れた人形の様に叢雲の上に倒れた。
「はあ…よかったはよかったけど…喜んでいいのかどうか…」
気を失ってしまったマリアを見て叢雲は呟いた。
暫くして………提督寝室
「うぅぅ……あっ、ここは…」
「気が付いた、提督?」
あの後、とりあえずマリアをベッドに戻し、側に居た叢雲。
「……眠らなかったの?」
「提督があんな事になったら、秘書艦が暢気に寝てれる訳が無いでしょう」
叢雲の言葉を聞いてマリアはショボーンとなる。
そして、叢雲は話を切り出した。
「ところで提督……艦娘の私が言うのもなんだけど…提督って人間なの?」
いくら虚を突かれ、優位な位置に居たとは言え、16歳の少女が艦娘を簡単に抑えるか……答えは否だ。
「…………」
「……あのね、黙って済む問題じゃあないのよ! これから一緒に戦うパートナーとしての問題でもあるのよ!? そこをスッキリさせないと何も出来ないでしょう!!」
黙るマリアに叢雲がそう言って迫る。
「……私がこの分駐所を選んだのは人が少なくて、接触が余り無いから…」
「それがどうした…」
その後の言葉が続かなかったのは……マリアが叢雲の首筋を噛んだからだ。
「ま、まさか…提督って…吸血鬼…ヴァンパイア!!」
肌越しに解る歯の形から叢雲は思わず叫ぶ。
「……これでわかったでしょう。私が人と余り関わりたくない理由が」
首筋から口を離したマリアが言った。
2本の牙の跡が少し残る首筋を叢雲は擦る。
「大丈夫、本気だったら、叢雲の首筋は血塗れよ」
「そ、そうね…じゃなくて! ヴァンパイアと言うことは…て、提督って…実は何歳なの!?」
「ふふふ…見た目16歳、本当は…96歳よ」
「……………」
自分の提督がヴァンパイアで実年齢が96歳と聞いて唖然とする叢雲。
するとマリアが擦り寄ってきた。
「でもね…ヴァンパイアって大変なのよ? 特に歳をとらないって言うのは地獄に等しいの…だから、人肌が恋しくなるの」
「へっ…って、ちょ、まっ…提督!?」
油断していた叢雲を押し倒し、身体の上に覆い被さるマリア。
「それにね…私は女の子が大好物なの」
そう言ってマリアは叢雲の唇にキスをした。
翌日昼頃………提督寝室
時計の針が12を指した頃、叢雲は目が醒めた。
気だるい身体を起こし……自分の姿を見て、昨夜の事を思い出し、顔を真っ赤にする。
「おはよう、叢雲」
マリアの声に叢雲が振り向くと薄い寝間着を着て、両手にコーヒーを煎れたマリアが居た。
「お、おはよう…提督…」
「あら、夜の事でも思い出したの? 普段の強気な姿とは反対だったわ。綺麗な身体と声だったわね」
ボン、と音が出る位に顔を真っ赤にする叢雲。
しかし、直ぐにあの事を思い出した。
「提督…ううん、マリア。貴女も大丈夫なの? 家族…両親は80年前に…」
昨夜語ってくれたマリアの身の上話。
両親はロシアに居た時、政治委員の煽動を受けた付近住民によって惨殺された事を……。
「……いいのよ。確かに夢に見る事もある。でも、過去は変えれないわ……それを差し引いても…」
そう言ってマリアは叢雲の耳元に迫る。
「貴女に出会えた事、そして、これから出会う貴女達に出会う事を嬉しく思うわ」
「………もう、調子狂うわ」
真っ赤にしながら叢雲が呟いた。
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