着任3日目 占守島分駐所
「それで、これからどうするの、提督?」
執務室の執務机に座るマリアと執務机前に立つ叢雲。
本当なら昨日、この会話が交わされる筈だったのだが……結局、昨日は1日中、ベットの上でイチャイチャしていた。
「そうね……その前にこの分駐所の方針を言っておくわ」
「あぁ、そうね。方針があるなら、聞いておかないとね」
「まず、占守島分駐所は少数精鋭よ。この北方の海は気象に左右されるし、資源数量もかなり限られる。でも、深海棲艦の北方拠点がある以上、ここの重要性は高い。まあ、迎撃には大湊・単冠湾も来るから大丈夫でしょうね」
「少数精鋭ね…他には?」
「これは当たり前だけど…死なない事。これだけは絶対に守ってほしいわ」
「それはイチャイチャしたいから? それとも人肌が恋しいから?」
「さて、どっちでしょうね?」
ニコリと微笑むマリア。
それを見て叢雲は呆れる。
「……まあ、いいわ。方針に関しては了解したわ」
「お願いよ。さて、建造ね、建造。今度は誰が来るのかな〜」
「とにかく、行きましょう」
工厰に行った2人は挨拶が遅れた事を工厰長妖精に詫びを入れる。
「ソレデハ提督、資源量ハ幾ラデスカ?」
「うーんとね…オール70でお願いします」
「オール70? 余り聞かないレシピ数値ね」
「あら、『ラッキー7』って言うなら、その10倍は70よ?」
「つまり、適当なのね」
マリアの回答に呆れる叢雲。
しかし、始まったものは止めようも無く、妖精達はオール70のレシピを放り込む。
「デハデハ、建造シマ〜〜ス」
そう言って工厰長妖精が建造機械の始動レバーを下げる。
すると、建造機のタイマー始動し、建造時間が表示された。
「25分ね」
「25分デスネ」
「25分…陽炎型?」
「何でもいいよ。じゃあ、工厰長、ファイヤ〜」
「了解デス。ファイヤ!!」
そう言った瞬間、製造機の注入口に『高速建造材』と書かれた超高出力バーナーが装着され、轟音をたてて製造機内が焼かれる。
チン!
「終ワリマシタヨ!」
「……何時も思うけど、製造機って何物なの?」
電子レンジの出来上がり音と『建造完了』の表示に叢雲が呟いた。
そして、製造機の扉が開く。
「駆逐艦不知火です。御指導・御鞭撻、よろしくです」
「不知火だから…ぬいぬいでいいよね?」
「え、あ、はい、別に構いませんが…」
マリアのマイペースで呼び名を決められ、少し動揺する不知火。
それに叢雲は……
「ぬいぬいね…まあ、お似合いな呼び名ね」
「なにか不知火に落ち度でも?」
「いいえ…じゃあ、提督、不知火を連れて周辺海域を哨戒してくるわ」
「行ってらっしゃい。あっ、ぬいぬいと仲良くね!」
「わかってるわよ。さあ、行くわよ、不知火」
「はい、行きましょう」
暫くして………
「…………」
「…………」
互いに黙って哨戒を続ける2人。
しかも、不知火はジーと叢雲を睨んでいた。
「……あぁ、もう…わかった。さっきの事は謝るわ」
マリアに言われた事もあり、叢雲は降参とばかりに謝った。
「別に構いません。ですが、哨戒ルートが適当なのでは?」
不知火の指摘に叢雲が視線を逸らす。
「……鎮守府稼働何日目ですか?」
「今日で3日目よ」
「3日目…では、昨日は何をしていたのですか?」
「……答える必要があるの?」
「無論です」
……まさか、あの提督とベッドの上でイチャイチャしていました…なんて何も知らない不知火に言える訳がないし、叢雲もプライドが有るから言えない。
よって………
「仕方無いでしょう。提督の荷物を片付けてたんだから」
「それなら初日に済むでしょう」
「色々とあったのよ」
こう言ってお茶を濁した。
まあ……いずれ解る事でもあるし、いま言えば不知火が要らぬ事をしないともかぎらない。
そして、幸か不幸か何もおきること無く哨戒は終わった。
再び占守島分駐所内
「お帰りなさい。お昼なら出来てるわよ」
軍服の上から割烹着を着て、更にお玉を持ったマリアが2人を出迎えた。
「お昼は?」
「豚汁うどん、ご飯、肉まんよ」
「暖かい物ばかりですね」
「冷えた体には暖かい物が一番よ。特にこの北方の奥地ではね」
不知火の質問にそう言ってウィンクしながら答えるマリア。
「叢雲、あの提督は大丈夫でしょうか?」
「大丈夫よ。まあ、その内、貴女もわかるわ」
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