まあ、書いたおかげで仕事に取りかかれなかったけどね♪
「恋、だけじゃ駄目なのよ!愛に昇華してこそ、ホンモノの《恋愛》なの!」
俺の正面に座る見事なロリボディをした我らが生徒会長桜野くりむが何処かで聞いたことがある言葉を叫んでいた。
しかし、今日の言葉は何処かトゲがあった。というか杉崎に対してトゲがありまくっていた。
「ねー杉崎。恋は愛に昇華してこそホンモノの恋愛なんだよ」
「そっそうですね」
「そうだよねー」
「う……はっはい……」
「ねー」
「ぐっ……」
悔しそうに拳を握りしめ屈辱に身を震わす杉崎。まあ、普段好き勝手してる相手だけに言い負かされた時の屈辱か大きいのだろう。まあ、俺も会長には言い負かされたくはない。
「珍しいなー鍵。お前が会長さんに言い負かされるなんて」
ニシシと笑いながら落ち込む杉崎の肩を叩く椎名。
まあ今回は仕方ないとも言える。
「まあ、ハーレムなんて不誠実の塊みたいなもんだらからな」
「いや……不誠実かもしれないけど《愛》はちゃんとあるんだよ」
「じゃあなんで言い返さなかったんだ?」
「あのお子様会長にそれがわかるとは思えないんだよ」
「ああ、確かに」
「それになんだかんだ言っても正論だからなぁ。時折反論の余地がねぇんだよ」
「それは分かる。いやだよなー、正論って」
椎名が心底嫌そうな顔をしながら杉崎の言葉に賛成していた。どうやら椎名も正論は好きじゃないらしい。
「『悪いことはわかっているけど、そういう問題じゃないんだよ!』みたいのが多いだろ正論って。で、そういうのを振りかざしてふんぞり返るヤツがいるんだよ。……誰とは言わないが、誰とは」
そう言って杉崎は「杉崎を言い負かしてやったわ!」と満足そうに胸を張る会長を見ていた。
誰とは言わないが誰とは見てるんだな。
そんな杉崎と会長を観察していると、椎名妹も小声で会話に参加してきた。
「それ、真冬もわかります。真冬はゲームが好きなんですけど、よく親に『目悪くしてクリアして、それなんか意味あるの?』って。その通りなんですけど……その……」
「まあ、確かにわからなくもないな。言ってることが正しいのは分かるけど、別に誰かに迷惑をかけているわけじゃないから納得できないんだよな」
「そ、そうですそうです!」
俺もあったな、そんなこと。親や先生にもっとコミニケーションを取りなさいとか言われるたびに思ったからな、無理にする必要はねぇだろって。……あれ?これはなんか違うな。
「あー、あたしもあるな、それ。あたしは……信号つき横断歩道で車が来てないと赤のまま渡っちゃうけど……」
「わかる。確かに違反だけど、それを注意されてもなんだかなーってなるよな」
などど俺たちが正論あるあるをやっていると……。
「でも、駄目よね。ルール違反」
『うっ……』
と、紅葉先輩が一刀両断に切り裂いてきた。
まさに反論の余地のない正論に思わず黙り込んでしまう俺たち。
「ゲームは目が悪くなるから程々に」
「あぅ」
「横断歩道はちゃんと信号を確認して渡りましょう」
「うぅ」
「まあ私は暗い中でもゲームをするし、信号より自分の視力を信じるけど。ゲームでダメダメになったこの視力でねっ!」
『一番駄目じゃんっ!』
正論を振りかざしておきながら自分はそれを許す、一番嫌なタイプだった。まあ、紅葉先輩はそこまで視力は低くないから冗談だと思うが。
そんな風に一人勝利の余韻に浸っている会長を除く全員で話していると会長がホワイトボードに今日の議題を書いていた。
「《校内の風紀の乱れについて》ですか。また随分と定番な議題ですね」
「定番だからこそ私たちが真摯に取り組むべきテーマじゃない」
「う……」
今日の会長の発言は本当に正論かつ、杉崎に対して強かった。きっと杉崎の今日の運勢は最悪だったのだろう。星座占いから血液型占いまでビリっけつだったに違いない。ざまぁ♪
「お前って本当に俺のことがきらいだよなぁ!」
「あたりまえだろ」
「かつてないほどのスピードでの返答!!」
さて、杉なんとかという変態は置いといてだ。会長が言うように確かに風紀の乱れなどというものは生徒会の仕事に入らなくもないんだが……そこまで乱れていただろうか、この学校?
そう、首を傾げていると、同じように紅葉先輩も首を傾げながら尋ねる。
「この学校、そこまで風紀が乱れていたかしら?少なくとも、他校に比べたらかなりの優良校だと思うけど」
その通りだった。他の学校はあまりいい噂は聞かない。特に近隣校の音吹高校なんて暴走族の頭が通ってるとか、喧嘩三昧の日々を送ってるとか、碌な噂がない。もちろん、悪口なんかはすぐに拡散するし誇張や虚実が混じっているから他校に関してはなんとも言えないが、少なくともこの学校でそういった悪い噂は聞かない。
だからこそ、わざわざ議題にしてまで正すのような風紀の乱れなんてないと思う。あえてあげる点があるとしたらお菓子やらゲームやら漫画やら鞭やら拷問器具やらを持ち込んでるこの生徒会が一番乱れているような気がする。……ていうか最後のに関しては法律さえも無視している気がするんだが。
だが、そんな疑問は会長が顔を赤くしながら答えてくれた。
「みっ乱れているわよ!主に……その……せっ性がっ」
「性?」
「そっそうよっ。副会長のせいかもしれないけど、最近どうも……その、ナンパな光景を校内でよく見るようになったような気がするのよ」
「おいおい、生徒の悪い見本になるなよ副会長」
「待て、会長さんの言ってる副会長ってのは明らかにお前だよ」
「むしろ全生徒の中でもお前以外はいないだろ」
「でも、ナンパな光景って言いますけど、俺、そんなの見たことないですよ?」
『スルーかよっ!』
俺と椎名の言葉を無視して会議を進める悪い見本の副会長。後で覚えてろよ……。
「いいえ、最近は特によく見るようになった気がするのよっ!その……男女が……手繋いでいるところとか……」
「へ?手を繋ぐだけで性の乱れ?」
「それだけで、ですか?」
今回は俺も杉崎と同じ意見だった。そんなこと言ったらこの学校のカップルの殆どが風紀を乱していることになるんじゃ……。
しかし、会長は俺たちの疑問に対して断固として答えた。
「問題よ!二人っきりならまだしも、その、生徒がたくさんいる校内で手を繋ぐなんて……不謹慎よ!学び舎たる校舎をどう思ってるのよ!」
「はぁ……」
何処か納得のいかない杉崎。もちろん俺もだ。もしかしたら男性陣だけの価値観なのかもしれないと思い周りを見渡すもやはり、他のメンバーも納得したような顔をしていない。
その時、椎名が「はーい」と手をあげる。……この生徒会に挙手制なんてルールあったか?そんな疑問を持っていると会長が「はい、深夏」と指名する。そして、椎名が語る内容は衝撃的なものだった……!
「会長さんは知らないだろうけど、そんなことよりも大変なことをしてるのなんて、いっぱいいるぜ。放課後の校舎内を見てみなよ。ちょっと人気のない所にいけばキスは勿論、○○○○なんてしている光景、なんて結構な確率で目撃でーーー『なっ!?』
その話を聞いた時、俺、杉崎、会長の三人は驚きのあまり声を上げてしまう。特に俺はショックのあまり顔の血が引く感触がした。
「さっ笹鳴先輩!?顔色が一気に悪くなってますよ!?」
「大丈夫だ、問題ない」
「こんな時にEl○Shaddaiのネタを持ってきてる時点で大丈夫じゃないと思います」
「いや、本当に大丈夫だから安心してくれ椎名妹」
「そっそうですか?それなら安心ーーー」
「リア充どもへの怨念がこの身に溢れかえっているだけだからなっ」
「できないです〜〜!」
椎名妹との会話で幾らか落ち着いたがやはり、この胸に宿るリア充への憎悪が止まらない。
リア充どもめ、ただでさえ騒音被害(俺限定)を出しているのにそれに加えて校風を乱すなんて。許さん!たとえお天道様が許してもこの俺が許さん!
俺が怒りやら憎悪やら嘆きやらで肩を静かに震わす中、椎名はなんでもなさそーにこう続けた。
「ま、いいんじゃねーの。それで誰かの迷惑をかけてるわけじゃねーんだし、そりゃあそういう場面に出くわすとすげぇ気まずいけどさ。それこそ我慢できないほど愛し合っているってことだろ?」
「そうそう、そのうち会長だって俺に攻略されて校内でさえ俺を求めるように「「退学だ(よ)ーーーーーーー!」」
杉崎が何かカスみたいな発言をしていたような気がするが無視して俺と会長は叫ぶ。
いつもだったら会長の暴走とかを止める側に周る俺だが今回ばかりは会長の意見に賛成派だった。駆逐してやる。この世から1匹残らず。(震声)
「そ、そ、そんなことをしている人を見かけたら、今後は、全部退学!問答無用で退学!おっおかしいわよ!ここをどこだと思ってるの!」
「全くもってその通りだ。常日頃からリア充共の頭は何処か異常があると思っていたがここがどういった場所なのかも理解できてなかったとは」
「フラグを立てるための場「杉崎は黙っていて!プレステーション5がでるまで!」期間なげぇ!?」
「寧ろえむえ○っ!が完結するまで黙っててくれ」
「それ生涯喋れないだろ!?」
だからそう言ってるだろ。まあ、超遠回しにだけどな。
そんな中、流石に見かねたのか紅葉先輩が口を挟んできた。
「二人が言いたいことは分かるけど仕方ないわよ。性の乱れなんてここだけの話じゃないし、生徒会が動いて止められるものでもないわ」
「止めるんじゃないの!排除するの!」
「そうです。俺たちが行うのは廃止じゃありません。天誅です」
「そんなことしたら、キー君じゃないけど、かなりの生徒が消えちゃうわよ、この学校」
「仕方ないわよ」
「……アカちゃん。生徒の風紀を正すのも大事だけど、まず最初に生徒のことを考えるべきじゃないかしら。『生徒』の『会』の『長』なのよ」
「う……」
どうやら会長は紅葉先輩の言葉に屈してしまったらしい。しかし、俺は納得していない。
「ちょっと待ってください」
故に俺は紅葉先輩との論争に挑むことを決意したのだった。
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