転生提督・副官のマルタ島鎮守府戦記   作:休日ぐーたら暇人

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さてはて、どうなるか…。


113 濃霧の中で 2

その頃 クレタ島近海

 

 

 

「あちゃー、これ、完全に迷子だよね…」

 

濃霧が周囲に広がる中、皐月は苦笑いを浮かべながら呟いた。

ベテラン故に臨時編成水雷戦隊の殿を任されたのだが……こうなってしまった。

 

 

「うーん、憲兵さん曰く、濃霧中は方向感覚を失い易いから、下手に動かない方がいい、って言ってたよね」

 

以前に神通達とサバイバル講習を受けいた皐月は高塚達が言っていた事を思い出す。

実は皐月達は高品質のレーダーを装備していたのだが、濃霧の影響で乱反射する為か『ゴースト』が写り、役に立つ状況ではない。

 

 

「とりあえず燃料の節約もしないといけないし…お腹も空いたし…」

 

本来の予定であれば集結後に護衛と共に待機している速吸から給油・給食をしてから鎮守府に帰る予定だったので、弾薬には余裕があっても燃料に余裕は余り無かった。

そんなこんなを考えていた皐月は背後から迫る影など気付きもしなかった。

 

 

 

同じ頃 マルタ島鎮守府会議室

 

 

 

「イザと言う時に待機させていた高速支援部隊を速吸達・任務部隊と合流させよう」

 

滝崎の言葉に集まっていた面々は頷いた。

なお、高速支援部隊の陣容は比叡、霧島、翔鶴、瑞鶴、瑞鳳、秋雲の編成である。

 

 

「まあ、現地は未だ濃霧の真っ最中、予報もアテになるかは微妙だしな…長丁場は覚悟の上だ。念のため、明石に余裕があるなら臨時の補給隊を組織したいんだが…?」

 

 

「そうだな。色々と考えると補給隊も必要だしな…うむ、滝崎、お前の意見は採用だ。まあ、どうせ、既に大まかな指示は出しているのであろう?」

 

 

「あはは…うん、既に羽黒や明石に指示を出して、いま補給隊の準備と編成中」

 

 

「まったく…まあ、グズグズするより何倍もマシだ。

 

 

「それで、私達はどうすればいいの?」

 

レナータの質問に滝崎は首を横に振る。

 

 

「いや、今回は待機で…下手に動くには少し不味い。向こうも此方が攻勢時に艦船と共にやってくるのは承知済みだ。下手に動いて、刺激し過ぎるのもダメだしな」

 

 

「今更な気もするけど…まあ、仕方ないわね」

 

 

「でも、何かあったら大変だから、何時でも出れる様に準備しておくのは構わないでしょう?」

 

 

「それは構わん。備えはいくらあっても困る事はないからな」

 

カルメンとレベッカの言葉に松島宮が頷きながら言った。

 

 

「では、一度解散。状況が変化し次第、また、連絡する」

 

滝崎の締めで部屋に居た全員がぞろぞろと出ていく。

 

 

「で、見立ての方は?」

 

 

「天候次第かな。皐月を回収して、サッと引き上げるつもりだが…向こうは日が昇る時間だ。霧が晴れたら、視界良好で増加の巡回艦隊に捕捉され易くなる。しかも、燃料残量を考えれば皐月は機関を切ってる可能性がある。潮の流れがわからない以上、近付いてるか、離れていってるかのどっちかだ」

 

全員が出た後の松島宮の質問に滝崎は素直に答る。

 

 

「じゃあ、素早く皐月を見付けて、回収し、敵と遭遇した場合は交戦しつつ撤収…こんなところかな」

 

 

「巡回艦隊の戦力によるが…さて、どうなるやら」

 

高塚の言葉に滝崎は天候と敵部隊の動き次第な事に苦笑を浮かべた。

 

 

 

その頃 皐月はと言うと……

 

 

 

「それで、ワシントン、そっちは?」

 

 

「ダメね、姉さん。コッチのレーダーも役立たず」

 

皐月を挟む形で互いの艤装装備のレーダーの様子を見ていた姉妹…ノースカロライナとワシントン…は肝心のレーダーの使えなさに溜め息を吐く。

 

 

「視界が効かない以上、下手に動く訳にはいきませんね。はい、どうぞ、サツキちゃん」

 

 

「あ、えっと、どうも」

 

そして、そんな状況にも関わらず、マイペースで艤装のクーラーボックス(?)からハンバーガーを取り出して皐月に渡すウェイトレス姿の給油艦ネオ・ショー。

 

 

 

「地中海ってこんな濃霧がかかってたっけ?」

 

 

「さあ…でも、状況としてはソロモンより悪いわ。夜の闇より視界が効かないなんて」

 

 

「潜水艦や駆逐艦の襲撃なんて無しよ。あと、ビック・ナインとイセやヒュウガも」

 

 

「姉さん、私も色々あるからやめて…にしても、ショー、貴女はなんでそんなに余裕があるのかしら?」

 

呑気にクーラーボックスをガサゴソしているネオ・ショーにワシントンは訊く。

すると……

 

 

「大丈夫ですよ。だって、皐月ちゃんから『あの提督さんと副官さん』の匂いがしますから」

 

 

「え、ショーさんは松島宮少将や滝崎副官を知ってるの!?」

 

 

「あっ、やっぱり。だって、私、第二機動艦隊と東海岸攻撃に同行しましたから」

 

和かにネオ・ショーが話すと、ワシントンは不機嫌顔になる。

 

 

「チッ、にしても、我が祖国も落ちたものね。ハワイどころか東海岸を襲われるなんて、中々出来ない事よ」

 

 

「あの、その時のコース、御二方が通ったコースのほぼ逆順なんですが…」

 

 

「「………」」

 

ネオ・ショーの控え目な回答に微妙な表情になる2人。

そして、それをハンバーガーに齧り付きながら見上げる皐月。

(身長の関係で)

 

 

「……まあ、その話は霧が晴れて、日本海軍と合流してからにしましょう」

 

しばしの沈黙の後、ノースカロライナはそう言って話を打ち切った。

 

 

 

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