クレタ島近海(再集結・補給ポイント)
「それで、提督達からの指示は?」
「『濃霧が晴れてから捜索を行え。下手に動けば二次被害がおきる』との事です」
3隻と少ない不知火達の部隊は直ぐに速吸からの補給を受け、速吸達と共に来ていた高速支援部隊の霧島と話していた。
「妥当な判断ですね。時間と天候の経過次第と言うのを除けば」
「しゃーねえだろう、あの『優しい2人』の判断なんだからさ」
横で話を聞いていた摩耶が言うと不知火は若干不機嫌そうな表情(まあ、そんなに変わって無い)をする。
「わかっています。他には?」
「長丁場になる事を予想して臨時の補給隊、並びに各国艦隊が有事には直ぐに出せる様に準備しているそうよ」
「ふむ…まさか、いきなりクレタ島奪還作戦まで持ち込むとは…」
「それは無いわ。今の現状で短期間の制海権は掌握出来てもクレタ島制圧まで出来ない事を提督達、特に副官や憲兵さん達は充分にわかっているから」
確かに滝崎や高塚はクレタ島奪還にどれほどの地上戦力の投入が必要かの目算は立ていたが、それを投入する為の必要な物の計算も勿論たっていた。
そして、それから見ても、今回の様な突発的事態に対して短期間しか維持出来ない制海権では不可能と結論に達していた。
よって、今回はあくまでも『皐月を見付けて直ぐに撤収する』事だけに重きを置いていた。
「確かに副官さんと憲兵さんが『餓島』での失敗を繰り返す様な事をするとは思えませんね」
「と言うか、特に憲兵殿の方が嫌がるだろうな。なにせ、執務室に餓島関連の本が山の様に積まれて、更に色んなメモが机や壁に嫌になるほど貼ってあったしな」
「あはは…まあ、あの憲兵さんと副官のタッグなら大丈夫でしょう」
摩耶の言いように苦笑いを浮かべて肯定する鳥海。
実際、漫画を借りに来た摩耶が偶然帰ってきた高塚に確認し、第六駆逐隊をはじめとした駆逐艦が余りの変わり様に『憲兵さんの執務室がお化け屋敷になった!』と天龍や龍田の所にダッシュする程の状態である。
しかし、裏を返せばそれだけに『餓島の二の舞を避け様としている』との情熱の表れだと周りは解釈していた。
「はあ…憲兵殿の部屋の噂は聞いていましたが、摩耶さんをこれ程に言わせるとは…」
「なんか引っかかる言い方な様な…まあ、いいや、ところで、鳥海。憲兵殿ってここに来るまで何してたんだろう?」
「摩耶ちゃん、憲兵さんは憲兵で陸軍の将校よ?」
「それは知ってるよ。そうじゃあなくて、本土でどんな事をしてたかって話」
「やれやれ、摩耶さんの言葉足らずは致命的ですね」
「不知火、お前、喧嘩売ってる?」
「いえ、そんな気はありません。ですが、あそこまでやると言う事は仕事はキッチリとやっていたんでしょう。まあ、陸軍上層部が気にいるかは別として」
……この会話に反応したのかは分からないが、この時、高塚は連続してクシャミをしていた。
その頃 皐月達
「時間上、夜は明けてるわね…相変わらず、白い濃霧のままだけど」
腕時計を確認しながらノースカロライナが言った。
「とりあえず、マルタに着いたらハンバーガーね」
「ワシントンさん、それは偏食です。少しは考えて下さい」
「えっ、美味しいじゃん、ハンバーガー」
「ワシントン、ちゃんとバランスを考えて食事を摂りなさい」
「だから、速度が30ノットも出ないんではないかと」
「ショー、ちょっと後で話しましょう。落ち着いたらね」
こんな会話を完全に第三者で聞いている皐月にネオ・ショーは皐月の背後に抱き付いてから言った。
「ほら、サツキ。間違ってもああなってはダメよ」
「ショー、あんた、予定変更するわよ?」
「ワシントン、ショーの言ってる事に間違いは無いわよ」
そのやり取りにノースカロライナは額を抑えながら言った。
「姉さん、今は関係ないでしょう?」
「色々とあるのよ。『姉』って言う人種は」
「はいはい、どうせ私はヤンチャですよ〜」
こんな会話に多姉妹の皐月はついついクスリと笑ってしまう。
「楽しいですよね、サツキ」
「うん。でも、睦月姉さんと如月姉さんとはだいぶ違うけどね」
「OH、ムツキとキサラギですか? 私も知ってますよ。まあ、ちょっと『仲が良い』の意味合いが違う気がしますが」
「ショー、そろそろ黙らないと…」
若干イラつき気味のワシントンの言葉は……そこまでだった。
その頃 マルタ島鎮守府
「……ナンカ、場違イナタイミング二来タナ」
「皮肉にもな」
やって来たレ級と高塚が邪魔にならない隅で話していた。
「皐月ガ行方不明ダッテナ」
「いきなりの濃霧でな。まあ、戦場の摩擦ってやつだよ」
「ソレデモ、チャント探シニ行クンダナ」
「仲間見捨てるなんざ出来るか。例え散々にその『最悪な結果』を教えこまれても、それとこれとは話が別だ」
「ヤレヤレ、マア、ダカラコソ、話セル相手ナンダケドナ」
苦笑いを浮かべるレ級。
しかし、次の瞬間には真剣になる。
「気ヲ付ケロ。今日ハ戦艦棲鬼ガクレタニ来テルゾ」
「ガチかよ…ヤバイ、報せてくる!」
「ジャア、私ハ間宮デ待ツカナ」
マイペースなレ級を他所に高塚は走り出した。
次号へ
ご意見ご感想をお待ちしております。