転生提督・副官のマルタ島鎮守府戦記   作:休日ぐーたら暇人

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もう、なんだろ、この捻りのない題名。

本日はPMCも更新致します。


117 警備隊仕事始め

翌日 マルタ島鎮守府 工廠前

 

 

 

「うわ…90みたいな戦車だ」

 

 

「バカ、あれ、ドイツのレオパルド2だよ」

 

今日から愛車になるAMX-13とスコーピオン軽戦車を整備していた12名の隊員の2人が間近を走る舗装路用ゴムキャタピラのレオパルド2を見ながら呟いた。

 

 

「いいよな〜、他の所はあんな装備があって」

 

 

「あぁ…あっ、あの砲塔、ロシアのT-90だぜ」

 

 

「凄え、二大戦車国の主力が観れるなんてな」

 

重量のあるMBTの通過に誰もが整備の手を止めて、過ぎ行く光景を見物する。

これに海兵隊や民兵隊、カラビニエリの装軌・装輪装甲車はいいとして、流石にT-34/85が通り過ぎた時は誰もが仰天していた。

そんな中、機甲科隊員を率いる谷沢佐武郎(やざわさぶろう)1等陸曹はその光景をまじまじと見ていた。

 

 

 

その夜 マルタ島鎮守府 高塚執務室

 

 

 

「ふむ、実弾射撃ね」

 

 

「はい。3佐…失礼、少佐もご存知でしょうが…」

 

 

「わかります。ちょっと待って下さいね」

 

課業後(基本的に1700以後)、派遣隊最先任上級曹長である岡元二郎(おかもとじろう)准尉が62・64式改の実弾射撃を進言して来た為、高塚は机の『射爆訓練場管理簿』を取り出し、ページを捲る。

 

 

「……とりあえず、明日は個人的に撃ちに来る人間はいますが、部隊規模のものはないですね。それに注意して頂くなら、問題はありません」

 

 

「……少佐、1つお聞きしてよろしいですか?」

 

 

今まで疑問に思っていた事を岡元准尉が訊いた。

 

 

「はい、どうぞ」

 

 

「その…色々と軽くないですか?」

 

 

「まあ、陸自よりは軽いですかね」

 

アッサリと答える高塚に岡元准尉は困惑顔になる…まあ、わからなくはない。

 

 

「残念ながら、これが世界の現状です。本国では時代遅れの9条と自衛隊法により自衛隊が縛られた結果、深海棲艦出現前でさえ陸自を含めた自衛隊の対処能力に疑問を持たれていた。これに深海棲艦の要素が加わり、陸海空軍の『即時即応性』問題が表面化しました。皮肉にも矢面に立つ事になった海自は奥底に残っていた帝国海軍の魂と帝国海軍時代の記憶を持つ艦娘、更に現実を知っていた『提督』を含めた新時代の人材達によりここまできた。空自は日頃のスクランブル等々でわかっていた為に更に転換は早かった。しかし、陸自は? 未だ世界に目を向けず、ガラパコス化したルールに縛られるしか無い組織に明日は無し。陸自のルールを話したら、欧米諸国に笑われますよ」

 

ニコニコと笑顔で毒舌を話す高塚に岡元准尉は『やれやれ』と言いたげに首を振ると口を開いた。

 

 

「噂には聞いておりましたが…少佐はかなりの『はぐれ者』の様で」

 

 

「まあ、『はぐれ者』である事は自覚していますんでね」

 

 

そう言って苦笑いを浮かべる高塚に岡元准尉もつられて笑う。

 

 

「では、そう言う方向で」

 

 

「えぇ、お願いします」

 

そう言って退出した岡元准尉はドアを閉めると溜め息を吐いて呟いた。

 

 

「やれやれ、難儀者には難儀者だが、これは相当斜め上なやり手の難儀者だな。しかし、実際に修羅場を潜り抜けただけにあの言葉には頷かずにはおえないか」

 

そう呟くと岡元准尉は思考を明日の射撃訓練に切り替えていた。

 

 

 

 

その頃 居酒屋鳳翔

 

 

 

「じゃあ…乾杯!」

 

「「「「乾杯!!」」」」

 

富山ひみ子を中心とした派遣隊女性隊員5人は居酒屋鳳翔で女子会をやっていた。(なお、彼女達は未成年なので飲酒禁止)

 

 

「それにしても、さすが海外。色々と刺激がありましたね」

 

一日中、明石と夕張の工廠に入り浸っていた大宮が嬉しそうに言った。

 

 

「ちょっと、下手な事をして、艦娘達を困らせないでよ」

 

 

「でも、練馬の場合、大宮並みに危ない様な…」

 

 

「まあまあ、富山さん。今のところは大丈夫ですし」

 

 

「三宿さんのところはどうでした?」

 

小倉の声に富山を宥めていた三宿は少し考えてから口を開いた。

 

 

「ヴェルスタさんの所でドイツ海兵隊やカラビニエリの方々の救急品セットをみせてもらいましたが…」

 

そう言った後の三宿の顔はズーンと暗くなっていた。

これに何かを察した4人はそれ以上の話題の継続を避ける事にした。

 

 

「そ、そう言えば、富山と気が合いそう方々もいるわね。数人ほど」

 

 

「ウチと? あー、あのイカした眼帯野郎2人とヤンキーな奴ら? アレで大丈夫なのかね、色々と」

 

 

(((いや、アンタも人の事言えないから)))

 

三宿以外の3人が内心ツッコミを入れる。

しかし、現実は非情である。

 

 

「あー、その眼帯野郎とヤンキーって俺たちの事?」

 

 

「そうそう、特にカタナ持って厨二発言……ん?」

 

何かに気付き、振り返る富山。

そこには……眼帯野郎とヤンキーこと、天龍、木曽、摩耶が居た。

(なお、木曽は摩耶の後ろである。最後に入店したから)

 

 

 

暫くして

 

 

「仲良いな、おい」

 

 

「「「「イェーイ☆」」」」

 

一通りの事務処理を終え、鳳翔に来た高塚が見たのは大宮達から分かれて飲んでいる天龍達と富山ひみ子だった。

 

 

「まったく…4人共、仲が良いのは良いが、騒ぎ過ぎて出入り禁止になるなよ。鳳翔さん怒らせたら、俺もあんまりフォローも出来ないんだからな」

 

 

「「「「了解でーす!!」」」」

 

 

「やれやれ…」

 

こうして、夜は更けていった。

 

 

 

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