転生提督・副官のマルタ島鎮守府戦記   作:休日ぐーたら暇人

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約2ヶ月、更新出来なくて申し訳ありませんでした。
仕事やら、水害やらで忙しくて執筆が進みませんでしたので…。
では、どうぞ。


120 タイマン対決 後編

ワシントン視点

 

 

私には不満が数多くある。

ソロモン戦を含め、日本海軍との戦いを潜り抜け(もちろん、自慢は霧島との砲撃戦)たが、何故か私より姉のノースカロライナが記念艦として生き残った事で嫉妬がある。

また、妹分のサウスダコタ(の艦長)に手柄を誇張されるわ、サウスダコタ(の乗組員)との関係は絶縁状態になるわ、運が悪い。

そして、『あっち』だと、姉と共に長門に陸奥、伊勢、日向と戦ってタコ殴りにされた(まあ、日本海軍の裏をかくつもりが読まれて待ち伏せされたから仕方ないが…)事もあって何もしていないに等しい。

そんなこんなで今度は人の身体を手に入れ、この地中海のマルタに来てみれば早速因縁ある霧島と御対面である。

とりあえず、いまやりたい事は…目の前の因縁ある奴を盛大にブン殴って厄祓いをしたい。

 

 

「この、疫病神!!」

 

 

 

 

解説&司会席

 

 

 

 

「疫病神…ね…」

 

 

「まあ、因縁云々は難しいわな」

 

ワシントンの言葉を聞いた解説役の滝崎と高塚の呟き。

なお、観客席からは再びブーイングが炸裂している。

 

 

「で、どう見る、高塚?」

 

 

「姉のノースカロライナ嬢の顔を見てみろ。呆れてるぞ」

 

先の妹の発言に額に手をあて、顔を下げるノースカロライナ。

 

 

「姉は大変だな。まあ、それは誰でもか」

 

 

「それより、ワシントンも結構、頭に血が上ってるな」

 

 

「だな。完璧に張っ倒す事しか考えてないな」

 

 

「「こりゃあ、勝負見えたわ。後は『それ』がいつくるかだな」」

 

 

「あの〜、御二人にしか解らない会話をされても困るのですが…」

 

司会役の青葉が困惑しながら言った。

 

 

 

一方 霧島視点

 

 

前に『人間は他人が怒ると途端に冷静になる習性があるらしい』と高塚少佐からネタ感覚で教えてもらった事があるが、どうやら本当の様だ。

実際、相手のワシントンの激情を見ながら自分は凄く冷静である。

相手はソロモンで因縁がある相手で、自身も同じく激情に駆られてもおかしくないだろう。

しかし、何故か自分は冷静だ。

無論、その根本には自信があるからだ。

旧型でも手段や状況によって新型艦でも痛手を負わせられる事は自らがソロモンと『ハワイ沖』で証明している。

そして、副官も高塚少佐もこう言っていた。『敵にどれだけミスを犯させ、こちらはミスをしてもそれをどれだけカバー出来るか。本質は個人の喧嘩も戦争も同じだよ』と。

 

 

「負けはしないわ! 戦いの勝敗はやってみないとわからないのよ!」

 

 

 

司会・解説席

 

 

「にしても、レナウンの時の放置と言い、今回の一件と言い、よくもまあ、色々と企んだな」

 

霧島の言葉でヒートアップする観客席を気にせず滝崎は高塚に言った。

 

 

「企んではないんだが…まあ、レナウンの時は偶然だぞ。酒匂が彷徨った事以外…いや、彷徨うのは予想は出来たが、ストレートにああなったのは偶然だがな」

 

 

「なんだよ、それ。つーか、ワシントンと霧島の放置は企んでないと?」

 

 

「てか、ノースカロライナから相談されてたんだよ。『仲が悪い件』と『偏食の件』はさ」

 

 

「あら〜、お姉さんから相談されてたんか…」

 

 

「あぁ…さて、今日でどっちも解決すれば楽なんだけどね」

 

 

「解決ね…偏食はいいとして、仲が良くなるかは微妙だぞ?」

 

 

「いや、だって、あのままでいるぐらいなら、殴り合いの喧嘩やらせた方がスッキリするだろうな、と」

 

 

「日米戦後の関係じゃああるまいし…まあ、どうなるかはわからんしな」

 

 

「あの〜、解説の方は?」

 

苦笑いを浮かべながら青葉が訊いてきた。

 

 

「大丈夫、そろそろ、試合が動くから…一気にね」

 

 

「へっ?」

 

滝崎の言葉に間抜けな声を青葉があげた瞬間、観客席が一斉に響めいた。

 

 

 

 

「フン、どんなに粋がっても旧型は旧型ね!」

 

砲撃の乱打戦の中、回避行動に僅かに身体が追い付かなかった霧島のその一瞬の隙を突き、ワシントンは決定打の砲撃を叩き込んだ。

そして、それが効いたのか、霧島は態勢を崩し、膝をついて蹲る。

 

 

「ようやく、疫病神から解放されるわ…ホント、これでスッキリ…」

 

 

「…憲兵さんの言葉通りね。『アメリカ人はどうも何処バカだ』って」

 

 

「なっ!?」

 

蹲っていた霧島から挑発的とも取れる発言が発せられた直後、霧島は余裕綽々で近付いてワシントンの間合いに突っ込んだ。

 

 

「殴りたいけど、殴り禁止だから…これで覚悟してもらうわよ!」

 

そう言って霧島は主砲8門全てをガラ空きのワシントンの腹部に叩き込む。

そして、その衝撃をモロにくらったワシントンは数メートル先まで吹っ飛び、激しく水柱を立てて着水した。

 

 

「ワシントン!」

 

観客席から姉のノースカロライナが駆け寄り、ワシントンに声を掛ける。

 

 

「……姉さん…」

 

 

「ワシントン! 大丈夫!?」

 

 

「……ごめんなさい、姉さんの言った通り、偏食やめる」

 

腕で泣き顔を隠しながらワシントンはノースカロライナに言った。

 

 

 

 

司会・解説席

 

 

 

「……えーと、何がおきたんでしょうか?」

 

訳がわからないと言いたげに青葉がマイクに呟きながら訊いてきた。

 

 

 

「簡単さ。霧島はワザと回避のステップを遅らしたんだ。ワシントンの砲撃を誘いつつ、『当てる部位』に当てる為にね」

 

 

「へっ? 当てる部位??」

 

滝崎の解説に意味がわからない様子の青葉。

 

 

「俺もそこまで詳しくないが、ボクシングとかの格闘技系の中にワザと自分の意思で特定の部位に当てる事があるそうだ。理由は色々で致命部位をカバーする為とか、ダメージを軽減する為、時には反撃の為に自分に有利な部位に当てる為とか…まあ、状況によって様々だ」

 

 

「霧島の場合、改二になったから、艤装の避弾経始部分でワシントンの砲撃を当てさせたんだよ。当たる所がわかってたら、どう態勢を取るかも概ねわかるし」

 

 

「まあ、霧島は砲撃とかの観測員やってたから、発射のタイミングとか癖とかわかったんだろう。で、ワザと回避ステップ遅らして砲撃を誘い、被弾・ダメージくらったと思って近付いたワシントンに一発かました、と…まあ、こんなとこだね」

 

 

「……やっぱり、御二人が解説する方がわかりやすいです」

 

 

 

……こうして、タイマン対決は終わった。

 

 

 

 

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