転生提督・副官のマルタ島鎮守府戦記   作:休日ぐーたら暇人

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主に高塚と神通です。

なお、高塚の過去も少しわかります。


57 非情か悟りか

3日後 マルタ島鎮守府

 

 

 

「錬成を兼ねて、榛名、陸奥、隼鷹を艦隊に組み込みたいんだが?」

 

 

「ふむ、編成がバラバラでもいいなら…アトランタもそろそろ復帰してもらいたいしね」

 

艦隊編成について話しながら廊下を歩く松島宮と滝崎。

 

 

「そうか? それと、前の高塚の艦娘の外出と警衛の案、もっと具体的なプランを聞きたいんだが、今日は大丈夫か?」

 

 

「あぁ、今日は神通と共に『第1回マルタ島鎮守府徒歩行軍演習』の為のルート選定に出てる」

 

 

「あっ、そうだったな……ん? だんだん、陸軍化してないか??」

 

 

「松島宮、多分、軍隊って体力錬成にそんな違いは無いから」

 

 

 

その頃………

 

 

 

「今回は鎮守府による『訓練』ですから、余り民間に迷惑が及ばない様にしないといけません。また、硬い地面は脚に負担が掛かりますが、距離は稼げます。反対に柔らかい地面については行進時間に対して距離を稼げません。ですから、砂浜では後者になります。やはり、行うまえは充分な休息と食事、準備運動、ストレッチは必須です。また、いきなりの行軍は脚を痛めますので、駆け足などで慣らしておくといいでしょう」

 

陸自から変わらぬ迷彩服と迷彩帽を被って砂浜を歩く高塚と改ニ服装でその横に随行する神通……場合によっては微妙に危なく見える構図かも知れないが、気のせいである。

 

 

「あの、高塚少佐。1つよろしいでしょうか?」

 

 

「はい、なんですか?」

 

 

「少佐が体験した戦闘をお聴きしたいんですが…よろしいですか?」

 

 

神通の言葉に迷彩帽を深く被る高塚。

これは滝崎も知っている事だが、神通は鬼教官であると同時に熱心な勉強家でもある。

実際、滝崎の所蔵本は戦闘記録等の資料を中心に借りて読本しており、高塚が来てからは時間があれば講義を聴き、質問に来る程である。

ただし、高塚は自分が体験した『あの戦闘』は話していない……何故なら、詳細なんて滝崎にも話しているし、手続きさえ踏めば資料を貰えるからだ。

 

 

「……神通さん達の激闘に比べれば小さく、しかも、下っ端の生き残りの体験談なんて、勉強する値すらない事だと思いますがね」

 

 

「でも、副官も少佐も言います。『戦訓は小さくても拾う物』と」

 

 

「……自分達の言葉で返されると弱いですね。まあ、今更な事ですけど………あれは数年前、まだ下っ端の陸自特科隊の士長で、『深海棲艦』と呼ばれる前、『海上脅威害獣』と呼称されていた時でした……」

 

 

……本土に迫った『敵部隊』の一部が対馬海峡から日本海へ進出する動きがある、と言う事で九州を除く本州の陸自特科隊が山口北部へ移動、中国地方を預かる旅団の特科隊員であった私もその一員として、他の特科部隊ゆりも真っ先に駆けつけ、迎撃準備を整えていました。

ですが……多分、その時点でその後の『結果』が確定していたのかもしれません。

あの当時、北方演習と実射・防御演習を経験していた私は陸自の戦術に不安と不満をもっていました。特に今回は深海棲艦の迎撃、つまり、双方の要素を含みながらも傾向としては防御、つまり、後者よりです。

詳しい推移は省きますが、我々は『魚型』と呼称されていた前衛の駆逐艦に向けて砲撃を行い、撃滅した。その時点で私は嫌な予感があった。そして、それは見事に的中した。

観測班が後続の『人型』が砲撃を開始した、と報告してきた時、私は砲班長の命令に異を唱え、更に抗命した……その結果、私は生存し、反対に所属砲班は全滅した。

しかも、所属中隊は火砲、牽引車両は予備を残し全て失い、更に携帯火器は砲班員携帯分を失い、人員損耗率は2個砲班全滅により、戦死で3割を超えていた。

他の2個中隊は火砲損失はありましたが、人員損耗率は負傷者ばかりでした……所属中隊は当分、砲班再建すら無理で、開店休業状態でしたね。

 

 

「……後で聞いた話ですが、この火砲損失と人員被害の大きさに旅団どころか、方面司令部・陸自上層部が真っ青になったそうです……まあ、当たり前ですよね、野戦用掩体が艦艇艦砲射撃への防護なんて考えている訳ないんですから……でも、何故か深海棲艦に恨みなんか持ちませんでしたね……いやはや、どうやら、私は血も涙も無い非情な人間だった様ですね」

 

自虐とも取れる言葉を呟きながら被っていた迷彩帽を人差し指でクルクル回す高塚。

 

 

「それでも……何故、軍に残られたのですか?」

 

 

「居場所がそこしか無かった…と言いましょうかね? いい歳の男が実家に引き籠もるなんて嫌だったし…その時の中隊長に幹部、将校の試験を受けてみたらどうか、と勧められていたし…しがみつきたかっただけかもしれないけど、中途半端に投げ出したくなかったのでね」

 

苦笑いを浮かべながらそう言った直後、高塚は表情を変えて走り始めた。

それを慌て追い掛ける神通の視線の先にあったのは………。

 

 

 

 

暫くして  マルタ島鎮守府工廠

 

 

 

「夕張、今日は何を造る?」

 

 

 

「少佐用に作ってた64式改を追加で造ってみるわ。もちろん、改造出来る様にするけどね!」

 

中々ハイテンションな夕張が着替えながら宣言した時、工廠の扉が乱暴に蹴り開けられた。

 

 

「ナンヤ、ナンヤ!?」

 

 

「アレ、憲兵殿ヤ!」

 

 

「憲兵殿! ドウシタノデアリマスカ!?」

 

突然の乱入に工廠妖精達が騒ぎ、工廠長妖精が訊いた。

 

 

「工廠妖精達と明石に…夕張も居たか! すまん、手を貸してくれ! 浜辺で神通と一緒に訓練前の下見をしていたら、この子を保護した! 急いで処置してくれ!」

 

背中に背負った女の子を視線で指しながら簡単に事情を話す。

 

 

「コリャ、大変ダ! 憲兵殿ノ言ウ通リ重傷ヤ! オイ、工廠ニ居ル奴ラヲ集メロ!!」

 

 

「「「「「「「合点承知!!」」」」」」」」

 

 

「とりあえず、そこに寝かせて! 夕張、保護カプセルの準備をお願い!」

 

 

「オッケー、神通、手伝って!」

 

 

「はい!」

 

高塚の隣で手助けをしていた神通に夕張、明石が手伝いながら、診察台に降ろす。

そして、各々がそれぞれのやる事をやる中、高塚は内線電話を取り、執務室へ報告の電話を入れる。

受話器を持つ反対の手にはプレートが握られていた。

それにはフランス語でこう書かれていた。

 

『クレマンソー』

 

 

 

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