転生提督・副官のマルタ島鎮守府戦記   作:休日ぐーたら暇人

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今回は高塚の過去&ヤバ話です。
賛否両論あると思いますが、これがウチのやり方なので。



60 不安と疑問

翌日 朝 マルタ島鎮守府 工廠

 

 

 

「で、クレマンソーはまだ目を覚まさないか」

 

 

「えぇ……まあ、意識は一定してるんだけど…」

 

 

「まあ、人間だって一緒さ」

 

未だ目を覚まさぬクレマンソーの様子を見に来た高塚は明石とそんな会話を交わしていた。

 

 

「で、憲兵殿の見解は?」

 

 

「俺は医者じゃあないぞ。まあ、ある種の軽い植物状態ってやつかな? 何かキッカケがあれば目を覚ましそうだが……こればかりはなんともな」

 

腕を組みながら答える高塚。

そんな時、工廠のドアが開き、シェロンが入ってきた。

 

 

「やあ、シェロン。クレマンソーの様子を見に来たのか?」

 

 

「タカツカ少佐…えぇ、そうよ」

 

そう言うとシェロンもクレマンソーが入るカプセルに近付く。

 

 

「意識と状態は安定していて、後は目がさめるだけ、だそうだ」

 

 

「……そう…」

 

そう呟くとカプセルの向こうにいるクレマンソーへ視線を向けるシェロン。

 

 

「なんだ、不安でもあるのか?」

 

 

「当然よ…クレマンソーは未完成戦艦。しかも、船体は完成しても武装無しで解体され、元はヴィシーフランス艦…不安にならない方がおかしいわ」

 

 

「それを言えば、加賀は空母じゃあなくて戦艦だ。それにフランスやスペインは艦娘が居ない状況からここまできた。今更な話だと思うがな?」

 

 

「ま、まあ、そうだけど……資格があるのか解らないの…彼女を率いる資格、彼女を立たせる資格…彼女が戦列に立たせていいのか…それが解らないの」

 

そう言って視線を落とすシェロン。

それを聞いた高塚は一息吐くと切り出す。

 

 

「あのな、クレマンソーが未成戦艦なのは知ってる。だがな、艦娘の素は人が造った船だ。船は人が造って人が動かしてこそ、その運命が決まる。つまり、結局は人に任せるしか無い。だが、今は艦娘、人だ。あいつ自身が生き死にを決める事ができる。人は生まれ先は選べない。しかし、生き方と死に方は選べる。それは艦娘も一緒だ。いま、こうして生きようとしているなら、目を覚まさして生き方を選ばせてやれ。まずはそれからだ」

 

そう言うと高塚は工廠から出ていった。

 

 

 

暫くして 屋上

 

 

「なるほどな、やっぱり、シェロンも悩むか」

 

 

「まあ、俺らからすれば悩む必要も無い事だけどな」

 

屋上で滝崎と高塚は甘味処間宮から買ったカフェオレ(お持ち帰りタイプ)を飲みながら話していた。

 

 

「日本なら、別段なんとも思わずにどんな子でも受け入れるからな」

 

 

「あぁ…だが、お前の世界だと完成して、曲がりなりにもイタリア艦隊と交戦した訳だしな」

 

 

「うん、望んでいたかは別だがな。だけど、お前があの場に居たのは幸運だったみたいだな」

 

 

「おいおい、俺は正論を述べただけだ……それより、なあ、滝崎」

 

 

「ん? なんだ?」

 

 

「俺達は『何』と戦っているんだろうな? 深海棲艦? それとも、彼女達が持つ『怨念』か? それとも人類の自業自得な『業』か? んで、彼女達とは『戦う』しか無いのか? お前はどう思うよ?」

 

高塚の物言いに腕を組んで暫し考えると……口を開いた。

 

 

「もし、人類の自業自得な『業』と彼女達の『怨念』が原因なら…当事者の1人だからな、決着はつけるよ」

 

 

「お前らしい答えだな。まあ、そう言うだろうと思ったけどな」

 

 

「俺も当然の事を言ったまでだ。それに深海棲艦とはどうも相容れない存在では無いような気がする」

 

 

「あぁ、やっぱり、お前もそう思うか…なら、とっておきの話をするか」

 

 

「とっておきの話? なんだ、今更?」

 

 

「これは『あの戦い』の後、ウチの中隊が後方支援に回された時の話だ。上には報告してないし、他人には話すのはお前が初めての事だ」

 

 

「で、なんだ? 上に報告してないって事は下手したら進退に関わる事だろう?」

 

 

「あぁ……俺は深海棲艦を助けた事がある」

 

 

「……なるほどな。確かに、それは己の進退だけでは済まない問題だな。で、経緯は?」

 

 

「開店休業状態の中隊は主力支援の任務を命ぜられて、迎撃戦の後、死骸が転がる浜辺の警戒中に岩陰に居たリ級を見付けた」

 

 

「そのリ級を見逃したのか?」

 

 

「それもあるがちょっと違う。怪我をしてたから、そこら辺にあったやつで緊縛止血して、包帯巻いて、要らない増加食のおにぎり2つとお茶を置いてその場を離れた」

 

 

「あー、利敵行為も同然だな、それ。まあ、大抵の奴なら集団で嬲り殺しにするか、1発撃って自分を英雄に仕立てるな……まあ、後々、自業自得な目にあいそうだがな」

 

『弱った敵を撃つ奴に興味ない』と言いたげに投げやり気味に呟く滝崎。

 

 

「確かにな。まあ、それで『英雄』になっても馬鹿らしいしな……英雄なんぞ、こんな捻くれ者には似合わねえけどな」

 

 

「お前が英雄、って言うのは確かにイマイチピンとこないな…で、そのリ級は?」

 

 

「わからん。ただ、撃沈されたって報告は届いてなかったから、上手く逃げたんだろう」

 

 

「そうか………嫌になるな」

 

 

「あぁ、嫌になる。この戦いも、戦いが終わった後も」

 

 

「うむ、終わった後の世界情勢、特にアメリカが何を言い出すか…困ったもんだ」

 

 

「軍縮はいいが、ワシントン条約みたいな事をやりそうだな。特にアメリカはそれを求めるだろう」

 

 

「さて、その時、アメリカに力があるか……そして、大人になってるか、だな」

 

滝崎の言葉に互いに苦笑いを浮かべる2人だった。

 

 

 

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