数日後 マルタ島鎮守府近海
上空を旋回していた瑞雲が対潜爆弾を投下する
それが合図であったのか、天龍を中心とした対潜部隊がありったけの爆雷を周囲にばら撒く。
すると、暫くしてから爆雷の爆発とは違う水柱がおこった。
「よし、ここにいた奴は撃沈したな」
「周囲に潜水艦の反応はないよ」
天龍の言葉に子日が答える。
なお、天龍隊の編成は天龍、千歳、子日、若葉、潮の5隻である。
同様の編成(天龍・龍田は航空搭載能力が無いため、千歳・千代田を編入している)で広域対潜哨戒・掃討にあたっている。
これはレ級の『いい事』を聞いた高塚による判断での鎮守府残存戦力による作戦だった。
「さて、次に行くから」
そう言って天龍は次の獲物を求めて走り出した。
その頃 マルタ島鎮守府
「ふむふむ、とりあえずはマルタ近海の掃除は順調だな」
次々に挙がる報告とそれが反映される海図をみながら高塚は頷く。
「ですが、珍しいですね〜。陸軍の方なのに海上作戦の指揮が出来るなんて」
次々挙がる報告を高雄と共に整理している愛宕が言った。
今回は対潜作戦の為、あきつ丸は対潜部隊の一員として出動してる。
その為、今は臨時に高雄・愛宕が秘書艦代行の形で執務をしている。
「まあ、滝崎とは親戚だし、独学で勉強してるし…将校なんだ、触りぐらい知ってても罰はあたりはせんよ」
そう言いながら頭を掻き、高雄が淹れたお茶に手を伸ばす高塚。
「後はこれが順調にいく事を願うだけだな。まあ、潜水艦も補給を絶たれたら作戦なんて出来ないしな。それについては妙高達がなんとかしてくれるだろう」
妙高を旗艦とした古鷹、加古、衣笠、北上、大井の部隊は敵水上補給部隊を捜索する為に出撃しており、この場にはいない。
これは敵潜水艦が補給を受ける必要上、水上補給艦(つまり潜水母艦)がいると睨んだ高塚の采配だった。
「後は様子見か…これの効果出るまでが長いんだよな〜〜」
「ところで…憲兵さんのお友達の方達は何処に?」
「散歩です。ハインドに乗って」
高雄の問いに高塚は『嘘偽り無く』答えた。
その頃 第422特殊任務連隊
「あっはっはっは、やはり、同志の読みは大当たりだったな!」
Mi-24ハインド強襲ヘリ5機の内の1機に乗り込み、兵員搭載区間のドアをあけて前方を見ていた山本大佐が笑いながら言った。
それもその筈、彼の視線の先には軽空母ヌ級2隻を中心とした軽機動艦隊がいたからだ。
しかし、これは予想されていた事だった。高塚は潜水艦が苦手な広域索敵を行う為に航空偵察があると睨んでいたからだ。
通商破壊を行うにおいて、獲物である輸送船や商船の動向を掴むのは潜水艦単独で行うには無理があり、どちらかと言えば航空支援があった方がいい…との考えから高塚はマルタ島周辺に当たりを付けて山本大佐に民兵隊のハインド隊を出して、これを撃滅する様にお願いしていた。
そして、その考えは見事に的中していた。
「全機攻撃開始! 弾薬はケチるな!」
その指示の下、ハインドは30㎜機関砲を撃ちながら対戦車ミサイル、57㎜ロケット弾を発射する。
その弾は全て願い違わずに軽機動艦隊の深海棲艦へと突き刺さる。
ヌ級ば瀕死になりながらも、艦載機を発艦させるが無慈悲にもハインドの30㎜機関砲が発艦口に狙いを定めて撃っている為、避ける事も出来ない艦載機は直撃を受けて次々に落ちていく。
さらにドアガンも乱射している……少々、オーバーキルな様な気もするが仕方ない。
「恨まないでくれよ。これが戦争、生存競争ってやつだ……無理だろうけど」
深海棲艦の屍が浮かぶ海面を見ながらそう呟く山本大佐だった。
暫くして マルタ島鎮守府
「民兵隊を活躍させたんだな」
ジト目の視線を送るエーディトに苦笑いを浮かべながら答える。
「まあ、独自の航空戦力を持つ民兵隊だからこそ…なんだけどね」
「まったく、我々は武装難民の鎮圧以降、何もしていないのだがな」
「だからと言って海岸線に戦車持ってても、今は的にしかならないし…」
「ターカーツーカー」
「わかってるよ、俺も陸の人間だ。しかしだ、俺は『あの敗戦』を経験した以上、不本意な行動、事前に分かっているであろう敵の行動で仲間を失う訳にはいかないんだ。これは英霊の犠牲を忘れた自衛隊の失敗を忘れぬ為に…そして、俺への戒めだ」
「…まったく、堅物だな、お前は。まあ、それはわかっている。私は出番があるなら出してくれ、と言っているだけだ」
「もちろんだよ」
苦笑いを浮かべながら高塚は答えた。
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