出せるウチに出す。
2日後 マルタ島鎮守府
「お疲れさん」
「そっちもお疲れ様」
そう言って滝崎と高塚は互いに利き腕をぶつけ合う。
「歩きながら話そう…色々とすまなかったな、今回は。特に戦力面でな」
「いや、俺もいい経験が出来たよ。そっちこそ、敵の頑張りがキツかっただろう?」
「あぁ、だが、最後はこっちの罠にはまってくれてね。それで撤退させる事が出来た」
「なるほど…あっ、そうだ、レ級以外にお前さんに会いたいって言ってる人を呼んでいるぞ」
そう言って立ち止まると、懐かしい2人が居た。
「久しぶりね、アドミラル・タキザキ。そして、何も変わっていないわね」
「お久しぶりです、マイティ・フッド。お元気そうでなによりです」
「いやー、ホントにお前の言った通りの麗女だよ。フッド嬢は」
「うふふ、ゲネラル・タカツカも親戚だけあって、貴方に似てるわね」
「ありがとうございます」
そう言って滝崎はもう1人の方、エンタープライズに顔を向ける。
「エンタープライズも久しぶりだな。まあ、また、こんな嫌いな奴のまんまだけどな」
「も、もう、なに言ってるのよ…まあ、元気そうでよかったわ」
「あはは…まあね…あっ、今度殺しに来る時はレキシントンと一緒に来てくれ」
「ちょ、あ、あれはあの時だけよ! そもそも、またそんな事をやったら、今度こそあの提督や加賀達に嬲り殺し確定よ」
「てか、やるな。俺が止める。つか、滝崎、お前もそれを言うな」
「ホントに変わらないわね、タキザキ副官は」
「フッド嬢、お戯れは止めて頂きたい」
高塚の言葉に4人は可笑しそうに笑ってしまった。
暫くして 滝崎執務室
「工廠の2部門化?」
「まあ、どっちかって言うと負担減少策…かな」
場所を滝崎の執務室に変えた滝崎と高塚は先程の話の続きをしていた。
「今回の一件で明石不在の状態で戦闘をやった結果、ウチらに被害は無かったが、収容した深海棲艦側の負傷者受け入れで躓いた。今後、前線応急修理後に帰還した艦娘や明石不在時の多数の負傷者対応を考えると明石を中心に開発と修理に分けて対処した方がいいと思うんだが…」
「で、明石は全体的責任者として、修理部門の責任者…あるいは医務官としてヴェスタルを加えたい…って事だな」
「あぁ。今後、工作艦が増えるかどうか分からない状況だから、ヴェスタルの存在は貴重だと思う。明石もイザッて時は誰か任せられる工作艦が居るって言うのは重要だと思うし」
「ふむ……ヴェスタルがエンタープライズと知己なのも、お前が出したヴェスタルの経歴もそれを納得させるには充分だな。なにしろ、ベテランな『看護婦さん』だからな」
そう言うと滝崎は高塚が出した提案書の副官判子欄に自らの判子を押す。
「とりあえず、医務官の設立には何の文句は無い。後の詰めは後々行うが、とりあえずは下地を作らないとな…ところで、収容した深海棲艦側の負傷者は?」
「医務室のベッドだ。あと、瑞鶴を攫ったヲ級だが…あれはヨークタウンじゃあないのか? 帝都空襲組とレキシントンを除いて翔鶴・瑞鶴に因縁のある奴って珊瑚海とミッドウェーのヨークタウンしか思い浮かばんぞ」
「そうだな….レキシントンは生き残ってるし…俺が変えた世界は違うが…因果なもんだな」
「軍人は因果な商売って言うからな…仕方ないさ。そう言えばレ級には会うだろう?」
「あぁ、ひと段落したらな。今は会いたいが忙しくてとてもゆっくりと話す暇がない」
苦笑いを浮かべながら滝崎は言った。
その頃 鎮守府廊下
滝崎との挨拶(?)を終え、自分の部屋に戻っている途中……
「久しぶりね、ビックE」
「レディ・レックス…久しぶりね」
レキシントンとたまたま廊下で出会った。
「聞いたわ…あなた、あの副官を殺そうとしたらしいわね」
「やめなさい…一時的な感情の暴走よ」
「でも、出来なかった」
「と言うより、あの副官が一枚も二枚も上手なのよ」
「なら、今度は私と一緒なら大丈夫じゃないかしら?」
「レックス、そんな話ではないわ。そもそも、ホントにやったら、間違いなくアドミラル達やカガ達、特にあの憲兵が黙っていない」
「ビックE、貴女は悔しくないの? リスクの高い作戦だったとは言え
、捕虜になった挙句に艦隊旗艦となって『元』味方と戦う事になったのよ?」
「…わかってるわよ、そんな事。でもね、それはそれ。これはこれなの」
「呆れた…妹のサラトガに乗っていた、あの猛将ハルゼーの薫陶を受けた空母とは思えない程の腑抜けっぷりね。それとも、あの副官に籠絡…」
「レックス!!!」
カチンときたエンタープライズは怒鳴るとレキシントンの襟を掴んで壁に押し付ける。
「貴女ね、いくら先輩とは言え、何処まで捻くれるつもり!? しかも、数ヶ月も一緒に居て何も彼奴について解らないの? 彼奴はね、色んな重いものを背負いながら戦っているの! 私達以上の重い物をね! その重い物の中に…!!!」
サラトガの事を言おうとした瞬間、エンタープライズは何故、滝崎達がサラトガの事を話さないのか…そして、そうすれば間違い無く自分と同じ事に、下手をすれば更に悪い状況になりかねない事に気付き、掴んでいた襟を離した。
「……いまは目の前から消えなさい、レックス。私も頭を冷やす必要があるわ」
そう言ってエンタープライズはその場を去った。
暫くして 鎮守府一角 あるベンチ
「…と言う事なのよ、ヴェスタル」
「あらあら、大変ね、エンタープライズちゃん」
頭を冷やしに外に出たエンタープライズはヴェスタルが居たので今までの事を話した…ヴェスタルに膝枕と頭をよしよしと撫でられながら。
「おうおう、これまた青葉が見たら喜びそうな光景だな」
苦笑いを浮かべながら高塚が現れた。
「いいじゃない、別に」
「まあ、俺も構わないんだがな」
そう言って高塚は2人のベンチに近付く。
「……ねぇ、ジェネラル」
「ん、なんだ?」
「……生きるって難しいわね」
「だな」
3人は視線を青空に向けた。
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