そして、問題も発生。
宴会場
「つー訳だ。すまん」
「いや、別にいい。フッド、ビスマルク、エンタープライズ、ウォースパイト…海外勢で4人も知ってる人間がいたんだ。今までバレなかったのが意外なんだからさ」
『ダブル敵艦隊撃退&新参入歓迎会(なのです!)』と書かれた横断幕が掲げられた宴会場の片隅で高塚は昼間の事を話し、滝崎は気にしないと言った。
「この後、青葉が取材に来るぞ。明日には艦娘の口からスペイン、フランス、イギリスの提督や関係者の耳に入るだろうな」
「そうだな…気にするとしたら、レキシントンだが」
「だよな」
身バレよりも鎮守府全体の問題になりかねない種の方を心配する滝崎と高塚。
「話せば苦、話さぬも苦。本来なら死中に活を求めるの雰囲気で話すんだが…」
「無理だな。その死中に活を求める方法が核兵器のボタンなんて、洒落にもならん」
「今のところ、アメリカ艦組の大半が鹵獲艦だからな。純粋なアメリカ艦か居ないから余計に説得出来ないしな」
互いに頷きながら苦悩する2人だった。
(あの馬鹿2人め。折角のいい雰囲気の中に黒いオーラを出すな)
金剛や比叡、長門、フッドと言った面々に囲まれながら、松島宮は横目で滝崎・高塚を見て心中で呟く。
「ところでテイトク〜、副官との馴れ初めを聞きたいネ〜」
「ふぁ!? な、なによ、突然!?」
「確か、フィンランドの時は既に仲が良さそうでしたね。まあ、あの時はライバルって言ってましたけど」
「ジブラルタルに居た時には既に『あの2方』も含めて仲が良さそうだったわね」
「それで、どうなんだ、提督?」
いきなりの金剛からの恋話への振りに顔を真っ赤にして、しどろもどろになりながら訊き返す松島宮。
これに比叡、フッドと続き、長門が興味津々に訊いてきた。
しかも、いつの間にやら恋話と聞いて艦娘達が集まったり、聞き耳を立てたりしている。
「え、えっと…そ、その…う、うーんと…(あぁ! バカ崎が近くに居れば押し付けて逃げれるのに! 何かの拷問、これ!!)」
内心で天に助けを求めても不条理にも助けてはもらえない。
よって、仕方無くボソボソと話す。
「な、馴れ初めではないけど…せ、成績上ライバルだったし…でも、体育で無理して保健室に連れて行ってくれて…」
その瞬間、周りでは黄色い悲鳴が上がるわ、顔を真っ赤にする子はいるわ、真剣に聞こうとする子がいるわ…なんだかお祭り騒ぎ。
「テイトク〜、そのまま全て言っちゃうネ〜」
「(誰か金剛に酒でも飲ませた!? いや、そんな馬鹿な…)え、えっと……」
………こんな尋問めいた事が暫く続いた。
その頃 病室
「いいの、エンタープライズちゃん? 宴会の方は?」
「いいの、何時も世話になってたし…そもそも、あの2人の惚気話なんて見てたんだから、今更聞く気もないわ」
会場から巻き起こる黄色い悲鳴を溜め息を吐いて無視するエンタープライズと微笑むヴェスタル。
既に本日の宴会料理は病室に届けられ、交代で観ている艦娘達や負傷療養中の深海棲艦達も食べれる様にしている。
そして、ヴェスタルは宴会には出ずにこうして病室で深海棲艦達を観ていた。
「うふふ、変わったわね、エンタープライズちゃんも」
「そうかしら? 相変わらずだと思うけど?」
「何度か言ってたわよ。『あと何回、私はこの行為を繰り返せばいいの?』と…でも、今のエンタープライズちゃんはアメリカ艦だった頃より明るいわ」
「……やってた事は同じなのにね」
そう言ってエンタープライズは溜め息を吐く。
実際、やっていた事は同じだ。搭載機を飛ばし、目標を攻撃し、戻って来た艦載機を収容・補給、また飛ばす…これで何隻もの敵艦を沈め、開戦から終戦まで生き残った。
しかし、違うのはアメリカ艦か、日本艦かであった事。
「…いえ、違うわね」
『大義』、これが違った。
いま思えば、あの戦争の始まりは何か…と問われればエンタープライズは簡単に答えられた。
『リメンバー・パールハーバー』、これを言えばアメリカ人なら全てを説明出来た。
しかし、『あの世界』で鹵獲され、滝崎と出会い、殺しかけ、更に彼から今までの事を聞いたエンタープライズは一瞬にして自分が信じていた物を崩壊させられた。
そして、この世界で親戚である高塚と出会った時、彼女は2つの記憶を交えながら高塚に疑問・質問をぶつけてみた。
すると、彼の答えもまた、簡単だった。
『その2つの記憶…特に開戦前後のアメリカの動きを思い出してみてくれ。なぜ、違う世界の動きなのにアメリカの動きはほぼ一緒なのか。そして、なぜ、滝崎は裏をかいたり、策や罠を張れたのか…もう、答えは出る筈だ』と。
「結局、私も何も言えないのよね。無知だった事に関しては」
その後、高塚は滝崎が話してくれた事も交えながら、更に深い話をした。
当時の細かい情勢、内部状況、各国の思惑…結果、エンタープライズが一番に感じ取ったのは自らの無知だった。
「…私も工作艦だから、難しい事は解らないわ。でも、今はこうしているのは幸せよ」
そう言ってヴェスタルはエンタープライズの頭を撫でる。
それにホッと溜め息を吐いた時である。
「エンタープライズ…貴女、何を知ってるの?」
レキシントンがフラリと現れた。
そして、そう言ってエンタープライズに迫る。
「あの、レキシントンさん、ちょ…きゃっ!」
雰囲気のおかしさにヴェスタルが近付くがレキシントンは邪魔だとばかりに押し退けた。
「ヴェスタル! レキシントン! 貴女、いくら何でもやり過ぎよ!」
「うるさいわ! それより、知ってる事を洗いざらい吐きなさい!」
そう言ってレキシントンは両手でエンタープライズの首根っこを掴む。
そして、元巡洋戦艦の馬力を使って首を絞める。
「ちょっ…ぐっ…れ、れけひんとん…」
明らかに制御が効いていないレキシントンにエンタープライズは掠れ声で声を掛けるが聞こえていない。
周りの深海棲艦や艦娘もレキシントンの馬力と雰囲気に誰も止めに入れない。
そこに…
「おい、レキシントン! 何をしてるんだ!?」
たまたま、あきつ丸を連れて病室を見に来た高塚が叫ぶ。
しかし、レキシントンはそれさえも聞いていない。
「馬鹿野郎! 殺すつもりか! 首から手を離せ、馬鹿!!」
そう言ってエンタープライズからレキシントンを引き剥がそうとする高塚。
だが、邪魔をされたレキシントンは黙っていなかった。
「邪魔するな、このMP!!」
エンタープライズの首から手を離すと怒りに任せてレキシントンが殴りに掛かる。
しかし、そこは憲兵で軍人の高塚。
殴り掛かってきた右手を左手でも受け止めて、そのまま滑らす様に左手を受け止めた右手の手首を掴むと捻りながら背後に回り、そのまま背中に体重を掛けてレキシントンを床につかせて制圧する。
「あきつ丸! 手錠貸せ!! エンタープライズ! ヴェスタルさん! 大丈夫ですか!?」
あきつ丸から手錠を受け取ると素早くレキシントンに掛ける。
そして、あきつ丸はエンタープライズとヴェスタルに駆け寄り、2人の状態を確認する。
ヴェスタルは何処かを打ち付けただけの様だが、エンタープライズは激しく咳き込んでいた。
「この、この…邪魔をしないでよ!!」
「あれは止める場面だ、馬鹿! だれか! 戦艦か重巡洋艦、正規空母呼んで来てくれ!」
未だに激しく暴れるレキシントンを抑えながら高塚は病室にいる艦娘に叫んだ。
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