緋弾のアリア 残念な武偵   作:ぽむむ@9

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第15話です。


まずは謝罪をさせてください。

更新が遅れて本当に申し訳ありませんでした!
これは週一更新とか言っていたくせになんたる暴挙です。
訴えられても文句は言えないレベルです。

本当に申し訳ありませんでした!



第15話 かぜにはちゅういです

さて、白雪さんの部屋から出た後。

 

キンジ君とアリアさんはまだチャンネルの取り合いをしていました。

…どんだけ見たい番組なんですか…。

 

2人の会話をよく聞いてみると…。

どうやらどうぶつ奇想天外の2時間スペシャルと日曜洋画劇場で取り合っているみたいです。

アリアさんは前者、キンジ君は後者です。

 

…とは言っても、この2人は強襲科。

2人とも掴みあって、今にも銃やらナイフやらが飛び出しそうです。

 

「あ、あの、2人とも落ち着いてくださ…。」

「うるさい!キンジ、そのリモコンをこっちに寄越しなさい!」

「断る。俺は今日ミッション:インポッ○ブル2を見るんだ!」

 

ミッシ○ン:インポッシブル2って…。

キンジ君、チョイスが若干古いです…。

いい映画ですけど。

 

そしてアリアさん。

銃に手が伸びてます、やめてください。

 

もうどうしようもない2人を遠くから眺めていると…。

 

「キンちゃん、あのね、これ…。巫女占札っていうんだけど…。」

「…みこせん?占いか?」

 

白雪さんが、何かカードのようなものを持ってきました。

キンジ君とアリアさんも一旦戦争をやめて、白雪さんに注目します。

 

ちなみにこの瞬間アリアさんはパパッとHDDに奇想天外を録画予約しました。

じゃあ何で争う必要があったんですか…。

この国に平和は訪れないのですか…。

 

「うん。キンちゃんを占ってあげるよ。将来のこと、気にしてたみたいだから。」

「ふーん…じゃあやってもらうか。」

 

とはいえ私もアリアさんも仮にも女の子。

占いは少し…興味がありますね。

 

「キンちゃんは何占いがいい?恋占いとか、金運占いとか、恋愛運を見るとか、健康運を占いとか、恋愛占いとかがあるけど。」

「じゃあ…数年後の将来の俺を占ってくれ。」

「チッ。」

 

白雪さん、どんだけ恋愛占いやりたかったんですか…。

というか今舌打ちしませんでしたか?

気のせい?

 

白雪さんはカードを星型に並べて伏せ、ぺらりぺらりと何枚かを表にしていきます。

…神経衰弱?

 

「どうなのよ?」

 

アリアさんも気になる様子で白雪さんに尋ねます。

そしてその白雪さんは…怖い表情のまま固まっています。

 

「どうした?」

「え?あ…ううん。総運、幸運です。よかったねキンちゃん。」

「おい。それだけかよ。何か具体的なことは分かんないのか。」

「え、えっと。黒髪の女の子と結婚します。なんちゃって?」

 

キンジ君が尋ねると、白雪さんは我に返った様子で結果を伝えました。

…明らかに、ウソです。

 

彼女は一体…何を見たのでしょうか?

 

「ハイじゃあ次あたしの番!」

 

うずうずした様子でアリアさんが名乗りを上げました。

アリアさんはとりあえず占って欲しかったようで、白雪さんの気になる発言は流れてしまいました。

…あとでダメもとで白雪さんに聞いてみましょうか?

 

「総運、ろくでもないです。ハイおしまい。」

「ちょっ、真面目に占いなさいよ!アンタ巫女でしょ!?」

「私の占いに文句があるっていうの…?許さないよ、そういうの…。」

「……闘ろうっての…?」

 

気が付いたらアリアさんと白雪さんが戦闘モードになっていました。

…あ、このままだと多分私の番がなくなってしまいます!

 

「お、落ち着いてください2人とも!アリアさん、部屋にももまんが届いていましたよ?」

「それを先に言いなさいよ!」

 

とりあえずアリアさんを私の切り札「ももまん一本釣り」で退却させます。

さて、私も白雪さんに占ってもらいましょう。

 

「白雪さん、私も…。」

「え?…面倒くさいなぁ…。」

 

この人割と本性黒いですよね…。

知ってましたけど。

 

「全く…。」

 

そういいながら、一応やってくれます。

アリアさんの場合はなんか一枚めくって終わりでしたが…。

 

白雪さんは二枚目をめくったあたりで表情が険しくなりました。

 

…え、なんですかその反応…?

怖いんですけど…。

 

白雪さんはどんどんめくっていき…。

六枚めくったあたりで、カードを片付け始めました。

 

「…え?お、終わりですか?私、どうだったんですか?」

「………別に?総運、どうしようもないです。これでいいでしょ?」

 

いや、なんですか今の間は。

 

「そんな…白雪さん、あの…。」

「なんでもないよ。それとも…詩穂も私の占いに文句をつけるの…?」

「い、いえ!なんでもないです…。」

 

問いただそうとしましたが…先程アリアさんに向けた恐ろしい表情をされてしまっては、さすがに引き下がるしかありません。

 

…気になりますが、きっと聞いても答えてはくれなさそうですし…。

私はちょっと後ろ髪を引かれる思いをしつつも、自室に逃げるのでした…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自室にて。

私の悪い癖ではありますが…白雪さんとはどんな人物なのか、調べてみることにしました。

 

…星伽白雪。

青森県に存在する星伽神社の巫女さん。

これまでの生活としては、中学までは女巫(めかんなぎ)校という全寮制の女子高に通っていました。

…交友関係は…比較的良好。

しかしどこのお店のポイントカードや会員カードを持っていないあたりを鑑みるに、あまり外では遊ばない方のようですね。

 

…ちなみにどうでもいいですがどこの店のポイントカードを誰が持っているかは、ハッキングをかけた状態で複数の店を一斉に名前で検索すれば出てきます。

…恐るべし、理子ちゃん特製ソフト…。

 

…こんなもんですかね?

もうちょっと何かあると思ったのですが…。

 

…うーん、まだ何かある気がします。

キンジ君の事が好きなようでしたし、キンジ君に聞いてみましょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

詩穂→キンジ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜もある程度更け、夜中の11時を回ろうとしていた。

自室で宿題や銃の整備を済ませ、そろそろ寝るかというあたりで…。

 

コン、コン。

弱々しいノックの音が聞こえた。

 

アリアだったらノックもせずに開けてくるし、白雪だったらもっと慎ましやかだ。

…となると、消去法的に…詩穂のようだ。

 

「…入っても、いいですか?」

 

予想通りドアの向こうから少し遠慮がちな声が聞こえた。

夜遅いからだろうか。

 

「いいぞ。」

 

俺は短く答えると、イスに腰を落とした。

すると、ガチャリ…とドアが開き、黄色い水玉模様のパジャマを着た詩穂がとてとてと入ってきた。

 

「あ、あの…夜遅くにすみません。聞きたいことがあって…。」

「なんだ?」

 

聞きたいこと…?

勉強か何かだろうか?

しかしコイツは綴曰く学年主席の頭を持っているらしいからな。

少なくともそういうことではなさそうだ。

 

俺が先を促すと、詩穂は軽く深呼吸して口を開いた。

 

「白雪さんに、ついてです。」

「…白雪?」

「はい。えっと…キンジ君と白雪さんは、どんな関係なのですか?」

 

白雪について、か…。

正直予想していなかった質問が来たので、少し驚きながらも対応する。

 

「どんな関係って…ただの幼馴染だ。それ以上でもそれ以下でもない。」

「…幼馴染、ですか…。」

 

詩穂は少し思案顔をした後、思い切ったようにある単語を口にした。

 

「…星伽神社、ってわかりますか?」

「………なん、だって?」

 

星伽神社。

それは白雪の神社だ。

なぜ、それを詩穂が知っている?

 

…いや、こいつを侮ってはいけない。

こんな、のほほんとしたかわいい顔しておいて割と頭の回転が速い。

大方、白雪の情報を調べたのだろう。

 

「…知っている、みたいですね。」

 

どうやら質問自体が軽いカマかけだったらしい。

…強襲科よりも尋問科や探偵科のほうが向いているんじゃないか?

 

「…確かに知っている。俺は、小さい頃…青森に住んでいたことがあるんだ。そこでよく星伽神社に遊びに行っていた。白雪とは、そこで知り合った。」

「ふむふむ。」

 

そのあと、詩穂に色々と話した。

 

星伽神社特有の厳しい制限、それによる白雪の性格。

小さい頃白雪と一緒に花火を見に行ったことまで話した。

 

正直他人のプライベートなことを話すなど言語道断だが…。

詩穂には、話しておかないといけない気がした。

コイツは出会ってまだ1ヶ月ほどしか経っていないが…。

なぜか、信頼が置けるのだ。

アリアが暴力的なことの反動かもしれないが…。

 

「…とまあ、こんなもんだ。」

「…ありがとうございました。キンジ君。」

 

そういうと詩穂は、俺のほうを見て少しだけ顔を赤くした。

…なぜ?

 

…ああ、こいつ、恥ずかしいんだな。

多分俺の話を集中して聞いていたことが恥ずかしくなったのだろう。

 

詩穂は顔を赤くしたまま俯いて、手を組んでもじもじしている。

 

…ドクン。

 

…な、なぜだろうか。

今一瞬ヒステリア的な血流が来た…ぞ?

 

なんだかよくわからないが、危険そうだ。

とっととご退室願おう。

 

「…用が終わったんなら帰れ。夜遅いし、俺は寝たいんだ。」

 

まぁ寝室にはピンクの悪魔(アリア)が爆睡しているが。

 

「…あ、わ、わかりました!ごめんなさい、もう行きますね!」

 

詩穂は顔を下に向けたまま、とたとたと行ってしまった…。

 

…しかし、なぜ詩穂は急にこんなことを聞いてきたのだろうか?

ある意味アリアと同じくらい行動が読めん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キンジ→詩穂

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…はぁ、はぁ…。」

 

私はキンジ君から聞きたいことを大体聞き、私は自室に駆け込みました。

 

…う、迂闊でした…。

当たり前ながら、キンジ君はお風呂に入った後。

つまり彼がパジャマ姿であることは想定してから行くべきでした…!

 

うぅ、聞きに行ったときは白雪さんのことが知りたくて頭がいっぱいでしたが…。

聞き終わったら気が抜けて、直視してしまいました…!

 

「うぅー!うぅー、うぅー!」

 

枕に顔をうずめて、とりあえず足をパタパタしました。

は、恥ずかしいです…!

あの薄いパジャマの下にキンジ君の…!

 

「うぅーーーー!!」

 

私はその日、寝るまで足をパタパタしていました…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

白雪さんのボディガード(私が白雪さんに命を狙われていますが)が始まってから数日後のこと。

 

私はアリアさんと2人、カフェに来ていました。

…というのも、ここのところはアリアさんが「魔剣」について我を失ったかのように調べ続けているので、私が誘ったのでした。

 

ちなみにキンジ君と白雪さんは、別行動中です。

白雪さんはアドシアード準備委員会に出席、キンジ君はそのボディガードです。

 

「…ふぅ。まぁ、たまには休むのもいいかもね…。」

「はい。アリアさんは頑張りすぎですよ。もう少しゆっくりしてもいいんじゃないでしょうか?」

「……そうね。でも、あんまりのんびりはしていられないけど…。」

 

頼んだ紅茶を飲みながら、アリアさんは言いました。

…やっぱり、どこか張り詰めているようですね。

少し聞いてみましょうか。

 

「…アリアさん、『魔剣』ってそもそも存在するんですか?」

「当たり前よ。ママに冤罪をかぶせた1人だもの。もう近くまで、迫ってきている…。そんな気がするわ。」

 

…根拠は、いつも通りなさそうですね。

これもまた、彼女のカン…なのでしょう。

 

アリアさんは、かのシャーロック・ホームズの曾孫だと言われても…その推理力は頼りないです。

いえ、Sランクとしては充分な推理力は持ち合わせているのですが…いかんせん、シャーロック・ホームズと比べてしまうと首を傾げざるを得ません。

 

しかしアリアさんはカンという一言で全てを悟ってしまう。

シャーロック・ホームズもすさまじいカンの持ち主だったらしいので、アリアさんにはそれが遺伝しているのかもしれません。

 

まあ私は能力の遺伝なんて本人には何も関係ないと思っていますが。

人間を構築するのは周りの環境や人間であって、遺伝子そのものが影響するのは身体的特徴やガン細胞の…話が逸れました。

 

つまり、何が言いたいかというと。

 

「わかりました。じゃあ、『魔剣』についてわかったことを…報告し合いましょうか。」

 

アリアさんを、私は信じているということです。

 

「…え?し、詩穂は…疑わないの?あたしがやっていることに…。」

「疑いません。始めから疑って掛かっていいのはなぞなぞと数学の問題だけです。」

「し、詩穂…!」

 

アリアさんは感極まったように声を漏らすと、真面目な顔に戻ります。

この切り替えの早さも、彼女の魅力のひとつだと思います。

 

「…でも、詩穂には教えられないわ。」

「…え?」

「アンタならバカキンジとは違ってもうある程度調べ始めてるだろうけど…イ・ウーを、これ以上詮索するのはやめなさい。」

 

…アリアさんが、少し不可解なことを言ってきました。

アリアさんはイ・ウーの情報を求めているはず。

なぜなら、イ・ウーを壊滅させることが彼女の母親を救うことになるのだから。

 

「ど、どうしてですか?」

「あんた、公安0課に狙われたいの?」

「……!!」

「そういうことよ。」

 

公安0課。

この国における国家武力の象徴。

その強さ、正しさゆえに特別に…人を、殺めることが認められている存在。

はっきり言って人外の強さを誇る、とんでもない集団です。

 

そしてアリアさんの言葉。

…イ・ウーは、国家機密レベルに危険なワードなのだ、ということを意味しています。

当然そんなことを知っている人間は消されるに決まっているでしょう。

 

…ど、どうしましょう!?

たまたま私が個別にイ・ウーのことを調べているのがバレていなかったので殺されなかったとすると…!?

 

わ、私は気付かずに大変なことを調べまわっていたようです…!

 

「…そういうわけだから、あたしは1人で探す。アンタは今まで通り白雪の護衛をお願いするわ。」

 

…これは。

アリアさんは突き放すような言い方をしますが…その瞳の奥には、優しい色が見えます。

 

これは、アリアさんなりに私を…キンジ君を、心配してくれているのでしょう。

本当に…優しい方です。

 

でも、だからこそ。

 

「…じゃあ、アリアさんだけ危険な目に遭うんですか?」

「そうよ。アンタたちはパートナー…でも、同時に一般人。危険なことに首を突っ込む道理は無いわ。」

「でも、私は知ってしまいました。」

「…え?」

 

私の不意の発言に、アリアさんは首を傾げます。

私は宥めるように、しかしわかってもらえるように。

ゆっくりと…アリアさんに語りかけました。

 

「アリアさんの努力を。覚悟を。信念を。私は…知ってしまったんです。」

「…詩穂。」

「私は、アリアさんの友達です。パートナーです。…仲間です。だから、どんなに頼りなくても、どんなに情けなくても…頼って、欲しいんです。」

 

アリアさんは呆然としながらも私の言葉を聞いてくれました。

私は言葉が伝わるように、続けます。

 

「アリアさん。あなたを助けて、あなたを笑顔にするために…私は、キンジ君は、あなたのパートナーになったんですよ?」

「……!!」

 

アリアさんは予想だにしていなかった言葉を聞いてしまったかのように、固まりました。

…そして、数瞬後。

彼女は苦笑いしながら答えてくれます。

 

「…全く。アンタには敵わないわ、詩穂。」

「…ふふっ。お褒めに預かり光栄です。」

 

すこしふざけた調子で返すと、ここのところあまり見られなかった…。

アリアさんの笑顔が、見えるのでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、周りの人にバレないようにアリアさんと情報を交換した後。

私とアリアさんは、もう先に部屋に到着しているであろうキンジ君と白雪さんの所に向かっていました。

 

「…振り返ってみると、なんだか私とアリアさんは不思議な出会い方でしたね。」

「…あたしが、詩穂に話しかけたのよ。アンタが強猥魔に襲われた被害者だと思ったから。」

 

そ、そうだったのですか…。

確かにあの時かっこいい方のキンジ君に助けてもらい、気絶していましたが…。

あの時私を起こしてくれたアリアさんには、そういう意図があったのですね。

 

「あの時はびっくりしましたよ。急にアリアさんが名前で呼べなんて言うから…。」

「あ、あはは。そんな感じだったかしら?でも…どこか、あたしのカンが言ってたのよ。この子はあたしに必要だ…ってね。」

 

アリアさんはどこか恥ずかしげにそう言うと、ぷいっと顔を背けてしまいました。

 

…あの時。

もしもアリアさんが話しかけてくれなかったら?

もしも私が蘭豹先生に部屋を奪われていなかったら?

もしも理子ちゃんがキンジ君を狙わなかったら?

 

…私はそんなありえない偶然が重なってアリアさんと友達になれたことを、夜空に感謝しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

部屋の前にに辿り着くと。

中から不審な声があがりました。

 

「キンちゃんやめて!放して!」

「おとなしくしろ!」

 

…うん?

疑問に思ったのも束の間、アリアさんが玄関のドアを開けました。

 

「ただいまー…。」

 

そして、アリアさんと私は目の前の光景に固まりました。

 

脱衣所の前で繰り広げられていたのは。

 

服をはだけさせて頬を上気させ、潤んだ瞳の白雪さん。

上半身裸で、白雪さんの服を掴むキンジ君。

 

そして、先程の会話。

 

『キンちゃんやめて!放して!』

『おとなしくしろ!』

 

…あっ(察し)

 

…………数瞬の沈黙の後。

 

「…こ…こんのぉぉぉぉ…!」

 

アリアさんは正気に戻ると同時に、鬼のような殺気を発し始めました。

 

「バカキンジぃぃぃぃぃ!!!!」

 

…ごめんなさい、キンジ君。

さすがにアウトです。

 

アリアさんは全力でキンジ君を撃った後…。

まだまだ寒い春の東京湾に、キンジ君を突き落としてしまうのでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日。

やっぱりというべきか、キンジ君は風邪を引いてしまいました。

連日白雪さんの護衛で疲労が溜まっている中でスタイリッシュ着衣水泳をしたのだから当然です。

 

アリアさんはそんなキンジ君を見て一言、「だらしないっ!」

しかし昨日のことはさすがに水に流したのか、そのまま学校に行ってしまいました。

白雪さんも全力でキンジ君を看病しようと学校を休もうとまでしましたが…キンジ君に行くように言われ泣く泣く学校へと行きました。

 

…そして、私はというと…。

 

「…具合はどうですか?キンジ君。」

「ゴホッ…ゴホッ。なんでいるんだよ…。」

 

キンジ君の看病に残りました。

私も白雪さん同様に学校へ行くように言われましたが…正直学校の授業よりもキンジ君が心配でした。

 

というわけで、一旦学校へ行ったフリをして戻ってきたというわけです。

 

「えへへ、休んじゃいました。ご飯はいりますか?お粥でも作りましょうか?」

「今は、いらない。…悪いな。」

「いっいえ!わ、私が好きでやっていることですので!…えっと、タオルを持ってきますね!」

 

いつもより弱々しいキンジ君を見て…。

キンジ君には申し訳ないですが、かわいいと感じてしまいました。

私は顔が少し赤いことを悟られないよう、タオルを取りにいくのでした…。

 

氷水で濡らしたタオルを額の上に乗せてあげると、キンジ君は幾分か楽になったのか眠ってしまいました。

 

…さて、私はお薬でも買いにいきましょうか。

今はちょうどお昼休みくらいの時間帯です。

キンジ君が眠っている間に、この前キンジ君が言っていた怪しい薬『特濃葛根湯』を買いに行きましょう。

 

場所は確か…アメ横のほう、でしたよね。

ちゃんと場所もパソコンで確認し、私は怪しい薬を売っている怪しいお店へと向かうのでした…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

薬屋にて。

なぜか、バッタリアリアさんと遭遇しました。

 

「…あ、アリアさん?」

「し、詩穂!?アンタどうしてここに…?」

 

まさに意外。

意外な場所で意外な人物に出会ったことに、お互い目を丸くしました。

とりあえず汚い雰囲気のお店を出ます。

 

「私はキンジ君のお薬を買いに来ただけです。アリアさんは?」

「あたしだって…ち、違うわよ別に!キンジに早くよくなってもらいたいとかそういうんじゃなくて、ただアイツが機能して無いと白雪の護衛が面倒になるっていうか…!」

 

アリアさんは急に顔を真っ赤にしながらツンデレな台詞をマシンガンの如くまくし立てました。

…リアルツンデレって、かわいいなぁ…。

 

「…そ、そういうわけだから!別にあのバカのためじゃなくてあたしの為なの!そうよ!あんなだらしないバカ、知らない!」

「わかりましたって。」

 

アリアさんの言い訳を軽く受け流しつつ、アリアさんの買った薬を盗み見ると…。

やはりというべきか、特濃葛根湯でした。

アリアさんも、あのときのキンジ君の言葉を覚えていたのですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

部屋に戻ると、アリアさんはまたそそくさと学校に戻っていってしまいました。

私は…キンジ君の看病の続きです。

 

14時頃にまた目を覚ましたキンジ君にお水をあげた後、お薬を渡しました。

 

「…助かった、ちょうど切れていたんだ。…ただ、どうして2つ袋があるんだ?」

「へ?ああ、これは…。」

 

1つは私が、1つはアリアさんが買ってきたものなのですが…。

どうしましょう、アリアさん、私が本当のことを言うと怒るでしょうか…?

…まぁ、特に隠す必要のありませんし、教えても大丈夫でしょう。

 

「…1つは私が買ってきたもので、1つはアリアさんが買ってきてくれたんですよ?」

「…アリアが?」

 

キンジ君はありえないものを見つけたように、アリアさんが買ってきた袋を見つめました。

…確かに、キンジ君ビジョンではアリアさんはただの迷惑で凶暴な人でしょうし。

 

「本当ですよ。アリアさんも、アリアさんなりにキンジ君を心配してくれているんです。」

「…そ、そうか…。」

 

…あ、失敗しました。

これ、今の私の失言のせいで絶対キンジ君の中のアリアさんの好感度が上がりましたよ…!

 

…くそう、敵に塩を送る形になってしまいました…。

し、しかし、買いに行ったのは私も同じです!

 

私の好感度だって上昇しているはず…!

 

「…また眠くなってきた。もう一度寝てくる。」

「へ?あ、はい、おやすみなさい…。」

 

キンジ君はそう言うと、あくびをしながら寝室へと向かっていきました…。

 

…もう看病の必要はなさそうですし、私も少し眠りましょうか…。

ということで、私も自室に戻って夕方まで眠るのでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目が覚めると、時刻は16時になっていました。

…ちょうど、ガチャッと玄関から音がしました。

 

…足音的に、白雪さんが帰ってきたようです。

私も起き上がり、部屋を出て居間に向かいます。

 

「あっキンちゃん、カゼ、大丈夫?」

「大丈夫だ。熱も下がったし頭痛も取れた。」

「よかったぁ…よかったよう…ぐすっ、ひんっ…。」

 

白雪さんはキンジ君の熱が下がったことに安心したのか、嬉し涙を流しました。

…多少ヤンデレチックではあるものの。

白雪さんは、本当にキンジ君のことを想っているのですね…。

 

「キンジ君、治ったんですか?」

「ああ。お前たちが買ってきてくれた特濃葛根湯のおかげで、寝たら一発で治ったよ。」

「ふふ、よかったです。」

「それと…詩穂、看病してくれてありがとうな。」

「ふぇっ!?い、いえ、当たり前のことをしたまでです!」

 

キンジ君から感謝の言葉をもらえました。

…う、うれしいです…!

何はともあれ、すぐに治ってくれたみたいでよかったです。

 

「…今、詩穂が看病してたって言った…?」

 

…あ、そういえばヤンデレさんでしたっけ、白雪さん…?

 

「ふ、ふふ。詩穂、そんなうらやまゲフンゲフンうらやましいことしてたんだ…?」

 

白雪さんの瞳孔が、だんだんと開いていきます…!

こ、怖っ!

というかゲフンゲフンした割には内容が変わっていませんよ!?

 

「…詩穂も、東京湾を泳いでみたいよね?」

「ぜ、全然泳ぎたくないです!遠慮します!」

「あ、泳げないんだっけ?まあ、何でもいいけど…。キンちゃんを誑かした罪は重いよ?」

 

白雪さんの目のハイライトが…!

どんどん、どんどん消えていきます…!

 

「私ね、人間は塩分も必要な栄養だと思うんだ…。詩穂も、そう思うよね…?」

「あ、あはは、そ、そうですね…!わた、私ちょっと部屋でやりたいことが…。」

「たくさん飲んでもいいんだよ…?」

 

塩分の話とか明らかに海ですよね!?

こ、これは落とされる!

私も東京湾に落とされてしまいます!

 

白雪さんは日本刀を抜いて、ゆったりと私を追い詰めていきます。

 

え、援軍は…そうだ、キンジ君!

 

「き、キンジく…あれ!?いない!?」

「キンちゃんならもうお部屋に戻ったよ…?」

 

キンジくぅぅぅぅん!

あ、部屋の隙間からこっち見てます!

 

キンジ君をよく見ると…なにやら目をパチパチしています。

…マバタキ信号?

 

えーと、なんでしょう…?

 

シラユキ キケン ケントウ イノル…。

白雪危険、健闘祈る…って!

 

キンジサァン!!

ナズェミテルンディス!

オンドゥルルラギッタンディスカー!

 

キンジ君は手を合わせて「スマン」のポーズを取ると、そそくさと部屋に行ってしまいました…。

 

「ふ、ふふ、詩穂…覚悟はいい?」

「う、うああ…!」

 

とうとうベランダまで追い詰められてしまいました。

…これ、諦めたほうがいいんでしょうかね?

 

白雪さんは日本刀を大きく振り上げ、私の頭に標準を合わせているようです。

…マジで泳げないので、絶対に飛び込みは避けたいですが…。

そんなことを言っている場合ではないようですね、ハイ。

 

「……うぅ、もし風邪を引いたらキンジ君に看病して欲しいです…。」

 

私はその言葉を最後に、東京湾へとダイブするのでした…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後日。

なんとか生還はできましたが、もちろん風邪を引いたのは言うまでもありませんでした。

白雪さん、容赦ないですね…。

 

「うぅー、くらくらします…。」

 

しかしキンジ君が看病してくれるはずは無く、白雪さんもとっとと学校に行ってしまいました。

…アリアさんも、学校に行ってしまったようです。

 

試しに熱を測ってみたら38度くらいでした。

こんな頭じゃゲームもまともにできませんし…。

仕方なく私は、自室のベッドで寝転がっていました。

 

………暇です。

解熱剤を飲んでおいたので今はある程度楽ですが、起き上がったら頭痛が復活するので起きるに起きれません。

かといって寝てると暇です…。

 

……暇、ですねぇ…。

しばらくボーっとしていると。

 

…ガチャリ。

玄関から音がしました。

 

誰かが帰ってきたのでしょうか?

今の時間帯は…ちょうどお昼休み。

…どなたでしょう?

 

私の頭が回る前に、私の部屋のドアが開きました。

そこに立っていたのは…。

 

「…詩穂まで熱が出るなんて、白雪は本当に迷惑ね。」

 

アリアさん、でした。

 

「アリアさん…?学校は、どうしたんですか?」

「あたしは卒業に必要な単位は揃えてあるの。だから強襲科にわざわざ顔を出す必要も無いわ。」

 

アリアさんはそういうと、私のほうをじーっと見つめてきました。

 

…じーっ…。

 

「あ、あの…アリアさん?」

「え、えっと…その、な、なんか欲しいものはある?」

 

…どうやら。

看病してくれる、みたいですね。

…本当に優しい方です。

 

「…じゃあ、お水をお願いできますか?」

「わかったわ。他には?」

「えっと…大丈夫です。お願いしますね。」

「ん。行ってくる。」

 

アリアさんは部屋を出ると、キッチンのほうへ向かっていきました。

…アリアさんはわざわざ、学校から戻ってきてくれたみたいです。

授業は一般教科さえ受ければ彼女が先程言っていた通り単位は大丈夫なのでしょう。

 

…この優しさを、素直にキンジ君にも見せてあげればいいのに。

 

「はい、水。」

「ありがとうございます。」

 

頭痛を我慢して起き上がると、アリアさんから受け取った水を飲みます。

 

ごく…ごく…。

 

熱があるときに飲むお水は、本当においしいと思います。

 

ごく…ごく…。

 

お水を飲み終わると、私はアリアさんに話しかけました。

 

「…アリアさん、少しだけいいですか?」

「うん?何?」

 

アリアさんはいつもよりも優しい笑顔で私に向き直ってくれます。

…真正面から見ると、本当にかわいい顔立ちですね…。

女の子ながらドキッときます。

 

「…『魔剣』、のことですが。」

「…アンタは病人なんだから、こんなときまで依頼の話はしなくていいの。」

「いえ、ちょっとだけ、です。」

 

アリアさんは病気の私を気遣ってくれますが、私は少し話したいことがありました。

アリアさんもそれを感じ取ってくれたのか、それ以上は咎めたりしませんでした。

 

「…アリアさんは、どうやって『魔剣』を逮捕するんですか?私の予想では…『魔剣』はきっと用意周到というか、しっかり作戦を組むタイプに思えるんです。いままで都市伝説化されてしまうぐらい姿を見せてきませんでしたから。きっと白雪さんをボディガードしていても、なかなか出てきてくれないと思うんです。」

「その通りよ。『魔剣』はイ・ウーでも指折りの策士。きっと、そう簡単に尻尾は出さないでしょうね。」

「じゃあ、どうやって…?」

 

イ・ウーでも指折りの策士。

…そんな有名な方を、なぜ叶さんは知らなかったのでしょう…?

私は少し疑問を持ちつつも、アリアさんの作戦に耳を傾けます。

 

「簡単よ。あたしがボディガードを外れればいい。」

「…え!?そ、それじゃあ白雪さんが…。」

「あたしは外れるとはいっても、遠くからちゃんと見ているわ。それに…キンジにも協力してもらう。」

「…キンジ君、にも?」

「まぁあたしはあたしで動くから。詩穂も適度に守ってくれていればいいわ。アンタなら大丈夫よ。」

 

…アリアさんは。

こんな使えないダメ武偵を、信頼してくれているのでしょうか?

嬉しくもあって、でも少しプレッシャーを感じてしまいます。

 

「アドシアードに、アイツは来るわ。ちゃんとそれまでにカゼ治しときなさいよ。」

「…わかりました。」

 

アリアさんの言うカン。

根拠が無くて、本人にも自信がなさげです。

…でも、彼女は断言します。

きっと…彼女のカンは、当たります。

そんな根拠の無い私のカンが、そう告げるのでした…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私はその日一日中眠ったおかげで、次の日には元気になりました。




読了、ありがとうございました。


今回は…あまりストーリー自体は進んでいません。
次回からはアドシアードに入っていくので、ストーリーは進むと思います。

白雪のヤンデレを書こうとしたら全然上手く書けていなかったりです。
もっと努力しないとですね。
頑張ります。

感想・評価・誤字脱字の指摘等を情け程度でもいいのでお願いします。
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本当にありがとうございます!
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