「準備は出来ているようだな」
滑走路に着いた黒鷹の前には戦闘爆撃機、雷電mkⅡがすでに発進準備を終え待機している状態だった。
雷電mkⅡ
時代を行くステルス性能をかなぐり捨てた超高空戦闘爆撃機。
ステルス性を捨てた代わりに強力なジャミング機能が備わっており一時的に周囲のレーダ網を麻痺させる事が可能。
蒼を基調としたカラーリングに巨大な吸気口に、むき出しの武装や爆装。
だがそれ以上に印象的なのが全長15m近くある機体の半分近くを占める巨大な双発可変式噴射推進機関。
これは単体で大気圏を突破できるほどの推進力を持つと言われているが、その代償として強力な光と軌跡を残すためジャミング機能を使っても目視で簡単に見つけられてしまう。
ただあまりに長い軌跡と強力な光な為、地上からは速度の遅い流れ星と勘違いされることが多い。
こちらは初代雷電の改良型でISで確立された対G技術と、それでも離陸時の殺人的なGの前では並みのパイロットではまともに操縦すら出来ないため
これにより操縦者は擬似的に空を飛ぶ、という感覚を得られるため飛行機乗りにとって夢のようなシステムである。
「黒鷹、待っていた」
「オンちゃんがパイロットか」
黒鷹が雷電に近づくとパイロットスーツを着た黒鷹と同い年くらいの女の子に声をかけられた。
彼女の名は《オストヴィント・ラインリッヒ》
真っ白できめ細かい髪を腰まで伸ばし、赤黒い瞳を持つ彼女はドイツで開発されていた脳チップの被験体として作られた試験管ベビーで、試験中に脳チップが不具合を起こし高い負荷が脳にかかり続け脳死寸前だったが試験に参加していた黒鷹と健一により一命を取り留める。
この影響でドイツの脳チップに関する研究は打ち切られ、行き場の無くなったオストヴィントを黒鷹と健一が保護。
そして脳チップの研究は桜井研究所のみで行われることになった。
「目標地点まで約2700km、飛ばすからしっかり掴ってるように」
「オンちゃん、よろしく頼む」
黒鷹が後席に座り込むのを確認するとキャノピーが閉まり、アイドル状態だった噴進機が唸りを上げたかと思うと強力な力で座席に押し付けられ身動きが取れなくなるほどのGが掛かる。
「ぐっ!!!......っはぁ~。相変わらず殺人的な加速だ」
「そうだな、私でもGに耐えるだけなら出来るが脳チップが無ければ操縦は無理だ」
訓練された者でなければ離陸すら出来ずブラックアウトしてしまう機体だが黒鷹は周囲の気の流れを操り自身にかかるGを軽減し、オストヴィントは試験管ベビーであるため生まれながらにして身体能力が強化されているため耐えることが出来る。
だが初代雷電の正式パイロット二人はIS技術も、没入システムもない完全手動制御の機体で大気圏を突破し、再突入までやってのけたと言うのだから恐ろしいものである。
「到着予定は約30分後、博士から追加のデータが届いているから確認しておくように」
すぐさま送られてきたデータには研究所の位置や突入経路、鈴音が受けている処置、二重人体化計画に関する情報などが記されていたが、その中でも1つ気になる事があった。
「アメリカ軍の介入?」
送られてきたデータによると、
ただ、なぜアメリカ軍が介入してきたか等の詳しい情報はわかっていないらしい。
そういった情報を踏まえつつ、最悪の場合を仮定しISと生身でやりあう覚悟を決める黒鷹であった。
「黒鷹、簡単な作戦を説明する」
現在、黒鷹とオストヴィントの乗る雷電mkⅡは高度3万mを時速5000kmの速さで目的地に向かって進んでいる。
黒鷹はオストヴィントから送られてきた作戦概要を確認する。
目標の研究所は地下にあるため、黒鷹は高度1万mから雷電mkⅡのボンバーと共に降下し、ボンダーで抉られた地表から直接研究所へ進入。
その後迅速に凰鈴音の捜索と救出。
道中をマッピングしながら気になる所があれば印をつける。
黒鷹とボンバーを投下した雷電mkⅡはすぐさま博士と特機自衛隊の乗る輸送機の護衛に回ること。
「とにかく時間が無いからごり押しだ。そろそろ降下地点に着くから準備」
「うむ」
大まかな作戦を確認し、全身の気の流れを活性化させ気持ちを切り替える。
やがて降下地点である研究所の上空高度1万mに到達すると雷電はホバリングモードに移行する。
「ボンバー投下と共にキャノピーを開く。私を凍死させたくなかったらすぐに飛び降りるように」
「自分で救ってそんなんじゃ笑われてしまうな」
「当たり前だ、私と同じ様に鈴音も救って来い」
「当然」
黒鷹はオストヴィントと軽くやり取りをし、気持ちを落ち着かせると開かれたキャノピーから研究所へ向かって飛び降りた。
「障壁展開」
気の障壁
周囲の気の流れを固着させ不可視の壁を作る気巧術の基本防御術。
気巧術の基本技は非常に多様性に優れており、防御の障壁、と
この気の障壁は形を自在に変えることが可能で、自身の身体を覆うような物から離れた対象を囲う様な物まで術士の腕と気の量しだいで様々のことが可能である。
そして降下している黒鷹は氷点下40度を下回る外気から護るため薄い膜のような気を全身に纏い、周囲の気の流れに乗りながら時速200km前後の速度を維持しボンバーと共に降下して行く。
地表が近づいてくると黒鷹は減速し、ボンバーの爆発に備える。
ボンバーが爆発すると地表は大きく抉れ、直径100m程のクレーターが出来上がる。
黒鷹は爆風の煽りを受けながら周囲を漂う気を蹴って空中を自在に飛び回る
「領域展開」
気の領域
周囲360度に特殊な気の膜をレーダー波の様に広げていく人間レーダー。
普通のレーダーと違い、気を付着させることによって動きのある物を常に流れで感じる事が出来るようになる。
さらに薄い壁程度なら透過して行くため壁の向こう側を探るのにも使える。
「鈴はどこだ........見つけた!!多少気の流れが荒くなっているが鈴で間違いない。まだ間に合う、絶対に助けてやるからな、鈴!!」
鈴音が無事だと、まだ助かる見込みがあると理解すると気合いを入れ全身の気の流れを更に活性化させる。
そして活性化された膨大な気の流れは本来気巧術士にしか見ることのできない不可視の流れが赤いオーラのように黒鷹の周囲に浮かび上がるほどであった。
黒鷹は今までに感じたことのない気の高まりに驚きつつも鈴音の事をここまで気にかけていたのかと、そうでありながら鈴音がここまで危険にさらされるまで気が付けなかった事を悔やむ。
そうして覚悟を決めた黒鷹は掌に気を圧縮させて地面に叩きつける。
そうして抉られた地面は目標の地下研究所の天井を崩し通路に達していた。
黒鷹はそれを確認すると臆する事なく飛び降り、通路を風のように素早く音もなく駆け抜ける。
「な、何だ地震か?」
雷電から投下されボンバーは、その破壊力の余波を地下深くの研究所最深部にまで伝えた。
ここは黒鷹が目標としている地下研究所の最深部。
鈴音を初めとするIS操縦者に対して非人道的な処置をを施している場所でもある。
そして研究所のモニターには強制適合処置を受けた鈴音の適合率が刻一刻と完全適合に向けてが高まっていくのが表示されていた。
そして薄暗い研究所の最深部では数名の研究員が鈴音の処置が完了するのを今か今かと待ちわびていた。
「何 !?爆撃だと?」
「っち、もう少しで完了するというのに!!」
黒鷹が手にしている情報の中にここで研究していると思われている二重人体化計画の情報があるが、こちらは致命的な問題があるためここの研究所のでは二重人体化計画を元にした新しい計画が進められていた。
そして、鈴音は新しい計画、《偽りの電子体》 の被験者なのである。
「早くしろ!!強情な奴め」
鈴音の予想以上の抵抗の強さに苛立ちを露にし机を思い切り拳を机に叩きつけようと腕を振る。
「は?」
だが拳は叩きつけられる事無く、机には液体が撒かれるだけだった。
「あ......あぁぁぁぁ!!!腕が、腕がああああ」
先程まで苛立っていた研究員はいつの間にか切り落とされていた手首から先を見てパニック状態に陥る。
「やかましいんだよ!!」
そして暗がりから現れた一つの影が横薙ぎに腕を振るうと研究員の頭が飛んだ。
首から大量の血を噴出しながら倒れる研究員の向こう側にいたのは刃渡り20cmほどのナイフを持つ一人の女兵士、その名を《イーリス・コーリング》
「な、何者だ!!っ!!」
研究員が倒れ僅かな静寂の後、生き残っている研究員の一人が口を開くが次の瞬間には研究員の全てが首を撥ねられ、帰らぬ者となった。
「さって、何者だかしらねぇが邪魔者が入らないうちにデータを戴くとするか」
そう言ってナイフに付着した血を払い鞘に戻す。
「おいコーリング、少しは自重しろ」
イーリスが研究所に現れてから少し遅れて4人の武装した兵士が入ってきた。
先頭に立っていた黒人の兵士が呆れたように声をかけるが、そんな物はどこ吹く風と軽く流し研究データを漁るイーリス。
そう、彼女らの目的はここで行われて非人道的な研究のデータ。
いくらアメリカが超大国とは言え、この様な非人道的な研究を行い敵を増やすのは得策ではない。
なのでアメリカはこうやって研究が成熟したところでデータだけを横取りするのであった。
「ほう、二重人体計画の発展型ねぇ」
イーリスは鈴音の姿と適合率が表示されているモニターを眺めながら二重人体計画の発展型、偽りの電子体に関するデータを興味深げに読んでいる。
「お、ちょうど適合準備も整ったみたいだし、どの程度の物かこの目で確認してやろう」
「おいコーリング、余計なことをするな」
「へっへっへ、ダイジョーブだって。どれどれー、これか......」
ドクン
な、何だ声がでねぇ
ドクン
身体も動かねぇ
ドクン......ドクン......
大気が震える、心臓を鷲づかみにされた様な胸の苦しさを感じる。
目の前が赤く染まっていく、恐怖が全身を支配する。
-----鈴に手を出すな------
イーリス・コーリングの乗っているISの武器がナイフと拳と聞いて忍者っぽいキャラにした。
イーリスファンの方ごめんなさい
後雷電の詳しい資料が見当たらなかったのでちょっとだけ変な装置がついてたりする。
R-15と残酷な描写のタグを付けてるけど、これ位の描写なら問題ないよね?