IS 武道家は鬼神の如く   作:mizurahi

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4話 偽りの電子体

「もう少しだ。鈴、無事でいてくれよ」

 

研究所内を風のように走り抜ける黒鷹は扉を壊し、壁を壊し、床だろうと天井だろうと辺り構わず破壊し鈴音の下へ最短距離で向かう。

だがそんな中で領域内で不穏な気の流れが渦巻いている一角を見つける。

人の様で人でなく、物の様で物でない。

今までに感じた事のない流れに嫌な予感がした黒鷹は僅かに道を逸れ、その一角へと向かった。

 

「ここか、とりあえず一瞬だけ確認して後は自衛隊に.....」

 

不穏な気が流れている場所は研究所内になる扉の向こう。

黒鷹がその扉を開くと中では想像を絶する光景が広がっていた。

 

部屋の中には年端も行かぬ少女達の亡骸で溢れていた。

黒鷹が鈴音の危機を察知したときに現れた姿のように真っ白で痩せこけ、目が潰れていたり頭部のいたるところから血を流していたり。

だがここに打ち捨てられている少女たちはそれだけではなかった。

 

ISと半ば一体化している

 

背中から生えた巨大なスラスター。

肘の先から伸びるISの腕部、そしてその先から生えている生身の腕と中間のISの腕部分無理やりに伸ばされた神経や血管。

腹部から飛び出した内臓とコード類とスカート型装甲。

脹脛から生えている小型のスラスター。

 

この世のものとは思えない姿をしている少女達。

ISのコア反応こそ無いものの、明らかにIS用の武装や装甲を取り付けられた後がありこの研究所で行われている研究の異常さを痛感した祐治はマッピングしている地図に印をつけると健一にそのデータを送り、鈴音の下へと急いだ。

 

 

 

 

 

 

「まだ、大丈夫だよな?」

 

先程の少女の姿から変わり果てた物を見て不安に押しつぶされそうになる黒鷹。

 

「黒鷹、急げ。研究所の端末から情報を引き抜いている奴らがいる。多分アメリカ軍だ」

 

健一からの通信と共に一つの映像データが共有された。

それは現在最深部の研究室で起こっている出来事をリアルタイムで伝えていた。

イーリスが研究員をナイフで撥ね、他の隊員と共に鈴音の入ったカプセル状の容器をいじり始めたところだった。

 

 

やめろ

 

その汚い手で鈴に触るな

 

 

映像の中で笑いながら鈴音を眺めているイーリスに

今まさに鈴音に施された偽りの電子体計画の最終段階を終えようとしているイーリスに

 

鈴に手を出すな!!!

 

イーリスに向けて濃密な殺気を向けると同時に手のひらに圧縮された気を床に叩きつける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「鈴から離れろ!!!」

 

「なっ!!」

 

今まさにイーリスが端末を操作しようとした瞬間天井を打ち抜き黒鷹が現れる。

 

「裂!!!」

 

 

気巧波 裂

 

気巧術の基本的な攻撃方法の一つ気巧波。

圧縮された気を炸裂させ様々な現象を起こす技術

そしてこの裂は対象の足元から強力な塵旋風を発生させ、それによって発生する風で対象を切り刻む技で、衣服や薄皮に傷をつける程度から、骨ごと断ち切る強力な物まで威力は様々である。

 

 

「がはっ」

 

裂により皮膚を薄く切り刻まれ怯んだイーリスに黒鷹は一気に近づき床に顔から叩きつけると首にぶら下げているドッグ・タグ(待機状態のファング・クエイク)を毟り取り、杭状に圧縮した気を投げつけて衣服と床を縫いつけ拘束する。

 

「貴様!!!」

 

目にも止まらぬ速さでイーリスが無力化され、唖然としていた兵士達であったがすぐさま正気を取り戻し黒鷹に向けアサルトライフルを撃つ。

だが黒鷹は障壁を展開することでそれを防ぐ。

 

「こいつ化け物か!!撃ちまくれ」

 

その声に全員が武器を構え黒鷹に向けて一斉に攻撃を始めようとした時、天井から三つ影が割って入る。

 

「それはよしてもらおう。彼らを本気で怒らしたら手が付けられないからね」

 

「大人しくしていろアメリカの犬め」

 

「あまり挑発するな」

 

「博士!!」

 

「特機自衛隊!?」

 

天井から現れたのは90式強化外骨格を身に纏った健一と、新型の10式強化外骨格を身に纏った二人の自衛官だった。

それに何より驚いたのはイレイズドの兵士達であった。

特殊機動兵器自衛隊は世界で唯一ISを使わない対ISの専門部隊である。

普通の人が聞けば世界最強の兵器であるISに向かってそれ以外で挑む事などただの自殺行為としか思えず信じはしないだろう。

それにISが通常兵器に倒されては余計な混乱を招くと、IS委員会が躍起になって情報統制を行っているお陰か一般人には特機自衛隊の情報は殆ど流れてこない。

だがイレイズドの兵士たちは違う。

彼らは知っているのだ、特機自衛隊が実際にISを打ち倒したと言う事実を。

 

 

「なんでこんな所に特自がいるんだ」

 

「それはこっちの台詞なんだけどね。ちなみに僕達がここにいる理由は、そこにいる黒鷹の護衛と、彼の未来のお嫁さんの救出。で、君たちは?まさかとは思うけど、ここで研究している物の情報なんていわないよね?」

 

「そんなわけ無いだろ。我々はここで違法なけ「時間が無いんだ、どけぇ!!」

 

黒鷹にとってはアメリカがここへ何をしにきているかなど一切興味が無く、それなのに長々と話し込む姿を見て我慢の限界を向かえ、喋っている兵士の正面で圧縮された気を炸裂させ吹き飛ばす。

 

「ぐはぁ!!」

 

「あー、ごめんごめん。だけど作業は始めてるから安心して」

 

確かにその言葉通り、甲冑から一本の線が端末に向かって延びており、モニターを見れば様々な数値が書き換えられているところだった。

 

「調子に乗るなよ貴様ら!!」

 

黒鷹に吹き飛ばされた兵士がよろよろと立ち上がると手にしたアサルトライフルを構える。

それに合わせて残りの3人も同じ様に銃を構え黒鷹達に向ける。

 

「馬鹿な人達だね」

 

武器を向けられた事に一切関心が無い健一の発言と共に黒鷹と10式を装備した二人の自衛官が四人を無力化していた。

 

まず自衛官二人がそれぞれ一人ずつを、そして残り二人を黒鷹が。

ISが現れたと言えど、いまだに軍事力で言えば世界一のアメリカであるが、その最強の軍隊の特殊部隊をものともしない黒鷹と自衛隊の実力を推して測るべきだろう。

 

「これで集中できるかな?」

 

「いや、来るぞ本命が。さっきから怪し動きをしている奴がいる、それが一直線に向かってきている」

 

先程から領域内で不規則に動き回る反応があったが敵意を向けてきているわけでは無かったので放置していたが、それがこちらに向かって一直線に向かってきているとなると話は別。

ISでもない人間でもない、防衛設備か何かが作動した可能性もある。

とにかく得体の知れない何かに対応すべく黒鷹はイーリスから奪ったドッグ・タグを返すと杭場の気を霧散させる。

 

「おい、あんた何時まで寝てつもりだ?それで味方くらい守ったらどうだ」

 

「言われなくたって.....ったく変な術使いやがって体中いてぇじゃねぇか」

 

黒鷹の裂により受けたダメージに顔を歪めながらも受け取ったファング・クエイクを展開し身に纏う。

本来ならISで黒鷹や特機自衛隊を葬り去り、データを戴いて味方と共にこの研究所を脱出したいところだが、近接格闘戦で負け無しの自分を圧倒した黒鷹の実力や、甲冑の存在があるため大人しく従う事にしたイーリス。

 

「おい、ISの視覚情報を録画しておいたほうがいいぞ」

 

「はぁ?」

 

こいつは何を言っているんだ?と思いながらもイーリスは黒鷹に言われた通り視覚情報を録画しながら伸びている味方の元へ向かう。

 

「あーいてぇなぁ。畜生、パワードスーツで殴られたのは始めてだわ」

 

痛い痛いと悪態をつきながら一人の兵士が起き上がる。

 

「おい、大丈夫かしっかりし......ろ?」

 

「あ?なんだ.......おいおい!!なんだよこれ!!」

 

起き上がった兵士の下へイーリスが向かおうとした瞬間、そいつは天井から降り立った。

 

「偽りの電子体」

 

健一が呟いたそれは先程黒鷹が見つけた少女達の亡骸が動いている姿だった。

 

 

偽りの電子体(disguise Elecetron donor)

 

二重人体で培った技術を昇華させ作り出されたこの技術はISコアネットワーク内と現実世界、二つの世界に同じ肉体を存在させる二重人体と違い、コアそのものを支配してしまおうとする物。

没入システムを使いコアその物に直接没入し、それを掌握しようと言う非常に簡単な物であるが、没入してしまうと現実の身体を動かす事ができなくなるため 偽り(disguise)電子体(Elecetron donor) を作りだし、それでコアを掌握しようという考えが生まれたが、コア自体が判断する本来の電子体と、人為的に生み出された電子体で構造が僅かに違うため、偽りの電子体でコアを掌握した状態でISを展開すると電子体の構造が優先されるためこの様に生身と機械(IS)が混ざり合った状態になってしまう欠点がある。

そして一度展開したISを解除した場合、身体がバラバラになるため解除は不可能、生死を問わないならばのそ限りではないが。

 

「なんだよ、なんなんだよこれ!!!」

 

動くたびに切れる血管や神経。

生身の部分から生えたISの部品は皮膚の強度が足りず動くたびに皮膚を切り裂きながら揺れ、限界を迎えた部品が皮膚と共に地面にずり落ちる。

狂気の表情を浮かべた少女の頭部からは脳みそや切れた血管がはみ出し口元は何かを訴えるかのように閉じたり開いたりを繰り返す。

 

この世の者とは思えない姿をした少女を前に冷静さを失った兵士が銃を向けるが、それに反応した少女だった物は撃たれるよりも早く兵士に近づくと、肩から肘までが生身、その先の前腕部がISの碗部、そしてその先に生身の手首から先が生えている右腕で兵士を殴る。

 

「ごふっ.....」

 

殴られた兵士は上半身と下半身が千切れ、少女だった物は生身の部分にISのパワーアシストがかかったため手首から先が原型を留めないほどに押しつぶれ、さらに上腕骨が折れだらしなく垂れている。

 

「あ....あががが...いぎぎぎぎ」

 

そして少女だった物は使い物にならなくなった右腕を見ながらうめき声を上げる。

 

「これは予想以上だね。さっき黒鷹から貰った地図データに付いていた印の部屋も調べてるみたいだけど、本物は違うね」

 

「もう少し遅れていたら鈴もこうなっていたのか」

 

「そうだね、後数分でも遅れていたらこうなっていたかもね」

 

黒鷹としては目の前にいる形容しがたい研究の成れの果てに哀れという感情を覚えるが、それ以上に鈴音がこうならなくて良かったと安堵するのだった。

 

だがそれも一瞬、先程までうめき声を上げていたそれは、ゆっくりと黒鷹達に向き直り本来の意味で無傷、では無いが無傷の腕を掲げると左手が光に包まれる。

光が収まるとその左手には腕と混ざり合った武器が展開されていた。

展開された武器はアサルトライフルか何かなのだが、本来の姿とは程遠く歪な本体から指や血管が飛び出していた。

 

「障壁!!」

 

そしてその歪な銃を臆する事無く撃ち始める。

最初の何発かは真っ直ぐ飛んで来たが、反動に耐えられなくなったのか手首が変な方向に曲がり、銃本体からも部品や指、血管が飛び散る。

 

「黒鷹!!」

 

これ以上ここで暴れまわられるわけにはいかないと、健一の掛け声と共に黒鷹は全身に障壁を身に纏うと足裏で圧縮した高密度の気を炸裂させロケット弾の様に突っ込むと少女だった者と共に壁をぶち破りながらその場を離れてゆく。

 





今は別の作品を完結させるのが先だから、これはしばらく更新しないと思う。
でも書き終わったら必ず続きを書く。
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