「ちょっと!あんた!なんなのよ、それ! 男のあんたがなんで?!」
叢雲は怒って?いた。
なぜ疑問系なのか、それは叢雲の顔を窺ったのはよいが、どんな表情をしているのかがよくわからなかったからだ。
その白い肌を赤く染め、強気がちな目が角度を上げ、鋭さを増していた。
先程、下手な関西弁で叫んでツッコミを入れてしまったことが恥ずかしかったのか。そして、有り得ないもの(俺が艤装を着けていた事)を見てしまって混乱しているのか。恥ずかしさと混乱が、ごちゃまぜになったような、そんな顔をしていた。
この時の叢雲の気持ちを知りたいと思ったが、
「ねぇ?今どんな気持ち?今、どんな気持ちなの?」
と、草でも生やしながら聞いたあかつきには、偽装開放した叢雲の連装砲が火を噴くこと、請け合いなのでやめておこう。俺は考えるのをやめた。
チラッと、横目で夏目さんの方を窺い見ると、夏目さんも夏目さんで、その透き通るような白い肌を真っ赤に染め、よくわからない表情をし、立ち尽くしていた。
「ねぇ?!聞いてるの?!難しい顔してないで、答えなさいお!」
あっ、噛んだ。クッソかわいい。
それを指摘すると、また叢雲の顔が大変なことになりそうなので、それをスルーし答える。でもまずは、二人を落ち着かせないとなぁ。原因は俺だが。
「すいません。でもその前に落ち着いてください。落ち着いて話をしましょう?」
「誰のせいで、こんなことになったと思ってるのよ!」
「アッハイ」
まったくその通りである。
そこでようやく気を取り戻した夏目さんが、気恥ずかしさを取り繕うように、咳払いをしながら、
「す、すいません。はしたない姿を見せてしまって。そ、そうだ叢雲?飲み物でも用意してくれない?落ち着いて話をするには必要なものでしょ?」
と、早口に一気にまくし立てた。
「そうね、それがいいわ……」
叢雲も、夏目さんのその様子を見て、少しではあるが冷静さを取り戻したようだ。
「あんたは?」
「え?」
なんだ急に?
「だから、何が飲みたいの!?」
「あっ、コーヒーをお願いします」
びっくりしたよ。急に、あんたは?なんて聞かれるもんだから。
「全く、会話の流れから察しなさいよね。それじゃ、用意してくるわ」
そして叢雲は、飲み物を用意するため、提督室を出て行った。
「すいませんね?叢雲があんな態度をとってしまって」
と、夏目さんは申し訳なさそうに切り出した。
いや、あなたが謝る必要なんてないんですよという気持ちを込め、俺も言葉を返す。
「こうなったのも全部、私のせいですからね……申し訳ないです」
すると夏目さんは、ムッとした表情になり、少し怒り気味の口調で
「……あの時は気が動転していましたが、今思い返すと全部、あなたのせいですよね?どうしてくれるんですか?あんな、はしたない顔まで見せてしまったんですよ?」
「言い訳はしません。本当にすいませんでした……」
ここは誠心誠意謝る。たっぷり10秒程、こうべを垂れる。
「反省しましたか?」
「はい」
「じゃあ……渡部さん?」
急に名前を呼ばれ、なんだ?と顔を上げると、
「それじゃあ、これでおあいこです」
いたずらっ子のような、可愛らしい笑顔を浮かべ、それでいて少し恥ずかしそうな顔で、俺に向かってこう言った。
なんだか俺まで恥ずかしくなり、「は、はい」なんて、そっけない返事をしてしまった。夏目さんの顔なんて見れなかった。
「あのソファに座って叢雲を待っててください」
そう提案があり、俺は高鳴る鼓動を抑えながら、座り心地の良さそうなソファに手をつき、そして深く腰掛けた。そして、今までのことを心の中で反芻した。
(彼女たちの色んな表情や態度が見れて、よかったなぁ。
冷静な叢雲のあんな変な顔見ちゃったし。
意外と突発的なアクシデントには弱いのかな?
「答えなさいお!」なんて、笑っちゃうけどすごく可愛かったな。
夏目さんはすごく真面目な人だと思ったが、あんな人をからかうようなことするんだ。あの時の笑顔、ほんとに可愛かったな。
あの清楚で凛とした見た目から、あの笑顔は少し、いやかなり卑怯ではないのか。
あの笑顔は永久保存版ですね。間違いない。
少しバカやった甲斐があったかな?
これからも彼女らの、素敵だったり、そうじゃなかったり?する一面を見てみたいな。
この世界に来てしまったのは、幸か、不幸かまだ判断するのには、少し早い気もするが、楽しい思い出が作れるように、俺自身が自ら行動していかなければな。)
その時、俺の高まった体温を緩和してくれるような、穏やかな風が吹いた。
風が吹いてきた方向に目をやると、
どうやら、夏目さんが提督室の窓を開け放ったようだ。
「そういえば、今の季節は?」
気になったことを質問してみた。
その、艶やかな黒髪をはためかせ、気持ちよさそうに風を浴びる夏目さんは、こちらを振り返り、
「春ですよ」
と、微笑をたたえ答えた。
「そうですか」
と、俺。
そうか春か。
出会いと、始まりの季節。
穏やかな風と、柔らかな太陽の日差しは、俺の体を優しく包んでくれるようだった。
これから起こるであろう、様々な出来事。
出会いの予感。
その予感に身を焦がし、俺の体の高鳴りはどうやら収まってくれないらしい。
それどころか、柔らかに体を包んでくれる、日差しと風を巻き込んで、さらに体が熱くなってくるようだ。
ふと、目があった。
何か言わなければと、俺は焦って言葉を探すが、彼女はただ、微笑んでいた。
どうやら、言葉は必要ないらしい。
俺も、黙って彼女に微笑みを返す。
しかし、やはりというか、そのせいでというか、体の熱はまたもや上昇した。
もう爆発寸前だった。
だから……
(今夜のオカズは! 君に決めた!)
読んでくださったそこのあなた。
本当にありがとうございました。
また、見てくださいねノノ