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もうすぐボスの間の扉、ユートは隣のディアベルへと話し掛ける。
「ディアベル……」
「何だい?」
「キリトのアニールブレードを買い取ろうとしたのはアンタだな?」
「……どうしてそう思うのかな?」
否定も肯定もしないで、ディアベルは質問に質問で返した。
「というか、アンタが腰に佩いた剣は昨日までと異なる物だし、アニールブレードその物だからね」
「まあ、確かに」
周りには聞こえない様、声のボリュームは絞っての会話は続く。
ディアベルが昨日まで腰の佩刀としていた武器は、アニールブレードではなくスティールソード。
トールバーナでも普通に店売りしている中で、最高の片手剣だったりする。
スティールブレードに対する強化試行上限数は僅か五回だが、果たしてそれでも最後まで強化していたか怪しいもの。
だからこそ初期パラメーターが第一層としては最高であり、強化試行上限数が八回の上に既に六回までも強化されたキリトのアニールブレードを欲した。
「って言うか、自分のアニールブレードはどうした? 元βテスターのアンタが知らない訳無いし、直ぐに取りに言ったんだろ?」
『やはり気付いていたか』と前置きし……
「強化はしていないけど、取ってはいる。それは仲間の戦力底上げの為に渡してしまっているんだ」
笑顔と共に答える。
「成程、強い人間を更に強くするんじゃなくて、弱い人間の戦力アップでバランスを取った訳か」
ディアベルの意図を察したユートは、少しだけ感心した様に頷いた。
「(元βテスター吊し上げなんて愚にも付かない事をするかと思えば、真面目に攻略も考えている。これはLAが欲しいのも自分の為じゃなく、第一層のボスを斃した象徴として欲しているのかもね)」
キリトからの情報だが、フロアボスのドロップするLAはユニークアイテム。
即ち、アインクラッドでも唯一無二の物だ。
第一層ボスのLAは変更が無ければ【コート・オブ・ミッドナイト】という、その名の如く装身具。
剣よりも目立つ装身具であれば、象徴には丁度良いアイテムとなる。
「(求心力を得てアインクラッドを攻略するリーダーとなり、少しでも早く皆を解放するのが目的か?)」
彼の言動には嘘が見当たらない、ディアベルは本気でアインクラッドを攻略したいと望んでいる。
そして、確かにこういう事には現場を纏めるリーダーシップ溢れる者が必要となるだろう。
「(そうなると、えげつない方法を以てクローズド・βテストの際、LAを取り捲ったキリトは邪魔か)」
リーダーシップを執るのは綺麗事だけでは難しく、兎にも角にも求心力を維持していかなければならないもので、お金や物も可成り稼がねばなるまい。
プレッシャーで潰れる事もあれば、手段が目的に擦り変わる事だって往々にしてあるのだ。
そして瓦解する。
「(ディアベルはそれでも敢えて進むか、修羅の道ってヤツを)」
チャラチャラした爽やか青年かと思いきや、その実は誰よりも攻略に一生懸命な漢だった様だと、彼への評価を上方修正した。
そしていよいよボスの間へと続く扉の前に……
重々しい金属製の赤茶けた扉というのは、雰囲気が半端ではない。
「さあ、いよいよだ諸君! 我々がこのアインクラッドから数多のプレイヤーを救う狼煙を今こそ、高らかに上げようではないか!」
外連味をタップリ利かせた科白を、キリトから購入したアニールブレード+6を掲げながら、プレイヤー一人一人を見遣り叫び……
「みんな、勝とうぜ!」
〆には正に自分の心の内を吐露した言葉を紡いだ。
ギギギギ……
その外観に負けじと重たく雰囲気のあるSEを響き渡らせ、ボスの間と通路を遮る扉が開かれた。
「征くぜっ!」
『『『『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!』』』』
この時ばかりは目の前の優男が、本物の勇者王にも見えたから不思議だ。
鬨の声を上げ、SAOで最初の攻略を行う四十八名のプレイヤーがボスの間へ雪崩れ込む。
ボッ!
その瞬間、蒼白い焔が壁のランプに灯り……
ボッ! ボッ! ボッ! ボッ! ボッ! ボッ! ボッ!
全てのランプが蒼白い焔を灯していった。
焔の灯りに照らされて、薄暗い円形の部屋の奥に有る玉座に座るコボルド王の姿が露わとなる。
コボルド王の頭上に映し出される名前……【イルファング・ザ・コボルドロード】が記され、四本の緑色のHPバーが伸びていく。
【イルファング・ザ・コボルドロード】が、玉座に立て掛けてあったボーン・アックスを手に持ち……
『ウォォォォォォォォォォォォォォォォオオオッ!』
戦闘開始の雄叫びを高らかに上げた。
取り巻きの【ルインコボルド・センチネル】が三匹湧出(ポップ)してくる。
「掛かれぇぇっ!」
ディアベルの声を合図に全員が役割を以て、ボスの【イルファング・ザ・コボルドロード】に当たった。
役割……壁役(タンク)がコボルド王の攻撃を凌ぎ、攻撃役(アタッカー)が攻撃してHPを減らす。
壁役と攻撃役がコボルド王と相対している際に邪魔となる護衛兵(センチネル)を押さえて潰す役割の者も居るし、HPがヤバくなればポットローテで下がった壁役と攻撃役の代わりに前へと出る後衛(バックス)も存在している。
魔法が存在しないSAOに於いて、飛ばすタイプの攻撃など【投剣】スキルで武器や石ころを投げる程度にしか遠隔攻撃は存在しない為、後衛(バックス)というのは交代要員の事だ。
ディアベルの率いているC部隊が一本目のHPバーを削り、二本目をD部隊が削り切る。
交代部隊のF、G部隊が現在のメイン火力となり、壁役のA、B部隊が何度か注意域(イエローゾーン)にまでHPを減らしたものの未だに健在、センチネルを斃すEとH部隊もこれまでに湧出してきた九匹を見事に撃滅していた。
ディアベルの指揮が的確且つ、大胆なまでの用兵が大当たりしているのもその要因の一つだろう。
既に次の湧出待ちとなっている【取り巻き潰し隊】であるが、こんな場合には他の部隊に混じってボスを攻撃しても良いと、確約を貰っていた。
勿論、他の部隊を邪魔しない様に気を付けなければならない訳だが、ボス戦に於ける報酬を考えたなら、ボスにアタックを出来ないポジションは、モチベーションを下げかねないとし、ユートがディアベルに申し出た事から決まった話だ。
【ルインコボルド・センチネル】とて、この第一層ボスの間でのボス戦にしか顕れないレアモンスター、他のMobに比べればコルも経験値もアイテムも大量にドロップする。
コルはレイド全員による自動均等分配だが、経験値はパーティで共闘していた者達に入り、ドロップするアイテムはLAをした者に確率ブーストが与えられる事となる為、割と美味しいというのも確かだった。
それでもボス戦だから、ボスにアタックしたいと思うのは当然といえる。
ボスから獲られる経験値というのは、ボスに対する攻撃の貢献度が関わってくるからだ。
とはいえ、然しもユート
もこの提案が危機を招くとは思いもよらなかった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
細剣型(レイピア)の単撃刺突ソードスキル。
名前は【リニアー】……
フードコートの少女は、システムに規定されているソードスキルを、モノの見事に使い熟していた。
キリトもβでの時代からソードスキルによる意図的なブーストを練習したが、単純な速度だけを見たなら彼女程の加速は不可能。
それに加えて、キリトが指摘した効率の悪い【過剰殺傷(オーバーキル)】をやめてからは、目覚まし速度の躍進をしていた。
少女はキリトに出逢う直前まで、全てをソードスキルで斃していたが、僅かなミリ単位のHPを削るのには大袈裟な【リニアー】を放っていた為、技後硬直を近くのMobに狙われてしまうと危険だし、何よりも視野狭窄に陥っていては、斃せる敵も斃せない。
事実、今の少女には余裕が感じられており、【ルインコボルド・トルーパー】より強い筈の【ルインコボルド・センチネル】も容易く屠っていた。
唯一の弱点、喉元を正確に突く【リニアー】は他人事とはいえ、キリトでさえも冷や汗が出そうなくらい恐怖を誘う。
「スイッチ!」
センチネルの武器を弾いたキリトから声を掛けられた少女は、すぐに立ち位置を入れ替えて前へ出ると、【リニアー】で喉を突いて青いポリゴン片に還した。
だが目覚ましいというのならば、ユートとシリカのコンビが正にそうだ。
【黒き刀舞士(ブラック・ソードダンサー)】と、中二病にも程がある二つ名を【鼠】のアルゴが広めた訳だが、相方は可憐な容姿で迷宮区を踊る舞姫とし、【迷宮区の小舞姫(リトル・ダンサー)】などと呼ばれる程に成っていた。
キリトはその真なる意味をこの場でありありと見せ付けられ、正直に言ってしまえばボス戦でなければ、きっと見惚れている。
真っ当な剣術で舞い踊るユートと、ソードスキルを以て舞うシリカの二人は、まるでデュエットをしているかの如く──アルゴの付けた二つ名がこれ程にまで似合うとは思わなかった。
ダメージブーストが存在するからか、ユートが攻撃にコンボを極めれば極める程にダメージが弥増して、あっという間にセンチネルをシリカと共に屠る。
そのシリカも、通常攻撃でダメージブーストをし、トドメとばかりに短剣系の二連撃ソードスキル【クロス・バイト】から、技後硬直キャンセルからの単撃刺突ソードスキル【アーマーピアース】を極めていた。
まったく【小舞姫】とはよく言ったものである。
「二人だけの輪舞曲(デュエット・ロンド)……」
「え? 何か言った?」
「いや、何でもないさ!」
思わず見惚れた二人への感想を洩らすが、少女──キリトはHPバーから既にAsunaと知ってる──にかぶりを振りながら答えると、次のセンチネルを狙うべく走った。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
肝心要の【イルファング・ザ・コボルドロード】の攻略は、当初の予想に反して順調に推移している。
未だにだれもHPバーが危険域(レッドゾーン)へと落ち込まず、センチネルはキバオウの率いるE部隊、ユートの率いるH部隊によって悉くが粉砕され、遂にHPバーも残す処は後一本のみとなり……
『グォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォオオッ!』
雄叫びを上げた【イルファング・ザ・コボルドロード】は、持っていた骨斧と革の円形盾を捨て去ると、後ろ腰に佩いた骨太な刀である野太刀を抜刀した。
狂乱(バーサク)しているコボルド王、若しも曲刀にカテゴライズされている、
湾刀(タルワール)だと思って突っ込めば、どれくらい高位のプレイヤーであれ、刀スキルに翻弄されてしまっていただろう。
キリトやアルゴが曰く、【イルファング・ザ・コボルドロード】の使う湾刀によるソードスキルは、基本的に直線長射程な攻撃だけらしく、密着状態であっても躱すのに苦労は無い。
だが刀のソードスキルはそうじゃなかった。
万が一、知らずにβ時代と同様に動けば犠牲者が既に出ていただろう。
昨日のユートが再現して見せた、【イルファング・ザ・コボルドロード】の使う刀系ソードスキルを知らなければどうなってたか、キリトはゾッとした。
とはいえ、多彩な刀系のソードスキルを使ってくるという、ただそれだけでしかないのに攻め倦ねる。
元よりもっと上層に現れているモンスターが使ってきたソードスキルだけに、最も初期の単撃重範囲技──【旋車】でさえ厄介だ。
「この侭、手を拱いていられないな……」
ディアベルが意を決して呟くと、単身でコボルド王へと突っ込んで行った。
「よせ、ディアベル!」
コボルド王がニヤリと、口角を吊り上げた……そんな錯覚を覚えるユート。
それは誰しも思わなかった事……
コボルド王が放つ技は、重範囲攻撃──【旋車】だった事もあり、ディアベルも余裕を以て身体を僅かに横へ逸らして紙一重に躱しながら跳躍して、地面からの衝撃をも受け流す。
ディアベルが手に持っていたアニールブレードへと、ライト・エフェクトが灯ったのは彼がソードスキルを起動させた証拠だ。
これより、ディアベルの身体はシステムアシストを受け、自動的に威力ブーストされたソードスキルを放つ体勢に入る。
「な、にぃ!?」
そう、ユートにも予想外の出来事、コボルドの王は【旋車】を地面へと叩き付けて、返す刀で【浮雲】を放ってきたのだ。
「莫迦な、システムに規定されたモンスターがシステム外スキルだと!?」
システム外スキルとは、システムに規定されているスキル、スキル欄に名前が載ったモノではなく、システムの外側であるプレイヤーがよりプレイし易くするべく創意工夫したスキル。
例えば、キリトが住み善い宿屋を見付けたのもそうだし、技後硬直を格闘ゲームよろしくキャンセルし、次の技に繋げるというのもそうだ。
ソードスキルによる多重攻撃(コンボ)、シリカが使った【小舞姫】と称されるコンボも同じ理屈である。
然しそれが可能なのは、飽く迄もシステムでの縛りが少ないプレイヤーのみ。
モンスターはシステムで動く関係上、システム外スキルなど使わない……否、使えない──筈だった。
〝誰か〟がシステムに手を加えない限りは。
そしてこんな改変が行えるのは、このSAOの唯一とも云えるGM権限持ち。
茅場晶彦だけだ。
菊岡誠二郎から聞いた限りでは、SAOの発売元のアーガス社でさえ茅場晶彦の動向を把握しておらず、いつの間にかデスゲームに変えられていたらしい。
既にアーガス社はとんでもない迷惑を被っていて、社会的な制裁すら喰らってしまっているのに、茅場が居る場所だけは掴めずにいるのだとか。
彼がシステムを弄って、【イルファング・ザ・コボルドロード】のアルゴリズムにあのコンボを入れたというなら、果たして茅場はクリアさせる気があるのか否か、解らなかった。
閑話休題……
下段から斬り上げる技──【浮雲】でディアベルを斬った後、トドメだと謂わんばかりに袈裟懸けと逆袈裟懸から突きに征く三連撃技──【緋扇】に繋げる。
身体を斬り上げられて、
もう身動ぎ出来ず自由落下しているディアベルには、打つ手など無かった。
だけど……
「さぁぁぁせぇぇぇるぅぅぅぅかぁぁぁぁぁっ!」
ディアベルを死なせない為にユートが動く。
ソードアート・オンラインは、近接武器オンリーで戦う性格上、敵の武器攻撃を自らの武器で防御をする【武器防御】というスキルが存在する。
これはシステムに規定をされた正式なスキルだが、その気になればブーストは無い武器による防御だって不可能ではない。
本来はソードスキルによって弾くのがセオリーではあるが、ユートは【緒方逸真流】に在る基本技から、敵の武器を受け流したり、弾いてしまう技を持つ。
【緒方逸真流】防御技──【流転】という。
ディアベルの目の前へと躍り出たユートは、自身の大太刀でコボルド王の袈裟懸けを弾く。
【流転】には二種類──弾くタイプと受け流すタイプが存在しており、今回は弾くタイプで対応。
パリィと呼ばれる技術で其処から即、ユートは袈裟懸けにコボルド王を斬る。
「緒方逸真流・基本技──【木霊落とし】!」
傍目からは、本来ならば二人で行うパリィからの、スイッチを一人で行っての斜め斬り──【スラント】にしか見えない。
威力ブーストは、武器への一撃も敵のモノであればコンボの開始と認められ、斜め斬りにした攻撃は通常の一割増しだった。
「キリト、アスナ!」
「「──っ!」」
呼び掛けられてはたと気付いた二人。
「ディアベルを頼む!」
意図を察してすぐに動き出したキリトに、アスナと呼ばれた少女も名前を知られていた驚きを押し込め、駆け出した。
その場から動けない状態のディアベルに、キリトがポーションを与える。
「何でこんな無謀な真似をしたんだ!」
「キリトさん、貴方もよくやっていたじゃないか」
「LA狙いか……やっぱりディアベル、アンタは!」
キリトも理解はしていたのだ、ディアベルが自分と同じくクローズド・βテストに受かった元βテスターである事は。
だけどディアベルの場合はキリトと違い、私利私欲の為ではなく皆をデスゲームから解放する象徴とし、更にはその効果に期待して欲したのだ。
「ハハハ、貴方の様に上手くはいかなかったよ」
「ディアベル、俺は!」
だが、呑気に話している場合ではなかった。
コボルド王が一際、高く跳躍をすると野太刀を振り上げている。
「くっ、また【旋車】!」
「危ない!」
「──っな!?」
アスナが二人を庇う様に前に出て、刃を紙一重に躱しながら【リニアー】を放った。
外套が刃に引き裂かれ、その素顔が露わとなる。
ハラリと亜麻色の髪の毛が風圧で靡き、戦闘中にも拘わらずその美しい容貌に誰しも釘付けとなった。
【リニアー】で吹き飛ばされたコボルド王、ユートはここぞとばかりに大太刀を揮って攻撃する。
コボルド王も体勢を空中で立て直してユートへ攻撃を加えてきたが、それに対して今度は受け流すタイプの【流転】──刃を併せた瞬間に身体を攻撃の反対側に回転し、その勢いを利用して攻撃を加える基本技──【山彦返し】を放つ。
更には【継ぎの舞い】を踊り、身体を再び回転させるとコボルド王の腰目掛けて横薙ぎ──【剣渦独楽】を一閃、二閃、三閃。
その間にも背後へと移動すると、次は背中をバッサリと袈裟懸けに斬る【独楽の舞】を放つ。
ライト・エフェクトが灯らない事から、ユートの技がソードスキルではないと誰の目にも明らか。
だけど、攻撃が十回にも亘れば威力は二倍。
最初の一撃では数ミリしか動かなかったHPバー、それが十撃目ともなったら一センチを削った。
留まる事を知らない怒濤の連続攻撃は、コボルド王のHPバーを容赦無く減らしていき、遂にはその命数も尽き果てると、巨躯を床に倒してポリゴン片に還ってしまう。
余りにも現実離れをした光景──仮想世界だが──に茫然自失となって見守っていたレイドパーティは、シンと静まり返っていた。
目の前で起きた出来事が信じられず、誰も口を開く事が出来ずにいる。
それは同じく【ダンサー】の名を冠したシリカですらそうで、まるで起きた事が夢か幻の如く映った。
【Congratulations】
ファンファーレと共に、そんな文字が空中に躍ると同時に、全員の目前に出現するリザルトウィンドウ。
それによって漸く全員が勝利を認識した。
『『『『『う、うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!』』』』』
その瞬間、割れんばかりの勝鬨を上げる一同。
涙に頬を濡らす者、溢れんばかりの歓びを身体全身を使って表す者、ペタリと尻餅を付いて座り込んでしまう者など、各自が銘々にリアクションを執った。
ボス撃破を報せるファンファーレまで、身動き一つしないで大太刀を構えていたユートも、それでやっと一息を吐くと自身の画面を見つめる。
莫大な獲得コルと経験値が表示され、センチネルとコボルド王のLAボーナスが出てきた。
【You got the Last Attack】
紫色のシステムメッセージが顕れ……
〔コート・オブ・ミッドナイト〕
アイテム名が瞬いた。
「黄昏のトワイライトに、真夜中のミッドナイト……これは東雲のドーンとかも在るのかな?」
苦笑いしながらリザルトウィンドウを閉じる。
「コングラッチレーション……アンタが斃したんだ。脱帽だぜ」
褐色肌でスキンヘッドな巨漢、エギルが背中に地味な両手斧──ルイン・ザ・アクス──を担いでユートに右手を挙げて近付く。
「エギルか……」
キリトとアスナとシリカとクラインも、パーティのメンバーが歩いてきた。
「おめでとう、ユート」
「まあ、おめでとう」
「流石はユートさんです、おめでとうございます!」
「やってくれたぜ!」
皆が一様に讃えてくれ、ユートも多少は苦々しいものが混じりながら、それでも笑顔を返した時……
「何なんだよ、あれは!」
ディアベルのパーティに居た男が声を荒げた。
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今回の事で、ユートやキリトがビーターと呼ばれたりはしません。