なので、藍子と木綿季を保護した相手はシンフォギアGの登場キャラクターとなります。
詳しくは活動報告で……
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阿修羅像型のボスを相手取り、アスナをリーダーとして戦うレイドパーティ。
理解はしていたがやはり強くて、明らかに第五〇層相当だとは思えない。
「こんの、野郎がぁぁ!」
赤毛にセンスの無いバンダナを巻いた不精髭の男、クラインが紅いライトエフェクトを灯した刀を、力の限りに振り降ろす。
ヒットしたがHPバーは僅か数ドット減ったのみ、六段も在るHPバーは未だに一段しか減っていない。
残りが五段もある中で、僅か数ドットなど減った内にも入らないがどっち道、今までもこれからもそんな積み重ねだ。
「ウオォォォォォォォォォォォォォオオオッ!」
キリトの持つ片手直剣、ミスリルブレードがライトエフェクトを灯す。
垂直四連続斬り──【バーチカル・スクエア】が極って、動く阿修羅像はまた数ドットのHPバーを減らしていた。
刹那、物凄い違和感を感じたキリトは目を見開き、技後硬直を最低限に減らす【システム外スキル】の、キャンセルを使って阿修羅像とは関係無い方向に技を放ち、その場から離れる。
勢い余って無様に転がってしまうが、その場に留まるよりはマシだったのだとすぐに理解した。
青いライトエフェクトを灯した六本の腕が、キリトの居た位置を直撃しているのを転げながら見てしまったからだ。
六連続ソードスキルといった処か、あの阿修羅像のオリジナルスキルだろう、何しろ腕が六本も無ければ成立しないスキルだし。
手にしたヴァジュラなどであれだけの攻撃を受けてしまえば、例えHPバーがフルでもすぐに危険域(レッドゾーン)だと考えられるし、最悪だとあっという間に全損し兼ねない。
「おい、キリの字! 大丈夫なのかよ?」
「ああ、咄嗟に別のソードスキルを繋げて躱したから何とかなったよ」
「こんちくしょー! 見た目からかてーとは思ってたけどよ、ソードスキル使ってあんだけっきゃ減らねーのは無ーだろ!」
減らせるのが僅か数ドットでは、一本を減らすだけに可成り時間を喰う。
長丁場となれば焦りを生むし、焦りは集中力を奪い去ってしまう、そうなったら些細なミスを連発して、いずれは大きなミスに繋がってしまい、最期に待ち受けてるのは〝死〟という、このデスゲームに於いては絶対なるルールに従って、SAOからも現実の世界からも永劫にログアウトし、消え去る事となる。
「ユートなら通常連続攻撃でコンボを稼いで、最終的には一発デカイのをドーンと放てそうだけどな……」
ソードスキルではコンボを極めたからと、ダメージに何らボーナスも無いが、ユートの口車に乗ってきた茅場晶彦は、通常攻撃でのコンボには一回に付き一割のダメージボーナスが付く様にしたのだ。
故に、ユートの通常攻撃の一発一発はソードスキルにやや劣るものの、敵からの攻撃を躱しながらコンボを途切れさせる事も無く、次々と極めていくユートの与えるダメージは、いつしかソードスキルが数発分のダメージを一撃に籠める事さえ可能としていた。
仮に単発型水平攻撃──ホリゾンタルのダメージが一〇〇だとして、ユートの通常攻撃は約七割と考えてみれば解り易い。
実際にはホリゾンタルを放ったプレイヤーとユートの筋力値や、他にも剣速といった要素で変化するだろうから、そんな数値を簡単には出せないのだろうが、飽く迄も例えだ。
ダメージが七〇、それが初期値という事になる。
然し、ソードスキルであるホリゾンタルを何度ぶつけようが一〇〇は一〇〇、積み重ねても二発で二〇〇になり、十発で一〇〇〇となるだけでしかない。
勿論、上位スキルの──ホリゾンタル・アークやホリゾンタルスクエアなど──連続攻撃なら威力はまた別なのだろうが……
だけどユートの場合は、通常攻撃の意味合い的にも少し事情が異なる。
正確には通常攻撃の場合というべきだし、ユートだけではなく全員がそうだ。
初撃を七〇、二撃目なら七七、三撃目で八五と与えるダメージが初撃から一割ずつが増えていく。
四撃目から順次計算していくと……
九四、一〇三、一一三、一二四、一三六、一四〇、一五四となり、合計した値は一〇九六と確実に十撃目に同じだけのソードスキルをぶつけるよりも、ずっと威力は強い。
他のプレイヤーの場合、大概が途中でコンボが崩れてしまい、ダメージ計算が初期化されるから基本的にソードスキルを使った方が効率は良い、況してや安定したダメージが期待出来るのだから、クールタイムでスキルが使えない事態でもなければ、ボス戦で好んで通常攻撃はしないだろう。
ユートは寧ろ、十発以上のコンボを安定して当てていける為、ソードスキルが無くとも最終ダメージ値がソードスキルより上なんて状態も、ボス戦では珍しくもなかった。
十発では先の単純計算で僅か九六ダメージ差だが、ユートは普通に百発なんてコンボを極める。
単純計算でも百発ならば九六〇と大きいが、実際にはどんどんダメージが弥増すから、この違いはボス戦ではとても大きい。
それにダメージ値は実際には可成り変動があって、一撃毎に剣を振った速度や距離からくる彼是などで、重たい攻撃に変わっていく為か、最終的なダメージ値は百発目に一万越えになっている筈だ。
何故なら、初撃が七〇であっても二撃目のユートの攻撃が成立した場合では、剣を振るスピードが更に増して、その分も計上されるから事実上で次のダメージ値は七七を越えて八〇くらいにはなっている。
それは初撃より二撃目の方が速度などが乗り、威力を増していて三ダメージ分が更に計上されたから。
そして三撃目のコンボに於いては、八〇の一割分が計上されて八八で、しかも速度などによるダメージボーナスが更に増えて、九五くらいにはなる。
先の計算はソードスキルよろしく、初撃と同じだけ安定したダメージを与えた場合であり、三撃目以降は筋力値と俊敏値を更に活かして徐々に威力を増す。
本来は初撃が七〇なら、二撃目が七七、三撃目には〝七七の一割〟で四捨五入して八五となって、四撃目は更に八五の一割の数値の九が増えて九四ダメージとなり、速度などが計上され一〇〇前後となる。
ソードスキルはシステムに規定され、基本的な速度などは同じに設定されているから、ダメージ値などに変化は無い。
だけど通常攻撃は別で、筋力値と俊敏値の数値的な補正以外に、プレイヤーの物理学的なダメージ値なども計上されている。
簡単に云えば、スピードが速ければ威力が増すし、回転を加えたりすればやはり威力が増す。
そしてこれも大事な事なのだが、ソードスキルだと延々と放つ事はシステム的に不可能だ。
先に語った百発の攻撃を当てるなど、それこそ全てのソードスキルをクールタイムの間に代わる代わるに放っても到底続かない。
通常攻撃にクールタイムは無いから、その気になったら百発でも千発でも攻撃を途切れさせなかったら、幾らでも放てる。
結果的にユートの場合、ソードスキル無しでそれを越えたダメージを、最終的には見込めるという事だ。
今までそうしてボス達を屠ってきたし、第一〇層のボスを単独で撃破が出来たのも、それが理由である。
その時は他のプレイヤーが居ない分、寧ろコンボで本当に千回を成立させて、斃す事が出来たくらいだ。
現実の身体能力はSAOで出せないが、数値の赦す範囲内でユートは敵を屠る事が可能という。
クラインはそれを知るが故に言うのだ。
ユートのレベルはSAOの誰よりも高いが、単純なレベルだけでは決して計れないモノが在る。
己が持つ全てを使い熟せる者、人はそれを〝強い〟と云うのだ。
単に力が在るだけの者を〝強い〟とは云わない。
そして、ユートは少なくともSAOに於いて強者であると云えた。
だけど誰もが強者足り得ぬのが世界というもので、阿修羅像を相手にした攻略のレイドパーティは、最終的に潰走してしまう。
具体的には、阿修羅像の余りの強大さに恐れを為したプレイヤー達が、大量に転移結晶で逃げ出してしまったのだ。
レイドは潰滅状態となりあわや全滅となる処だが、第二クォーターポイント故に万一備えで後方待機をしていたヒースクリフが率いる第二レイドが、ボス部屋に雪崩れ込んでパーティ立て直しの時間を得て全滅を免れる事が出来た。
戦況は膠着状態にまで持っていけたが、すぐに逆転をするという訳にいかず、この侭では何人かが死ぬかも知れない。
そんな恐怖がアスナを襲っていた。
細剣を杖代わりに突き、キリトやクラインやケイタが果敢に戦うのを見遣り、下唇を噛んだ。
其処へ阿修羅像の攻撃が飛んでくる。
「(ああ、死んじゃったな……私)」
アスナの脳裏に走馬灯が駆け巡り、そんな中で忌々しい筈のSAOでの記憶が一番鮮明なのが皮肉過ぎ、思わず笑いながら涙した。
「諦めるなっっっ!」
斬っ! 撃っ!
『ギエエエエエエエッ!』
痛みでも感じてるのか、阿修羅像は悲鳴を上げながら仰け反る。
何とも細かい演出。
茅場晶彦は幻想世界(ファンタジーワールド)を創り出しながら、物理学的なモノを採り入れてみたり、こうしてモンスターでさえダメージにのた打ち回ったりと、リアリティーというものを追及していた。
アスナが弱々しく頭を上げてみれば、漆黒の装備に刀を手にした黒髪の青年が目の前に立っている。
「ユー、ト……くん?」
其処に居たのは本来だと居ない筈の人間、ボス戦には参加しないと思っていたユートだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
少しばかり時間を遡って第四〇層の主街区……
アルゴからの連絡を受けたユートは、此処まで急いで登って来ていた。
転移門からすぐに宿屋へ向かうと、二人組の女性のパーティが顔立ちの似た、見覚えのある二人の少女を連れて席に着いている。
それを認めるとパーティに近付き、ユートは少女達に声を掛けた。
「藍子ちゃん、木綿季ちゃん!」
プレイヤーネームは知らなかった為、取り敢えずはリアルネームで呼ぶ。
本来はこういう場所でのリアルネーム呼びはマナー違反で、明らかに空気読めない阿呆とされるのだが、プレイヤーネームを知らないのだから仕方ない。
「優斗さん!」
「優斗!」
因みに二人もリアルネームで呼んできたが、ユートの場合はプレイヤーネームの読みが同じだから、特に問題など有りはしない。
余程、二人は心細かったのだろう、藍子も木綿季も席を立つとユートの腰に飛び付いて来た。
見た感じだと、装備品はスモールソードにソフトレザーという、誰から見ても完全無欠な初期装備。
普通、第四〇層で身に付けている装備ではない。
思っていた通りの状態、此方を見ている二人の女性プレイヤーが保護してくれてなければ、藍子も木綿季も確実に命を落としていたであろう。
アルゴが急いで作り上げたチラシ、謂わば捜し人のチラシを情報屋仲間と共に配ってくれて、つい先程に捜索本部へ連絡が着た。
初期装備でうろちょろとしていた、顔立ちがよく似ている少女を二人、保護をしたというパーティから。
「えっと、二人を保護してくれてありがとう。助かったよ」
「問題無いデェス!」
「事態が事態だし、助け合えるならそうした方が良いと思う」
「そうか」
元気な金髪少女と、表情の起伏が小さい黒髪ツインテールな少女達、恐らくは一五歳か其処らの年齢。
女性プレイヤーと称したものの、明らかに〝少女〟のカテゴリーだった。
「二人を保護する報酬は、十万コルだった筈だよな。二人に五万コルずつ渡せば良いのか?」
「ええ」
ユートはメニュー画面を操作し、二人に五万コルを受け渡す。
「とまあ、報酬のコルを渡せば終わりなんだが、それは味気無いし、何か困った事でもあれば連絡をしてくれれば応じるよ」
「困った……事?」
「そう、僕はギルド【ZoG】のリーダーをしてる。武器職人や道具屋を抱えているから、口利きくらいは出来るだろうし、依頼してくれれば素材集めなんかもやれるから」
「ギルド【ZoG】って、小規模ながら攻略組の?」
黒髪ツインテールな少女が目を見開く。
「まあね、本来なら五〇層のボスと戦っているけど、二人を保護しなけりゃならなくてね。これからすぐに二人をギルドホームに連れて行って、ボス戦に向かわなければならないんだ」
少女二人は顔を見合わせると、互いに頷いてユートの方を向くと言った。
「「私達も連れて行って欲しい!」デェス!」
「は?」
元々、この二人はダンジョンのトラップによって、はぐれた仲間と合流しようとしていた矢先で、藍子と木綿季を保護したらしい。
早くSAOから出たい、それを目指していた仲間と共に動き、攻略組に合流をするべく戦った。
とはいえ、MMOすらもプレイした事が無い処か、ゲームをする環境すらなかった所為か、レベルアップも遅々として進まない。
結果、最新第五〇層まで攻略が進んだ今でさえも、パーティのレベルは僅かに六〇前後。
攻略組が七〇前後だというのを鑑みれば、合流するには難しいと考えていた。
まあ、正確には七〇を越えているのはトップクラスのプレイヤーであり、二人のレベルは攻略組としては中堅といった感じだ。
多分だがこの二人は現実世界(リアルワールド)でも何らかの戦闘行為をして、闘い慣れているのだと勘ではあるがそう思う。
「判った、だけどギルドのメンバーは良いのか?」
「私達──【レリック】のメンバーはそんなに脆くはないから」
「デェス!」
「取り敢えず、メールを飛ばしておけばダンジョンから出たら判る筈」
ダンジョン、迷宮区などにはメッセージは飛ばせないが、飛ばしておいたなら街に戻った際に受け取る事は可能。
「それじゃ、藍子ちゃんと木綿季ちゃんを一度ギルドホームに……」
「待って! 私達も連れて行って下さい!」
「いや、無理だろ。此方の二人はレベルも六〇越え、武器や防具も普通に更新されてるから連れて行ける。だけど、君らはレベル四〇で武器と防具は初期装備、しかも強化ポイントの割り振りやスキルの取得もしていないんだぞ? HPだけはレベル相当に上がっているけど、そんなんじゃすぐに殺られるだけだ!」
藍子のHPは八二〇〇、木綿季が八三四〇程度。
レベル四〇だと平均的なHP数値と云えた。
跳ばされた階層と同じなレベル、だがデスゲームと化したSAOに於ける安全マージンは階層プラス一〇となっている。
つまり、普通にプレイをしていたとしてもこの二人の適正階層は第三〇層。
この第四〇層に居るだけでも危険なのに、この二人は通常プレイで来た訳では決してなく、レベルだけが階層相当で他の全て初期の状態で、第三〇層にすらも居られない状態なのだ。
況してや、更に上の階層である第五〇層のボス戦に行くなど、自殺行為でしか有り得ない。
「……ボス戦には参加させないで見るだけなら?」
黒髪ツインテールな少女が提案をしとくる。
「いや、然しだな」
「いざとなれば私達が護れば良いし、これからの指針を決めるのにも役立つ」
「これからの指針……ね」
SAOへと来てしまった以上は、決めなければならない事があった。
それはクリアの為に闘うのか、それとも何処か安全そうな場所にでも引き篭ってしまうのか?
幸いにもレベルは四〇、引くも進むも可能だ。
ユートは早くボス部屋に行き、ボス戦を行わなければならない。何故ならまだ勝利の報が無いのだから。
こんな所で無駄な問答はしていられない。
「二人共、強化ポイントは一一七ある筈だな?」
「え? えっと……うん」
メニュー画面を見様見真似で開き、強化ポイントの有無をステータス画面から確認をすると頷いた。
「筋力値に五七、俊敏値に六〇と振り分けるんだ」
「「は、はい!」」
藍子も木綿季も言われた通りに振り分けを始める。
「君らは筋力値五七までで使えそうな防具、持っていないかな?」
「へ? えーっと、幾つか有るデェス」
「……此方も」
「なら悪いが売ってくれないか?」
「了解」
だいたいの適正価格で、二人は武器や防具をユートとトレードした。
アイアンバックラー×二
スチールガード×二
アイアングリーブ
ミスリルローブ
チェストガード・オブ・シルバー
メタルブーツ
ミスリルソード
レイピア・オブ・カレント
トレードをしたこれらを装備させた。
【ステータス】
名前:Yuuki
レベル:40
スキルスロット:6
HP:8340
筋力値:62
俊敏値:65
【装備】
ミスリルソード
チェスト・ガード・オブ・シルバー
アイアンバックラー
スチールガード
メタルブーツ
レザーマント
メタルベルト
【装備スキル】
片手剣装備
名前:Ai
レベル:40
スキルスロット:6
HP:8200
筋力値:62
俊敏値:65
【装備】
レイピア・オブ・カレント
ミスリルローブ
アイアンバックラー
スチールガード
アイアングリーブ
レザーマント
メタルベルト
【装備スキル】
細剣装備
装備スキルに関しては、後々を鑑みれば焦って決める訳にもいかないから後回しにする。
木綿季はまんまユウキ、だが藍子はアイがプレイヤーネームらしい。
臨時とはいえパーティを組んだ二人組の少女達は、やはり此処まで来ただけはあるレベルで、装備品の方も充実している。
名前:Igarima
レベル:62
スキルスロット:8
HP:11230
筋力値:93
俊敏値:100
【装備】
サイズ・オブ・デス
チェストガード・オブ・シルバー
ミスリルガントレット
メタルブーツ
スケイルマント
ダマスカスベルト
【装備スキル】
両手鎌装備
体術
戦闘時回復
疾走
武器防御
隠蔽
索敵
投擲
名前:Shul shagana
レベル:61
スキルスロット:8
HP:11180
筋力値:88
俊敏値:105
【装備】
チャクラム・オブ・ウィンドウ
チェストガード・オブ・ミスリル
チェインアーム
ラセットグリーブ
【装備スキル】
体術
投擲
料理
戦闘時回復
疾走
裁縫
隠蔽
鼓舞
驚いた事に、割とレアな投擲武器のチャクラム系を持っていたり、今まで見た事のない大鎌だったりと、意外な強化具合だった。
戦輪──チャクラム系の武器は投擲武器に類する、だけど他の投擲武器とは異なっており、投げても手元に戻ってくるから捨て系の投擲武器としては破格。
今までの街や村で店売りしてなかったから、基本的にモンスタードロップか、或いは鍛治による作成しか手にする機会は無い。
また、使うには投擲スキルだけでなく体術も必須、よくもまあ使っている。
両手鎌スキルは知らないスキルだった。
どうもエクストラスキルの一種らしく、未だに出現方法は売っていないとか。
HPバーの下に書かれた名前──プレイヤーネームを見たユート。
「Ai? アイか?」
「あ、はい。だから私の事はアイと呼んで下さい」
ニコリと笑みを浮かべ、藍子……アイは言う。
「木綿季ちゃんはユウキ。で、そっちの二人が……? Igarimaねぇ……イガリマか? それにShul shagana? シュルシャガナと読む……んだよな……? シュメール神話の戦女神ザババの持つ赤と緑の刃の名前か? 随分とコアなネーミングをしたもんだ」
ちょっと驚く二人。
「お兄さん、よく解ったデェス!」
「普通、神話に詳しくないと判らない」
「ああ、ちょっとね」
昔、神話に詳しくなる様な出来事があり、そのお陰と云うべきかも知れない。
それに、何処ぞの慢心王もそんな来歴の武器を飛ばしてきていたから、何と無く覚えていた。
「兎に角、準備は済んだ。急いでボス部屋に向かう。アイとユウキはイガリマとシュルシャガナの傍を離れない様に、僕が前から出るMobは潰すから」
「Mob?」
「ああ……モンスターの事だと思えば正解だ」
アイの疑問に答える。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
第五〇層の迷宮区に入る五人のパーティ、聞いた話ではレイドパーティが入ったのは少し前、上手くすればボス戦前に合流が出来るかも知れない……
「……と思っていた時期が僕にもあった」
「何を言ってるデス?」
意味不明な事を呟くと、イガリマからツッコミを入れられた。
ちょっとばかり舐めていたかも知れない、完全なる素人を連れて上層迷宮区を突き進む難しさを。
ハッキリと言ってしまうとスッゲー邪魔、碌に闘えないアイとユウキの代わりに闘うイガリマとシュルシャガナだが、この二人とて適正レベルがギリギリ。
頑張っているし、思った通りで闘いには慣れている様だが、数値的に護る余裕は余り無さそうだ。
結果的にユートは足を止めて、アイとユウキを護るべく下がらなければならなくなるし、時にはイガリマとシュルシャガナもユートが護っていた。
最初は誰でも素人──とは誰の言葉だったろうか? こればかりは長い目で見るしかあるまい。
まあ、イガリマとシュルシャガナの二人が癖の強い武器を使っているのも要因の一つなのだが、それを言ってしまうと二進も三進もいかなくなる。
イガリマが曰く、元々は両手斧を使っていたのが、ある一定まで熟練度を上げるとイベントが起き、この大鎌を使える武器スキルを得たらしい。
完全なエクストラスキルという訳だ。
しかも熟練度を上げたら顕れる刀装備や両手剣装備とは異なり、イベント修得型のスキルだから、斧使いの全員が必ず得るスキルではないのだろう。
刀装備は湾刀装備を鍛える事で、両手剣は片手剣を鍛える事で修得可能だ。
両手斧は片手斧を鍛えれば修得可能なスキルだが、その上にイベントで修得が出来る両手鎌が在るなど、誰も思うまい。
「それにしても、お兄さんって凄いデェス」
「……うん。あんなに連続して動き回りながら敵を斬ってる。あれだけ動けるのなら、現実世界で何かしらやっていたのかも」
Mobを狩り、ユウキとアイを護りながら話し合うイガリマとシュルシャガナだったが、ユートの動きに驚きを露わにしていた。
とはいえ、この二人とてコンビネーションを駆使すれば大したもの。
シュルシャガナが戦輪を投げ付け、僅かな無防備の時間をイガリマが護る。
互いに信頼をし合って、息をピッタリと合わせられるという、長い時間を共に在った二人だからこそ成せる事であった。
イガリマがライムグリーンのライトエフェクトを灯すと……
「切・呪りeッTぉ!」
武器の両手鎌を投げる。
「って、投げた!?」
ユウキはイガリマの唐突な暴挙に驚愕した。
どうやら両手鎌というのは投擲すら可能らしいが、Mobを切り刻みながらも投げられたサイズ・オブ・デスが、イガリマの手へと戻ってくる。
形状からブーメラン的な扱いなのかも知れないが、余りにも予想外な使い方にユートも呆然となった。
因みに、本来の名称だと両手鎌スキル【ブーメランショット】というらしい。
「然し、何でこの娘ら……切り刻んでとか何とか唱いながら闘ってるんだ?」
そう、先程から戦闘の度に二人は唱っていた。
もう、熱唱だと言っても過言ではないくらい唱いまくっているのだ。
「……気にしないで」
「これは癖デス」
三人は、『気にするなというのが無理だから』と、図らずも同時に思う。
「う〜ん、だけど……ひょっとして? でも知らないんだよな……イガリマとかシュルシャガナって。あ、でも第二期という可能性もあるのか?」
頭を掻きながらブツブツと呟くユートは、ちょっと思い付いてシュルシャガナに訊いてみた。
「なあ、ギルド【レリック】のメンバーにガングニールとかイチイバルとか居ないか?」
「「っ!?」」
バッ! と、バックステップで下がった二人は警戒心を露わにして、ユートを睨み付けてきた。
「……どうして」
「知っているデェス!?」
どうやら当たりらしく、ユートは嘆息をする。
菊岡にこの世界の歴史について、幾らか訊いた方が良いかも知れない。
どうも第二期が存在していたらしく、このSAOを主体とした世界に習合されているみたいだ。
ユートが知るのは第一期のみだから、二人を知らないのも無理はない。
「(この世界でゆっくりと月見なんてしてないけど、見上げたら文字通り欠けた月なのかも知れないな)」
ユートは警戒する二人を見遣りながら、そんな益体も無い事を考えていた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
暫く迷宮区を登り続けていると、漸く二十階にまで辿り着いて開いたボス部屋が目に留まる。
「着いた! ここら辺なら安全区域だから、ユウキとアイは扉の前で待機を」
「うん!」
「はい!」
ユートの言葉に頷く。
「イガリマとシュルシャガナの二人は……まだ僕を疑ってるみたいだけど、ボス戦が済んだらある程度なら教えて上げる。だから今は手伝って欲しい」
「判ったデェス、だけど」
「怪しい事をしてきたら、後ろからでも切り刻んで上げる!」
剣呑な事を言うものの、どうやら指示には従ってくれそうだ。
パーティーを組んでいるから、闘わなくても経験値は僅かだがシェアリングされて入る。
ユウキとアイにはそれによって、レベルを少しでも上げて貰う心算だ。
「突入っ!」
「……了解!」
「デェス!」
三人がボス部屋に駆け込むんだら、ボスらしき阿修羅像がアスナへ向かって、ヴァジュラを振り降ろさんとしていた。
当のアスナは瞑目をし、〝その時〟がくるのを待っている様だ。
「諦めるなっっっ!」
斬っ! 撃っ!
『ギエエエエエエエッ!』
痛みでも感じてるのか、阿修羅像は悲鳴を上げながら仰け反る。
アスナが弱々しく頭を上げてみれば、この場に居ない筈のプレイヤーの姿が、その目に映っていた。
「ユー、ト……くん?」
弱々しい声で呟くアスナに向かって、ユートは更に叫んだ。
「生きる事を、闘い抗う事を諦めるんじゃないっ! それは生ける者に与えられた特権だ!」
そう言って駆け出すと、見た事の無いプレイヤーの二人と共に阿修羅像へ攻撃を開始する。
先ずは牽制と謂わんばかりに……
「切・呪りeッTぉ!」
「α式・百輪廻!」
ライムグリーンのライトエフェクトに、サーモンピンクのライトエフェクトを各々が灯すと、自分の武器を阿修羅像へ投擲した。
恐らくは現実世界で実際に似た武器を使い、その時の技の名前なのだろうが、SAOでは普通にソードスキルでしかない。
両手鎌──サイズ・オブ・デスが阿修羅像の右側、戦輪──チャクラム・オブ・ウィンドウが左側を押さえ付けるかの如く当たり、阿修羅像の動きを停めてしまい刹那の刻を稼ぐ。
その隙を見逃す程に甘くはないユートが、停まった阿修羅像に向かって攻撃を繰り出した。
それはいつもの通りで、一撃で終わりはしない。
流れる様なスピーディーな機動力、俊敏値を全開で用いた肉体運用は見事としか言い様がなくて、しかも着実にダメージを加えているのが判る。
HPバーが目に見えて減じているのだ。
「どうなってやがるんだ? 幾ら通常攻撃でコンボを極めてるっつってもよー、最初からダメージが多過ぎじゃねーか?」
ポーションでHPの快復しながらも、ダサい赤色のバンダナを着けた赤毛の男──クラインが驚きの声を上げていた。
「関節だ」
「は? 関節ぅぅ?」
「そうだ、あの阿修羅像の関節部をユート君は攻撃しているのだよ。確かにあの手のモンスターなら関節部が弱い可能性は高いな」
ヒースクリフは顎を擦りながら、検分をした内容を皆に伝える。
キリトとディアベルが、ヒースクリフの言葉を確かめる様に見つめ……
「ほ、本当だ!」
「器用に関節部だけを攻撃している!」
驚愕に満ちた声色で叫んだものだった。
「瞬時に敵の弱点を見抜いたのか? 或いは〝そんな敵と戦った経験〟があるとでも云うのか? いずれにせよ素晴らしい! 如何な逆境に在ろうとも、これ程の戦いを魅せてくれるか。正に彼は〝強者〟だな」
キリトも諦めていない、ヒースクリフはまるで見たかったナニかを見付けたとばかりに、アニメを鑑賞して興奮する子供の如く瞳をキラキラさせている。
その様はとてもキモ……純粋なモノだったと云う。
「弱点が解ったんだ!」
「俺達も征くぞ!」
「応よ!」
キリトとディアベルによる鼓舞、それにクラインが応えると刀を揮い阿修羅像に斬り着ける。
装甲部分ではなく、比較的に脆い関節部を斬られた阿修羅像は、今までとは違ってHPバーを目に見えて減らしながら仰け反った。
凶悪な阿修羅像のソードスキル──【ザンバー・オブ・シックスハンド】も、牽制役のイガリマとシュルシャガナにより抑えられ、最強のダメージディーラー足るユートが攻撃の一撃につき、二センチ、三センチと削っていく。
アスナはそれを見つめ、先の言葉を反芻していた。
いつの間にか生きる事、抗う事を諦めていた自分に驚き、自らの弱さを図らずも自覚する。
仕方ないではないか?
若しリアルな痛みがあるなら、とっくの昔に心折れていた処だ。
ペイン・アブソーバが、ダメージを受けても不快感だけに抑え、強烈な痛みを感じさせないからまだ戦っていられる。
そんな中であんな強敵、何人も死んだし、死ななかったメンバーも逃げた。
第一層でキリトと出逢った時にも、無茶なレベリングをしていたのは、きっと生きる為に抗っていた訳ではなくて、諦めていたからこそのものだったのかも知れない。
「力が弱くても抗い続けるのが強者、力が強くても諦めるなら弱者……か」
瞳に力が戻る。
立ち上がったアスナは、右手に持ったレイピアに力を籠めて、ソードスキルの初動を行うとライトエフェクトが灯った。
原点回帰。
それはアスナが最も使ったであろうソードスキル、キリトをして見切れないとまで言わしめた……
「せやぁぁぁぁぁっ!」
刺突単一型ソードスキル──【リニアー】を放つ。
身体の関節部位を貫き、阿修羅像のHPバーが最後の一段にまで減った。
「気を付け給え、攻撃パターンが変化するぞ!」
ヒースクリフが叫ぶが、それはいつもの事なのだから心得たものだ。
そしてヒースクリフの言う通りで、阿修羅像の攻撃パターンが変化する。
シュルシャガナの使っている物より大きな戦輪を、阿修羅像が投擲してきた。
ユートはそれを武器防御のスキルで防ぎ、コンボを継続させるべく駆ける。
名前:Yuuto
レベル:80
スキルスロット:10
HP:15200
筋力値:120+3
俊敏値:137
【装備】
村雨+35
ダークネスベスト+22
スケイルマント
ブラックベルト
Bレザーグリーブ+15
Bレザーグラブ+15
へヴィリング(筋力値+3)
【装備スキル】
刀装備
片手武器作成
金属装備修理
体術
料理
両手武器作成
戦闘時回復
武器防御
疾走
この第五〇層に於いて、ユートのレベル八〇は異常なまでに高い。
それに伴い、強化ポイントの総計が二三七Pと一際に大きく、筋力値と俊敏値も一〇〇を越えている為、阿修羅像へのダメージ計算も他の一般プレイヤーより大きかった。
同じ武器に同じ筋力値で放った場合、ソードスキルは通常攻撃の三割増しというのが基本だが、そこら辺のプレイヤーのソードスキルより、ユートの通常攻撃の方が強力なくらいだ。
しかもそのダメージ値はコンボで弥増す。
阿修羅像の攻撃パターンに投擲が加わったものの、ユートはそれを容易く捌いているし、何度もやらせはしないとばかりにイガリマとシュルシャガナが攻撃をして、阿修羅像の投擲を抑えてくれていたお陰もあるからか、事此処に至っても脱落者は居ない。
ユートはシステム外スキルである【オーバーブースト】を発動する、数値的には何も変わっていないが、倍化された筋力値と俊敏値による、最大限のコンボを阿修羅像に極めていく。
キリトも五連続斬撃──【テンソウレッパ】を極めていき、ディアベルもそれに続いて同じく五連続斬撃──【コウガゴセン】を撃ち放った。
ユートがオリジナル・ソードスキル・システムを用いて構築したOSS。
ソードスキルとして組み込まれた為、ユートが通常攻撃で放つよりもキリトとディアベルがシステムアシスト付きで放った方がより強い威力を出せた。
アスナも三連続刺突──【ペネトレイト】を放ち、阿修羅像のHPを削る。
一撃一撃が他より強力な中位スキルだ。
それはイガリマとシュルシャガナも同様、イガリマは両手鎌による投擲スキル──【ブーメラン・ブレイク】を放ち、シュルシャガナも投擲スキル──【スリー・スロープ】を放った。
【ブーメラン・ブレイク】は投げた大鎌が敵に当たると、暫く回転をしながら滞空して継続ダメージを加えると、持ち主の手元へと還ってくるスキル。
【スリー・スロープ】は投げたチャクラムが敵に当たると、斜を描く様に三回連続でヒットしてから持ち主に戻るスキルだ。
ユートの前をひた走るとシリカがユートから貰ったOSS、上下からの連続斬りを三回放つ六連撃【レッコウランブ】を撃ち放ち、阿修羅像のHPバーはもう風前の灯だった。
そしてユートは、最後の攻撃を加えると阿修羅像のHPバーを全損させる。
阿修羅像の荘厳な肉体が砕け散り、青白いポリゴン片へと還るのを見つめて、全員が静かに佇む。
【Congratulations】
空中に浮かぶ称賛。
それはつまり、取りも直さず阿修羅像を完全撃破した証明である。
ファンファーレが響き、ユートのリザルトメニューに【You got the Last Attack】という文字が浮かんだ。
それは武器で、カテゴリーは片手直剣というユートには不要な物──【Elucidator】とある。
「エリュシデータ……か。使わないから要らんな」
キリトにでも売ろうか、能力的に流石はラストアタック・ボーナスと呼べる程の物だし、最大強化試行限界は五〇と大きいから強化さえすれば可成り上の層まで使えるだろう。
とはいえWaitも重めに設定され、一七〇となっているから要求される筋力値が六一と高めだ。
まあ、キリトなら装備も可能なレベルだったが……
エリュシデータの欄へとタップすると、この武器のステータスが表示された。
【Elucidator】
ロングソード/片手剣
レンジ:ショート
攻撃力:700−710
重さ:170
タイプ:斬撃
耐久値:1350
要求値:61
防御:+50
敏捷性:+28
力:+48
防御力付加
鍛治師:―
当たり前だが鍛治師の銘が入っていない、ドロップ品で強力な物を鍛治師達は〝魔剣〟と揶揄している。
まあ、エリュシデータの処遇など後でも構うまい。
大量の経験値を獲たが、やはり元のレベルが高いからか、ユートのは上がっていなかった。
「アイ、ユウキ!」
ユートに呼ばれた二人がトコトコと入って来る。
「ユート、彼女らは?」
「僕が捜していたプレイヤーだよ。どうしてもボス戦を見たいと言うんで、保護してくれたプレイヤーと共に連れて来たんだ。五一層への有効化(アクティベート)が済めば一度、ギルドホームに戻るから」
「あ、ああ……」
頷くキリト。
「行くよ、四人共」
「はい」
「うん」
「……了解」
「判ったデス!」
ユートの動きが鈍いのは【オーバーブースト】による後遺症、強大なるパワーを与えてくれるシステム外スキルだが、一時間の間は逆にステータスが感覚的には半減してしまう。
「(はてさて、約束通りにイガリマとシュルシャガナには真実を教えるけれど、果たして耐えられるかな? 残酷な現実に……)」
ユートは疲れた肉体(アバター)を引き摺りつつ、第五一層への扉を有効化(アクティベート)する。
それから暫くの時間が経つと、第五一層へと直通の転移門が有効化(アクティベート)されるのだった。
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という訳で、暁 切歌=イガリマと月読 調=シュルシャガナの登場でした。
時間軸的には第二期終了から数ヶ月……かな?
エリュシデータのデータはアニメ版からです。