ソードアート・オンライン【魔を滅する転生剣】   作:月乃杜

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第28話:結成! 【ZoG&レリック連合】

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 ユートは考える。

 

 現在、シュルシャガナとイガリマの二人はユウキとアイを連れ、風呂へと入っていた。

 

 その間に考えを纏めておかねばならない。

 

「特異災害対策機動部二課だったっけか? 【戦姫絶唱シンフォギア】の主人公サイドの組織は……」

 

 認定特異災害ノイズ──神代の頃に人(ルル・アメル)が神(カストディアン)の逆鱗に触れて神と語り合える統一言語を奪われた、人々が言葉を分かつ呪い『バラルの呪詛』を受けて、相互理解を失った人間達が造り出した『惑星環境を損なわず同じ人類を殺戮するためだけの自律兵器』──に対抗する組織の筈。

 

 第二号聖遺物【イチイバル】を奪われた後に、責任を取って辞職した風鳴訃堂に代わり、二代目の司令となった風鳴弦十郎が率いているというのが、ユートの持つ彼の組織の情報。

 

 組織である以上は色々と後ろ暗い事も有りそうではあるが、少なくとも第一期を観た限りで風鳴弦十郎は善良なOTONAだった。

 

 恐らくは接触をして構わないタイプだと思われる。

 

 問題なのはユートが知るのは、第一期──続編が出たなら第二期と称するのが一般的だから──とされるストーリーのみであって、それに登場するヒロインは立花 響、風鳴 翼、雪音クリスの三名と、第一話以降は翼の妄そ……もとい、想い出みたいな形でのみ現れる天羽 奏、そしてシンフォギアの奏者ではないが、響をヒーローに見立てると『帰って来るべき居場所』的なヒロイン、小日向未来だけだと云う事だ。

 

 シンフォギアシステム、聖遺物の欠片より構築されたFG式回天特機装束。

 

 第一号聖遺物【天羽々斬】奏者の風鳴 翼。

 

 第二号聖遺物【イチイバル】の奏者の雪音クリス。

 

 第三号聖遺物【ガングニール】の奏者の天羽 奏。

 

 【ガングニール】奏者で融合症例一号の立花 響。

 

 あの時、どさくさ紛れで訊いた限りでは【レリック】のメンバーにガングニールとイチイバルが存在するのは確かであり、それならアメノハバキリも居るのだと考えるべきだろう。

 

「少なくとも、メンバーは五人って訳か」

 

 問題なのは多分、第二期の方で登場したであろう、イガリマとシュルシャガナの二人の情報が皆無であるという事。

 

 だけど、イガリマとシュルシャガナも聖遺物の一種なのは間違いし、彼女らが第二期でシンフォギアを纏った奏者なのだろう。

 

 そして、【レリック】のメンバーに響とクリスらしき存在が居るなら、第二期の時間軸は第一期からそれ程には経ってはいまい。

 

「長くて数年、下手をしたら一年以内だろうな。だとしたら、あの二人が新しい主人公だったのか?」

 

 まあ、何処ぞの運命だと種時代の主人公に存在感を喰われ、最後にはエンディングテロップでトップを奪われた似非主人公が居るくらいだし、響が主人公を乗っ取った可能性も否定する事は出来ないのだが……

 

「ふむ、これは実際に話を聞いてみない事にはな」

 

 前回に当たるであろう、第一期では立花 響と風鳴 翼と雪音クリスのトリプルヒロインだったし、第二期では彼女ら二人のダブルヒロインでもおかしくない。

 

 ユートはそんな風に考えていたが、それが間違いだという事はすぐに判る。

 

「ふーっ、気持ち良かったデェス!」

 

 開口一番、ニコニコしながら言うイガリマ。

 

 シュルシャガナは相変わらずの口数の少なさだし、アイとユウキはまだ遠慮というのが抜けていない。

 

 ユートは【料理】スキルで作ったお茶とお茶菓子をテーブルに出し、ソファーへ掛ける様に促した。

 

 四人は促されるが侭に、ソファーへと座る。

 

「さて、約束通り話そう」

 

 イガリマは早速、お茶菓子をパクつき始めた。

 

 真剣な表情のシュルシャガナが頷き、ユートは一息入れて話し始める。

 

「まず、僕が知るのは恐らく君らの事じゃない」

 

「どういう意味?」

 

「正確にはガングニール、アメノハバキリ、イチイバル、カ・ディンギル、デュランダル、フィーネ、ネフシュタンの鎧、ソロモンの杖に纏わる話であり、砕かれた月の欠片を破壊した、三人の奏者の〝物語〟だ」

 

 ユートが二人──とはいっても四人居るのだが──に話したのは【戦姫絶唱シンフォギア】の物語。

 

 ガングニールの奏者である立花 響を中心に据え、カ・ディンギルでフィーネと闘い、最終的に後の世に【ルナ・アタック】と呼ばれる奏者三人による絶唱により、フィーネが落とそうとした月の欠片を砕いたという部分まで話す。

 

「問題なのは、僕の知識は此処まででしかないって事でね、君らの事は知らないんだよ。立花 響達が月の欠片を破壊してどのくらいの時間が経って、どうして君らが奏者をしているのかとか、さっぱりだね」

 

 アイとユウキは月の欠片の破壊だとか、入院をしていたから全く判らないにも等しいが、一応は認定特異災害ノイズについては知っているらしい。

 

 イガリマとシュルシャガナの二人は、互いに顔を見合わせる。

 

「マリア・カデンツァヴナ・イヴは知ってる?」

 

「マリア・カデンツァヴナ・イヴ? 誰だそれは?」

 

「デビューしてから、僅か二ヶ月で全米ヒットチャートのトップにまで上り詰めた歌姫なんだけど……?」

 

「二ヶ月でねぇ。それっていつの話?」

 

「……一年くらい前」

 

 シュルシャガナが曰く、彼女らが武装組織【フィーネ】を名乗り、世界へ宣戦布告をしたのが約一年前。

 

 その後、特異災害対策機動部二課が率いる奏者達、一部では英雄とも称される響と翼とクリスの三人と、自分──月読 調と隣でお茶菓子を食べてる暁 切歌がマリア・カデンツァヴナ・イヴと共に戦った。

 

 シュルシャガナのリアルネームが月読 調。

 

 イガリマが暁 切歌。

 

 そして黒いガングニールを纏うのが、マリア・カデンツァヴナ・イヴらしい。

 

「私は……立花 響が嫌いだった。何も背負ってもない癖に、月の欠片の落下を止めて英雄視される彼女の事が。何も……背負っていないと思ってた」

 

 ギュッと膝の上の両手に力を籠める調(しらべ)。

 

 第一期ではそこら辺が確か曖昧だった気がするが、どうやら第二期で明かされたみたいだ。

 

「まあ、人に歴史ありだ。君らが何を背負ってテロを起こしたかは窺い知れないけど、立花 響だって某かを背負っていたからこそ、あんな性格になったんじゃないかな?」

 

 あんな性格──それは、雪音クリスとぶつかり合った日の事、未来に隠し事をしていたのがバレたあの日……響が自己紹介をした。

 

『どんくさいなんて名前じゃない! 私は立花 響、一五歳ッ! 誕生日は九月の一三日で血液型はO型、身長はこの間の測定では一五七センチッ! 体重はもう少し仲良くなったら教えて上げる! 趣味は人助けで好きなものはごはん&ごはんっ! 後、彼氏居ない歴は年齢と同じっ!』

 

 この科白の中でも重要な立花 響を表すファクターとなるのが、『趣味は人助け』という部分だろう。

 

 絶対ではないにしても、人助けを趣味だと言い切れる人間は、基本的に何処かが歪んでいる。

 

 ユートだって無償の助けなどしない、きちんと対価を請求するのだから。

 

 まあ、状況によりけりという事もあるだろうが……

 

 突発的な事態で助けに入る人間は居る、だが趣味とまで言える人間は居ない。

 

 そんな事を平然と言える人間は、大概は贖罪を求め誰かを助けるのを代償行為にしているのだ。

 

 何らかの形で心に傷を負ってしまい、無意識の内にではあるのだろう。

 

 それは某・正義の味方もその類いだった。

 

 仮令、歪んでいるのだとしても突き詰めればそれは即ち真実となって、一つの個性として根付くのだし、必ずしも悪い訳ではない。

 

「結局、立花 響は何かしら背負っていたのか?」

 

 調はコクンと頷いた。

 

 ユートが知る限りだと、天羽 奏の死を目の前で見てしまった上に、『生きるのを諦めないでくれ!』と哭きそうな表情と声で言われたエピソードがある。

 

 それ以外にも何か有ったのかも知れない。

 

 とはいえ、ユートも知っている事がある。

 

 それは響自身が気付いていても、理解はしていなかった自分の行動原理。

 

『そうだ、私が誰かを助けたいと思う気持ちは惨劇を生き残った負い目なんかじゃない! 二年前、奏さんから託されて私が受け取った──気持ちなんだっ!』

 

 だから、立花 響は駆け抜けた、最速で、最短で、まっすぐに、一直線に胸の響き、想いを伝える為に。

 

 事件の終了後、簡単には会えないという事もあり、風鳴司令が用意してくれたのがナーヴギアとSAO。

 

 一万本限定販売だというのに、どうやって人数分を確保したのかは知らない。

 

 唯、数人のOTONAが疲れた表情をしていたのが印象的で、調は見なかった事にした。

 

「私は響のしている事が、偽善じゃないと信じたくなったから……」

 

「別に良いけど、既に完全にリアルネーム呼びをしてるよね?」

 

「ハッ!」

 

 やってしまったとばかりに目を見開く。

 

「と、兎に角! ちゃんと会って話したかったから、みんなでこのSAOに」

 

「そしたらデスゲームに囚われた……か」

 

 コクンと頷いた。

 

「そういえば、君らの身柄って今はどうなってる? テロっていた上に米国とか思惑もあるだろう?」

 

 シュルシャガナはその辺の顛末について、ユートに問われる侭に語る。

 

──口封じの為に、ウェル博士やマリアのみならず、未成年である調や切歌にも死刑適用を進める米国政府だったが、それに先んじて仕掛けた外務省事務次官・斯波田賢仁。

 

 月の落下の情報隠蔽や、F.I.S.の組織経緯などが激しく糾弾された米国政府は事実の否定をする。

 

 最終的にはそもそも米国にF.I.S.などと云うブラックな組織は存在していない、公式にはそう云う事になったが為に、結果としてマリアや調や切歌は元よりウェル博士までもが、死刑適用を回避された。

 

 存在しない存在がテロルは不可能、ならばテロを起こしていないマリア達が、罪を問われる理由も無い。

 

 米国の保身による謂わばパラドックスにより罪状も〝無かった事〟にされて、逮捕されたマリア達全員が国連指導の特別保護観察下に置かれているのだとか。

 

「うん? それって米国は今も懲りずに君らを暗殺したがってるんじゃ?」

 

「……かもね。今この瞬間にも暗殺の魔の手が迫っている可能性は否定出来ないと思う。まあ、マリアが向こうに居るし二課の人達もむざむざと暗殺を許さないと思うけどね」

 

「成程……ねぇ」

 

「? 何?」

 

「ん、いや……別に」

 

 ユートはシュルシャガナ──月読 調をジッと見つめながら考える。

 

「(それならいっその事、暗殺されたっていう事実を米国に突き付ければ、寧ろ安全かも知れないな)」

 

 第三期? SAOに囚われて凡そ半年が経過している時点で、そんなものこの世界に無かった。

 

 考え込むユートに、調が質問をぶつける。

 

「貴方は私達の事を知らない割に、ルナ・アタックについては知っていたけど、それはどうして?」

 

「最初にも言ったよね? 僕が知るのは『砕かれた月の欠片を破壊した、三人の奏者の〝物語〟』だと」

 

「……ええ、確かに」

 

「それは文字通りの意味なんだよ」

 

「? 文字通り……?」

 

「僕が知るのは〝物語〟、アニメ『戦姫絶唱シンフォギア』の……ね」

 

「……は?」

 

 行き成り何を言い出しているのかと、シュルシャガナは間抜けた声を上げた。

 

「今、この場で証明しろと言われても無理だけどね、無事に出られたら見せても構わない。君達の〝物語〟はアニメとして第二期らしいからそれは持っていないけど、第一期に当たるであろう【ルナ・アタック】の出来事は、アニメの映像物を持っているからね」

 

「ふ……」

 

「ふ?」

 

「巫山戯ないで!」

 

 絶叫して立ち上がる。

 

「私達の悲劇が、覚悟が、そんなアニメなんて娯楽で観られていたとでも、そう言う心算なの!?」

 

「怒鳴られてもね、事実は変わらないし……」

 

 処置なしと言いたげに、ユートは瞑目しながら手にカップを持ち、ダージリンっぽいけど碧いお茶を口にしつつ片目を開く。

 

 味は間違いなくダージリンだけど、色が少しばかり毒々しいのは何とかならないかな? なんて、場違いな感想まで抱いていた。

 

「僕の知り合いが言っていたよ。君らからしたなら、身を削られる思いや覚悟かも知れないけど、そんなの結局はよくある有り触れた悲劇の一つに過ぎない」

 

「なっ!?」

 

「例えば、英雄と災厄の間に生まれたというだけで、村ごと滅ぼされ掛けた子供が居た。これだって有り触れた悲劇の一つなんだよ」

 

 鼻白むシュルシャガナに畳み掛け、自身の経験すら話すユート。

 

「当事者からすれば身を切られる経験も、第三者的な観測者から見たらその程度の認識になる」

 

「あの……」

 

「うん? どうしたのかなユウキ」

 

 小さく手を挙げたのは、紺野木綿季ことユウキ。

 

「ボクの事もそんな感じなのかな? その、アニメみたいな……」

 

「う〜ん、ひょっとしたらそうかも知れないけどな。僕は知らないんだよ」

 

「そうなんだ?」

 

 実際、ユートはこの世界の根幹を成す原作は読んだ事が無いから、知る由すらないだろう。

 

 木綿季と藍子の本来での運命というやつを。

 

「まあ、取り敢えずシュルシャガナは落ち着こうか。話の主題は君らの悲劇とかそんなのじゃなく、どうして僕がガングニール達の事を知っていたのかだろ?」

 

「それは……」

 

 チラリと隣のイガリマを見遣り、何だか莫迦らしくなったのか座る直す。

 

 お腹一杯になったからなのか、イガリマは寝息を立てていたのだ。

 

「ハァー、そろそろ仲間……達が来ると思う。メッセは飛ばしておいたから」

 

「そうか? だったら後は適当に寛いでいてくれ……まあ、アレだな。ちょっと無神経な事を言い過ぎた」

 

「……別に構わない」

 

 暫くすると、ログハウスの扉を叩く音が聞こえた。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 第二二層のログハウス、ギルド【ZoG】の本拠地となっているこの建物に、【ZoG】と【レリック】のメンバーが揃っている。

 

 【ZoG】のギルドマスターのユートを始めとし、サブマスターのキリト。

 

 シリカ、エギル、リズベット、ケイタ、サチ、ササマル、ダッカー、テツオ。

 

 【レリック】のギルドマスターはアメノハバキリ、サブマスターにはガングニールが据えられている。

 

 メンバーにイチイバル、シェンショウジン、シュルシャガナ、イガリマ。

 

 序でにエキストラと言うべきか? ユウキとアイの二人も混じっていた。

 

「(よもや、シェンショウジンというのが小日向未来の事だったとはね。だとしたなら、第二期では彼女もシンフォギアを纏うって事になるのかな……)」

 

 どういう経緯でそんな話になったのか判らないが、確かシェンショウジン──これは【神獣鏡】の事だった筈だ。

 

「さてと、取り敢えず訊きたいんだけど……セレナという名前に覚えは?」

 

「「っ!?」」

 

 シュルシャガナとイガリマが反応をする。

 

「マリアを知らないのに、どうして貴方がセレナの名を知ってるの?」

 

「過去、僕の所に跳ばされてきたからだよ。ファミリーネームは知らないけど、その言い方だとマリア・カデンツァヴナ・イヴの姉妹か何かかな?」

 

「妹よ、私達より四つ歳上だった」

 

 ユートがスプリングフィールドとして生まれた世界に於いて、時空震と共に顕れた二人の少女。

 

 それが奏とセレナ。

 

 この二人は未だにユートが保持して、使い手が定まっていなかった冥界三巨頭の冥衣を持っていた。

 

 その一人が天羽 奏で、『戦姫絶唱シンフォギア』に於いて、死亡していた筈の少女である。

 

 だがユートは奏の素性は知っていても、セレナの事は知識に無かった。

 

 特に聞き出す事もなく、邪神大戦後には元の時間軸に還した訳だが、どうやらこの世界だったらしいと、立花 響の事を知って理解をする。

 

「セレナは七年前、ネフィリムの暴走を抑える為に、絶唱を使って……」

 

「それ、此処で言っても良かったのか?」

 

「あ!」

 

 キリト達が居る中で迂闊に話してしまうシュルシャガナは、思わず掌で口を覆って視線を彷徨わせる。

 

 ついつい、先程までからの話の続きの体で話をしていたが、此処には一般人が複数人居るのを忘れてた。

 

「ネフィリム? 絶唱? 何の話なんだ?」

 

「キリト、人には命が惜しくば知らなくて良い事柄が沢山あるんだ」

 

 笑顔で両肩を掴まれて、キリトはコクコクと頷く。

 

 取り敢えずは、触れてはならないのだと理解をしたらしく、何も訊かない事を選択をする賢明なキリト。

 

「えっと、ギルドマスターはアメノハバキリだね?」

 

「うむ、宜しく頼む」

 

 長い青髪をサイドテールに結っている長身の少女、ユートも知ってる風鳴 翼と握手を交わす。

 

「んでぇ、私がサブマスターのたち……じゃなくて、ガングニールです!」

 

 リアルネームを言おうとしたのだろう、立花 響は途中で言い直してユートと握手をする。

 

「彼方(うら)側の話については、シュルシャガナ達に一通りは話してあるから、後で聞いておいてくれ」

 

「了解した」

 

「差し当たり、これからのSAO攻略についての話し合いをしようか」

 

 アメノハバキリを始めとする、ギルド【レリック】の面々はそれに頷く。

 

 折角だから協力体制を取ろうと云うのが、話し合いの骨子となっていた。

 

 ユートの率いてるギルド【ZoG(ゾディアック・オブ・ザ・ゴッデス)】のメンバーも、それなりには充実してきているのだが、やはりメンバーの絶対数が少ないのは痛い。

 

 そしてギルド【レリック】には、戦闘を不得手とするシェンショウジンを抱えているし、イチイバルにしても短剣以外で投擲スキルを取り、中距離から武器を投げるという貧乏投擲師という事もあって、どうにも攻略組には追い付けないでいたのだ。

 

 利害は一致しているし、それならギルド運営をどうするか? これを考えていかなければなるまい。

 

「案は二つだね」

 

「ふむ、確かに……な」

 

「一つめが、【ZoG】か【レリック】を解体して、どちらかに吸収一体化」

 

 右の人差し指を立てて、案を言うユート。

 

 問題点としては、どちらが吸収するのか? という事だろうか。

 

 どちらのギルドも可成りの蓄財が有り、吸収されると云う事はつまり蓄財すら全て吸収されると云う意味になる。

 

 平均レベルが高いのは、ギルド【ZoG】の方なのだが、だからといって吸収されるのは……と云う事。

 

「第二案、単純な協力体制を敷く事……そうだな?」

 

 アメノハバキリの確認にユートが頷いた。

 

 デメリットはギルドを組まないと、パーティを組んでも攻撃力の微上昇ボーナスの恩恵に与れない。

 

「この場合、ドロップしたアイテムはどうなるのだ? ウチでは基本的に手に入れた者が獲るのだが」

 

「ウチもそうだよ。アイテムはドロップした者が手に入れる権利を持つ。欲しければ要交渉……かな?」

 

「ふむ、体制的には今までの通りか。戦力が拡充されれば無理にこひ……シェンショウジンを出さなくても済むしな」

 

 まあ、今まで戦闘などはした事が無いのだろうし、唯一シェンショウジンが戦ったのは、シュルシャガナから聞いた通りならウェル博士の洗脳紛いの行為で、立花 響と行った戦闘のみであろうし、それでさえも自動的な戦闘システムっぽいモノに頼っての戦いだった様だから。

 

「折り合いが付くのなら、それで良いんじゃない?」

 

「折り合いって?」

 

「シェンショウジンが待つ事が出来るのなら、ギルドホームで待っているのも、アリと云えばアリだから。ガングニールにとっては、シェンショウジンは帰ってこれる場所で、陽溜まりなんだろう?」

 

「え゛? 何でそれを?」

 

 ガングニールが驚愕をしているが、それは勿論の事原作知識である。

 

 恥ずかしそうに俯いて、ガングニールの腕を取ったシェンショウジンは、伏し目がちで頬を朱に初めた。

 

 その様子を見ていて目を見開いたシュルシャガナ、先のユートの科白に信憑性が出てきたのだ。

 

「それじゃ、連合を組んで一緒に攻略で動こうか」

 

「そうだな、皆もそれで構わないか?」

 

 アメノハバキリが確認を取るべく仲間を見渡すと、全員が頷いて肯定の意を示していた。

 

「此方も構わない?」

 

 ユートがが確認を取り、【ZoG】のメンバーも頷いて、それを以ち連合を組む事が決定する。

 

「あの、私達は?」

 

 藍子──アイが小さく手を挙げて訊ねてきた。

 

「アイとユウキはレベルが四〇で、パラメーターに関しては半々。スキルは武器装備スキル以外はスロットに入れていない。可成りの微妙さだからね、どうすると言うより、どうしたいかで決めた方が良いな」

 

「どうしたいか?」

 

「レベルを上げて攻略へと参加するなら人数も連合で増えたし、攻略組でも通用するレベルまで上げていくチームを作って、先ず強くなる事から始めれば良い。参加しないならギルドホームに引き篭るも良しだ」

 

 レベル制MMOの場合、パラメーターさえ上げてしまえばある程度は戦える。

 

 現実での運動能力より、このアインクラッドで活かされるのはレベル、そしてパラメーターとスキルだ。

 

 ユートの場合は逆の意味で活きているが……

 

 事実として、今のユートであれば第一層のボスである【イルファング・ザ・コボルドロード】を一人で、しかもあの時にレイドを組んだタイムより早く潰せる自信があった。

 

「少し、ユウキと一緒に考えてみます」

 

「そうすると良い。若しも攻略に参加をするのなら、スキル構成とかも一緒に考えるから」

 

「え? ……はい!」

 

 一瞬、ポカンとしたアイだったけど、直ぐに目も眩みそうな笑顔で応えた。

 

 その日、取り敢えずアイとユウキの二人は置いて、第五一層のフィールドへと連合で出ると、【ZoG】特有のフィールド狩りを行って経験値やアイテムなどを荒稼ぎした。

 

 それで判った事があるとするならば、ガングニールのメインウェポンとなるのが何と素手──というか、籠手だったと云う事。

 

 彼女のスキル構成では、エクストラスキル【格闘】により、籠手を武器代わりにして闘えるらしい。

 

 サブウェポンが両手槍、スキル【両手槍】で激しい突きをかましている。

 

 【格闘】のソードスキルは結構使えるものらしく、しかも現実世界での謂わばシンフォギアを装着した闘い方と似ており、本人としてもやり易いらしい。

 

 アメノハバキリの場合、やっぱりエクストラスキル【刀】を使う様で、持っているのはそれなりに強力な刀だった。

 

 同じ種類の武器だから、彼女の持つ刀より数段強い刀を使うユートを、まじまじとガン見されてしまう。

 

 残念なのがイチイバル。

 

 何しろこのソードアート・オンラインというのは、基本的に飛び道具というのが存在しておらず、彼女の真骨頂は発揮出来ない。

 

 仕方無く短剣を装備し、後は【投擲】スキルを使っているのが現状で、正しく貧乏投擲師である。

 

 シェンショウジンはどうやら、元陸上部なのを活かして俊敏値に可成りのパラメーターを振ってあるらしくて、速度が他のメンバーから見て抜きん出ていた。

 

 そしてスピードを活かした細剣使用のフェンサー、但し盾持ちの防御重視という訳の解らないスキル構成だと云う。

 

 何だか知らないのだが、彼女は『流星!』とか言いながら、ソードスキルによる連続突きを放っていた。

 

 というよりも、彼女──だけでなく全員が唱いながら戦闘を熟している。

 

 アメノハバキリも唱いながらだが時折、『どうすれば蒼ノ一閃を出せるのだろうか?』 とか呟いている辺りが怖かった。

 

 序でに【投擲】スキルで『千ノ落涙は使えないのか?』など、どうも現実世界で使っていた技を使えないか模索しているみたいだ。

 

 そんなソードスキルなど存在はしないのだが……

「ふむ、確かあれならイケる可能性もあるのか?」

 

 ユートはメニューを操作すると熊の様なMobに突っ込み、一気呵成に攻撃を仕掛けてやる。

 

 先ずは上段からの唐竹、次に下段からの逆風の二段斬りを放ち、その侭後ろへジャンプをして身体は前転させながら刀を手放すと、足で保持した状態でMobへと突っ込む。

 

 全重量に、武器の鋭さ、筋力値と、俊敏値の四つをフルに使ったOSS。

 

 三連型攻撃──【天ノ逆鱗(アメノゲキリン)】。

 

 見遣ればアメノハバキリ──風鳴 翼が『おお!』と目を見開きながら、先程の技に見惚れていた。

 

 そしてどうも、さっきのモーションはきっちり登録されたらしい。

 

 【秘伝書】を翼に渡し、彼女が使えば先程より威力の高いソードスキルとして発動して、今の熊より強力なMobをも斃せる筈。

 

 三連撃だとはいえども、決して五連撃の【甲牙五閃】や【天奏裂破】に見劣りはしない、立派なOSSとして機能する筈だ。

 

 ギルドマスターから連合のギルドマスターへ、付け届けみたいな感じでOSSの秘伝書をプレゼント。

 

「我が戦場(いくさば)は、此処に有りぃぃぃっ!」

 

 アメノハバキリは甚く喜んでおり、実際にOSSを発動させてMobをぶった斬っていた。

 

「すぐに使い熟せるとか、システムアシストがあるとはいえ、流石はSAKIMORIという事か?」

 

 ユートの技術でも失敗をしないかヒヤヒヤものが、システムアシストを受けたソードスキルとしつ発動をしているとはいえ、ああも簡単に使っている姿は正直に言うと、嫉妬すら覚えるセンスによるものだ。

 

 後は実際にシンフォギアを纏って、【天ノ逆鱗】を使っていた経験か。

 

「う〜ん、これはスピニング・バードキックとかも、普通にやれそうだな」

 

 とはいえ、あれは刀スキルより体術……否、格闘のスキルが無くば使えまい。

 

 第一、脚に刀を装備するなんて事は、ソードアート・オンラインでは出来ない訳だし……

 

 フィールドMobを狩り尽くした連合は、幾人かに分かれてのダンジョンやらクエストの探索に出る。

 

 折角の連合だし、今回は完全に複合パーティによる探索を慣行する事にした。

 

 ユート、ガングニール、サチ、シリカ、ササマル、ダッカーの組。

 

 キリト、アスナ、イチイバル、シュルシャガナ、シェンショウジン、イガリマの組。

 

 アメノハバキリ、リズベット、エギル、ケイタ、ディアベル、アルゴの組。

 

「いや、待て! アスナとディアベルとアルゴはいつ来たんだ?」

 

 分けていて気が付いた、いつの間にか三組が出来上がっており、呼んでもいない者がしれっとメンバーに入り込んでいる。

 

「たまには監視と言うか、パーティを組んでどんな事をしてるのか、それを見てみようと思って……」

 

「いやぁ、俺も探索や狩りの仲間に入れて貰いたくってさ。アハハハハ!」

 

「護衛付きで探索が出来るチャンスだと思ってナ?」

 

 三者三様の答えを言い、結局は三組に分かれて探索をする事になった。

 

「アメノハバキリは五人になるけど大丈夫か? 何なら僕の方を五人にしても構わないけど」

 

「問題は無い。多少の人数不足なぞ、防人の刃を曇らせはせぬ!」

 

「さいですか……」

 

 自信を持ち、腕を前へと真っ直ぐに伸ばすと、刀を右手一本で構えて豪語するアメノハバキリに、ユートは苦笑いをするしかない。

 

 その日の狩りの結果は、全員を幾らかレベルアップさせて、探索をして見付けたダンジョンやクエストにより、全員がだいぶ稼ぐ事が出来た。

 

 また、アルゴの攻略本と称したガイドブックも道具屋で無料配布されて、翌日からプレイヤーの指針として役立ったらしい。

 

 

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名前:ユート
レベル:81
スキルスロット:10
HP:15320
筋力値:120+3
俊敏値:140

【装備】
村雨+35
ダークネスベスト+22
スケイルマント
ブラックベルト
Bレザーグリーブ+15
Bレザーグラブ+15
へヴィリング(筋力値+3)

【装備スキル】
刀装備
片手武器作成
金属装備修理
体術
料理
両手武器作成
戦闘時回復
武器防御
限界重量拡張
疾走


名前:キリト
レベル:73
スキルスロット:9
HP:12400
筋力値:101
俊敏値:135

【装備】
エリュシデータ+10
クロスジャケット+17
ブラックグラブ
ブラックブーツ
ブラックベルト
アニールチェーン

【装備スキル】
片手剣装備
隠蔽
体術
索敵
武器防御
限界重量拡張
戦闘時回復
疾走
釣り


名前:シリカ
レベル:78
スキルスロット:9
HP:14700
筋力値:113
俊敏値:141

【装備】
イーボン・ダガー+21
トワイライトジャケット
トワイライトクロース
スケイルベルト
レザーグリーブ
レザーグラブ
スケイルマント

【装備スキル】
片手用短剣
軽金属装備
裁縫
体術
隠蔽
索敵
料理
戦闘時回復
武器防御


名前:リズベット
レベル:62
スキルスロット:8
HP:10750
筋力値:113
俊敏値:81

【装備】
ゾリゲンハンマー+5
アイアンチェスト+10
スミスクロース
スケイルベルト
レザーグリーブ
レザーグラブ
グロースマント

【装備スキル】
片手槌装備
片手武器作成
金属装備修理
両手武器作成
金属鎧作成
軽金属装備
鑑定
彫金


名前:サチ
レベル:68
スキルスロット:8
HP:11950
筋力値:95
俊敏値:116

【装備】
ディニタースピア
スティール・スレッドアーマー
ブルークロース
レザーベルト
レザーグリーブ
レザーグラブ

【装備スキル】
両手槍装備
軽金属装備
体術
隠蔽
索敵
武器防御
危険感知
戦闘時回復


名前:アスナ
レベル:63
スキルスロット:8
HP:11200
筋力値:71
俊敏値:125

【装備】
エストック・オブ・ミスリル+18
ミスリルチェスト+8
フェンサークロス+10
レザーベルト
レッドグリーブ
レッドグラブ

【装備スキル】
細剣装備
軽金属装備
隠蔽
体術
料理
索敵
裁縫
鼓舞


名前:ガングニール
レベル:65
スキルスロット:8
HP:11720
筋力値:117
俊敏値:85

【装備】
スピア・オブ・ミスリル+15
チェストガード・オブ・ミスリル+12
アイアン・スレッド・クロース
ガントレット・オブ・ミスリル+20
ラセットグリーブ+15

【装備スキル】
両手槍装備
格闘
戦闘時回復
限界重量拡張
金属鎧装備
疾走
電光石火
武器防御


名前:アメノハバキリ
レベル:67
スキルスロット:8
HP:11810
筋力値:113
俊敏値:95

【装備】
菊一文字+15
シルヴァンメイル+13
シルバー・スレッド・クロース+5
スティールガントレット
ミスリルグリーブ
スケイルベルト

【装備スキル】
刀装備
投擲
金属鎧装備
体術
戦闘時回復
限界重量拡張
疾走
武器防御


名前:イチイバル
レベル:65
スキルスロット:8
HP:11680
筋力値:105
俊敏値:97

【装備】
イーボン・ダガー
ライトガード
ブルークロース
スティールガントレット
メタルグリーブ
スケイルベルト
スケイルマント

【装備スキル】
短剣装備
投擲
体術
軽金属装備
戦闘時回復
限界重量拡張
商談
鑑定


名前:イガリマ
レベル:64
スキルスロット:8
HP:11610
筋力値:99
俊敏値:100

【装備】
サイズ・オブ・デス
チェストガード・オブ・シルバー
グリーンクロース
ミスリルガントレット
メタルブーツ
スケイルマント
ダマスカスベルト

【装備スキル】
両手鎌装備
体術
戦闘時回復
金属鎧装備
武器防御
隠蔽
索敵
投擲


名前:シュルシャガナ
レベル:63
スキルスロット:8
HP:11560
筋力値:79
俊敏値:120

【装備】
チャクラム・オブ・ウィンドウ
チェストガード・オブ・ミスリル
レッドクロース
チェインアーム
ラセットグリーブ

【装備スキル】
体術
投擲
料理
戦闘時回復
金属鎧装備
裁縫
隠蔽
鼓舞


名前:シェンショウジン
レベル:62
スキルスロット:8
HP:11420
筋力値:68
俊敏値:125

【装備】
ライトフェンサー+20
スティールシールド+14
シルバーチェイン
ホワイトクロース
メタルベルト
レザーグラブ
レザーグリーブ
リーフペンダント

【装備スキル】
細剣装備
隠蔽
金属鎧装備
索敵
体術
料理
投擲
限界重量拡張


名前:ユウキ
レベル:40
スキルスロット:6
HP:8340
筋力値:62
俊敏値:65

【装備】
ミスリルソード
チェスト・ガード・オブ・シルバー
ブルークロース
アイアンバックラー
スチールガード
メタルブーツ
レザーマント
メタルベルト

【装備スキル】
片手剣装備


名前:アイ
レベル:40
スキルスロット:6
HP:8200
筋力値:62
俊敏値:65

【装備】
レイピア・オブ・カレント
ミスリルローブ
アイアンバックラー
ブルークロース
スチールガード
アイアングリーブ
レザーマント
メタルベルト

【装備スキル】
細剣装備




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