ソードアート・オンライン【魔を滅する転生剣】   作:月乃杜

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第31話:心の温度 武器屋リズベットの事情

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 リズベット──愛称となるのはリズ。

 

 そのスキル構成は鍛冶師に成る為と謂わんばかり、第四八層の主街区リンダースに在る水車の付いた家を購入し、リズベット&ハイネマン武具店を開業中だ。

 

 本来なら稼ぐのも大変な三百万コルでの販売だが、ギルドに入ってやって来たが故に、ギルドマスターのユートとの契約通りギルド資金から出して貰った。

 

 それ故に、本来の世界線より早く店を入手出来たのは言うまでもあるまい。

 

 店の壁には自らが鍛えた武器の数々が所狭しと飾ってあり、自慢の白銀色の刃が煌めいている。

 

 正しくリズベットの城。

 

 そんなリズベットだが、つい最近になって片手棍をコンプリートし、マスターメイサーとなっていた。

 

 そしてとある一つの噂を聞いたリズベット。

 

 それは第五五層の竜が棲む西の山にて、強力な武器防具を造り出せるインゴットが手に入る……と。

 

 だが然し、今までに採りに行ったプレイヤーは数居れど、インゴットを持ち帰った者は皆無だとか。

 

「そういう訳でケイタ!」

 

「な、何かな?」

 

「鉱石を採取しに竜が棲む西の山へ向かうわよ!」

 

「ま、まさか僕達だけで行くってのか!?」

 

「それこそまさかでしょ。ギルドマスターとパートナーも道連れよ!」

 

 つまりはユートとシリカも連れて行くという事らしいが、強引で・マイウェイなリズベットは謝らない。

 

 更に何故かガングニールとシェンショウジンまでが付いて来る事が決まって、リズベットはいざ竜の棲まう西の山へと、パーティで向かうのであった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「いやぁ、何だかピクニックみたいだね、未来!」

 

「もう、響ってば……」

 

 最早、ギルドのメンバーだけの時はリアルネームを隠す気がゼロなガングニールこと、立花 響に対してシェンショウジンと名乗る小日向未来は呆れる。

 

 リアルネーム呼びなんて本来、この手のゲームではタブー視されるものだが、やはり慣れないという事なのだろう、響はどうしても『翼さん』『未来』『クリスちゃん』『調ちゃん』『切歌ちゃん』と呼ぶ癖が抜けなかった。

 

 お陰でギルド【ZoG】のメンバーも、既にギルド【レリック】のメンバーの名前だけは知っている。

 

 勿論、翼が【ツヴァイ・ウィング】の風鳴 翼である事もバレていた。

 

 西の山に入る前に少しばかり長い、クエストフラグをオンにしなければならなかったものの、クエストは順調に推移している。

 

 氷雪地帯であるが故に、毛皮のマントが必須だったにも拘わらず、リズベットと響が用意していなかったのは情報不足だった。

 

 まあ、ユートがこんな事もあろうかと用意していたから事無きを得たが……

 

「うわ、寒い!」

 

「毛皮のマントを着けていても寒いねぇ」

 

 カタカタと身体を震わせながら、リズベットと響は毛皮のマントを確り手にして寒気を防がんとする。

 

「モンスターと戦えばちょっとはマシになるさ」

 

「ユートは寒くないの?」

 

「心頭滅却すれば火もまた涼しと云う。ならその逆もまた然りってね」

 

 リズベットからの質問にやれやれ的なアクションを執り、片目を瞑りながらも答えにならない答えを言い放った。

 

「要するにアンタには効かないって訳ね……」

 

 だからこそ、リズベットも呆れるしかないのだ。

 

 ユートとてまさか本当に寒くないなんて、ゲーム中でそんな特異現象に見舞われてはいない。

 

 現実世界の方が強いが故にユートは彼方側での方が我慢も出来るし、抵抗だって仕様が有ると云うもの。

 

 今のユートは脳に直接的

な信号を送られ、寒いのだと誤認させられている状態にあり、装備品たる毛皮のマントがある程度は防いでくれていても、寒さは確りとその肌に感じている。

 

「響は寒くない?」

 

「うん、平気へっちゃら。それに未来にくっ付いていればね、日溜まりみたいにポカポカなんだ♪」

 

「もう、響ってば……」

 

 まるで恋人がデートでもするかの如く、響に腕を組まれた未来は苦笑いを浮かべながらも、頬を軽く朱に染めて受け止める。

 

 最早、名前を隠す意味が全く無いとはいえ、完全にリアルネーム割れしている【レリック】のメンバーは割と普通に呼び合う。

 

 わざわざ彼女らが纏っている乃至、纏っていたシンフォギアの名前をゲーム中に使っていたのに、これでは本当に意味が無い。

 

 どうにも響にはゲームネームで呼び捨てはいまいちだったらしく、いの一番にリアルネームで呼んでしまっていた。

 

「えっと、ガングニール……じゃなくって響さんは、あれって素なんですよね? ロールじゃなくて」

 

「まあね、僕も一応は彼女の素をしっているけれど、あんな感じだよ」

 

「実は男の人よりも女の子が好き……とか?」

 

「別にそういった性癖は持ち合わせてないだろうね。ちょっと過剰な友愛表現がそう見えるだけだよ?」

 

「何故に疑問符を……」

 

 シリカとしては万が一にも狙われたくなかったし、普通に否定をして欲しい処であったが、ユートも響が本格的に百合かも知れない……とほんの少しばかりではあるが疑っている為に、否定をし切れない。

 

 未来とのラブっ振りが、ロールプレイではないのは間違いないのだし……

 

「まあ、飽く迄も好意を向ける相手はシェンショウジン……未来だから。シリカが警戒をする必要は無い」

 

「そ、そうですか?」

 

 響の百合疑惑だったが、それは基本的に未来へ限定された安全な疑惑。

 

 実質、受け容れているに等しい未来が相手ならば、特に注意する必要は無い。

 

「ま、勿体無いけどね」

 

「何がですか?」

 

「いや、何でも無いよ……っと!」

 

 ユートは腰に佩いている刀を抜刀しつつ、首を横に振って目の前に湧出(ポップ)したMobに向かって駆け出すと、一気呵成に振り上げて両断をする。

 

「さあ、雑談の時間も終わりみたいだ! Mobが顕れるんだから確り殺るぞ」

 

「「「「「了解」」」」」

 

 ユートから発破掛けられたパーティは、強く頷いて各々が武器を構えた。

 

 Mobは経験とコルを含めて雑多なアイテムをドロップする存在、ユート達がMobを見逃す理由なんて有りはしない。

 

 ユートは刀。

 

 シリカは短剣。

 

 リズベットは片手棍。

 

 ケイタも同じく片手棍。

 

 響はガングニールの籠手を構え、未来は細剣を盾と共に構えている。

 

 ユート以外のメンバーの武器にライトエフェクトが灯り、ソードアート・オンラインの最もな持ち味たるソードスキルが炸裂して、Mobを蒼白いポリゴン片へと換えていく。

 

 ユートも攻撃力は充分であり、ソードスキルに頼れない分を差っ引いても確実にMobを片付けていた。

 

 正に大暴れするパーティメンバーは、寒さをコロッと忘れて頂上を目指す。

 

 全員がこの山を登るのに必要とされるレベルに達している事も手伝っており、Mobは次々と撃破されていって経験値と資金と素材などを遺し、全てがポリゴン片となって消える。

 

 そして大した時間も掛ける事は無く、ユート達は山の頂上付近まで登った。

 

「此処に白竜が居る筈だ」

 

 周囲の水晶体に身を隠しながら、辺りの警戒をして小声で話し掛けるリーダーを務めるユート。

 

 アルゴ情報によれば白竜は大抵が空から襲撃をして来るらしいが、とはいえど巣は地上に有る訳だし必ず空からとも限らない訳で、当然ながらそちらも注視している。

 

「さて、取り敢えずは情報の纏めと御復習をしよう」

 

「まとめと……」

 

「おさらい?」

 

 ユートからの言葉を聞いてよく解らないと首を傾げたのは、響とリズベットの二人だけであったと云う。

 

「まず、アルゴから買った情報では未だに目的となるアイテム──インゴットを手にしたという話は無い。つまり、誰も入手はしていないという事だ」

 

「そうらしいわね」

 

 首肯するリズベット。

 

 当然だが、リズベットも情報に関してはある程度を得ており、未だにインゴットを手に入れたという情報が無いのを知っていた。

 

「? 白竜からのドロップじゃないんですか?」

 

「いや、シリカ。そもそもドロップアイテムなのかも判っていない。単に水晶体を食べる竜の元にアイテムが有るってだけでね。水晶体を食べた竜を退治すればドロップする、そんな思い込みから今まで白竜退治に勤しんでいたらしいけど、全くのドロップ無しだったらしいよ」

 

「そうなんですか?」

 

 驚くシリカにユートは頷いた。

 

「という事は……?」

 

「考えられる可能性は……フラグが立っていないか、何らかのアイテムが必要となるか若しくは、ドロップアイテムではないかだね」

 

 未来の質問に答える。

 

「とはいえ、こんな中途半端な場所でちょっとレアなアイテムが手に入る程度、そんな複雑なフラグが必要だとも思えない。茅場辺りが作ったイベントだったら有り得そうだけど、きっとこういった部分を担当していたのは別の人間だろう」

 

「ユートさん、どうしてそう思うんですか?」

 

「響、僕の印象で茅場晶彦ってのはアインクラッドの本体にしか興味は無いよ。だから彼がイベントを作ったとしたら、それは全てがアインクラッド本塔のみに集約されている筈だ」

 

「そっかぁ」

 

 ユートがあのオープニングイベントとも云うべき、あの第一層【はじまりの街】での出来事……

 

 あの時にユートは茅場を知った訳だが、第一印象が正にそうであった。

 

 自身の興味が有る事以外には御座なり、全くとまでは言わないまでも手を出さないのでは? ……と。

 

 だからこそ、こんな場所のイベントには関与してはいないと考えたのだ。

 

 因みにその推測は正しかったのだが、イベント発生のシステムには誤りがあったりする。

 

 実はこのSAOに関する全ての事象は、カーディナルと呼ばれる中枢コンピュータが掌握していた。

 

 イベントやクエストなどの発生も然り。

 

 予めゲーム内に組み込まれていたモノ以外、突発的に起きる新しいクエストはカーディナルが起こしているのだと、ユートは後に知る事になる。

 

「んで? ユート的に云うとアイテムはどうすれば手に入る訳よ?」

 

「考えられるのは、白竜が水晶体を喰った後に排泄をされたのがインゴットじゃないか? って事。つまり巣の中に転がっているって可能性が高いかな?」

 

「は、排泄ってまさか……ウン?」

 

「いや、女の子の口からは言うなよ……リズベット」

 

 まあ要するに……それは俗に〝ウンも〟と云うやつであった。

 

 げんなりとした表情となる一同だが、取りに来たのが〝ソレ〟である以上は、手に入れるしかない。

 

「巣の中か。全員で行くのは危険……よね?」

 

「そりゃそうだろう」

 

 リズベットの心配は的を射ていた。

 

 何しろ白竜の巣の中で、白竜を放って入り込もうというのは危険極まりない。

 

「じゃあ、まずは白竜退治になるの?」

 

「未来、それもどうかな? 白竜を斃して変なフラグを立てたら、インゴットを手に入れられなくなるかも知れない。だから白竜に関しては何人かで足止めし、巣にはそれ以外の者が入って捜すのが良いだろうね」

 

 このクエストの達成条件は勿論、インゴットを手に入れる事な訳だが、白竜がインゴットを体内に蓄えた水晶体で精製をしていると云うなら、ハッキリ言って殺すのは悪手でしかない。

 

「そうなるんだ……」

 

 納得をしたのか首肯をしながら呟く。

 

「それじゃあ、どういう風にパーティションする?」

 

「いや、パーティションは違うだろうに。取り敢えず戦闘は四人、巣の探索には二人って感じかな」

 

「うーん、一応はフィールドボス的な扱いだろうし、三人じゃ心許ないか」

 

 頷くリズベット。

 

「内訳は?」

 

「今回の初台詞おめでとう……ケイタ」

 

「ほっとけ!」

 

「メタ台詞は置いといて、内訳は探索にはマスターメイサーを使いたいしリズベットを。それと万が一での護衛兼探索係として僕だ。戦闘は響、未来、ケイタ、シリカの四人に任せる」

 

 全員が真面目な表情となって頷くが、リズベットはチラチラと余所見をして、同じく別の誰かもちょっと余所見気味である。

 

 とはいえ、特に某かを言う事も無く行動を開始。

 

 まずは白竜を誘き寄せるべく、戦闘人員の中で最もすばしっこいだろうシリカが雪山の頂上を行ったり来たりする。

 

 暫く動き回るとバサリ、バサリと羽音が聞こえてきてシリカの頭上に影が。

 

「き、来ましたね!」

 

 白竜――ゼーファン・ザ・ホワイトウィルム。

 

 チャキン!

 

 手にした短剣──スカーレット・マインゴーシュを構えるシリカ。

 

「ピナ、バブルブレス!」

 

『ピーッ!』

 

 白竜が上空からシリカを急襲してきたのと同時に、ピナのバブルブレスによる奇襲を行う。

 

 大したダメージにはならないが、目にぶつけてやればそれなりに視界を奪えるのは今までの戦闘に於いて確認済みだった。

 

 隙を見せた白竜に対し、シリカがソードスキルを使って攻撃。

 

「やぁっ!」

 

『ギュオオオオオッ!』

 

 この流れが決まったら、残りの三人が飛び出していき背後から攻撃。

 

「通背拳!」

 

「違うでしょ! 流星!」

 

「未来も違うよね!?」

 

 ツッコミを入れ合う響と未来だが、白竜への攻撃は確りと入っている。

 

「うん、グダグダだよね」

 

 ケイタも序でに攻撃。

 

 ノックバックした白竜は当然ながら背後の三人へと注意を移すから、シリカはその隙を狙って再びソードスキルを当てに行く。

 

「てあっっ!」

 

 この場合、三人を無視してシリカに向かって行くと云う選択肢が白竜にあり、その時は背後の三人こそがシリカの役割を果たす。

 

 必要は無かったが……

 

 巧く流れを掴んだのなら後は此方のもので、普段のボス戦と何も変わらないのだから慣れている。

 

 といっても、問題は変なフラグを立てない為に殺さない様にしなければならないが故、手加減をしなければならなかった。

 

 後の検証でそんな必要は無かったと知って、全員が脱力をしたものだが……

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「よっ、ほっ……」

 

「上、ちょっとでも見たらぶん殴るからね!?」

 

「了解、了解っと」

 

 ロープと木板を組み合わせた梯子を降ろし、巣穴に向かっているユート達。

 

 結構な深さがある訳で、リズベットは恐る恐るゆっくりと降りているのだが、ユートは慣れた感じですいすいと降りていた。

 

 マントを身に付けているとはいえ、その下は無防備なミニスカートである為、リズベットは頬を朱に染めながら叫ぶ。

 

 勿論、ユートは上を見る心算など無い。

 

 正直、リズベットとしては全くその気の無いユートに対して胸を撫で下ろしている反面、女としての魅力を否定された気になって、少しだけ複雑であった。

 

 まあ、若しもユートへと想いを募らせていたなら、その気になっていたかも知れないが、ユートは相手に気が無い場合は食指も動かないから仕方がない。

 

「それで、リズベット的にはケイタに武器を造ってやりたいんだよな?」

 

「んな!? 何を言っちゃってんのよ!」

 

 基本的にはバックヤード・スタッフなリズベット、そして彼女が素材を手に入れる為に動くのに付いて回るのは、バックヤード軍を指揮しているケイタだ。

 

 二人の仲が良くなって、更に深まったとしてもおかしくはなかったりする。

 

 今の二人は仲良しというより〝仲好し〟レベルとなっており、余り周囲に見せてはいないが割とよく話をしていた。

 

 端から見れば恋人か夫婦かと言わんばかりな二人、その所為かよっぽどの事がない限り、元月夜の黒猫団のメンバーは近付かない。

 

 何故か?

 

 何処のあんぽんたんが、バカップル寸前の男女へと近付きたがるものだろう?

 

 断じて否である。

 

「今回の一件、ケイタの為なんじゃないのか?」

 

「──うっ!」

 

 ハッキリと言われては、もう二の句が継げなかったリズベット。

 

「ああ、もう! そうよ、ケイタの為! あいつっていっつも自分の装備を御座なりに、仲間の装備をまずは充実させるじゃない?」

 

「そうだな。バックヤード軍だからって、前線メンバーを先にするのは兎も角、他のバックヤードにまでも同じ態度だしね……」

 

 ケイタの装備品は常に、ランクが最大三ランクくらい落ちる。

 

 その理由がユートの言った通り、フォワードとなるキリト達を優先しながら、バックヤード軍まで自分を後回しにするから。

 

 DQで云えば勇者が既に鋼の剣を使っているのに、未だに自分は聖なるナイフを揮うに等しい。

 

「バックヤードの役割は、装備品の為の素材集めとかだし、最前線に比べたならそりゃ敵の質も落ちるわ。だけどそれでも生命の遣り取りをしてるのには違いないのよ? いつまでも貧相な武器なんて使わせていられないわ!」

 

「まぁ、それもそうだね。基本的にケイタの武器って前線からのお古だし」

 

 回ってきた前線で使わなくなった武器防具が有り、ケイタはそれを使う。

 

 前線ともなれば強化だけでなく、更新もやはり激しくなってくるからだ。

 

 二束三文でNPCショップに売ったり、況してや捨てるのは勿体無い事もあってか、そうやって武具類の再利用が為されている。

 

 そして、基本的にケイタは全てがそんなお古な武具で占められていた。

 

 だが、バックヤードが往く道も平坦ではない。

 

 生命の遣り取りとは先にリズベットが言った通り、いずれは武器の弱さによって敵に斃され、ポリゴン片と化すかも知れなかった。

 

 普通ならVRMMOでの一つの結果、単純に【死に戻り】をするだけの事でしかない。

 

 だが然し、このSAOは創り手【茅場晶彦】が言う通り『これはゲームであっても遊びではない!』と、頭をマイクロ波にて焼かれて本当に死ぬ。

 

 リズベットはそれを許容など出来はしなかった。

 

 そんな折りの情報。

 

 それがこの山の頂上に棲まう竜から獲られると噂されるインゴット、それから強力な装備品が造れるらしいという話だ。

 

 幾らケイタとはいえど、気になる女の子が自分の為に造った武器を、他の仲間に優先して渡すなんてデリカシーゼロな事はすまい。

 

 だからこそリズベットはユートをも巻き込んだ末、レアな武装などを造れそうなインゴットを手に入れるべく、こんな場所くんだりまでやって来たのだ。

 

 ユートもそれを理解していたからこそ、リズベットの提案に乗ったのである。

 

「何も無いわね……」

 

「まあ、そうだな」

 

 地面……白雪に覆われたその場には何も無い様に思われるが、ならばとユートは雪を手で掘り始めた。

 

「ユート?」

 

「白竜はモンスターだし、所詮はプログラミングされたデータに過ぎないけど、妙にリアルな世界なんだ。若しかしたら喰ったモノを排泄してるかもって言っただろう? なら、雪の下に埋まっている可能性だってある筈だよ」

 

「な、成程ね。よし!」

 

 説明を聞いたリズベットも掘り始める。

 

 ザックザックと雪を掘り進めていると、まるで水晶の様な分厚い金属? 板の塊を見付け出す。

 

「ユート、これ!」

 

「有ったか!」

 

 スキル【鑑定】を使って視ると──

 

「クリスタライト・インゴット!」

 

 それは明らかに欲して止まなかったアイテム。

 

「よし、取り敢えず巣穴の中に有るだけ見付けよう。仲間の分も確保が出来たら御の字だしね」

 

「オッケー!」

 

 目的の素材を見付けたからだろう、ハイテンションなリズベットはサムズアップで応えたものだった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 結局、【クリスタライト・インゴット】は四本だけが見付かる。

 

 上手く素材を組み合わせたならば、四人分の武器を製造が可能だろう。

 

 とはいえ、ユートは自分で製造が可能であったし、響は六十層クラスの武器など既に持っている。

 

 故に、必要なのは未来の細剣系武器とケイタの使う片手棍、序でにリズベットの片手棍も造るとしたら、一人分は余る計算だ。

 

 よって、第五〇層で入手をしてキリトに譲られている【エリュシデータ】とは対為す片手剣として新たに【ダーク・リパルサー】が造られ、譲渡される。

 

 これによってキリトは、漆黒の魔剣と白き闇払う剣の二刀を同時に所持する事となった。

 

 そう、いつの間にか彼のスキル欄に追加がされていた【二刀流】の為に。

 

 

.

 




 次はシリカが主役回?


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