ソードアート・オンライン【魔を滅する転生剣】   作:月乃杜

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第33話:圏内事件なんて無かったんや!

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 濃紺色な髪の毛をミドルロングにした女性が、ユートの隣で何も身に付けない──生まれた侭の姿で寝息を立てており、縋る様な仕草でユートの腕を確りと放さないと謂わんばかりに、力強く抱き締めている。

 

 それ程には豊満と云えないが、それでも脹らんでいる双丘が当たっていた。

 

 彼女のプレイヤーネームはヨルコ、嘗て【黄金林檎】というギルドに加入していたが、今やあのギルドは存在していない。

 

 ギルド消滅から半年……ギルドリーダーを伴って、ヨルコがユートを訊ねてきたのである。

 

 別に危機的状況だった訳ではなく、単純にギルドの消滅後に心の準備が整い、約束通りに【ZoG】へと加わりに来たに過ぎない。

 

 半年前の秋口頃に起きた事件、【黄金林檎】のギルドリーダーのグリセルダがPKされ掛けたのだけど、ユートがこれに介在をした事により縁を繋いだ。

 

 それから度々パーティを組む事もあったし、こうして冒険を終わらせれば互いに肉体の快楽を求め合い、耽る事だってある。

 

 この世界ではそんな欲望を懐けば、以外とセーフティを外してしまう。

 

 何しろ、この身はアバターであって本来の生身ではないのだから仮令、処女であっても痛みは無いから、経験するだけなら簡単に出来てしまうのだから。

 

 それを盾にというとおかしいが、ユートは囁く際にそれを前面に押し出す。

 

 女の子の方も、警戒心や初めてなら初めての抵抗感が可成り減り、『ちょっとくらいなら』と軽い気持ちでベッドを共にする。

 

 ヨルコも興味が無いといえば嘘になり、ユートには感謝の気持ちや仄かな好意を持っていたし、アバターだからという免罪符を突き付けられて、仮初めの肉体でならと捧げたのだ。

 

 ユートからすれば本物の肉体での行為に比べると、どうしても一段下がる悦楽に過ぎないが、ヨルコだと初めてだったのもあって、充分以上に痺れる様に甘い快楽に酔えた。

 

 正確にはこのSAOによる性行為は、直接的に快楽神経だけを刺激する行為なだけに、実はユートくらいになると話は別だが普通はSAO内の方が気持ち良くなってしまうものなのだ。

 

 何度か逢ってパーティを組み、レベルアップを目指したり簡単なクエストなどを熟したり、二人きりでの愉しいRPG生活を暮らしつつ、それが終われば宿で互いを求め合うというこの関係をそれなりに続けて、引き篭っていたグリセルダを強引に引っ張って来て、何とユートの前で百合ってしまい、更には快楽に溺れ始めたグリセルダの股を開いてユートに挿入させて、漸く此方側に意識を向けさせる事に成功した。

 

 ユート的にも、美少女と美女が目の前で睦み合っているのを見せ付けられて、その気になってしまっていたから、殆んどグリセルダの中でも元に為りつつある夫が居た事実も忘却して、愉しんでしまったもの。

 

 NTRには当たらない。

 

 幾ら夫に献身的な良妻だったとはいえ、流石に殺され掛けては……しかも自分の頑張りを全く理解しようともしない、そんな男だとは思いもしなかったから、失望感で引き篭ったのだ。

 

 若し、SAOから脱出が出来たとして彼との関係をどうするか? 決断が出来なかったグリセルダだが、ユートに抱かれた事も手伝って、最初の作業は離婚届にサインさせる事になる。

 

 

 閑話休題

 

 

 パチッとタレ気味な目を開くヨルコ。

 

「ユート? おはよう」

 

「おはようにはまだちょっと早いな」

 

「そうなんだ……」

 

 まだ起きる時間には早いと知り、ヨルコは頬を胸に押し付けてスリスリと擦りながら温もりを楽しむ。

 

「ふふ……」

 

 おもむろにユートの分身を右手で掴む。

 

「昨夜はあれだけヤったのにまたおっきくしてる」

 

 そう言いながら刺激を与えてくるヨルコを、ユートは少し強引に押し倒して、再びめくるめく熱い快楽に耽る事、約一時間。

 

 所謂、ピロートークを始めた二人は……

 

「ねえ、覚えてる?」

 

「何を?」

 

「私と貴方がこんな関係を持った切っ掛け」

 

「思い出したくないのかと思ったけど?」

 

「うん、でもユートに出逢えた切っ掛けでもあるし、忘れたくはないの」

 

 出逢った切っ掛けとなる事件、それをお互いに語り始めるのだった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 その日、ギルド【黄金林檎】はちょっと特殊だと思われる漆黒のモンスターと遭遇して偶々、攻撃が上手く当たって斃してしまう。

 

 明らかに普段から湧出をするモンスターと異なり、見るからにレアモノだった訳だが、間違いなくそれがレアなモンスターだと判ったのはドロップアイテム。

 

 【俊敏の指輪】と呼ばれるそれは、アクセサリーとして身に付けるとその名に違わぬ効力として、俊敏をニ〇も上げてくれるというレアアイテム。

 

 SAOはステータス面が可成り簡略化されており、攻撃力に直結をする筋力と動きに直結する俊敏、二つしか上げる要素がない。

 

 SAOをゲーム足らしめる要素は、膨大なスキルにあるといっても過言ではないであろう。

 

 武器を揮う上で必須となるソードスキル、その他に探知や料理や釣りや裁縫や鍛冶といったスキル。

 

 二つのパラメーターと、これらスキルの取得と武器の習熟で、プレイヤー達は個性を得ているのだ。

 

 一回のレベルアップにて獲られるボーナスポイントは三ポイント、当然ながら上げられる数値はレベルによって固定された限界値が存在するが、中にはそんな限界より上のパラメーターを持つプレイヤーも居た。

 

 レアアイテムを手に入れた運の良いプレイヤーで、【黄金林檎】が今回で手にした指輪もそうだし、中には酒類に恒久的なパラメーター上昇効果が認められるアイテムも在る。

 

 たった一つしかなかった指輪、どうするのかを揉めるのは仕方がないだろう。

 

 総勢で八名のメンバー、その中で出た意見は二つ。

 

 自分達で使いたいという者と、一つしかない指輪をどうこうするより、売ってしまってコルに変えようという者だ。

 

 民主主義の名前を借りた多数決の結果、使いたい者が三人に売りたい者が五人という事で、ギルドリーダーのグリセルダが競売に掛ける事となった。

 

 使いたいと言っていたのは完全な前衛、シュミットとカインズの二人であり、もう一人はヨルコ。

 

 当時、ヨルコはカインズと付き合い始めていた為、彼氏の意見に同調した形で売るのに反対をした。

 

 だけど、この時にヨルコは言い知れぬ不安感に襲われており、何かを見落としていて破滅を迎えると……そんな最悪な気分に少しだけ青褪めてしまう。

 

 黄金林檎】へ入る前に、ヨルコはモンスターに一人きりで襲われ、死に掛ける経験をしていた。

 

 その際に救ってくれたのは黒髪黒瞳、見た目に凡庸で女の子寄りな中性的青年であり、その気になってのメイクアップで何と無くだが自分より美人になりそうな感じだった。

 

 プレイヤーネームが本名だという彼はユート。

 

 凡庸な顔立ちというのは飽く迄も、割と何処にでも在りそうな顔だという意味であって、綺麗に整っているから女としては羨望の眼差しを向けるしかない。

 

 自分こそ凡庸に過ぎると思っていたから。

 

 手を取って貰って立たせられたヨルコは、茫然自失となっていたけどすぐに我を取り戻し、頭を下げるとお礼を言った。

 

 危うくアバターはポリゴン片に変わり、現実の肉体は脳をチンされて死んでいたのだから当然である。

 

 もう、涙目でペコペコと頭がもげるくらいに下げ、顔は恐怖から逃れた反動からか、林檎みたいに真っ赤に染まっていたと云う。

 

 因みに、ユートは原典を識らないから判らなかったけど、実はヨルコはこの後で【黄金林檎】のグリセルダに救われて助かる予定であったのだが、知る由もないユートは助けてしまう。

 

 その後に暫くパーティを組み、レベリングやクエストに勤しんだ訳だったが、世界の修正力か結局は彼女はグリセルダのギルドへと入り帳尻は合ってしまう。

 

 クエストを熟している間にユートは、ヨルコに自分が持つ技能で使えそうなのを教えていった。

 

 ユートが教えると余程の事がない限り、上手く覚える事が可能な為にヨルコはアバターの性能をレベルアップで上げるだけでなく、プレイヤー技能も充分過ぎるくらい上げ、本来辿った世界線に比べても遥かに強くなっている。

 

 尚、何も知識が無い娘にえちぃ知識をユートを相手に現地習得させると、凄まじい手練手管を覚えてしまう為に、本当に一ヶ月前まで処女で性知識に疎かったのか? と思うくらいにまで性長してしまう。

 

 ハルケギニア時代では、貴族のアホ共がそんな噂を聞き付け、妾をユートの所に送り出して性知識を会得させようなんてしており、貴族が妾にするだけあって綺麗処で若い娘さんだし、『まあ、良いか』とヤってみて一ヶ月後、貴族家へと還された妾によって腹上死し掛けた者が多数。

 

 妾であるが故に、貞淑を旨とするトリステイン貴族が挙って進んだアホな道。

 

 まあ、ユートとしてみれば様々な娘──平民や下級貴族など──を喰えたので良しとしておいた。

 

 

 閑話休題

 

 

 戦い方をレクチャーされたヨルコは、最終的にシステム外スキルとして【虫の知らせ】を習う。

 

 第六感だとか兎にも角にも危機回避能力を高める為の訓練で、【倫理コード解除設定】を使って倫理コードを解除した上でユートが〝エロく〟触るのを避けるという事をしていた。

 

 流石に何度も御触りされてしまい、色々と感じさせられてしまった。

 

 色々と。

 

 結局、時間的にオーバーしてしまったから離れるまでに覚えられなかったが、【黄金林檎】に入団してから暫くして迷宮の先に不安を感じたのだ。

 

 その時は気のせいであると黙っていたが、実際に先へと進んだら死に掛けた。

 

 次の機会があって今度は話したものの、グリセルダ以外には信じて貰えなかった為、再び其処へ進んだらまたも死に掛けた。

 

 三度目、今度こそ仲間も信じてくれて回避したら、風の噂で進んだ先へ行ったパーティが帰って来なかったのだと聞く。

 

 ヨルコは震えたが仲間を救えた為、グリセルダからは誉めて貰えたし、カインズと付き合う切っ掛けにもなったから折り合いを付ける事が出来た。

 

 その不安感をグリセルダが競売に行くと決まった時に感じ、つまりはグリセルダが危ないと考える。

 

 仲間には言えない。

 

 場合によっては仲間による裏切りすらあるから。

 

 ヨルコは久方振りになるフレンド登録した師匠──ユートに連絡を取った。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 第二二層……【ZoG】の本部。

 

「久し振りだねヨルコ」

 

「はい、ユートさん」

 

 テーブルを挟みソファーに座った二人、未来が淹れてくれたお茶を飲んで互いに挨拶を交わす。

 

「それで? 君は君の場所で頑張っていると思っていたんだが、話があるというのは何なんだ?」

 

「はい、実は……」

 

 ヨルコは話す。

 

 ギルド【黄金林檎】が手にしたレアアイテムを競売に掛けるべく、グリセルダが一人で向かう事と自らが感じた不安感の事を。

 

「成程……パーティを組んでいた時には覚えきれなかった第六感、それを会得したから感じた不安感か」

 

「……」

 

 表情を歪めて歯を食い縛って頷くヨルコ。

 

「君の不安感はきっと正しいだろう。恐らく某か認識をしていたから感じた……話したな? システム外スキル【虫の知らせ】とは、自身が受け取った意識と無意識に保全された情報を、統合する事によって得られるモノだ。オカルトなんかではない、もっと科学的なもんなんだって」

 

「はい」

 

「なら、君の目的は護衛って処かな?」

 

「そうです! お願いしますユートさん! グリセルダさんを影から護衛をして貰えませんか!?」

 

「対価はどうするんだ?」

 

「勿論、考えてます。正直な話、最低でも百万コルなんて用意は出来ませんが、代わりになる何かを提示すれば受けて貰えますよね」

 

「そうだね、前にそう言った筈だよ」

 

 親しき仲にも対価有り、ユートは仮令仲間であっても対価は僅かでも取る。

 

 与えられたモノには須くそれに見合うだけの代償、対価が必要。

 

 その際には与え過ぎてもいけない、奪い過ぎてもいけない、過不足無く対等に均等に。でないとキズが付く……現世の躰に星世の運に天世の魂に。

 

 などと言ったのは何処の魔女だったか?

 

「二割くらい割引くが?」

 

「支払えません。だから、私を対価にします」

 

「……意味、理解が出来ているのかな?」

 

「はい」

 

「彼氏が居るとか言わなかった?」

 

「何と無く付き合っていただけです。グリセルダさんには代えられません」

 

「了解した。これから行けば良いのか?」

 

「いえ、明日の午前六時。競売に向かいます」

 

「なら、明日の五時には出るかな」

 

「お、お願いします!」

 

 そう言ってヨルコはソッと唇を重ねてきた。

 

「カ、カインズとは何度かしてるから初めてじゃないのですけど……あ! 身体の方は未だですから!」

 

 何だかヨルコが余計な事を暴露し始める。

 

「解った解った」

 

 ポンポンと軽く頭を叩いて家の奥へ進む。

 

「取り敢えず、食事くらいは出すから泊まっていくと良いよ」

 

「とま!?」

 

 おかしな誤解をするのはテンプレだろうか?

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 翌朝、ユートはすぐにもグリセルダが出発する筈の転移門近くに潜んだ。

 

 果たしてグリセルダに何が起きるのかは解らない、だが然しヨルコが得たのはユートが伝えたスキル。

 

 信じるに価するだろう。

 

 競売に向かうのに何故か圏外に出るグリセルダ。

 

 何がしたいのかは解らないが、モンスターなら幾らでも湧出するし、その気になれば誰かしらが潜むのだって難しくはないのだ。

 

 どうやらヨルコの不安は的中らしいと考え、ユートはある程度の距離を取り、気付かれない様にストーキングをする。

 

 隠れる場所が割かし有るのは有り難かった。

 

「だ、誰!? 貴方達は」

 

 警戒心バリバリに訊ねるグリセルダ、彼女の目の前にはフーデッドマントを被る三人組が立ち塞がった。

 

 何やら会話をしているみたいだか、ユートの所までは流石に響いてこない。

 

「キャァアッ!」

 

 グリセルダが悲鳴を上げると同時に、力無く地面に倒れてしまう。

 

「麻痺毒か!」

 

 ユートは駆けた。

 

 腰に佩いた自らの刀──正宗+28の高い攻撃力を持つ武器を抜刀し、敵に対して切っ先を突き付ける。

 

「ホー、まさかの援軍か」

 

 ポンチョを被る男が何処か驚きを見せた。

 

「あ、なた……は?」

 

「ヨルコに頼まれてね」

 

「よる……こ……そう、またいやな……よ……かん」

 

「そういう事だよ」

 

「ハッ、嫌な予感ときたかよ? これはこれは、折角の作戦が予感でパーか!」

 

 然も可笑しそうなポンチョの男、それは自らが自信を持っていた謀略が予感なんてモノに阻まれたのが、どうやらツボにハマってしまったらしい。

 

「さて、PKなんざぁ格下ばかりを相手にしてたんだろうけど、初の格上を相手にたった三人で向こうに回せると思うなよ?」

 

 PK──これが成立するのは基本的に真っ正面からだろうが、或いは罠を使うにしてもレベルが上の相手に敵対したりしない。

 

 万が一に殺られては堪らないからだ。

 

「ハッハッ! てめえが、俺らより格上だぁ?」

 

「……おも……白い……」

 

 他の二人も笑う。

 

「殺り合うなら付き合う。その代わり……目には目、歯には歯、PKにはPKを以て応えようか」

 

 タン!

 

 それはまるで現実世界でやる様な縮地法の如く瞬間的な移動で、餓鬼っぽく笑う男の首筋に切っ先を僅かに当ててやった。

 

「ぐっ!?」

 

「もう一度だけ忠告をしてやる。お前らは弱い、此処で殺り合いたいなら付き合ってやるが、死ぬ覚悟だけはしておけよ?」

 

 ズズ……

 

 少しずつ刃がめり込む。

 

「ヘ、ヘッドォ!」

 

 情けない声を上げる。

 

 彼に痛みこそ無いのだろうが、刀の切っ先が首へとめり込む不快感は感じていたし、ユートの本気が態度や仕草や雰囲気から決してハッタリではないと、殺しをしてきた自分自身が理解をしてしまったからだ。

 

「良いだろう。此処は退くぞジョニー、ザザ」

 

「オッケー、ヘッド」

 

「判った……」

 

 三人は殊更に慌てず騒がず退き、その侭踵を返して行ってしまう。

 

「待て、お前だな?」

 

「何がだ?」

 

「今までの搦め手なPKを教唆してきたのは。例えば第二層の強化詐欺事件……例えば睡眠PKとかな」

 

「ハッ! そうか、お前さんが今まで邪魔をしてくれた奴か? 楽しませてくれるなBoy!」

 

 おかしなイントネーションであり、少なくともバイリンガルなのは間違いないくらい英語が達者な様だ。

 

 基本は日本語らしいが。

 

 去り行くレッドプレイヤーは追わず、アイテムストレージより解毒結晶を取り出してグリセルダに使う。

 

 パキン! 砕け散る結晶が効果を発してグリセルダは起き上がった。

 

「あ、ありがとう」

 

「ああ。だけど競売に行くのにどうして圏外へ?」

 

「それが……」

 

 メッセージが有ったから待ち合わせに来たという、つまりヨルコ以外の誰かがグリセルダを殺害するべく罠を張ったのだろう。

 

 PK専門らしいプレイヤーに通じてまで。

 

「成程、それがお前か? 隠れていても無駄だぞ……ヨルコのシステム外スキルと同じく、僕は気配を読む事が出来るからな」

 

 確りと視線を向けてくる辺り、ハッタリではないと諦めたのか出てきたのは、トレンチコートに帽子を被ってサングラスを掛けた男が木陰より出て来た。

 

「グリムロック、アナタ」

 

「……アナタってのは二人称的な意味じゃなく?」

 

「グリムロックはSAOでも現実でも夫なのよ」

 

「納得した。それで、どうして夫のアンタが妻であるグリセルダを殺そうとしたんだ? 今更、惚けるなんてよしてくれよ? この場に居る唯一の【黄金林檎】のメンバー、そして奴らに殺され掛けた彼女を黙って見ていた事。少なくとも、状況証拠は充分だ」

 

「く、ふふ……」

 

 観念したのか、グリムロックはポツリポツリと殺意の理由を語り始める。

 

「私は許せなかったのだ。ユウコの愛情が失われつつある事が」

 

「? どういう事? 私は今でもアナタを愛して……いるわ……」

 

 殺され掛けた事からハッキリ言えなかったものの、グリセルダは別にグリムロックへの──夫への愛情を失ってはいない。

 

「不倫でもしてたか?」

 

「する筈ないわ!」

 

「なら確かに意味不明だ。何を以て愛情が失われたなんて思った?」

 

「ユウコは私と共にSAOに囚われたが、この世界で活き活きとしていた」

 

「は?」

 

 良い事ではないか?

 

「現実の世界でユウコは、私に従順で可愛らしかったというのに、この世界に囚われてから君は変わってしまったんだ」

 

「か、変わった? 私が、変わったってどういう?」

 

「さっきも言ったろう? 活き活きとしていると……こんなデスゲームに怯え、怖れていた私を置き去りにする勢いでユウコ……君は充実した様子を見せたよ。私は認めざるを得なかったのさ、私が愛した君はもう居ないのだとね!」

 

「そ、そんな……私はただ……ただ……」

 

「ならばいっそ、合法的に殺人が可能なこの世界に居る内にユウコを永遠の想い出の中に封じてしまいたいと願った私を、いったい誰が責められるかね?」

 

「そんな下らない理由からグリセルダを、自分の妻を殺そうとしたのか?」

 

「充分過ぎる理由だろう。君にもいずれは解るのさ、探偵君。愛情を手に入れ、それが儚くも失われようとした時に……ね」

 

「まるで僕が愛情を知らないみたいに言うな?」

 

「君の年齢では解らない、愛情の何たるかを」

 

 オーバーアクションも甚だしい大仰な手振りで芝居掛かった科白を口にしているグリムロックは、ハッキリ云えば自分に酔った性質の悪い人間にしか見えず、またグリセルダはショックから茫然としている。

 

「舐めるな、若造が!」

 

「な、なにぃ!?」

 

「高が百年も生きていない程度の若造の分際で、既に世界を覚った心算かよ! お前みたいなのが独覚になって意気がるんだろうな。さっき、アンタはユウコは居なくなったと言ったが、それは違う。彼女がSAOで活き活きしていたのは、愛するアンタを早く解放するべく、先を見据えて動いていたからに他ならない」

 

「な、んだと?」

 

 グリセルダを見遣ると、顔を上げて首肯した。

 

「ば、莫迦な!」

 

「これが現実だ」

 

 その後、意気消沈をしたグリムロックはコリドー結晶で記録していた黒鉄宮の牢獄に叩き込み、グリセルダを連れて帰る。

 

 ギルドは解散、指輪に関してはユートが買い取り、お金はヨルコを含む六人に分配されて、グリセルダは『暫く独りになりたい』と引き篭り、ヨルコはカインズと正式に別れてユートに対価を支払う。

 

 カインズや他のメンバーは別のギルドへ、ヨルコはグリセルダの面倒を見ながらいつかユートに合流したいと語る。

 

 それから半年、ヨルコはグリセルダを無理矢理にでも引っ張ってきて、二人してギルド【ZoG】に入団をするのであった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 グリセルダは夫に裏切られて、ヨルコは彼氏と別れてしまった為、云ってみればフリーな状態に等しかった──グリセルダは現実で離婚しないとフリーじゃないが──とはいえ、ユートと爛れた性活をする様にもなり、SAO自体も楽しんでプレイしている。

 

 そして来るべき日……

 

 バタバタとギルドホームに入ってきたキリト。

 

「ユート!」

 

「どうした、キリト?」

 

 

 グリセルダが元人妻的なパワーで淹れたお茶を飲みながら、ユートは慌ただしいキリトに声を掛けた。

 

「密告があったんだ!」

 

「密告? そいつは穏やかじゃないな」

 

「ユートが追っていたあの【笑う棺桶(ラフィン・コフィン)】の元メンバー、それが投降してきてアジトの場所が判明した!」

 

「! そうか、奴らに辿り着いたって訳だね」

 

 腰を上げたユート。

 

「これから主だった攻略組のギルドが集まって、奴らの討伐任務を行うってさ」

 

「了解した」

 

 ギルド【ZoG】マスターのユート、サブマスターのキリトは最大派閥となる【血盟騎士団】が本拠地としているグランザムへと向かうのだった。

 

 

.

 




 ちょっとグダグダ感が。


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