ソードアート・オンライン【魔を滅する転生剣】   作:月乃杜

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第7話:リアルソードスキル

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 ムクリとベッドで眠る様に倒れていた身体を起き上がらせ、閉じていた目を開いたら其処には黒髪の少年キリトと、栗色ツインテールの少女シリカと、それに赤毛に無精髭な野武士面の男クラインが居る。

 

 クライン一味は見当たらない辺り、他の場所に居るのであろう。

 

「ただいま」

 

「お帰りなさい」

 

 寝起き故か、薄くて儚い笑みを浮かべながら帰ってきた挨拶をすると、シリカが挨拶を返してくれた。

 

「取り敢えず、次は政府と交渉を持とうと思う。明日までは暇だろうし、買い物を済ませたらクエストにでも行こうか」

 

「そうだな。けど、報酬は片手剣のアニールブレードだぜ? 刀使いのユートには要らなくないか?」

 

「有れば有ったで役に立つ事もあるよ。シリカはどうする? パーティを解消して僕だけで行く事も出来るんだけど。短剣(ダガー)がメインなら、シリカにも要らない訳だけど」

 

「行きます」

 

 即答するシリカに、少し吃驚してしまう。

 

「クラインは?」

 

「おりゃ、仲間を連れてっからよぉ。此処等で連中とレベリングするさ」

 

 この【ホルンカの村】に来るまでに、ある程度にはレベリングを意識した行軍をしたのだが、まだレベルは僅か3でしかない。

 

 この辺のMobを相手にするなら、ユートが提供した武具も相俟って、無理をしなければ死ぬ事も無いだろうと思われる。

 

「そっか、それじゃ暫くはお別れだなクライン」

 

「ああ、最初の方で戦い方をレクチャーしてくれて、サンキューなキリト」

 

「ああ!」

 

 キリトとクラインは固く握手をして……

 

「ユート、アンタも一緒に行動しようって言ってくれて嬉しかったぜ。サンキューな?」

 

 ユートにも手を差し出し握手を求めてくる。

 

「ああ、パーティメンバーと頑張ってくれ」

 

「応よ!」

 

 清々しいまでの笑みを浮かべ、サムズアップをしながら応えるクライン。

 

 ユートはそんな彼が生き残れる事を、切に願わずにはいられなかった。

 

 互いに宿屋を出てから、暫くは独自行動という事になって、ユートとシリカもクライン一味とフレ登録をしておく。何かしらあれば連絡を取れるからだ。

 

「さて、キリトとシリカの装備は……僕が居ない間にきっちり変えたみたいだ。キリトは初期のスモールソードみたいだけど?」

 

「ああ、この村に売ってるブロンズソードはこれから行く場所で使えないんだ。リトルネペントの攻撃で、直ぐにダメになるから」

 

 威力と使い勝手を比べるなら、使い勝手だと言う事なのだろう。

 

「そっか、元βテスターの情報なら参考にはなるな」

 

 まあ、ユートには関係の無い情報ではあるが……

 

「キリト、シリカ、それじゃ動き始めようか?」

 

「ああ!」

 

「はい!」

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 村の奥の家屋を目指して歩きつつ、情報のやり取りを行う2人。

 

 アニールブレードを獲られるクエストは、【秘薬クエ】と呼ばれている。

 

 3人が家に入ると、家人に迎え入れられるのだが、此処でクエストを始める為のフラグが立つ。

 

 台所で鍋を掻き回している女性NPCが振り向き、ユート達に話し掛ける。

 

 誰かしらプレイヤーが傍に立つと、そういう行動を取るアルゴリズムで動くのであろう。

 

「今晩は、旅の剣士さん。お疲れでしょう、食事を差し上げたいけれど、今は何も無いの。出せるのは一杯のお水くらいのもの」

 

 おかみさんといった風情のNPCが言うと、キリトはその言葉を待っていたのだと言わんばかりに、透かさず答えた。

 

「それで構いません」

 

 恐らく、肯定の台詞であれば何でも良かったのであろうが、キリトは心情的に普通の受け答えをする。

 

 その後、長々とイベント台詞を聴いて開始となる訳だが、問題は他のプレイヤーが別口で請けられるのか否かだ。

 

「さて、βじゃ他のプレイヤーがイベントを終わらせるまで請けられなかったんだがな……」

 

「ま、試してみよう」

 

 今度はユートがおかみさんの前に立つ。

 

「今晩は、旅の剣士さん。お疲れでしょう、食事を差し上げたいけれど、今は何も無いの。出せるのは一杯のお水くらいのもの」

 

 キリトの時と一字一句違わず、おかみさんが先程と同じ台詞を言ってきた。

 

 金色のクエスチョンマークが、おかみさんの頭上に点灯してクエストが発生した事を報せる。

 

「何か困っているの?」

 

「旅の剣士さん、実は私の娘が……」

 

 これによって、ユートもイベントを請け負う事が出来た事になる。

 

 シリカには全く必要が無いのだが、一応はクエストを請けておく事になった。

 

 ユート達パーティは西の方にある森へ向かう。

 

 森に出る【リトルネペント】というモンスター……身の丈は一メートル弱で、レベルは3。植物型の食人植物といった感じだ。

 

 キリトのレベルも現在は3だから、ギリギリで戦えるモンスターとなる。

 

 初めてなら……だが。

 

 今のキリトであれば一匹なら大した事の無い、だが実際の処は問題があった。

 

 この【リトルネペント】というモンスターは、通常のモノ以外に花付きと実付きが存在し、実付きを攻撃して身を割ると異臭と共に周囲の【リトルネぺント】を呼び寄せてしまう。

 

 湧出(ポップ)したばかりなら最悪で、下手をすると一度に何十もの【リトルネペント】を相手にしなければならない。

 

 そしてクエストで必要となるのは、花付きが落とす胚珠というキーアイテム。

 

 キリト曰く、花付き出現率は通常のリトルネペントの1%程度らしい。

 

 花付きが湧出(ポップ)するまで、ひたすらに斃していかねばならないのだ。

 

「そういやユートはスキルスロットに何を入れた?」

 

「ん? 技能スキル【鍛冶】と武器スキル【鎚】」

 

「は? 行き成り生産系のスキルをって……ん、武器スキルは……と思ったけどレベル6だからスキルスロットがもう1つ有るんだったな」

 

 スキルスロットにどんな武器を使うか、武器スキルを入れて初めて武器を装備出来る。

 

 キリトなら【片手用直剣】武器スキルで、シリカは【短剣】だ。

 

 このスキルスロットは、初期で二つが在る

 

 其処からレベルが5上がると1つ、それから10になる度に増えていく。

 

 故に、ユートのスロットはもう一つ有り、其処には【カタナ】の武器スキルが入っている筈なのだ……

 

「確か、僕は【曲刀】を入れてた筈だけど、スキルに【カタナ】が付いている。【曲刀】の代わりだね。

試してみたら刀は間違いなく装備可能だったよ」

 

「そっか、使い心地は?」

 

「まあまあかな」

 

 ユートは【大太刀】を振りながら答えた。

 

「で、キリトは?」

 

「武器スキルは【片手用直剣】だな。で、もう一つは【索敵】を入れてる。ソロで動く事も視野に入ってるからな」

 

 キリトは苦笑いをしながら言う。よもやユートが、戦闘には直接的に関与しない生産系を入れているとは思わなかったのだ。

 

 武器スキルが変化しているのは、茅場本人が了解している以上、許容範囲。

 

 どうやらユートは初期の装備である、クラインも持っている曲刀が変化させられた小太刀ではなく、少しグレードの高い大太刀を使うらしい。

 

 暫く3人で探索すると、目的の【リトルネペント】が居る。カーソルには狭いイエローの縁取りがあり、それはクエストターゲットMobの証だった。

 

「じゃあ、ハントを始めようか」

 

「え゛?」

 

 ユートが突然、飛び出してしまい狼狽するものの、直ぐに気を取り直す。

 

「俺達も行こう!」

 

「はい、キリトさん!」

 

 キリトもスモールソードを、シリカはダガーを手に持って飛び出す。

 

「せあっ! でやぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

「なっ!」

 

キリトが驚愕するのは仕方ない、ソードスキルを喪ったユートが、ソードスキル張りの連続攻撃を放って、リトルネペントを一撃の元に葬り去っていくのだ。

 

 リトルネペントは防御力が低い為、レベルが6であるユートが一撃で斃しているのはおかしくもないが、このソードスキルも斯くやの攻撃には驚いた。

 

 終わらない、まるで舞いでも舞うかの如く攻撃速度を維持した侭、ユートの刀がリトルネペントを次々と屑っていく。

 

「な、なんじゃそりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

 鬱蒼としている森の中、キリトの驚愕の絶叫が響いて谺した。

 

「って、キリト……叫んでないで戦えよ」

 

「わ、わかってら!」

 

 キリトは漸く理解が出来た気がする。ユートがわざわざソードスキルを代償にしてまで【カタナ】スキルを茅場から貰った理由。

 

 先ず、ユートの剣技とは刀を揮うのを前提に構築がされている。その気になれば他の武器でも往けるが、相性は刀が一番だ。

 

 一つ一つ、別に技を放ちながらも円環して決して留まる事を知らないユートの身体は、リトルネペントの群れの第一陣を容易く殲滅せしめた。

 

 キリトも大成しなかったとはいえ、剣道を祖父から習っていたのだ。

 

 その程度の事は解る。

 

 言われた通り、キリトもリトルネペントを叩き斬りながらも、ユートと刀舞(ソードダンス)に目が釘付けになり見惚れていた。

 

 剛剣という力に任せている剣技ではなく、華麗に舞う様な美しい動き。

 

 剣の道に無理矢理ながら足を踏み入れ、妹の直葉の半分も大成しなかった自分と比べ、あれだけの動きが出来るユート。

 

「リアルソードスキル」

 

 キリトは我知らず、呟いていた。

 

 ふと、隣のダガー使いの少女を見やれば、拙いながらもユートの技と近い動きで武器を揮っている。

 

 技が途切れがちなのは、シリカ自身の未熟によるもので、ユートの様な集中が続かないのと、敵の攻撃で受けるノックバックが主な原因の様だ。

 

 ユートはリトルネペント程度の動きには捕まらず、被弾そのものが無いからか動きは終ぞ止まらない侭、第一陣は全滅してしまう。

 

「凄いな、ソードスキルが要らないなんて豪語出来る訳だよ。あんなのリアルにソードスキルを放っている様なもんだ」

 

「まあね、システムアシストは僕にとっては邪魔でしかないんだよ。茅場晶彦もそれを感じたから、ソードスキルと引き換えにして、カタナを持たせようと思ったんだろうね」

 

 ソードスキルというこの世界の根幹を成す部分を、ユートはぶち壊す真似をしたのだが、茅場晶彦はそれを容認した。

 

「ソードスキル……剣技に何かしらの拘りでもあるんだろうけどね」

 

 言いながらユートは自らの刀をキリトに向ける。

 

「いっ!?」

 

「ユートさん?」

 

 険しい表情のユートから何と無く殺気が感じられると思うのは、果たして気のせいだろうか?

 

 真逆、此処でPKされるのかと喉を鳴らしながら、切っ先を見つめて視線を上に上げると……

 

「(違う、視線は俺に向いていない。後ろ?)」

 

 ユートの視線は明らかにキリトの背後を睨み、恐らくは殺気に似た何かを放っていた。

 

「ユートさん、キリトさんに剣を向けるなんて!」

 

 突然のユートの行為に対して戸惑い、焦燥に駈られながら叫ぶシリカ。

 

 だが、ユートはその訴えをガン無視しキリトの背後に声を掛けた。

 

「おい、いつまでそうしている心算だ? 出て来ないならこの侭ぶち抜くぞ!」

 

「へ?」

 

 事、此処に至ってシリカにも漸く理解出来た。

 

 どうやら他のプレイヤーがキリトの背後に居るという事らしい。見えないのは何らかのスキルだろう。

 

「待った、待った! 僕の負けだよ。出るから攻撃はしないで!」

 

 其処には初期装備であるスモールソードを佩いて、革鎧に円形盾を身に付けた少年が所謂、ホールドアップした状態で立っており、困った表情になって言ってきたものだった。

 

 

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 第一層の固定パーティはユートとシリカ。キリトは基本的にソロで、偶に合流してクエストをしたりしています。


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