LAST DAYS エクシーズ   作:ちょいワルドラゴン

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レジスタンスの約束

英斗は大きく深呼吸をするとデッキケースとデュエルディスクを外し机の上に置いた。

そして汚れた黒いコートとシャツを脱ぐと部屋の隅のハンガーにかけられた少し大きい緩いTシャツを着た。

部屋の中でこのような薄くて締め付けのない服を着る時ほど心が安らぐことはない。

しばらくソファに座って目を閉じる。

今日もまた人をカードに変えてしまった……、

誰かを守るためとはいえこれほど心に嫌悪感を与えることはない。

ましてやそれが愛するデュエルモンスターズをした結果であるならば。

 

コンコン

 

唐突にドアが叩かれた。

 

「入ってくれ。」

 

そう言った後誰かが部屋に入ってきた。

コツコツという少し高い靴の音からして隼ではない。

目を開けてその足音の主に目をやった。

 

そこには長身で黒く美しい髪を後ろで束ねた女性が立っていた。部屋の中なのだからなのかジャージを着ている。

彼女はセーラ、この場所を中心に見回りを担当している部隊の隊長で英斗の補佐に当たる。

デッキはヒロイックである。

 

「英斗、やっぱり薬はもう切れてるのね。」

 

セーラは英斗の腕に手を当てる。その隠れた場所からは血がにじみ出ていた。

 

「今日は使っていないし平気さ。」

「『アレ』を使うのはやめて。出なければあなたの命が。」

「雑魚相手ならば使わないさ。

だけどリーダー級がくれば……。」

 

そうこう話していると再び部屋がノックされた。

男は部屋に入るよう声をかけると案の定入ってきたのは隼であった。

 

「きたか隼。座れ座れ。」

「はぁ……。」

 

隼は上機嫌な英斗に少し気味の悪いようなものを感じていた。まるで何かを企んでいるような、何かを隠すような、どちらにせよすっきりしない何かを。

英斗は席を立つとガサゴソとベッドの横の引き出しを漁りだす。

そしてそこから一枚のカードを彼に向かって放り投げた。

そのカードは《銀河眼の時空竜》。

 

「これって……世界に数枚しかないナンバーズ、しかもオーバーハンドレッド……なんですか急に。」

「瑠璃ちゃん明日誕生日だろ?

俺は女の子の好みわからないからさ一番俺が持っててもらいたいものをプレゼントすることにした。」

「はぁ、でも4枚しか存在しないうちの一枚もらってしまっていいんですか?」

 

すると青年は笑顔で黒咲の持つカードの右腕を指差した。

そこには折れ目と少しの焦げた跡があった。

 

「あの日生き残った時に持っていたカードだ。瑠璃ちゃんに何かあった時必ず役に立つはずさ。」

「ありがとうございます。」

 

深々とお辞儀をする少年の方はブルブルと震えていて再び顔を上げたその目には涙がたまっていた。

それを見ると奥にいた女性が首にかけていたペンダントを外し黒咲の首にかけた。

 

「セーラさん……これは?」

「父と母の形見よ。ここがロケットになっててカードを三枚入れることができるわ。

みんなの分も一緒にプレゼントしてあげて。」

「ありがとう……ございます。」

 

嬉しすぎて言葉も出なかった。

普段ふてくされたような厳しい顔つきの男が人前で稀にしか見せない笑顔だった。

黒咲はユートの待つ食堂へ向かったのであった。

 

 

そのころ食堂で

 

「はぁ……。」

 

ユートのフォークを持つ手は震えていた。

今日は何時もより倒した敵も多かったし、強敵ばかりであった。

だがそれだけではない。

昼間、

そう、

黒咲と大手カード企業のカード倉庫に潜入する直前であった。

 

『こい!!

《クリアウィング・シンクロドラゴン》!!』

 

白いバイクに乗った自分と同い年と思われる少年。そして彼のシンクロ召喚をしたドラゴン。

ユートはエクストラデッキから一枚のカードを取り出した。

 

「似ている。」

 

ダークリベリオン・エクシーズドラゴン。

 

いつからかはわからない。

ただ、物心ついた時からいつも一緒にいたカード。

それにそっくりの白い竜が目の前にいた。そして、あの胸の中をかき回されるような気持ちの悪い感覚。

 

「ユート……。」

 

ハッと我に帰る。

後ろで隼とコウライが心配そうにユートを見つめていた。

 

「やはり、あのシンクロ使いの件か?」

「まあ……、そんなところだ。」

「たいへんそうだな。遠くからちょっとしか見れなかったがダークリベリオンにそっくりだったなあのドラゴン。」

 

そう言ったコウライの肩を軽く叩いた隼。

ポンと言う軽い音に対して彼の眼光はまさに獲物に威嚇する猛禽類の眼であった。

 

「ごめん、おれ風呂入ってくるわ。」

 

そう言うとコウライは急いで食堂を後にした。

 

「全くあいつは……。」

「あそこまで辛くあたらなくとも……。」

「あいつにはあれくらいがちょうどいいんだユート。」

 

そう言うと隼は夕食のスパゲッティを黙々と頬張り出した。無言で大量によそわれたスパゲッティをバキュームのように吸い込んで行く。

 

「そういえば瑠璃の誕生日だな。おめでとう。」

「ありがとうユート。」

 

ユートは話題を変えることにした。

隼は俗にいうシスコンなので話題をこちらにする方が機嫌がいいし疲れた自分にとっても気が楽だった。

仲間思いな分直ぐに怒ってしまう。

そんな彼がユートは好きだった。

どんなに辛いことも彼にならば全て打ち明けられる、だからこそ言えないこともある。

 

あのドラゴンと戦ってから心が騒いでいることを。

 

「瑠璃にあげられるほどいいカードは持っていないが、お守りにと3日前から選んでいたものがある。」

「そこまで考えなくとも……。」

 

ユートは腰につけたカバンから封筒を取り出す。

そして封筒の中から取り出したカードを隼に手渡した。

 

「レスキューラビットか。また可愛いものを持っていたな。」

「うむ、今は幻影騎士団だが昔はレスキューラビットとエヴォルカイザーを組み合わせたデッキを使っていてな。

女の子だから可愛いのがすきだろう。」

「瑠璃はウサギが大好きだ。ありがとう。」

「そして、俺からのメッセージだ。」

「お前らしいな、教えてくれ。」

 

ユートは少し照れくさそうに頭をかくと大きく深呼吸をした。

つかの間の休息の後その口を開いた。

 

「レスキュー、つまり助けるだ。

今俺たちは絶望的な状況にいる。

辛い事や逃げ出したいことがあるかもしれない、そんな時にそのカードを見て思い出して欲しい。

 

兄のお前を含め俺たちはレジスタンスの仲間は

必ず助けに駆けつけると。」

 

隼はスパゲッティを頬張りながら大泣きしていた。

 

「泣くなよ隼。」

 

ユートは思わず笑ってしまった。

 

レジスタンスは仲間を必ず助ける。

 

 

その言葉がユートと隼の心に刻み付けられたしゅんかんだった。

 

 

 

 

 

 

 

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