GJ部+1   作:ショーP

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主要人物

園井 優太(そのい ゆうた)
男 高校一年生 主人公 可愛い絶対主義
「可愛いは正義だ」

四ノ宮 京夜(しのみや きょうや)
男 高校一年生 原作主人公 のんびり屋 愛称は『キョロ』
「人畜無害ってよく言われます」

天使 真央(あまつか まお)
女 高校二年生 GJ部の部長 チビっ子 『強引ぐマイウェイ』な性格
「私が部長だ!」

皇 紫音(すめらぎ しおん)
女 高校二年生 天才で大人なカッコいい人 優太と一緒に京夜をよくからかう
「かわいいね。きみは」

天使 恵(あまつか めぐみ)
女 高校一年生 部長の妹 マイペースなところは姉に似る
「紅茶のおかわりはいかがですか」

綺羅々・バーンシュタイン(きらら・ばーんしゅたいん)
女 高校二年生 いつもぼんやり不思議なお姉さん スキンシップ大好き
「きらら。きにしない。」



ネクタイ

「おい。ネクタイ」

 

いつもの部室の丸テーブル。名前も活動内容も、本当はあるのかも知れないが、俺たちは知らない。そんな部活の部長から、部長の隣にいる京夜は肘でつつかれた。

 

「ああ。はい」

 

京夜も言われて気付いたようだ。ネクタイが緩みきっていた。五時間目はちょっと暑かったからな。俺は…………大丈夫だった。

 

「えーと……」

 

いっぺんほどいて、結び直す。

 

「あれ?」

 

うまく結べなかったようだ。読んでいたラノベから目をあげると、長さがぜんぜん揃っていなかった。もう一度やり直す。

 

「あれれ?」

 

また失敗? したようだ。俺から見たら充分だと思うのだが。たぶん、ーーー『結び目の形が芸術的でない。納得できない。却下だ。』ーーーだとか思ってるんだろう。変なところであいつは分からない。またまたやり直す。

 

「…………」

 

部長が足をパタパタさせている。可愛らしいが(決して本人には言わないが)、あれは危険なサインだ。明らかにイラついている。

 

高校に入って、初めてこんなモンを結ばさせられるようになって、まだぜんぜん慣れていないのだろう。

 

この五月末の時点における、京夜のネクタイ結びの成功率はだいたい三分の一。これまでで二回失敗して、次が三回目のチャレンジである。紫音さんならーーー『次で成功する蓋然性はかなり高いと言わざるを得ない』ーーーとでも言うのだろう。…………俺? 一回やったらすぐ出来たよ? 正直、何で京夜があんなに苦労するのか分からないでいる。

 

「あちゃー」

 

また失敗してる。今度は結び目が固すぎた。部長がずっと見てたから緊張してたのかな? 全く、本当に何で出来ないのだろうか?

 

「おいメグ。ーーーやってやれ」

 

部長が恵ちゃんに顎で合図を送る。コンロの火を消してからやって来た。

 

「はい。四ノ宮君。失礼しますね。ちょっとだけ動かないで」

 

恵ちゃんの白い手が京夜の首元に伸びてきて、京夜は直立不動になった。

 

恵ちゃんは素早く器用に結んでいく。シュルシュルーーーと手際がいい。

 

「はい。できました」

 

「ありが…………」

 

「…………!」

 

京夜は礼を言う途中で言葉を止めた。俺もそれを見て吹き出しそうになった。なぜなら……

 

京夜のネクタイが横向きの蝶々の形になっていたからだ。

 

「女の子のリボンじゃないんだから」

 

「男の子の結び方なんて分かりませんよぅ。うち女の子ばっかりですし」

 

京夜が生意気にも恵ちゃんに抗議をしていた。恵ちゃんのような可愛い女の子にやってもらっただけありがたいと思え。

 

ふと、京夜の隣を見ると部長がテーブルに突っ伏していた。声もなく笑っている。悶絶するほどおかしいらしい。

 

部長がこっちを見てきた。目が合ったのでアイコンタクトを試みる。

 

「(あれは……おかしいですよね……)」

 

「(ああ……やばい、呼吸できねぇ)」

 

部長が顔をテーブルに向け直してから、三十秒ほどの呼吸困難を脱すると、部長は涙を拭って、京夜に顔を向けてきた。

 

「ちょっと貸せよ。やってやるから」

 

「部長。できるんですか?」

 

「私を誰だと思ってんだ。部長だぞ。いいからじっとしてろ。動くな」

 

椅子に乗って立ちあがった部長のまえで、京夜はじっとしていた。

 

部長の小さな手が京夜の喉元で動く。可愛いな〜と見ていると、突然ーーー。

 

「ぐえっ」

 

と、変な声があがった。京夜からだった。

 

「こんなもんはなー。こうやってー」

 

「ぶ、部長…………、く、くるし……っ」

 

「やめたまえ。真央。キョロ君が死んでしまう。見ていられないな。私がやろう」

 

どうやら、三人目のチャレンジャーは紫音さんのようだ。

 

「で…………、できるんですか? 紫音さん?」

 

これまでの例もあって、少し慎重になっているようだ。

 

「実際に結んだことはないが。結び目は何度も目にしている。トポロジー的には単純な構造だ。理解しているし、もちろん再現だって可能だ」

 

京夜は棒のように突っ立った。紫音さんに任せることにしたらしい。……が、俺はこの選択が失敗だと思っている。なぜなら……

 

「あれ?」

 

紫音さんから不吉な声があがった。

 

「おかしいな。完全に再現したはずなのだけど」

 

結び目の作りは完璧。しかし、ネクタイの前と後ろの長さがぜんぜん違う。

 

そう。紫音さんはゲームとパズルの天才だが、日常生活は残念なお人なのだ。京夜はすっかり忘れていたようだが。

 

「もういいです! 自分でやります! 三回に一回は成功できるんです!」

 

京夜がそう叫んだときーーー。

 

「やる?」

 

部屋の奥から女の人がぬっと現れた。綺羅々さんだ。綺羅々さんの問いかけに、京夜はこくりと頷いた。

 

手にしていたお肉を、パクリと口にくわえて両手を空けると、京夜の首に手を伸ばした。

 

ほんの一秒か二秒で。

 

「できた?」

 

京夜は手で確かめた。できていた。俺の目から見ても完璧だった。

 

「あ………、ありがとう……、ございます」

 

「ん。」

 

京夜がびっくりしながらも礼を言ったら、綺羅々さんは目を半月の形に細めた。

 

…………そして、このやり取りに混ざらず、傍観している男が一人いた。というか俺だった。別に、ハブられているわけじゃあない。今回は機会がなかっただけだ。

 

 

 

この話は、個性的な部活で、個性的な部員が繰り広げる、ゆるゆるふわふわな日常物語である。

 





ミニ知識 GJ部って?
正体不明の謎の部。
おもな活動内容は放課後に部室でダベってみたりお茶飲んだり。
部員は4+2名。
部長・天使真央を筆頭に、個性派揃い。
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