GJ部+1   作:ショーP

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毎週日曜零時に更新いたします。


部長の仕事

いつもの放課後。

 

部室にはいつものようにみんなの姿があった。漫画を読んでいたり(京夜)、一人チェスに興じていたり(紫音さん)、編み物をしていたり(恵ちゃん)、お肉を食べていたり(綺羅々さん)、そして俺はいつものソファに座ってライトノベルを読んでいる。

 

そのなかで、たった一人部長だけが、妙なことをやっていた。

 

「んー」

 

椅子の上に立ちあがり、天井に向かって手を伸ばしている。さらに、つま先立ちになって、ぴょんぴょん跳ね始めた。小学生とも見間違う容姿の部長がやると、とても絵になって可愛いです。俺得です。

 

「なにやってるんですか。部長」

 

部長の奇行は、こう言っては失礼だが、いつもの事だ。が、いい加減好奇心を抑えられなくなって、京夜は聞いてしまった。

 

「見てわかんだろ。蛍光灯を取っ替えようとしてんだよ」

 

「ああ。なるほど」

 

見てみれば、部長の真上の一本が切れていた。そして、丸テーブルの上には真新しい蛍光灯が置かれている。

 

と言っても、分かっていなかったのは京夜一人なのだが。みんなは気付いていた(俺は可愛い部長を眺め続ける為に黙っていた)。

 

ともかく、京夜も状況を理解したようだ。

 

「危ないですよ。僕がやりますよ」

 

椅子の上につま先立ちで、ぐらぐらと揺れ続けていて、京夜は見ているだけでヒヤヒヤするのだろう。だが、俺は声を張り上げて抗議したい。余計な事をするな! だからこそ幼く見えて可愛らしいんだろうが!

 

なんて、実際に言ったらみんなに白い目でみられ、部長に噛まれることを言うわけもなく、俺は傍観していた。基本的に俺は関わらない。見てるだけでお腹いっぱいです。

 

京夜が立ちあがって手伝おうとすると(京夜より紫音さんや綺羅々さんの方が背が高いから適任だろうが、男の意地だろう)、

 

「だめだ」

 

部長が断りの意思がこもった強い声が頭の上から降ってくる。いつも下から声が聞こえるのに新鮮だなぁ、なんて関係ない事を俺は考えてた。

 

「これは部長の仕事だ」

 

「だけど、ぜんぜん届いていないじゃないですか」

 

さっきも言ったが、部長の背丈は、ひどく小さい。小学校の高学年の方がまだ背が高いだろうと思えるまである。まぁ、そんくらいちっちゃい。

 

なので当然、椅子に乗ったくらいでは、天井の蛍光灯に手が届かないのだ。

 

「不可能だそうとなんだろうと! 私がやるったらやるのだ! 部費をぶんどってくるのも、備品の割り当てをぶんどってくるのも、部長の仕事だ。だから蛍光灯を交換するのも、もちろん部長の仕事だ なのだ」

 

いや意味わからん。

 

「わけわかんないですってば。あと自分で不可能とか言ってるじゃないですか」

 

京夜と同じ事を考えていた。そして冷静で的確なツッコミ。

 

「やらせてやってはくれまいか。先代の部長から任されたから、真央にとって、そこは大事なところなんだ」

 

黒い駒で白い駒を取りながら、紫音さんが言う。

 

「こら! シイ! 余計な事をゆーな!」

 

部長は紫音さんを『シイ』と呼ぶ。そして、紫音さんは部長を『真央』と呼び捨てにする。多分、昔からの女同士の親友なのだろう。

 

俺と京夜は一つの事が気になってきた。

 

先代の部長ってどんな人? 男? 女?

 

ーーーなんて考えてたら、京夜が椅子に戻った。

 

部長は未だに、椅子の上で右に左に、届くはずもない蛍光灯に手を伸ばし続けている。

 

「あのー……」

 

やっぱり見ていられなくなったんだろう。京夜が紫音さんに顔を向けた。俺もそっちを見る。紫音さんは澄ました顔で一人チェスを楽しんでいる。

 

綺羅々さんは我関せずを貫いている。いつもどおりお肉をパクパク食べ続けている。

 

恵ちゃんは、ケトルでお湯を沸かしながら、二本の棒を器用に操って編み物をしている。

 

彼女らは、別に冷たいわけではなくて、きっとみんなが『先代部長』とやらを知っているがゆえなのだろう。そう思いたい。

 

しかし、だからと言って納得ふる俺でも、京夜でも無かった。

 

「京夜ーーー変わるのがダメなら、手伝ってあげたらどうだ?」

 

「そうだね。部長ーーー手伝うんだったら、いいんですよね?」

 

椅子の上で伸びをしていた部長の両脇に、京夜が手を差し込む。

 

京夜は腕力に自信がある方ではないので、大丈夫か? と少し不安になったが、焚きつけた手前、黙って見ていることにした。

 

「えっ? わっ? ちょっーーー」

 

「できた」

 

「みたいだな」

 

京夜は無事、部長を “たかいたかい” のポーズで持ち上げる事ができたようだ。

 

「できた、じゃないっ! おろせバカ!」

 

ポカポカと頭を叩かれ、暴れられて、京夜は渋々といった様子でもとの椅子の上に下ろした。

 

「おまーーー! なんつーことを! 恥を知れ恥を!」

 

部長は怒っていたぎ、京夜は取り合おうとしなかった。

 

「手伝うならいいですよね? 僕が部長を持ち上げます。部長が取り換えて下さい」

 

「人の話を聞けよオマエ」

 

「手伝わせてくださいよ。手伝いたいんですって。ーーーいいでしょう?」

 

「いいじゃないですか部長。そうなったらもう、話聞きませんよ、そいつ。変なところで頑固ですから」

 

俺と京夜で強引に押し通すと、部長は渋々、頷いてOKしてきた。

 

“たかいたかい” はなぜか禁止になりーーー。

 

協議の末に、 “肩車” をして手伝う事になった(京夜が)。

 

蛍光灯は無事に交換出来たが、部長はその日、京夜と口を聞こうとしなかった。

 

ついでに、俺も噛まれた。ガジガジと。スルメのように何回も。

 

ーーー家に帰った後、噛み跡が残る腕を妹に見られてひと騒動あったのはご愛嬌。




キャラクター・プロフィール
【天使 真央】①
GJ部の部長。
小学生と見まがうばかりのちっちゃさであるが、これでも高校二年生。
強気かつ強引。いつも無駄に気合いが入っている。
でも意外と寂しがり屋かも?
優太は京夜と同じく遊び道具。

紫音→シイ
綺羅々→綺羅々
京夜→キョロ
優太→ユウ
恵→恵
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