GJ部+1   作:ショーP

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お久しぶりです


きららはひとつ

今日も部室には三人しかいなかった。

 

今日は綺羅々さん、俺、京夜の三人だった。部長と恵ちゃんと紫音さんの姿は見当たらない。

 

みんなどうしたんですかね?ーーーなんて、訊いてみたいところではあるけれども、なにせ、綺羅々さんは無口である。話しかけるには度胸が必要なのだ。

 

「ねぇ。キララさん」

 

京夜が肩越しに、あたりさわりなく声をかけた。なら、俺は言わなくてもいいだろう。ヘタレとは言わせない。

 

綺羅々さんは、いつも奥のソファ(俺の座っているのとは別の物である)に一人で座って、黙々とお肉を食べ続けている。

 

俺も京夜も、この部に入って随分経つが、綺羅々さんの人となりが一番分からずにいる。

 

そもそも、この『GJ部』という部が、どのような部活なのかすらよく分かっていない。読み方すら知らないのだ。

 

京夜が部長によく噛まれるため、GJ(グッドジョー)部なのではないかと、京夜と話し合ったことがある。顎(ジョー)を鍛えてグッドにする部ではないかと思った。んなバカな。

 

「キララさん?」

 

返事が無かったので、京夜がもう一度呼びかける。綺羅々さんはいつも、部屋の奥の方にいる。そっちに顔を向けるとーーー

 

俺と京夜は二人してギョッと体を固めることになった。なぜなら、奥の暗がりから、猫のように光る二つの目がこっちを見つめているのだ。綺羅々さんが、食事を中断してこっちに顔を向けている。

 

「あ、あの……」

 

京夜がもう一度呼びかけるも、綺羅々さんは無言で歩いてくる。指に付いた脂を口で拭いながら……すごい絵になります。

 

「あ。あのっ」

 

椅子に座っている京夜に腕を巻きつける綺羅々さん。どぎまぎしてる京夜。おいこらかわれ。

 

綺羅々さんは、俺と京夜よりもだいぶ背が高い。紫音さんとは違った感じで、年上の女の人って感じだ。その綺羅々さんから、俺たちは濃密なスキンシップをよく受ける。

 

綺羅々さんは、普段物静かだが、その反面、スキンシップが過剰である。俺と恵ちゃんがよく捕まって、匂いを嗅がれ、「いいにおい」などと言われるのだ。

 

たぶん、今京夜にやってるのもそれと同じ。深い意味は無い。たぶん。大事な事なので二回言いました。

 

京夜は周りに、人畜無害と思われていて、実際そうである。これまで出会った人のほとんどに京夜は警戒されないのだ。

 

だから、こんな状況でも京夜はおとなしくしていた。

 

ふんふんと京夜の髪の匂いを綺羅々さんが嗅ぐ。

 

「きららはひとつ。」

 

綺羅々さんが唐突にそう言った。

 

「え? なんですか?」

 

「きょろ。さっきいった。」

 

キョロというのは、このGJ部で付けられた京夜のあだ名、ニックネームだ。主に部長と紫音さんと綺羅々さんの二年生組が使っている。

 

「きょろ。いった。ーーーきららさん。」

 

「はあ」

 

京夜は首を傾げた。綺羅々さんが何を言ってるのかわからないのだろう。俺も分からん。さっき京夜が名前を呼んだのは確かだが。

 

「きららはひとつ。」

 

「はい?」

 

綺羅々さんの言葉は相変わらず意味不明だ。しかし、何かを伝えようとしているのは分かる。

 

俺たちーーー主に京夜ーーーに伝わっていないことは綺羅々さんにも分かっているようで、難しい顔をして考え込んでいた。

 

天井を見上げ、部屋の隅を見つめ、言葉を探している。

 

俺と京夜は見守った。そして、綺羅々さんが誇らしげな顔で京夜に告げる。

 

「きららはひとつ。みっつない。」

 

京夜はそれを聞いて考え込んだ。今度は京夜の番だ。が、俺は理解できた。

 

「えーと……」

 

俺はしゃべりながら立ち上がって、京夜と綺羅々さんの方へ歩いていく。二人がこっちを見てくる。

 

おそらくだが。

 

「キララ……で、いいんですか?」

 

綺羅々さんーーーキララは、「キララさん」という呼びかけの、「さん」という敬称を、数字の3と思ったのだろう。

 

自信はない。勘違いだったら、俺は理由もなく先輩を呼び捨てにしたことになる。

 

ドキドキしながらキララの返事を待ってると。

 

「ん。」

 

正解だったらしい。キララが、にこ、と微笑みを浮かべ、満足そうに頷いた。

 

キララがこっちに歩いてきて、腕を広げ……って、え、ちょ、まっ。

 

ガバッと、キララが俺に抱きついてきた。俺が見ている限り、このGJ部で一番キララのスキンシップが過剰なのは俺だと思う。

 

キララが俺の匂いをすんすん嗅いで。

 

「ゆうは。いいにおい。いちばん。」

 

嬉しいけど……重いです、キララ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜。

 

俺は妹と一緒に、家で晩御飯を食べていた。両親は共働きで夜遅くまで帰ってこないのだ。

 

晩御飯は妹が作っている。両親は朝も早いため、朝御飯は俺が作っている。

 

妹と学校のことなんかを話しながら、妹の作った美味しい晩御飯を食べていると……

 

『ーーーつまり、遺伝子的に相性が良かったり、好意を寄せていたりする相手の体臭は心地よく感じるという事ですか?』

 

『はい。この実験結果からも明らかです』

 

「ブッ!!」

 

「わっ!! ちょっと兄さん! 汚いよ!」

 

テレビから聞こえてきた内容につい吹いてしまった。

 

ーーーそういうことなのか?




キャラクター・プロフィール
【綺羅々 きらら】①
無口で大柄。不思議なお姉さん。
いつも腹ペコで、いつもなにかを食べている(主にお肉)。
その言動はエキセントリック。
なんとなく動物的? 優太にフラグ?
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