GJ部+1   作:ショーP

6 / 8
お久しぶりです


あだ名が必要

それはある日のこと。京夜と俺のあだ名が決まった日のことだ。

 

「やっぱ。あだ名が必要だよな」

 

ーーーと。部長が急にそう言ったのが始まりだった。

 

「そうかもしれないね」

 

紫音さんが同意する。

 

「いいですねー」

 

「るる」

 

恵ちゃんも頷き、キララも、なんか変な声で同意をしめした……声か……?

 

「誰のですか?」

 

京夜がそう聞いた。

 

いまいち話についていけてないのだろう。だが、俺は何となく予想がついている……というか、この中であだ名をつける相手になりそうなのは……

 

「オマエのに決まってんだろ!」

 

やっぱりな。あとたぶん俺もだ……というか、この流れで俺につけてくれなかったら悲しすぎる。

 

「いたい! 痛い! 痛いです部長っ!」

 

部長に噛み付かれた京夜が悲鳴をあげる。手首と肘の間をみごとに食われている。

 

紫音さんたちが部長の足を引っ張ってようやく離れた部長……俺はやらないのかって? セクハラになるってのが分かんないのか?

 

「あーもう。がぶがぶ噛まないでくださいよ……。ほら、歯形付いちゃってる」

 

「人があだ名を決めてやろうっていうのに、ひとごとみたいに言ってるからだ」

 

「部長って、歯並びいいですよね」

 

京夜が腕に残った歯形を見ながら言う。すると。

 

「るさい! また噛むぞ!」

 

「なんでですかー!」

 

「言ったことを聞かないやつと、聞いていないやつは、噛まなきゃわからんだろーが!」

 

「それどっちも同じなんじゃないですか」

 

「ムガー!」

 

京夜がまた噛まれた。

 

紫音さんたちは、さっきは外したのに、今度は外そうとしない。

 

「だいたいあだ名ってなんですか。名前ならありますよ、京夜ですよ」

 

京夜が、二重に歯形のついた腕をさすりながら言う。

 

「却下。立派すぎ」

 

「愛称って大事ですよねー」

 

手のひらを合わせながら恵ちゃんが言う。

 

「こういうのって、やっぱり印象で決まると思うんです。ーーー皆さん、どうでしょう?」

 

まるで天使のような彼女、恵ちゃんだが、こういう時の助けを期待してはいけない。天使の目には、いまの京夜の状況も美談に見えているからだ。皆が “あだ名” と言っているのに対し、恵ちゃんは “愛称” と言っているのがその証拠である。

 

「印象ねぇ……」

 

と部長が腕組みをする。ただし、その顔には満面の笑みが浮かんでいる。

 

「白ごはん」

 

紫音さんがボソッと呟く。

 

「そのこころは?」

 

「なんにでも合うところ。彼の無個性をどう表現すればいいか考えてみたのだが」

 

「うーん」

 

部長は難しい顔になる。

 

「すまない……。面白くなかったかもしれない。ジョークは苦手で」

 

紫音さんは真剣に次のジョークを考え始めた。「プレーンヨーグルト?」とか口の中で呟いているようだ。……紫音さんにその手のセンスが無いことが判明した。

 

「キララ。おい。なんかねーのか?」

 

部長がキララに話題を振った。京夜がキララの神秘的な目に見つめられている。おいそこかわれ。

 

京夜がきょろきょろと視線をさまよわせ始めると。

 

「うまそう?」

 

キララがいきなり変な事を言い出した。そのこころは……いい匂いがするから。とかだろうか?

 

「よし。うまそうな白ごはんで決定」

 

部長が膝を叩いて喜んでいる。

 

「決定しないでください! あと合体させないでください!」

 

「キョロさんって、どうでしょう?」

 

ずっと考え込んでいた恵ちゃんが、このタイミングでそう言った。

 

「京夜さんの名前と、あとはさっきキョロキョロしていたのとを掛けまして」

 

「ああ。そういやよくキョドってるしなー。よしそれで決定!」

 

京夜は黙っていた。何か言って、「うまそうな白ごはん」に戻ってはたまんないからだろう。

 

京夜のあだ名はこうして決まり、俺は一言も話さないまま、今日の部活動が終わった。

 

…………あれ、俺は?

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の帰り道。

 

「じゃーなユウ」

 

「それじゃあね、ユウ君」

 

あ、もう決まってたんですね。

 




キャラクター・プロフィール
【四ノ宮 京夜】しのみや きょうや

こだわらない。争わない。のんびり平和主義者。
得意なこともなければ苦手なこともないという、無個性を絵に描いたような原作主人公。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。