GJ部+1   作:ショーP

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お待たせしました。


お手

「お手!」

 

部長がいきなり変なことを言い始めた。部室の丸テーブルで、いつものようにライトノベルを読んでいた京夜は、顔を上げて部長を見つめた。

 

いつものように、硬めのソファで同じくライトノベルを読んでいるおれは無視した。

 

「なんですか?」

 

京夜が部長に聞いた。多分部長は退屈してるんだろうな。

 

「お手!」

 

部長はそう繰り返すばかり。俺はライトノベルから目を離してないので見てはいないが、おそらく部長は、なにかをすっごく期待している顔をしていることだろう。

 

「はい」

 

京夜がそう言った。顔をあげて見てみると、京夜が自分の手を、手のひらを上に向けて待っている部長の手のうえに乗せた。

 

「よし!」

 

部長は満足げに笑った。もう片方の手で、京夜の頭を撫でる。

 

「いいこいいこ」

 

俺は、まるで犬のようだな。と思いながらそれを見ている。立ち位置が逆だったら危ない構図だが、今はちっちゃい子が遊んでいるのに付き合っているお兄さんにも見える。

 

ギロッ!!

 

と部長がこちらを睨みつけてきた。怖い怖い。俺は目を逸らして、関係ないアピールをする。

 

「もういいですか」

 

京夜が読者に戻ろうとするが、

 

「おすわり!」

 

部長は許してくれない。

 

「おすわり!」

 

「あのですね部長」

 

「おすわり!」

 

「だからですね」

 

「おすわり!」

 

なにを言っても無駄だった。無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァ……変な電波を受信してしまった。俺には電波キャラという設定はないはずなのに……。

 

京夜はすっかり諦めた様子で、椅子の上で、ちょこんと『おすわり』のポーズをとった。

 

「よし! いいこいいこ」

 

部長が椅子から腰を浮かべ、京夜の頭を撫でに行った。京夜は黙って撫でられていた。

 

「ごほうび!」

 

部長の手が動いた。

 

丸テーブルのうえからクッキーを一つ取り出し……ぽいっと、床へ投げ落とした。

 

その顔は京夜に向けられ、なにかをすっごく期待している顔だった。

 

「ごほうび!」

 

と部長は繰り返す。

 

「よし!」

 

と、床のクッキーを指差して、そう言った。

 

今までのから考えると、『お手』、『おすわり』と来て、『待て』。そして、今の『よし』が、『食べてよし』という意味だろう。

 

つまり部長は、京夜に、床にあるクッキーを、それこそ犬のように、手を使わずにパクパク食べろ。と言っているのだ。なにその罰ゲーム。

 

京夜もその考えに至ったらしく、困った顔でキョロキョロしだした。

 

部長の顔を見る。

 

京夜が二回も芸をしたので、キラキラと、三度目の芸をものすご〜く期待している顔になっている。

 

部屋の隅に顔を向け、紫音さんに助けを求める。

 

紫音さんは細い指を一本立て、メトロノームのように左右へ振る。はじめに断らなかった君が悪い、とでも言いたげな顔だ。

 

キララに目をやる。お肉を食べる手を止めて、もう一つのソファのうえに足を引き上げ、『おすわり』の体勢。

 

その目は床のクッキーへと注がれていた。

 

……ごほうび欲しいんですね。

 

最後の希望にすがるように俺へと顔を向ける。

 

俺は冷静に、ゆっくりと開いたまま持っているライトノベルへ目を戻す。これが必殺技。『見て見ぬ振り』だ。つかいすぎるとイジメになるので注意。

 

「よし! ごほうび! よし!」

 

部長が手をブンブンと振って、床のクッキーを指し示す。

 

京夜がなにかを決断したような顔で、クッキーへと近づいて行ったとき。

 

「ダメでしょ! おねーちゃん!」

 

スッパーン! と、小気味いい音が部長の頭から鳴った。部屋の端からすっ飛んできた恵ちゃんが、部長の頭を上から下へと打ち抜いた音だ。怒った顔も可愛いです。

 

京夜を助けに来たのかなーなんて考えていたら。

 

「食べ物を粗末にしたらいけません! 勿体無いお化けが夜襲ってきて、頭からガリガリかじられちゃうんですよ! ほんとにいるんですから! 見たんですから!」

 

そっちですか。




その後。

京「勿体無いお化けってなんでしょう?」

真「さあな。、見たことねえし」

京「僕が思うに、でっかい口を持った怪獣じゃないかと思うんです」

優「京夜正気か?」
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