赤キ血統ノ忘レ形見 作:桐谷
なんか自分でも思うんですが
この小説、一体何話で完結するんでしょうか……
先は長いですなぁ………(遠い目
「………さ、着きましたよ」
「う…ん……」
扉を開けて、部屋に入る。ここはサラ教官の部屋。肩を貸している張本人はそれを確認する元気はないようだが……。
……とりあえず、ベッドに寝かせた方がいいよね
そう思って、奥のベッドまで移動しサラ教官を寝かせる。そして、周りを見回して手頃そうな袋を見つけ、彼女に渡した。
「サラ教官、大丈夫ですか……?どうしても、我慢できない時はこれ使ってください。わたし水とってきますので」
「ええ………わかったわ……」
そう言って、わたしは扉に向かおうとした。
「あ、待って……行く前に……」
サラ教官が辛そうに起き上がり、少し散らかった段ボール箱の近くを指差した。
「届いたあんた宛ての荷物……あそこの中にあるアタッシュケース……」
「え、あ、はい!」
指差した場所を少し探すと、確かにアタッシュケースがあった。何が入っているか気になったが今はサラ教官の介抱が優先だ。位置だけ確認するとサラ教官に向き直る。
「後で取りに来ます、とりあえず水持ってきますので待っててください」
「……助かるわ」
「……すーー……すーー」
「うん……顔色良くなった……ひとまず大丈夫かな」
目の前で落ち着いた表情で寝息を立てるサラ教官に安堵して、わたしはため息を漏らす。辛そうであったものの嘔吐などしなかったのが幸いだった。生徒にそこまで世話をさせるわけにはいかないという教官としての意地だったのだろうか。なんにせよ、大ごとにならず済んで良かったと思う。
「さてと……とりあえず預かりものを貰って部屋に戻るかな……えーっと―――」
先ほど見つけたアタッシュケースを探すように見渡す。ほどなくして自分が一度立てかけた場所にあるのを確認し、持ち上げる。
そんなには重くない……何が入ってるんだろう?
その疑問は自分の部屋で解明することにし、サラ教官の部屋を後にした。
「………よいしょっと」
持っていたアタッシュケースをとりあえず自室の机の上に置いた。今一度、送り主と贈られるものが何かを考えてみるが、やはり思い当たる節はない。
「まあ、開ければわかることだし……確認してみよっと」
―――パチッ、パチッ……ガチャ………
「? なにこれ?」
そこにあったのは、2本のビンだった。一応中身はあるようで、濃い紫色をした液体が入っていた。
「うーん……ラベルも何もなし……飲み物なのかな?」
2本とも確認するが、両方とも何も張られておらず、現状では色しか分からない。わたしは覚悟を決めて、コルクを開けることにした。
「栓抜き……ってそんなものないしなぁ……仕方ないか」
そう言って、わたしはおもむろに机の引き出しを開ける。そこには何本かのダガーがあった。
「予備は一応とってあるんだよねー」
と、誰かに説明するように独り言をつぶやく。それらのダガーのうち一番小さなものを手に取り、引き出しを締めた。そして、そのダガーですることとは―――
「そいっ」
軽く先端を突き刺し、素早く手を捻った。
―――キュッ、ポンッ
気持ちのいい音と共にコルクが外れる。子供のころ、ジュースを飲みたいときにどうにか栓を開けられないかと考えた末、この技を編み出した。子供の執着心、特に食べ物への執念は恐ろしく強いのだ。
「さて……まず、香りは……」
そう言って、注ぎ口近くで手を仰ぎ匂いを嗅ぐ。するとそれは―――
「………葡萄の香り?」
どうやら、葡萄の飲み物のようだ。しかし、意外とその香りは強いもので、なんとなく濃縮されたような匂いだった。
「んー……葡萄果汁100%なのかな?」
……まあ、飲んで見ればわかるよね
なんて思いながら、グラスを下の厨房からとってくることにした。夜も遅いので、静かに下りる。流石に気配まで消す必要性があったかは知らないが。
数分後、わたしはグラスにその葡萄ジュース(仮)を注ぐ。再度、香りを確かめて毒などの異常な匂いがないか確かめる。そして、それがないことを確認してからその飲み物を口に含む―――
「―――ッッ!!?」
瞬間、口の中に葡萄の酸っぱさに加え、独特な苦みと匂いが広がった。十中八九、その飲み物がなんであるかを察した。だが、そんなことより―――
「~~~ッッッ~~~~~んくぅ!!」
とにかく口から出したい。飲んだらダメ、そんな考えが頭をめぐる。手洗いまで行って吐き出すことも考えた。だが、こんな状態で慌てて廊下に出たりして誰かに感づかれたらまずい。3階の女子部屋のスペースにはフィーやラウラのような気配の分かる女子もいるのだ、迂闊には出れない。結局―――
―――ゴクッ
飲んだ。
いや、飲まざるを得なかった。
そもそもどうしてわたしは飲みたくなかったのか、何故なら―――
「けほっけほっ………うぅ……これってぇ………」
「―――絶対お酒だよぉ………」
わたしは涙目で置いてあるビンを恨むように凝視する。いままで飲んだことはないので確信はないが、口に含んだ時に薄いアルコールの風味がした。葡萄ジュースではない、決してアルコールは強くはないが、それは葡萄酒だったのだ。だがしかし、なぜ香りを確認した時点で気づかなかったのか。原因はすぐ思いついた。
「サラ教官のせいだ………」
そう、彼女が纏っていた強烈なアルコール臭。彼女を介抱する時間、ずっとその匂いを嗅いでいたわけだ。そのため嗅覚がアルコールに対して軽く麻痺していたのだろう。そこで余りアルコール濃度が強くないさっきの葡萄酒の匂いを嗅いだとしても、わかるわけがなかったのだ。
「……教官に言いづらいなぁ」
一応教官にも立場がある。このことを言ったら彼女の教官としての面目が立たないだろう。間接的とはいえ生徒に酔って酒を飲ませたなんて学院に知れたら大問題……下手すればクビだ。
……うー、今度サラ教官と二人で話し合うかな
とりあえず、今は黙っとこ……
落ち着くまで、この事態は胸のうちにしまっておくことにした。出来れば、このままバレずにいればいい……なんて思いながら、わたしはベッドに倒れこんだのだった―――。
―――まさか一週間後には全てを暴露するとは知らずに。
お疲れ様でした。
いやー、長いこと続いた回想も終わりましたねぇ……
ここだけの話、シルヴィアにどうやって不可抗力的に酒を飲ますか、頭痛が起きるぐらい悩んでました(笑)
でもまあ、なんとか形になって良かったです。
次回からはみなさんも見たことのある特別実習が始まります。お楽しみに!