赤キ血統ノ忘レ形見   作:桐谷

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こんにちわ、桐谷です
創作意欲に負けて、二話目もすぐに書いてしまいました。

今回もしゃべることはなさそうです。
本編へお進みください。


NOT FALL DOWN

「ここは…?」

 

不意に声が漏れた。

わたしが今いる場所はさびれた建物の扉の前。一人の女性の後ろをついて行き、到着したのがこの場所だ。

 

「士官学院の旧校舎よ。この中がオリエンテーリング会場よ。さ、入りなさい」

 

そう言ってわたしたち赤い制服の生徒を案内した女性教官は扉を開けて、中に入って行った。

ますます、疑問が増えるわたしは首をかしげるばかりだった。

 

「よく分からないことになったわね」

「ん、アリサ…そうだね」

 

朝会った少女、アリサが声をかけてきた。彼女もどうやら状況が理解しかねているようだった。

 

「とにかく、今は彼女に従うしか無いみたいね。行きましょう」

「そうだね」

 

わたしたちは再び歩みを進め、オリエンテーリング会場へと足を踏み入れるのだった。

 

 

 

 

 

「―――んじゃ、改めて自己紹介からするわね。サラ・バレスタイン……貴方たち《Ⅶ組》の担任を勤めされてもらうわ」

 

生徒全員が旧校舎内に入ったことを確認すると、彼女――サラ教官は自己紹介をした。自己紹介により、彼女が何者かの疑問は晴れたが、同時に自己紹介により新たな疑問が生まれた。

 

「Ⅶ組……?」

「えと……サラ教官?確かトールズ士官学院はⅤ組までしかなかったはずですが……」

 

他の全員も同じ疑問を抱いたようだった。そう、わたしもトールズ士官学院はⅤ組までしかないと思っていた。けど、彼女は私たちのクラスは《Ⅶ組》と言った。

 

「お、流石主席入学。よく調べてるじゃない。そうよ、確かにトールズ士官学院はⅤ組までしかなかった。けど、それはあくまで去年までの話よ」

「……? 一体どういう?」

 

状況は相変わらず呑み込めなく、わたしは首を傾げた。

 

「今年から、新たにクラスが立ち上げられたのよ。そう、―――」

 

 

「―――それが君たち……身分に関係なく選ばれた特科クラス《Ⅶ組》よ」

「み、身分に関係なく選ばれた?」

 

驚いた。そんなクラスに入るとは、思ってもいなかった。けど、自分にはある意味都合のいいクラスだとわたしは感じた。そんなことをわたしが思う中―――

 

「冗談じゃない!! 身分に関係ない!? そんな話聞いていませんよ!」

「わっ」

 

びっくりして小さな悲鳴を上げた。どうも昔から音に敏感で大きな音には驚きやすいのだ。けど、いまはそれより……。

 

「えっと、たしか君はー……」

「マキアス・レーグニッツです!自分はとても納得しかねます!サラ教官っ!!まさか貴族風情と、一緒のクラスでやって行けって言うんですか!?」

 

うわー、すごい剣幕だねぇ……

 

一人の生徒が声を荒げていた。言動からして平民なのだろう。あそこまで露骨に貴族を嫌うのもまあ、珍しいが。

 

「フン……平民風情がよく吠えるな……」

「……何?」

 

うわぁ、こっちもこっちだよ……

 

そう思いながら、別の声の方を眺める。そこにはあからさまに偉そうなたたずまいの少年が腕を組んでいた。

 

「これはこれは、どうやら大貴族のご子息殿が紛れ込んでいたようだな。その尊大な態度……さぞ名のある家柄と見受けるが?」

 

噛みつかれてさっきの少年、マキアスが返した。

 

「フン……ユーシス・アルバレア。まぁ、別に《貴族風情》の名前など覚えてもらわなくともいいが」

「ア、アルバレア……《四大名門》の一つじゃないか!」

「東のクロイツェルン州を治めている《アルバレア公爵家》の…」

 

へぇ……そんな大貴族がこのクラスに……

 

わたしは貴族にそこまで強く思うことはなかったのでそう思うしかなかった。

 

「だ、だからどうした! そんな大層な家名に誰もが怯むと思ったら大間違いだぞ!僕は絶対に―――」

「はいはい、そこまで」

 

手を鳴らしてサラ教官は今にも一触即発な二人を制した。

 

「色々あると思うけど、文句は後から聞くわ。そろそろオリエンテーリングを始めないといけないしねー」

 

そう言うと一人の男子が声を上げた。

 

「サラ教官……もしかして朝校門前で預けたものと何か関係が?」

 

私はそれを聴いて思い出した。たしかに今朝、校門であるものを人に預けた記憶がある。

 

「アラ、いいカンしてるわね」

「………!」

 

無言でわたしは手を挙げた。

 

「ん?どうかしたのかしら?」

「……サラ教官、特科クラスのことはさておいて、率直な一つだけ疑問があるんですが」

「ふんふん、なにかしら……って?」

 

わたしは数歩下がってから改めてその疑問をぶつけた。

 

 

 

「ここにいる皆さんの足元の床の微妙なひずみについて伺っても?」

 

わたしが声を発すると辺りがシンとした。

生徒たちは訳が分からないように首を傾げ、教官は口を開けて唖然としていた。

 

「……あちゃー、バレるとは思わなかったわね。まあでも、貴女以外はわかっていないみたいだし、予定通りに行かせてもらうわよ」

 

そう言うとサラ教官は近くにあるスイッチのようなものを押した。次の瞬間、私の位置から数センチ先の床が大きく傾いた。

 

「なっ!?」

「わわっ!?」

「しまった――」

 

わたし以外の各々が様々な声を上げて次々と床を滑り落ちていった。……一人を除いては。

 

「よっと」

 

そう言って、天井にワイヤーのようなものを射出、ワイヤー先の金具が天井に刺さり宙に浮くような形に。よく見れば、入学式に喋った銀髪の子のようだ。

 

「こら、フィー。アンタも行くのよ、オリエンテーリングにならないでしょう・・・っが」

 

そう言って、サラ教官は刃物のようなものをワイヤーの中心部分に投げつけ、断ち切った。

 

「はぁ、メンドクサいな……」

 

そう言いながらフィーと呼ばれた生徒は落ちていくのだった。

 

「ったく、しょうがないんだから……で、」

 

今度はわたしの方を彼女は見た。何かもの言いたげな顔でじーっとこちらを見つめてくる。

 

「色々貴女には聞きたいことがあるけど……今は彼らと同じようにオリエンテーリング参加してほしいのだけれど?」

 

真剣な顔のままそう言った。まあ、予想できた言動だった。

 

「……分かりました、出過ぎたようなことをしてすみません」

 

自分でもやりすぎたとは思っていたので、わたしは謝罪をし深々と頭を下げた。そうすると、真剣な彼女の顔が苦笑へと変わった。

 

「ごめんなさいね、別に攻めてるわけじゃないのよ。危機察知能力が高いことは悪い事じゃないわ」

「あはは……ありがとうございます。それでは失礼します」

 

そう言ってわたしは深々と空いた暗闇の中へと飛び込んだ。

サラ教官の視線を背中に受けながら―――。

 

 

 

 

 

「……まったく、いったいアンタの子はどうなってるのよ……シエラ」

 

そう呟いて暗闇を眺める、教官の姿は少し憂いに帯びているようだった。




お疲れ様でした。
早速伏線とチートが垣間見えた回でした。

勘が鋭い子なんですよ、シルヴィアは(すっとぼけ)

ではでは、次回オリエンテーリングスタートです。
それでは失礼します。
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