The Sweepers   作:インノケ

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ビルダーとして生きる

ユウ、学ぶ


10話

「僕を、ビルダーとして、弟子にしてください」

ジャックの作品を見てわかったのは、圧倒的な知識不足と経験不足であった。ビルダーとして必要なのはガンダム作品の知識だけでなく、戦闘そのものへの理解と何が必要とされているかを知ることだ。激戦区で戦うアールを支える彼は、これ以上ない手本となるだろう。

「で、弟子か。おう、いいぞ」

魔女の箒から離脱して以降自分にできることは何かをずっと考えてきた。僕にパイロットの適性があるとは考えづらいし、できることといったら……。

「え? そんなあっさりいいんですか?」

必死に考えてやっと言い出せたというのに、返答はあまりにもあっさりとしていた。そんな簡単でいいのだろうか。ジャックもさすがに説明不足と感じたのか、続けて言った。

「ゲオルグさんと話してな、ユウからの頼み事は聞いたやってくれて。無理難題とか吹っかけられなくて安心したぜ」

ありがたいことにゲオルグはこんなところまで気を回してくれていたらしい。なんにせよ、これで僕のやらなければいけないことが定まったのだ。こうして僕はジャックに弟子入りしたのであった。その後、結局酒場に連れていかれ遅くまで付き合わされることになったのはまた別の話である。

 

「こういう装甲裏にフレームを仕込むだけでもだいぶ耐久力は変わる。見えないとこにも気を使えって言うのはこういうことだ」

 数日後の昼間。僕はそう言うジャックの後ろから彼の作業を見ていた。GBF内でのビルドとは現実世界のガンプラと似たようなシステムである。一般人にメカニックとしての仕事ができるはずもなく、このプラモデル方式によって修理や改造が可能となっている。ゆえに僕たちはメカニックではなくビルダーなのだ。

「マテリアルを使うときに気を付けるのは重心の位置だ。宇宙先使用の機体だと旋回の軸の中心になるから、ただバインダーやらバーニアやらをつけりゃいいってもんじゃないってことだ」

マテリアルとは現実のパテやプラ材に相当する、自由な形に加工できる素材のことだ。これによってオリジナルのパーツも作成が可能となる。実際に戦闘に使うものからこそ、現実以上に経験が求められるといえるだろう。何より使用者の命がかかっているのだ。ビルダーにはそうした責任も求められる。僕たちにとってはこのビルドの場も戦場なのだ。

「PvP用の機体なら迷彩とかもやるんだが、ミュータントは索敵圏内に入ったら問答無用で認識してくるからな。スイーパー用ならパーソナルカラーのほうが便利だな。一目でどこに誰がいるかわかるし、縁起でもない話だが誰がいなくなったかが一発でわかる」

アールの機体はくすんだ赤紫で塗装されていたことを思い出す。あれが彼のパーソナルカラーだったのだろう。僕がギルドのビルダーだったころは塗装の依頼をいくつか受けたことがあったが、やたらと赤い色の注文が多かったのを覚えている。実際に作業を見せてもらうことほどわかりやすいお手本はない。その後も彼の作業と講義は続き、機体が完成するころには夕方になっていた。

「この機体ってアールのなんですか?」

気になっていたことを聞く。説明からするとスイーパーの機体らしいが、ジャックはアールの専属ビルダーであるので予備機でも作っているのかと思ったのである。

「いや、これはちょっとした小遣い稼ぎでな。ウチはでっかいスポンサー様がついてるから開発費に困ることはないんだがな。賭け事の分は自分で稼ごうってことだ」

「ロクに勝てないのに賭博場行くのやめましょうよ。どうせならもっと有意義なことに」

思わず思ったことを口に出してしまう。この家に来て以来、未だ勝ったという話は聞いたことがない。行っても無駄だと思うのは当然であろう。

「お前、俺が本当に遊びに行ってると思ってるな?」

ジャックが怪訝な目で問いかけてくる。

「え、違うんですか?」

「勝てもしないのに貢ぎ続けるほど馬鹿じゃねぇよ……。フォルテンツィアの酒場や賭博場は地球宇宙問わずいろんな奴が来るからな。情報収集にうってつけなんだよ」

なるほど。ここフォルテンツィアは中立であり、美しい街並みからジャックのようにここに居を構えるプレイヤーも少数ながらいる。

「同じテーブルで勝負しながら世間話をしてるとな、いろんな話が入ってくるんだよ。勢力戦争の戦況、流行りの機体。あとは何だ、最近の事件とかか」

携帯端末やゲーム内発行誌はあるものの、GBFにおいて情報を得るのに最も有効なのは口コミの情報を掴むことだ。ついこの間まで引きこもってギルドのビルダーをしていた時と違って外に出るようになったことで身にしみて分かったことである。

「どうせならユウも行って来い。賭博場のほうがいろんな奴がいるぞ」

僕はジャックが負けっぱなしの姿を見ているせいか賭博場へはめったに行かない。もっぱら中央の噴水の周りを散策したりマーチャントショップに冷やかしに行ったりするくらいである。実は現実では引きこもり気味であったこともあり、あまり人と接触的に話しに行ったりする方ではないのだ。

「勝負のための小遣いくらいは出してやるよ。一山当ててこい!」

ジャックに追い立てられるように外へ出されてしまい、僕は途方に暮れた。端末を見ると貯金が若干増えている。こうして僕は仕方なく、賭博場へ向かうこととなった。

 

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