The Sweepers   作:インノケ

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新しい出会い

ユウ、儲ける


11話

 フォルテンツィアに設置された賭博場「タイガーバウム」はGBFがデスゲームとなって以降、人の生き死にの関わらない勝負ができる娯楽場として重宝されている。マネーの他にもMSなど賭けられるものならなんでも賭けられるため、一攫千金を狙って昼間からギラギラとしたプレイヤーが多く訪れる場所だ。ジャックの言う通り情報収集にはもってこいの場所であろう。ゲートをくぐるともう夜だというのにきらびやかな電飾が目にまぶしい。今日の分のクエストを終えたプレイヤーが集まっているのか、どのテーブルも大盛況である。この手の勝負事はやったことがないが、迷っていても仕方がない。僕は一番近かったルーレットのテーブルへとやってきた。近づくと、一人の少年が場所を開けてくれる。中学生くらいだろうか、背は僕より少し低いくらいだが顔にはまだ幼さが見える。

「アンタ、やるんだろ? 勝たせてやるよ」

ずいぶんとふてぶてしい少年だ。少し顔をしかめながらも彼のとなりに入る。手元の端末からその場でコインを購入しベットをするようだ。ルールをよく知らないが、とりあえず赤か黒のどちらかに賭ければ勝負はできるだろう。何となく目についた黒にベットしようとした時だった。

「いや、赤だ。最初から負けに行くつもりかアンタ?」

「これAIが親のルーレットだよ? 勝敗は完全にランダムじゃ……」

「いいんだよ。まあやってみろって」

強い調子で促され思わず赤にかけてしまう。ルーレットが回りだし、鉄球が吐き出される。コロコロと勢いよく回っていた鉄球はやがて勢いをなくし、赤の25番のポケットに入る。

「言ったろ? 勝たせてやるって」

得意げにこちらを見る彼を無視し、倍になったコインの半分を再び赤に賭ける。

「そうだ、次は赤であたりだぜ。冴えてきたのか?」

口を挟んでくるのは気に入らないが、彼の言うことも気になってしまい再び開始されたルーレットの結果を見守る。結果は赤の7。3倍になったコインを受け取りながら驚いて彼を見る。

「君、ニュータイプかい?」

「NTスキルはもってないな。そもそもそんな効果あったか?」

彼はからかうように笑う。タネがあるのは間違いなさそうだが、僕には見当もつかない。どうしようか悩んでいたところで、後ろから別の声がかかった。

「儲かってるみたいじゃないか。私も混ぜてくれるか? そろそろ勝たないとまずくってね」

声をかけてきたのは僕と同じくらいの女性だった。僕が170cmくらいなので大きい方だろう。改造軍服のようなコスチュームを身にまとっており、一目で戦闘職なのだとわかる風貌だ。

「任せな。アンタもこの兄ちゃんみたいに勝たせてやる」

「頼もしいな。仕掛けはあるのか?」

「それは企業秘密だ。みんなが儲かっちゃ面白くないだろ」

僕はその女性に場所を開け、勝負の行く末を見守った。彼女が賭けたのは赤。しかし、鉄球は吸い込まれるように黒の11のポケットへ入った。

「おいおい話が違うじゃないか。これじゃ帰りに何も飲んで帰れないじゃないか」

むっとした顔で女性は少年に詰め寄ったが、少年の方はどこ吹く風だ。

「うーん。60%ってとこか。でもこれ以上はバレるとまずいからな」

「聞いているのか? 私の帰りの一杯は?」

これ以上放っておくのもかわいそうなので声をかけることにした。

「あの、さっき彼に勝たせてもらった分があるんで一杯おごりましょうか?」

「む。いいのか? いいというなら喜んでおごられるが」

「ええ。お金なんてあるなら使うに越したことはないですよ」

それにこれ以上放っておいて少年に掴みかかるのは勘弁してもらいたい、とは口に出さなかった。なんにせよこれで目的は果たせそうだ。彼女たちから話を聞くのに飲みに誘えたのは好都合であった。

「君もどうだい?お礼も兼ねて」

「俺は未成年だから飲酒はNG。だけどまあ、おごってくれるって言うなら断る理由もないな」

「じゃあ決まりだね」

システム上、未成年のプレイヤーは仮に飲酒をしてもジュースにしか感じないようにできている。その点は問題ないのだ。

「私はナオミ・テイラー。ごちそうになるぞ」

「あ、ミヤナガ・ユウです。よろしくです」

「ヤマモト・リクだ」

「うん、よろしく」

両名と自己紹介を終えたところで、僕たちは賭博場を出て酒場へと向かった。

 

「あれはな、ちょっとした解析ツールを使ったんだよ」

「解析ツールだと?ばれないものなのか、それは?」

「正答率はまだ60%程度だからな。例えばれてもまあ、問題はないだろ」

ナオミの疑問にリクは軽い調子で答えた。あの後僕たちは最寄りの酒場にやってきて、同じく賭博場帰りの客でごった返す店内の、隅のテーブルで会話に興じていた。

「どうせAI相手じゃマネーしか賭けられない。アンタならディーラーモデルのガンダムタイプとかのほうが欲しいんじゃないのか」

彼の言う通りAIが親をするテーブルではマネー程度しか賭けられないが、ディーラーなどプレイヤーが親をするテーブルでは、ショップ開設権やガンダムタイプなどレアなMSまで賭けられる。それらを求めて賭博場にくるプレイヤーも多い。

「ひと月前くらいにもいたな。ガンダムタイプを手に入れたヤツ。アクエリアスなんてレアなもんよく手に入ったもんだ」

リクが思い出したようにつぶやく。本当だとしたら相当な幸運の持ち主だ。GBF内でのレアリティは原作での生産数などから決まり、例えばオリジナルのGNドライヴは手に入れるのに莫大な労力がかかるしその搭載機も言わずもがなである。オリジナルと呼ばれる劇中での性能をフルに発揮できるモデルの中でも、ガンダムXのオリジナルなどは戦略性の高さから相当な入手難度となっている。ガンダムアクエリアスは設定では製作すらされていないので、高レアリティの設計図から誰かがビルドしたものが賭けられていたのだろう。こちらも高いレアリティであるのは確かだ。

「そういうリクはパイロットではないのか?」

「パイロットには見えないだろう?俺はビルダーだよ。そういうアンタはパイロットだな」

「その通りだ。バウンサーをやっているよ」

ナオミとリクがそれぞれの職を教えあう。バウンサーはパイロット職にありながら度のクランにも属さず、クエストなどの用心棒をしているプレイヤーのことだ。公式のジョブではないが、レベル上げのお供や高難度クエストの人数調整など必要とされたことで生まれた職である。

「最近は低レベルのパイロットも少なくて商売あがったりだよ。だから一山当てていこうと思ったのだが」

「見てたぜ。奥で思いっきりカモられてただろ?」

「そういうことだ。もっと仕事を増やさなければな」

バウンサーはフリーであるせいで、組織からのバックアップが受けられない。用心棒という響に憧れてなったものの、今日食っていくのも大変というプレイヤーも少なくない。これはこれで厳しい職なんだと実感する。ちなみに僕は三つ首龍の紋章から支援を受けているジャックのもとで暮らしているため問題ない。三つ首龍の紋章は三つものギルドからスポンサードを受けているのだ。

「ユウはパイロットか? ビルダーか? 判別しづらいな」

ナオミが問いかけてくる。

「僕はビルダーですよ。今はまだ、ここで修行中の身ですけどね」

「なるほどな。いつか私の機体も見てもらいたいものだ」

初対面でありながらそんな風に話ははずみ、その後も夜更けまで三人で会話に花を咲かせたのであった。

 

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